長期レビュー
マツダ「アテンザ ディーゼル 6速MT」カスタマイズリポート
その3:“音BACS”でアテンザのオーディオをセッティング
(2014/6/3 00:00)
ども、Car Watch営業の瀬戸です。この連載を始めてからというもの、何年も会っていなかったロードスター仲間から「アテンザのMTってどうよ?」とか連絡がくるようになりました。結構ロードスター乗りの人が読んでくれてるみたいですね。とーーってもいいですよ、アテンザ。ロードスターとはキャラクターが違うし、屋根を開けたときのあの気持ちよさはないけれど、走らせる楽しさは負けてないです。マツダらしい一体感、それと頑張らなくてもよく走る太いトルクはやみつきになります。
「音BACSサウンドクリニック」に行ってきた
さて、前回お伝えしたとおり、最近のカーオーディオ事情を探るためにスーパーオートバックス横浜みなとみらいで実施された「音BACSサウンドクリニック」に行ってきました。これがかなり楽しかったので、今回はその模様をお届けします。
自分はクルマと同じくらい音楽が好きでして、自宅でもオーディオシステムを組んでいるんですが、せっかくお金を掛けてシステムを組んだものの、仕事が終わって帰宅すると録画しておいたドラマやアニメを見てしまって、結局音楽を聴く時間ってあんまり取れてないんですよね。
一方、クルマの運転中はというとほとんど音楽を聴いていて、音楽を楽しむ時間は車内が圧倒的に多いんです。特に趣味の運転と音楽を同時に楽しめるというのはとっても贅沢な時間なので、やっぱりアテンザでもオーディオはいじりたいなと思ってます。
そんなわけで行ってきたこの音BACSサウンドクリニックは、オートバックスでも初めての取り組みなのだとか。カーオーディオのセッティングというとプロショップの仕事という印象がありますが、実はオートバックスの中にもオーディオを得意としたお店がいくつかあるんです。スーパーオートバックス横浜みなとみらい店もその1つ。昔からカーオーディオに力を入れている店舗で、今回のオーディオイベントの第1回がここで開催されたのも納得というワケです。
まだ、次回以降のスケジュールは決まっていないそうですが、結論からいってかなり満足度の高いイベントでした。今後も各地で実施する予定とのことなので、興味のある人にはとってもオススメです!!
オーディオ好きの間で話題のDIATONE SOUND NAVIを聴く
会場には試聴可能なデモカーが何台もありましたが、今回一番のお目当ては三菱電機のDIATONE SOUND NAVI(ダイヤトーンサウンドナビ)「NR-MZ80PREMI」の音を聴くことです。アテンザにつけているサイバーナビも多機能な方ですが、最近NR-MZ80PREMIがオーディオ好きの間で評価が高く、気になっていたんです。
十数年前、ロードスターでオーディオのカスタムを始めた当時は今ほどカーナビが主役ではなく、カーオーディオの種類も豊富で、5万円台で3Wayを組めるクロスオーバーを搭載したCDヘッドユニットなんてのも各社から出ていたんです。しかし最近のAVメインユニットはカーナビが主役。音楽ソースの幅は広がりましたが、どちらかというと簡易さを求める方向に進化していて、音のセッティングという面では簡素化されているのが現状です。最初からそれしか知らなければ別に問題ないんでしょうが、せっかく新しくシステムを組もうというのに、今までよりレベルダウンしなきゃいけないというのは、ちょっとモチベーションが下がるんですよね。
その点、NR-MZ80PREMIは最大で4Wayのクロスオーバーなどオーディオマニアも満足できるだけの機能を持っているんです。今どきのメモリーナビとしてはちょっとお値段が高めですけど、CDヘッドユニットだけでも高機能モデルは10万円くらいしますからね。音がよければコストパフォーマンスはわるくないと思います。
純正スピーカーなのに音がスゴイ!!
で、数あるデモカーの中から最初に試聴したのは、カーナビ以外はスピーカーもアンプも純正のまま、デッドニングもしていないというMINIクロスオーバー。
MINIシリーズはウーファーがシート下に入っていたりと、音の条件としてはとても厳しいクルマ……のハズなんですが、これが音がとてもよくてビックリ!! ちゃんとセッティングの取れたカーオーディオだと、自分の正面、フロントウインドーあたりでボーカルが歌っているように聞こえるものですが、そういったセッティングがちゃんと決まっているんです。スピーカーが純正のままだと厳しいかなと思っていたんですが、少なくとも停車状態での試聴では、他人に自慢できるだけの良音を実現していました。
オーディオはよく分からない、という人のために簡単に説明しますと、人間の耳というのはとてもよくできていて、どこかから音が聞こえたとき、左右の耳で音が聞こえた瞬間のわずかな時間の差から、音源の方向を認識しているそうです。たとえば右側で鳴った音はほんの少しだけ右耳の方に早く届くハズですよね。そのほんのわずかな時間差で右の方向から音が聞こえたと認識しているんです。
ホームオーディオの場合、左右のスピーカーは聞く人の正面に等距離で置くのが通常でしょうから、当然左右のスピーカーの音は左右の耳に同時に届きます。しかしクルマの場合、運転席(右席)からは右側のスピーカーのほうが近く、左側のスピーカーは遠くなってしまいます。となると右耳の音が早く聞こえるので、音源が右側にあるように錯覚してしまう。車内でなぜかボーカルが右側に張り付いているように聞こえたら、この辺が原因の1つだと考えられます。
その問題を解消するのが「タイムアライメント」という機能。最近ではホーム用のAVアンプにも搭載されているのでご存じの方も多いでしょうが、左右のスピーカーのうち、近い方のスピーカーの音を少しだけ遅れて出すことで、左右の耳に音が到達するタイミングを合わせ、擬似的に等距離にあるように錯覚させるのです。
タイムアライメント自体は、サイバーナビはもちろん他社のナビでも搭載されていることが多いのですが、カーオーディオの場合、Aピラーの付け根あたりにあるツイーターと、ドアの下の方(MINIの場合はシートの下)にあるウーファーとの距離も結構違ってしまいます。これを解消するためには、マルチアンプ、AVアンプでいうところの「バイアンプ接続」にする必要があります。フロントスピーカーの配線をウーファーに直結し、リアスピーカー用の配線をツイーターに繋いで、4つのスピーカーすべてでタイムアライメントを調整するわけです。
ただしこの場合、全部配線をしなおす必要があったり、フロントだけで4ch分のアンプが必要だったりとちょっと大変なんですね。しかし、ここがNR-MZ80PREMIならではのスゴいところ。なんと音の信号を音域によって分離して、たとえばツイーターが鳴らす高音域だけ音を遅らせて再合成するという機能を持っているんです。これならば配線をしなおすこともなく、アンプも2ch分だけで左右のツイーターとウーファーを独立してタイムアライメント調整できるようになります。
タイムアライメントが合わせられると、イメージとしては写真のピントが合う感じですね。音の輪郭がはっきりして、たとえばボーカルが真ん中で歌っていて、ギターがその左、ベースが右にいるように音像がしっかりしてきます。
さらにツイーターとウーファーを独立して調整できると、足下で鳴っていた音がグッと上がってきて、目の前で歌っているように聞こえます。ウーファーが足下(MINIの場合はシート下)にあることを忘れてしまうようになればセッティングはバッチリですね。
そして、さらに音質を高めているのがイコライザーの効果だと思います。NR-MZ80PREMIには31バンドというとても細かく設定できるグラフィックイコライザーがついているのですが、さらに左右独立して調整できるのがキモ。
自身のカーオーディオで試してみると分かりますが、音を右スピーカーからだけ出した場合と、左側からだけ出した場合で聞き比べてみると、同じ音のはずなのに違って聞こえると思います。ピンクノイズというさまざまな音域の音が混ざった音だと分かりやすいんですけどね。
MINIクロスオーバーの場合、右側のウーファーは運転席からのぞき込めばなんとか見える位置にありますが、左のウーファーは完全に助手席の下に隠れた状態。ということは左chの低域は間接音しか聞こえていないわけで、右chと左chの音が違って聞こえるのは当然ですよね。
そんな時に左右独立のイコライザーがあれば、完全とはいかないまでも、左右の音を近いところまで持って行けるというわけです。もちろんタイムアライメントもイコライザーもセッティングができてこそですが、純正スピーカーでここまで持ってこられるというのはちょっと驚きでした。
アンプ性能は10万円の外部アンプレベル!?
次に聴いたのはヘッドユニットNR-MZ80PREMIに、スピーカーも三菱電機のDS-G20、サブウーファーにSW-G50を組み合わせたもの。DS-G20は左右ペアで6万円(税抜)と、比較的手の出しやすい価格のモデルです。
こちらは配線を引き直してあって、カーナビの内蔵アンプ4chを使ってフロントのツイーターとウーファーをマルチアンプ接続。さらに1chの外部アンプでサブウーファーを駆動しています。
実は今回一番興味があったのがこのデモカーなんですね。ポイントはスピーカーを高性能なモノに換えつつ内蔵アンプで鳴らしているところ。以前乗っていたロードスターでは外部アンプをトランクに置いて使っていましたが、外部アンプを使うとなると、スペースも取るし配線も取り回しが大変だし、結果トラブルも出やすくなるしと結構苦労が多いんです。それに新車だとやっぱり加工は最低限にしたいですしね。だから内蔵アンプだけのシンプルなシステムでどこまで行けるのか気になっていたところ。
結果としては全然問題なさそうです! 音量を上げても、情報量の多い音楽を聴いてもアンプが負けている感じはなし。6万円クラスのスピーカーをここまで鳴らせるなら、自分のお財布で組めるシステムとしては十分そうです。ちなみにスタッフの話では10万円程度の外部アンプに匹敵する性能とのこと。インナーバッフルで組めるサイズのスピーカーなら内蔵アンプで十分そうです。
それと、スピーカーのDS-G20とサブウーファーのSW-G50はツイーターからサブウーファーまで同じ素材のコーンが使われているそうですが、これが効いているようで、音の繋がりのよさを感じました。どうしてもサブウーファーだけ別のメーカーだったり、コーンだったりすると音色が違っちゃうんですが、このデモカーは音のまとまり感がすばらしくよかったです。
最後に試聴したのはスピーカーも最上級、25万7143円のDS-SA3を外部アンプで鳴らし、サブウーファーはSW-G50を2本という仕様。これはホント、もう、スゴイです。ゴイス~です。聴くと耳に毒ってヤツですね。歌い手の顔がそこに見えるような、目を閉じて聴いていると、手を伸ばせば歌い手に手が届くんじゃないかと錯覚するような、そんな領域です。
さすがにここまで行くにはシステムだけでなく、デッドニングなんかも大変だと思いますし、自分がここまでたどり着くのはだいぶ先でしょうが、将来的にシステムアップしていってもこのカーナビは無駄にならないことを確認できました。
クリニックでマイカーの音診断
カーオーディオイベントでは、こういったデモカーの音を聞けるチャンスというのはそれなりにあるんですが、今回のイベントでは無料で自分のクルマを診断してもらえるサウンドクリニックがあるんです。なのでアテンザも診断してもらいました。
我がアテンザの現状は、カーナビにカロッツェリアのサイバーナビを入れている以外はまったくのノーマルです。サイバーナビはマイクを使った自動の音質調整機能がついていますが、測定用マイクを挿す穴が画面の下面についていて、アテンザはカーナビの下側がパネルで覆われているため、マイクが挿せないという悲しい事態。一度パネルを外さないといけないので、セッティングもなにもしていない状態でした。
担当してくれたのはオートバックスセブンの飯田俊彦氏。オートバックスグループ全体のオーディオ部門をまとめているスゴい人です。で、本来は音を聞いてアドバイスしてくれるだけなんですが、取材ということで特別にセッティングまでしてくれることに!!
サイバーナビもNR-MZ80PREMIほどではないものの、それに次ぐぐらいのセッティングの幅を持っているカーナビなので、タイムアライメントとイコライザーを中心にセッティングを進めていきます。
普通はスピーカーから耳までの距離を測って数値を入れていくようになっているのですが、さすがはプロ。運転席に座っていきなりセッティングに入っていきます。運転席に座って音を聞きながらタイムアライメントの数値を少しずつ変えていく。さらにイコライザーも同様に調整し、リアのスピーカー音量を小さくしていって完成。その間わずか20分ほど。
自分でセッティングしたことがある人は分かると思いますが、タイムアライメントの調整ってむずかしいんです。やっているうちに何がよいのか迷子になるし……。さすがはプロだなぁと感心します。
運転席に座って聴いてみると、さっきまでとはまるで別物。アテンザのノーマルスピーカーってここまで鳴るんだ!! と驚くほどです。ツイーターとウーファーを別々にセッティングできているわけではないので、音像としてはまだぼんやりした部分もありますが、楽器ごとの立ち位置がはっきり出るようになりました。それとロードスターと比べても前後方向の奥行き感があることに驚き。これはリアスピーカーも少しだけ鳴らしているのがポイントなのだとか。これまでフロント2chに絞った方がよいと思っていたので、勉強になりました。
アクセラでもオーディオセッティングができるパーツ発見
ここからはアテンザとは直接関係ありませんが、アクセラユーザーが気になるであろう面白いものを発見したのでオマケで紹介します。
アテンザの場合は市販モデルのカーナビを組めるのですが、アクセラはカーナビもオーディオもメーカーオプションしか選べません。輸入車などでもこうしたクルマがあると思うのですが、そうなると今回お話ししたタイムアライメントなんていう調整はまずできないんですよね。しかし、会場でそんなアクセラでもセッティング変更を可能にするパーツを発見したので紹介いたします。
audison(オーディソン)という、カーオーディオの世界では超有名なブランドが発売している製品で、名前は「Prima(プリマ)」シリーズのAP8.9bit。これ自体でタイムアライメントやイコライザー、クロスオーバーを調整できる、いわゆるプロセッサーと呼ばれるパーツなんですが、その入力としてスピーカー線を直接接続することができるんです。つまりRCAなどの外部出力を持たない純正オーディオにも接続できるというワケ。
さらに8ch分のアンプを内蔵しているので、これを買うだけでセッティングした音をスピーカーから鳴らせるようになります。ブリッヂ接続にも対応しているので、たとえばフロントのツイーターとミッドをそれぞれ35Wで駆動し、サブウーファーをブリッヂで130Wで鳴らすといったことも可能とのこと。セッティングはPCを使って行うんだとか。もちろん外部アンプ接続もできるので、さらなるシステムアップも可能です。
ボリューム調整などは専用のコントローラーを使う必要が出てくるので、操作系は純正のままとはいきませんが、純正オーディオが外せないクルマに乗られている方は一考の価値がありそうです。
実はCar Watchでオーディオ関連記事を執筆いただいている三宅健氏も会場にきていたのですが、愛車のボルボ用にこの製品を買って行かれてました。まずはいろいろテストをしているみたいですが、今のところ良好なデータが出ているそうです。
さて、本当はフロアマットとかの話をしようと思っていたのですが、オーディオイベントが思いのほか熱かったので、ついつい長文になってしまいました。ということでフロアマットのお話は次回お届け致します。