長期レビュー

正田拓也の中古「サンバー」生活

第5回 2DINスペースにカーオーディオを付けて思う、軽トラック購入ガイド

今月もエンジンや走行系は元気なサンバー

 みなさまからの反応のなかで、軽トラが欲しくなったというお声をいただくのが何よりうれしく、軽トラの楽しさを少しでも共有してもらえた思うとさらにうれしい。そこで、少し反省点のある買い方をしてしまった身からの購入ガイドの続きをしたいと思う。

安く買うのは博打、新車も検討を

 軽トラのメーカーとどんな違いがあるのかざっくりとしたものは連載1回目を見ていただくとして、最初に言っておきたいのは、業務車だけにちゃんと走るかという機能性と中古車の価格は比例するということ。使えるクルマは高い。ちょっと傷や汚れがあるくらいで実用性に問題ないクルマが一気に安くなる乗用車のようにはいかないのだ。

 だから、今回買ったように、価格ありきの軽トラ選びは決して人にはおすすめしない。お前が言うなという批判はもっともだが……。

 とはいえ、少しでも初期費用は安くしたいと思うのは人間の性なので、少し冷静になるためにも簡単な計算を示したい。例えば、今回買ったような個体を安く買って直そうとしても、ボディの錆をまともな状態に板金するくらいなら、もう少しまともで高い個体を選んだほうが結果的に割安になる。

 そして、機関系も心配なく乗りたい、他人が付けたタバコ臭や汚れが気になる、リセールバリューも期待したい、そして最新の衝突安全性も考慮すれば、最もコストパフォーマンスのよい選択が「新車」ということになる。残念ながらリアエンジンのサンバーはもう手に入らないが、ほかでもよければ普通のクルマよりは絶対的に安い。趣味で乗り、走行距離も伸びない見込みならなおさらだ。

 新車で買って10年乗るつもりなら、10年乗ったあとに走行距離がそれほど多くなく、錆も少なければ驚くほど高く売れる可能性がある。例えば乗り出し約90万円で買って10年間5万km乗って、20万円で売れたら1年あたり費用は7万円。走行多めの個体を乗り出し20万円で購入、少しきれいにしたり機関を整備したりで10万円かけて3年乗って5万円で売れたら1年あたり費用は8万3333円。かなり乱暴な計算だが、新車の有利さが分かっていただけるだろうか。ちなみに、2015年度以降の車両(軽商用車)だと軽自動車税が毎年1000円高い年額5000円になるのと、13年経過車の軽自動車税は6000円だ。1万円、2万円までシビアに計算するならこれもシミュレートに加えておきたい。

 また、厳密な新車ではないが、時期によっては登録済未使用車として乗り出し70万円以下という個体が売られていることもある。新車保証もあるので、車種や仕様が気に入ればとても買い得だと思う。

 とはいえ、新車を買うほど初期投資はできない。ローンも組みたくないというのであれば中古車となる。そのうえで最初の出費をとにかく抑えるとなると、やはり年式を妥協するしかない。

 いくら程度がよかったとしても20年オーバーの個体だとさすがに値段も安くなる。サンバーならボディがひとまわり小さい旧規格でライトが角形になった1993年~1997年あたりなら、まだ現存車両も多く見た目もあまり古くない。4気筒660ccエンジンも2012年の最終型と基本は同じなので、いい個体がさえあればわるくない選択だ。駐車スペースの問題などで少しでもクルマが小さいほうがよい人なら積極的に選ぶ理由もある。しかも総額10万円程度で乗り出すことも可能かもしれない。調子のいい個体はオーナーが手放さないと思うので出物自体は少ないが、探してみる価値はある。

 そして、軽トラではないが、バンを選ぶ方法もある。筆者がサンバー探しを行なうなかで見た個人的な印象だが、サンバーでもバンの出物のほうが相場が安い。バンのメリットとしては4人乗りもあることと、トラックではないため家族の理解も得られやすいこと。「何かお仕事始めたの?」などとの近所の人にヒソヒソ話しをされることもないだろう。これも筆者の印象だが、バンはMT車が少ないような気がするので、MT希望ならクルマ探しが少し難しいかもしれない。

 こう考えていくと、意外にも趣味で気軽に乗り出すことが難しい軽トラだが、もし買うつもりになったのなら、新車購入も含めて広い視野で選ぶことをおすすめしたい。そして、このあとで触れるが、2DINスペースを使って何かしたいという場合も選び方を考える必要がある。

カーオーディオ後付けはスピーカーが鬼門

 新車で買うのなら、後から付けると面倒なオプションは最初から付けておくという方法がある。オプションの金額は高くても、値引きが大きくなったりして、実質負担額はそれほど増えずにオプションが付けられる場合もある。

 何もよりも装備は最初に付けられるなら付けておきたいと実感するのが今回のサンバーで、特にオーディオの取り付けは大変な手間がかかる。また、欲しくなるときもある集中ドアロックやパワーウィンドウも同様だ。今、新車で買ったら付いてることも多いだろう。

サンバーの純正ラジオ。スピーカーも正面側に内蔵

 そこで、サンバーにオーディオを取り付けてみたい。2003年ごろのサンバーのグレード「TB」の装備では、ラジオは本体にスピーカーまで内蔵されたものが装着されている。つまり、ドアに一切スピーカーはなく配線は1本も通っていない。パワーウィンドウも集中ドアロックもないので、ドアに配線が全く必要ないからだ。

 この状態からオーディオを付けるとなるとハードルが高い。いわゆるDINスペースに市販の1DINヘッドユニットを買ってきてポン付けできるのとわけが違ってくる。純正オプションでオーディオを付けるための配線とスピーカー一式の部品セットがあり、スバル販売店に頼めば部品として供給してもらえるようだが、今回は自分で配線を引きまわしてみるとことにした。

 スピーカーの設置場所はいくつかあるが、無難なのは純正と同じドア。純正部品だけでスピーカーまで揃える方法もあるが、あまり音にこだわるつもりもないので秋葉原の秋月電子で大量に売っている2個500円の8cmスピーカーを使うことにした。インピーダンスがカーオーディオ用よりも高く、少し能率がわるいスピーカーなのでクルマで使うには適さない面もあるが、安さと入手しやすさで選んだ。

 設置のため、スピーカーグリルだけはスバル販売店で部品として頼んだ。部品番号は「94245TC000NR」で1枚610円+消費税。ドアトリムを外すと分かるが、裏に穴と線が引いてあり、簡単にトリムをカットして装着できるようになっている。純正はプラスチック製スペーサーと12cmスピーカーが付くようになっているが、8cmスピーカーをドアに固定するために、ホームセンターで端材として買った12mmベニヤ板でバッフル板を作り、スクリューグロメットとビス止めで車両に固定した。ちなみにグロメットは純正品番「661179000」相当のものをネットショップで購入したところピッタリだった。

スピーカーグリルはスバル販売店で頼める
ドアトリムを外すと穴や線がある。ちなみに、トリムを外す際にレギュレーターハンドルのピンをなくしてしまわないように注意。筆者はやってしまい、同時にスバルに頼むことに……
引き廻しノコギリで、トリムの表皮と一緒にカット
スクリューグロメットを用意してスピーカーを取り付ける。スバル販売店で頼んでもよい
トリムに穴をあけてドアに当ててみた。
手抜きで申し訳ないが、バッフル板は現物合わせで適当に作ってみた。図面ナシ。本来なら木が腐らないように塗装もしておくべきだが、それは後日へ……

 もし、さらに大きいスピーカーしたいなら、純正のグリルを使わずにグリル付きの16cmタイプを少し浮かすようなスペーサーを作ってやれば付きそうだ。あまり出っ張るようだと運転中の足が当たるので、安全に注意しながら検討してみてほしい。

 そして最大の難関がスピーカーの配線の引きまわし。これがかなり面倒で、フロントの外装板やバンパーを外してアクセスする必要がある。純正の配線キットならパッキンも含めてジャストサイズになっているので簡単らしいが、通す面倒さは変わらない。自分の場合は配線をチューブに通してパッキンに小さめの穴を開けて通した。足下に配線が通るため、特に右側は運転中に足が絡まないように固定はしっかりとしておく。

純正グリルをドアトリムに固定
装着後のドア
配線をまわすには、ライトまわりのパネルを外す必要がある。バンパーを外すことがベストだが、ずらすだけでもなんとか外れる
配線を純正どおりの経路で引きまわすとドア側から見えにくい
うちのサンバーはバンパーの上側の固定穴が壊れていたが、特にバンパーの固定が弱い印象はない。中古パーツとして出まわってるバンパーは、ほぼこの穴が壊れている

 そして、将来、集中ドアロックやパワーウィンドウを付けるつもりならば、予備の配線も一緒に引きまわすことをお勧めする。筆者の場合は集中ドアロックを入れたいと思っているので、運転席側にプラス4本、助手席側にプラス2本の予備配線も引いておいた。

本体は換装するだけでOK

 スピーカーさえ付けて配線を引いてしまえば、オーディオの本体の取り付けは簡単だ。内装を派手にバラす必要すらない。ラジオの周りのプラスチックのパネルをこじ開けるようにして外して金属のブラケットごと外し、好きなヘッドユニットに換装すればよい。

まずパネルを外す。下側の小物入れもパネルと一体
ラジオのコネクターを外す。電源とイルミしか来ていないので躊躇せずにカット

 電源などの配線は市販のスバル用のオーディオハーネスのコネクターを買ってもよいが、スピーカーの配線がない低グレードなサンバーのコネクターには常時電源、ACC電源、イルミ程度しか来ていないので、コネクターを買う意味もあまりない。ラジオのコネクター手前で配線を切断し、ギボシ端子で接続するようにした。

スピーカーの配線もあってごちゃごちゃしているが、カットした電源線は少し延長して複数のギボシ端子をつないだ
足下にはアンテナ端子のコネクターが見えるが、ここまで延長するアンテナケーブルを用意しないと市販オーディオは付かない

 市販の1DINオーディオなら特に取り付けキットは不要で、電源類のコネクターも切断してギボシで接続すればよいが、1つだけ用意する必要があるのがアンテナだ。ラジオを外したときに本体から少し長いアンテナ線が伸びているが、市販のオーディオの場合は延長ケーブルが必要になる。エーモンの50cmタイプのアンテナ延長コード(品番2070)が長さ的にぴったりだった。

 ヘッドユニットは好みでよいが、今回使ったのは、手持ちにあったカロッツェリア(パイオニア)の「MVH-590」。現行の「MVH-5200」にほぼ相当する機種で、Bluetooth対応でスマートフォンと無線接続すればハンズフリー通話からオーディオの再生までなんでもできるお手軽便利オーディオだ。CDドライブを内蔵していないので、軽量で故障の可能性も低いというおまけ付きだ。

ここにスマートフォンホルダーを付けてみようと思ったので、オーディオを下段、別途用意した1DIN用の小物入れを上段にセットした
「MVH-590」はハンズフリー機能があるので、マイクをサンバイザーにセットした

 そして、上のDINスペースにスマートフォンホルダーを付けることも考えて、小物入れを上にして下をオーディオにしたかったので、小物入れ一体のパネルの小物入れ部分をカットして2DINスペースにして装着した。

純正パネルの下段にあった小物入れをカットして、外枠だけを元に戻した

個人ユースなら新車でオプ盛りが便利

 少々無理矢理なまとめだが、実用一点張りの軽トラックの場合、オーディオの装着など快適装備の後付が非常に面倒なので、個人ユースで便利に使いたいというのであれば、少々無理矢理だが新車も検討したほうがよいということだ。

 それでも中古を購入し、オーディオや快適装備をなんとかしたいなら、取り付けに面倒な点が発生するということを覚悟しておいてほしい。

 なお、最初の軽トラ選びの際に触れていなかったことだが、今回購入した10~15年落ちくらいの年代の軽トラで、カーナビなどの画面を活用できそうな位置(高さ)に2DINスペースを持っているのはサンバーのみ。2DINスペースの活用を見込んでる場合は注意してほしい。

 さて、次回は、少々快適になったサンバーでドライブをしてみようと思う。

正田拓也