長期レビュー
福島晃の「新型アクセラ(BM)」に乗って写真を撮りに行こう!
第2回:軽井沢(長野県)-新緑の中をADVAN dBで走る-
(2014/6/19 11:55)
私がマツダと出会った日
いまから40年ほど前、まだ小学生だった私は父親が乗るモスグリーンの車に強い憧れを抱いていた。いつの日か、自分もこんなカッコいい車に乗りたい。そう願っていたことをいまでも鮮明に覚えている。それが私とマツダとの出会いだった。いや、正確に言えばメーカー名はまだマツダではなく、東洋工業だった。その車の名前がマツダ サバンナ RX-3(RX-3は輸出名)だと知るのは、それよりも少し後だったと記憶している。「ロータリゼーション」というキャッチフレーズが使われ、マツダ独自のロータリーエンジンを一般車にも展開していた時期だ。初代カペラがRX-2、サバンナがRX-3、2代目ルーチェがRX-4、2代目コスモがRX-5、そしてサバンナ RX-7へと、その血統が受け継がれていく。
こうして考えてみると、いま私が乗っているアクセラの輸出名がMAZDA 3であることに、何か因縁めいたものを感じるから不思議だ。残念ながらロータリーエンジンを継承することはできなかったが、「3」というナンバーを継承することは叶ったわけだ。だが、ロータリーエンジンに乗るという夢をあきらめたわけではない。それは今後の楽しみにとっておいてもいいだろう。
低燃費タイヤかコンフォートタイヤかで少し迷う
少し前置きが長くなってしまったが本題に入ろう。前回、スタッドレスタイヤにするためにヨコハマタイヤの「iceGUARD5(アイスガードファイブ)」にしたことはお伝えしたとおりだが、今回は夏タイヤに交換するために、ふたたびタイヤガーデン昭島店を訪ねることにした。アクセラの標準装備タイヤはトーヨータイヤ(東洋ゴム工業)の「PROXES T1 Sport(プロクセス・ティーワン・スポーツ)」だ(車種によってはNANOENERGY R38Aになる)。このタイヤは決してスペックが低いものではない。事実、PROXESはトーヨータイヤのフラグシップブランドである。新車装備用は市販品とは異なることは私も承知しているが、その点を差し引いてもパフォーマンスは十分だと感じていた。そのため、タイヤガーデン昭島店でタイヤを保管しておいてもらい、ふたたびPROXESに交換するつもりでいた。だが、iceGUARD5の実力を知ったこともあってか、夏タイヤもヨコハマタイヤにしたいという気持ちが沸々と湧いてきた。
候補は2つ。「BluEarth-A(ブルーアース エース)」と「ADVAN dB(アドバン デシベル)」だ。前者は低燃費タイヤでありながら、ウェットグリップ性能を向上させたヨコハマタイヤの人気商品。スペックとしては転がり抵抗性能はA、ウェットグリップ性能はaの「A/a」。2012年モデル「A/b」からスペックアップした2013年モデルだ。
後者は言わずと知れたコンフォートタイヤの最高峰と呼ばれるモデル。ヨコハマタイヤのトップブランドであるADVANと、静粛性を誇るdBの融合。かつてはDNA dBという商品名だったが、まさにデシベルパターンのDNAを受け継いだのが、2009年モデルのADVAN dBである。ちなみに性能は「A/b」となる。
実はあまり悩むことなく、ADVAN dBをセレクトする結果になった。というのも、BluEarth-Aのサイズリストは全45種類というラインアップにも関わらず、215/45 R18が存在しなかったからだ。マツダウイングをデザインした純正アルミホイールはアクセラの魂動デザインの一部だと考えているため、ホイールを変えてまでタイヤ交換するという気持ちにはならなかった。批判があることを承知の上で、あえて正直に書くが、私はエコタイヤを少し甘く見ていた。エコタイヤは転がり抵抗性能をアップすることを目的にしたもので、摩擦力(グリップ)や運動性能は犠牲になっていると考えていた。今回、改めてカタログやインターネットで情報を調べてみると、数年前に比べて飛躍的にスペックが向上していることが分かった。いい勉強になった。
一方のADVAN dBは以前から気になっていたタイヤだ。だが、高い静粛性と、快適な乗り心地というキーワードは、いわゆる高級ラグジュアリーカーのものであるという印象が強く、私がこれまで乗ってきたホットハッチには不釣り合いなモデル。だからこそグリップを中心にADVAN SportやPOTENZA RE-11を選んできたわけだが、45歳という年齢を考えたら、少しは大人しく走ってみるのもわるくないと思えてきた。アクセラはラグジュアリーではないが、オフホワイトレザーのシートなので、ちょっと背伸びしてみるのもいいのではないだろうか(笑)。
ADVAN dBの静粛性と乗り心地に感動
結果はADVAN dBにして正解だった。いや、単純に正解というレベルではない。コンフォートタイヤがこんなに静粛性が高いとは正直思っていなかった。このタイヤは本当に癖になる。タイヤガーデン昭島店の店長である新井さんとADVAN dBについて、少し話をしながら、今回も作業の様子を写真撮影させてもらうことをお願いした。作業効率を考えればインパクトレンチなどを使ったほうがいいのだろうが、タイヤガーデン昭島店では丁寧に手作業で進められる。右側でサブマネージャーの竜門さんがトルクレンチでしっかりと固定をしていく。同時に左側ではスタッフの後藤さんがホイールを丁寧に磨いている。店長の新井さんが「いつもより丁寧に磨いているじゃないか!」と声をかけると、「いつもと同じですよ!」と後藤さん。最後は店長の新井さんとスタッフの阿部さんがダブルチェックということで、固定されていること確認して作業が終了した。しっかりと丁寧な仕事をしながらも、こうしたアットホームな雰囲気はとても好印象だ。
ADVAN dBの実力は公道を少し走っただけですぐに分かった。スタッドレスタイヤからの履き替えということもあるのだろうが、この静音性は感動すら覚えるほどだ。スペシャルサイトのユーザーインプレッションで「予想を上回る静かさにビックリしました」という声が寄せられていたが、私もその意見に同感だ。舗装状態がよい道路であれば、ほとんどロードノイズは感じない。
このタイヤのデザインパターンを見てもらえれば分かると思うが、5本のストレートリブが刻まれている。このパターンが転がり抵抗性能(直進性)をアップすると同時に、排水性(ウェット性能)を生み出している。とくに中央のストレートリブにはまったく溝がなく、dBデザインのアクセントになっている。そのほかにも左右非対称のサイプがとても細かく刻まれている。ちなみにイン側のセカンドリブとアウト側のセカンドリブが重要な役割を担っていて、アウト側に音を出さないように工夫されているらしい。ショルダーがやや丸みを帯びた形状である点もこのタイヤの特長だろう。
私はBluetoothのハンズフリーフォンをかなり利用する方で、これまでは運転中なのでロードノイズがあるかもしれないという前置きを相手に伝えていたが、ADVAN dBにしてからはそれを止めた。だが、人間とは実に贅沢な生き物である。それほどまでに感動した私ですら、しばらく乗っていると、この静粛性がデフォルトとなってしまっていた。そこで、第2回目の目的地として新緑が美しい軽井沢に行くことを決め、編集部の島村と武間を同乗者として乗せて、その感動を味わってもらおうと考えた。高速に乗ってギヤがシフトアップされるとエンジン音も小さくなって、室内はとても静かになった。これに2人が感嘆の声をあげた。助手席の武間だけでなく、後部座席に座っていた島村との会話もとてもスムーズ。いつもは少し大きな声を出していたが、この静粛性であれば、それを意識することなく会話ができると島村が感想を言った。1人で運転することの楽しさを否定するつもりはないが、やっぱり家族や友人とドライブする楽しさは格別。このタイヤは、そんなドライブの楽しさを教えてくれた。
マツダコネクトはVer.29からVer.31へ
何かと話題のマツダコネクトは4月中旬の1カ月点検でVer.29へとバージョンアップした。バージョンアップと言えば聞こえはいいが、基本的にはすべてバグフィックスである。Ver.29の主な変更点は、自車位置表示アイコンのサイズを小さくしたことと、高速道路の表示色を黄色から青へ、幹線道路を山吹色からピンクに変更したことの2点。
ディーラーからは、もうすぐVer.30が届くかもしれないという報告があった。5月のゴールデンウィークを過ぎたぐらいに電話連絡が来たのだが、仕事が忙しくて実際にディーラーに行くことができたのは、5月17日になってしまった。そこでディーラーから予想外の言葉を聞く。Ver.31が届いたので、そちらにアップデートするという。Ver.30にするつもりで訪れたのに、なんとVer.31になるという。いったい、どうしたらこんなことになるのだろうかと思いながらも、断る理由もないので了承した。Ver.31は5月22日にすべてのアクセラユーザーに郵送によるお知らせが届くらしく、私の自宅にもその案内が後日届いた。サービスキャンペーン[無償修理]のお知らせと書かれた用紙には改善対象となる事象として、1.画面がブラックアウトすること、2.テレビやDVDの画質が粗いこと、3.ナビ表示の道路名や施設名が誤表示されること、この3点が改善されると書かれている。実際、ディーラーでどんなことをやっているのか見せてもらったが、USBメモリを使って、マニュアルを片手に操作を行っていた。
Ver.31の結果がどうなったかと言えば、ほとんど何も変わっていないというのが私の感想だ。元々、私の使用環境では1.の症状は出ていなかった。テレビの画質はどうなったかというと、ちょっとはよくなったというレベル。これは私の勝手な評価なので、間違っている可能性もあるが、おそらく525線、つまりはSD画質なのではないかと思う。もともとマツダコネクトの液晶はWVGA(800×480ドット)しかない。iPhone 5が1136×640ドットなので、その解像度があまり高くないことが分かるだろう。そんなわけだから、別にテレビの画質がSD画質でもいいじゃないかと思ってしまう。一部で基板を取り替えて画質改善が行われるという噂も出ていたようだが、それは事実ではなかった。最後の誤表示についても私は未経験なのでコメントすることができない。
なお、頻繁にバージョンアップを重ねてきたマツダコネクトだが、Ver.31で1つの区切りをするようだ。というのも、モノクロの取扱書とカラーの冊子が配布されることからも伺える。Ver.32がいつになるのは知らないが、それが明日だと言われても私は驚かない。もはや、いくつまでバージョンを重ねていくのか、それを楽しむような気分になっている。
ちなみに前回、まったく意味がないと断言した「トンネルビュー表示」は未だ健在である。きっと、一部に熱烈な利用者がいるのだろう。「国境越え(国境をまたいでナビを行うかどうかを決める項目)」はVer.29で項目から消えたが、その項目がしっかりと日本語にローカライズされたことに疑問を感じる。本来であれば笑って済ませるようなことではないのだが、何故だか分からないが、それを笑ってしまう自分がいる。アクセラに乗っているユーザーは、私を含めてかなり懐が深いのだろう。マツダに言うべきなのか、開発元のNNGに言うべきなのか分からないが、もしこの記事を読んでいたのならば、それに甘えることなく、バージョンアップに挑んでもらいたい。バグフィックスではなく、本当の意味でのバージョンアップ(使いやすくなること)を期待したい。
●今回の走行距離と平均燃費
走行ルート:青梅(圏央道・関越道・上信越道)-碓井軽井沢-軽井沢-白糸の滝-嬬恋-碓井軽井沢-青梅
走行距離:392km
平均燃費:13.2km/L
私の現在の仕事はデジタルカメラマガジンの編集長だ。Car Watch編集部に「最新刊の紹介をしてよいか」と聞くと、「まったく問題ない」とのこと。この連載は2カ月に一度を目安に続けていくが、その時点でのトピックとなる本を紹介させていただく。
●デジタルカメラマガジン7月号(好評発売中)
http://www.impressjapan.jp/books/1114110206
焦点距離とF値の選び方が分かる総力大特集「レンズとF値の相性」は48ページの大ボリューム。特集2は「ファインアート紙の魅力」、特集3は「絶対に失敗しない まきばの撮り方」です。さらに注目の新製品としてキヤノンの広角ズームレンズEF16-35mm F4L IS USM、ISO 409600という超高感度撮影が楽しめるソニー α7S、奇抜なデザインが話題のシグマ dp2 Quattroなど盛りだくさんの内容です。ぜひ、店頭でチェックしてみてください。