【東京モーターショー2011
低燃費タイヤで競うタイヤメーカー

ダンロップ、ブリヂストン、横浜ゴム、グッドイヤー

タイヤの未来を見ることができるタイヤメーカーブース

会期:11月30日~12月11日(一般公開日:12月3日~11日)
会場:東京ビッグサイト



ラベリング制度表示の例。上段が転がり抵抗性能を、下段がウエットグリップ性能を示している

 最近はカー用品店の店頭でもよく見かけるようになってきた、低燃費タイヤのラベリング制度。転がり抵抗性能と、ウエットグリップ性能を分かりやすく表示したものだが、このラベリング制度の運用が始まったのが、前回の東京モーターショー後の2010年1月。今回のモーターショーが、ラベリング制度導入後、初めてのショーとなる。

 そういったこともあってか、東京モータショー直前の11月29日にはブリヂストンが、プレスデー2日目の12月1日には、ダンロップ(住友ゴム工業)と横浜ゴムが低燃費タイヤの新製品を発表。各社のブースでは、それら新製品や、新製品に導入された技術を中心に展示が行われていた。なお、ラベリング制度については、関連記事を参照していただきたい。



エナセーブのシリーズ展示行うダンロップブース

ダンロップは、「エナセーブ PREMIUM」をメインに
 ダンロップブースは、低燃費タイヤの「エナセーブ」シリーズをラインアップ展示。転がり抵抗性能「AAA」(一部サイズは「AA」)、ウエットグリップ性能「c」を持ち、“エナセーブ史上最高の低燃費性能”という「エナセーブ PREMIUM(プレミアム)」を強く訴求していた。

 このエナセーブ PREMIUMには、新材料開発技術「4D NANO DESIGN」が用いられており、その体感展示も実施していた。4D NANO DESIGNは、SPring-8(放射光施設)や、スーパーコンピューター「地球シュミレーター」を用いるなどして、ナノレベル(10億分の1)で分子の動きなどを解析・シュミレーションする技術。実際にナノの世界が見えるわけではないが、大型ディスプレイや、タッチパネルディスプレイを使って、ナノの世界を感じてもらおうというものになっていた。

エナセーブ PREMIUMトレッドパターン
タッチパネル液晶が組み込まれた4D NANO DESIGNの体感展示4D NANO DESIGNを見える化した部屋。ナノの世界に入るというイメージか?

 ダンロップブースには、完成したばかりの「100%石油外天然資源タイヤ」のプロトタイプを展示。このタイヤは、国産第1号タイヤから100周年となる2013年の発売を目指しているもので、化石資源への依存度を下げることを目標に作られている。タイヤパターンには、それを象徴する「100」がデザインされているが、これはプロトタイプのためであり、市販化の際には変更されるとのこと。価格は通常タイヤより上がる見込みと言うが、同社では環境負荷をできるだけ下げていくことが必要と考えており、耐久性や量産化技術の確立に向けて開発を続けている。

プロトタイプ展示が行われた「100%石油外天然資源タイヤ」100周年を記念するパターンが刻まれる正面から見たところ

 そのほか、同社は12月1日に、従来製品に比べて転がり抵抗を低減したバン・小型トラック用タイヤ「エナセーブ VAN01」「エナセーブ SPLT38」も発表しており、製品展示が行われていた。エナセーブシリーズをさまざまな分野に投入することで、低燃費タイヤを求める市場の要求に応えていく。

エナセーブのシリーズ展示エナセーブ VAN01のトレッドパターンエナセーブ SPLT38のトレッドパターン。いずれも耐荷重の高そうなパターン
転がり抵抗の違いを見るデモも行われている

ダンロップ
http://tyre.dunlop.co.jp/



ラベリング制度最高グレードタイヤを展示するブリヂストン
 ブリヂストンは11月29日に、転がり抵抗性能「AAA」、ウエットグリップ性能「a」を達成した「ECOPIA EP001S(エコピア イーピーゼロゼロワンエス)」を展示。また、パンクしない「非空気入りタイヤ」をはじめとする各種の技術展示を行っていた。

ステージを中心に展開するブリヂストンブース低燃費タイヤブランド「ECOPIA」のラインアップ展示右がラベリング制度最高グレードを達成したECOPIA EP001S。左はEV(電気自動車)用のコンセプトタイヤ
エコピア EP001SのトレッドパターンEV用コンセプトタイヤのトレッドパターン。EV用のため、静粛性にとくに配慮されている
非空気入りタイヤを装着した4輪車
非空気入りタイヤ技術説明展示
次世代ランフラットタイヤ「POTENZA S001 RFT」ランフラットタイヤのつぶれにくさを体感できる
「CAIS(カイズ)」コンセプトにもとづく路面状態判定技術展示タイヤ内に取り付けたセンサーで、路面状態を判断していくタイヤ内のセンサーと、そこに給電する発電素子

 そのほか、TVCMでおなじみの「TAIYA CAFE(タイヤカフェ)」をブースに設置。季節柄、タイヤカフェはスタッドレスバージョンの「ICE TAIYA CAFE(アイス タイヤ カフェ)」になっていた。このアイス タイヤ カフェでは記念品プレゼントなどが行われる(残念ながらドリンクなどは提供されない)。

ICE TAIYA CAFE。立ち寄って、記念品をゲットしておこうスタッドレスタイヤのラインアップ展示もされていたブリヂストンがワンメイク供給するMoto GPマシンとともに、2輪用タイヤを展示

 一般公開日には、コンパニオンなどによるイベントステージなども開催される。スケジュールなどは、ブリヂストンのWebサイト(http://www.bridgestone.co.jp/corporate/event/exhibition/tokyomotorshow/)を確認していただきたい。

株式会社ブリヂストン
http://www.bridgestone.co.jp/



EVレーシングカーをメインに持ってきた横浜ゴムブース

横浜ゴムは、2つの低燃費タイヤを投入
 「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」に参戦し、EV(電気自動車)のコースレコードを記録したEVレーシングカーが目を引く横浜ゴムブース。横浜ゴムは12月1日に、転がり抵抗性能「A」、ウエットグリップ性能「b」の低燃費タイヤ「BluEarth-A(ブルーアース・エース)」と、SUV用低燃費タイヤ「GEOLANDAR SUV(ジオランダー・エスユーブイ)」発表し、展示を行っていた。

 ブルーアースは、同社の低燃費タイヤブランドで、ブルーアース・エースは、38サイズを取りそろえ、コンパクトカーから高級セダンまでをターゲットにする低燃費タイヤのマルチパフォーマンスモデル。とくに、騒音低減に力を入れており、車外通過騒音を従来製品より0.5dB低減。静かさがと燃費性能の両立が求められるEV、ハイブリッド車などにも最適と言う。EVレーシングカーに装着されていたタイヤも、このブルーアース・エースだった。

EVレーシングカーは、発表されたばかりのブルーアース・エースを装着ブルーアース・エースのトレッドパターン
コンセプトタイヤや、ジオランダー・エスユーブイ(右から2番目)などジオランダー・エスユーブイのトレッドパターン

 そのほか、同社のタイヤに用いられているオレンジオイル配合コンパウンド「ナノブレンドゴム」や、空気漏れを大幅に抑制する「AIRTEX Advanced liner(エアテックス・アドバンスドライナー)」などの技術展示も実施。タイヤに投入されているテクノロジーを、理解できるようになっている。

オレンジオイル配合コンパウンド「ナノブレンドゴム」や、エアテックス・アドバンスドライナーの技術展示パターンの違いによる静音性タイヤのサイドにディンプルを刻むことで、空気抵抗を抑制。放熱や静音性にも貢献。ゴルフボールのデザインテクノロジーが応用される
リサイクル可能なパンクレスタイヤ。再利用時のタイヤ特性が変化しないため、リサイクルが容易になっている

横浜ゴム株式会社
http://www.yrc.co.jp/



次世代月面探査車用タイヤを展示した日本グッドイヤー
 日本グッドイヤーは、ブース全体を宇宙船に見立てて、NASAと共同で開発中の次世代月面探査車用タイヤを展示。このタイヤは、月面では正しく作動するものの、月面と比べ重力の強い地球上ではペシャンコになるため、両脇から支えてディスプレイされていた。

 一見すると同社ブースには、この特殊なタイヤしかないように見えるが、壁面においてラインアップ展示が行われ、未発表のタイヤがひっそりと飾られていた。同社のスタッフによると、このタイヤは2月の発表を予定しており、詳細はそのときに明らかになると言う。タイヤパターンを見る限り、ブロック剛性の高そうなタイヤとなっており、ハイグリップタイヤという訳ではないものの、ある程度のスポーツ志向を持っているように見えた。

独自路線を発揮していたグッドイヤーブースNASAと共同で開発中の次世代月面探査車用タイヤ。地球では支えないと凹んでしまうが、月ではこの形状となるトレッドパターンではなく、タイヤ構造。メッシュをラジアル方向の支持素材で支えているように見える
壁面にひっそりとラインアップ展示未発表製品も展示されているトレッドパターン。「2012年2月Coming Soon」だ

日本グッドイヤー株式会社
http://www.goodyear.co.jp/


 2011年は、低燃費タイヤが本格的な普及期に入った年であり、各社の展示もその方向性を強く打ち出していた。エナセーブ、エコピア、ブルーアースというブランドが広がりを見せ始め、転がり抵抗性能やウエットグリップ性能、車種別用途などバリエーション展開が始まっている。

 スタッドレスタイヤは機能性を重視するユーザーが多かったが、サマータイヤに関しては、ハイグリップタイヤ、グリップと静音性との両立を図ったフラッグシップタイヤ以外は、“黒くて丸いだけ”というイメージが強かった。そこに、転がり抵抗性能や、ウエットグリップ性能という新たな評価軸が入り、各社の技術投入のスピードが加速しているように思えた。

 2012年には、最高速度の設定で調整が続いている新東名の開通も控え、「ぜひタイヤを交換するなど、オーナー自らがチューニングし、楽しんでほしい」と開発者が語る、トヨタ「86」、スバル「BRZ」も登場する。高速走行性能、グリップ性能、転がり抵抗性能、静音性能、そして価格やタイヤライフなど、多軸でのタイヤ選びが要求される年になりそうだ。

 タイヤメーカーのブースには、ど派手なコンセプトカーなどは展示されていないが、タイヤに関する細かな質問をぶつけられるよい機会。24年ぶりに東京で開催される東京モーターショーは、平日は20時まで開催しており、平日の18時以降は500円で入場できる。タイヤ相談所として活用してみるのもよいだろう。

(編集部:谷川 潔)
2011年 12月 2日