長期レビュー
伊達淳一のスバル「XV」と過ごすクロスオーバーな日常
第8回:ウェットグリップ「a」にこだわってタイヤを履き替えてみた
2016年6月24日 00:00
皆様、お久しぶりです。もうとっくに、この連載終わったと思っていた人も多いと思いますが、ボク自身もそう思っていました(笑)。が、第7回(2013年7月25日掲載)を見ると、どこにも“最終回”とは書かれていませんでした。というわけで、本人もビックリの約3年ぶりのレビューです。
前回のレビューから約3年間に、スバル「XV」も国内では3回の年次改良(年改)が行なわれている。主な改良ポイントをまとめてみると、
C型XV(2013年モデル)
ニュースリリース(SUBARU XVを改良)
・前後サスペンションのダンパー減衰力を最適化(乗り心地をマイルド方向にチューニング)
・遮音材の強化やエンジンの作動音低減により、室内の静粛性を向上
・助手席にもパワーシートを採用
・電動パワーステアリングのアシスト特性の変更
D型XV(2014年モデル)
ニュースリリース(SUBARU XVを改良~アイサイト(ver.3)を搭載~)
・EyeSight(ver.3)採用(カラー化によりカメラの認識性能が大幅に向上)
・SI-DRIVEを採用し、変速特性を最適化。Sモードスイッチがステアリングに移動
・メーター中央に3.5インチカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイを採用
・ステアリングギヤ比の変更(従来型15.5:1→新型14.0:1)
・ドアガラスの板厚アップやリニアトロニックの振動・騒音の抑制、ボディ各部の吸音材追加で静粛性を向上
・特別仕様車「POP STAR」でサンルーフ採用
・アンテナの可倒方向をリア側に変更(ショートアンテナに換装しなくてもタワーパーキングの上限に触れる可能性が低くなった)
・シフトブーツ採用
E型(2015年モデル)
ニュースリリース(SUBARU XV / SUBARU XV HYBRID 大幅改良モデルを公開)
・フロントマスクのデザイン変更(フォグランプまわりにイノシシの牙)
・新デザインアルミホイール(歯車が少し斜めになり回転感を演出)
・アドバンスドセイフティパッケージ(後側方警戒支援機能やハイビームアシスト等)
・サンルーフをオプション展開
といった感じ。
E型のアドバンスドセイフティパッケージの後側方警戒支援機能は魅力的ではあるが、フロントマスクとホイールデザインが微妙に変わってしまっている点と、ハイビームアシストがあるとドライブレコーダーを装着する場所が極めて限定されてしまうのが、個人的にはちょっと微妙。一番魅力的に思えるXVは、B型で感じていた不満点、Sモードスイッチの位置やアンテナの可倒方向が変わり、助手席パワーシートやサンルーフ、EyeSight(ver.3)などが採用されているD型の特別仕様車「POP STAR」で、財力さえあれば思いきって買い換えたかったところだが、あいにくそんな財力は持ち合わせておらず、車検を通すのも青息吐息。そんなわけで、今でもB型のXVに乗り続けている。
ちなみに、2016年6月2日時点での走行距離は約5万4000km。EyeSightのおかげでロングドライブも苦にならず、スタッドレスタイヤ導入で冬の信州にも足を伸ばせるようになったため、以前乗っていたウイングロードよりも遠乗りが増え、月あたりの走行距離は5~6割程増えている感じだ。
スタッドレスタイヤといえば、すでに4シーズンが経過したので、さすがに次のシーズンは新しいスタッドレスタイヤにする必要があるな、と覚悟していたのだが、実は、夏タイヤもスリップサインが見えるまでにはまだ余裕はあるものの、運転席側(右側)の外側が片減りし、溝が部分的に消えかけていて、“不適切ではあるが違法ではない”状態(笑)。むしろ、スタッドレスタイヤのほうが肩の部分まで溝がしっかり残っていてキレイだったりする。これで、次のシーズンに履き替えるなんて、なんだかもったいない感じもするが、経年劣化でタイヤが硬化し、雪や氷をグリップする性能が低下してしまうので致し方ないところ。世の中、なかなかうまくいかないものである。
ボクはタイヤ保管サービスを利用しているので、12カ月定期点検のある11月にスタッドレスに換装、6カ月点検を前倒しして3月下旬から4月上旬に夏タイヤに戻してもらっている。1年のうち、約7カ月間が夏タイヤ、残りの約5カ月間がスタッドレスタイヤを履いている計算で、これまで夏タイヤを履いていたのは、実質23~24カ月だ。ちょっとタイヤを交換には早すぎる気もするが、どうせ新しいタイヤに履き替えるなら、梅雨や台風シーズン前のほうが安全性を高められるので安心だ。
そんなわけで、夏タイヤも交換を迫られることになったのだが、次はどのタイヤを履くかだ。XVの標準タイヤは、横浜ゴムの「BluEarth(ブルーアース) E70」だ。いわゆるエコタイヤ(低燃費タイヤ)だが、OEMタイヤなので“転がり抵抗性能”や“ウェットグリップ性能”は不明だが、個人的には、この標準タイヤの乗り心地がゴツゴツと路面の凸凹を拾いやすいのが気になっていて、むしろ、スタッドレスの「ice GUARD5(アイスガードファイブ) iG50」のほうが乗り心地がソフトで好みだったりする。したがって、燃費性能にもそれなりに重きを置きつつも、乗り心地や安全性をより重視した観点から夏タイヤを探すことにした。
最終的に候補に残ったのが、横浜ゴムの「BluEarth-A(ブルーアース・エース) AE50」。低燃費タイヤのラベル表示は、スバルXVのタイヤサイズ225/55 R17の製品では、転がり抵抗係数がA、ウェットグリップ性能がaと、ウェットグリップ性能を重視した設計。BluEarth-Aの“摩耗時も静かさが持続する「ノイズコントロールピッチ」を採用”という部分に惹かれたのと、スタッドレスタイヤで選んだiG50の乗り心地がよかったこともあって、BluEarth-A AE50に履き替えることにした。
タイヤ交換を頼んだのは、iG50でもお世話になった「タイヤガーデン府中店」。お店に到着してスバルXVをお店のスタッフに委ねると、すぐにジャッキアップされ、それまで装着されていた標準タイヤが次々に取り外されていく。タイヤ専門店だけに作業に手慣れている。
ホイールから古いタイヤを外して新しいタイヤに装着し直す前に、古いタイヤと並べて撮影させてもらったが、これまで履いていたBluEarth E70のほうが同じサイズのはずなのに一回り小さく見える。つまり、それだけ摩耗で径が小さくなっている、ということだ。また、これまで履いていたBluEarth E70は、アウト側の溝がかなり浅くなって、部分的にパターンが消えかけている。冬タイヤと夏タイヤを交換する際に、タイヤローテーションを行なっているのだが、運転席側と助手席側で明らかに摩耗度合いが異なっている。
ローテーションの方法はすっかりディーラーに任せきりだったので詳細は不明だが、冬タイヤのiG50は非対称のトレッドパターンなので、夏タイヤも前後左右クロスではなく、前後の入れ替えだけだったのだろうか。スバルXVに乗り始めてからというもの、タイヤをキュルキュル鳴かせるような運転はしていないし、スタッドレスタイヤのアウト側はしっかり溝が残っているので、ちょっと謎である。参考までに、XVを購入して半月後にiG50に履き替えた際の標準タイヤの写真と見比べてみると、さすが購入直後のタイヤは溝も深く、トレッドパターンもクッキリとしている。
一方、新しく履くBluEarth-A AE50は、iG50と同様、非対称のトレッドパターンを採用しているのが特徴で、アウト側の溝は少し斜めになっていて、溝のパターンもイン側のほうが細かくなっている。また、4本の縦溝がかなり太く、ライトニンググルーブと呼ばれる稲妻型の細い縦溝と太い縦溝により、雨の日の運転に安心感をもたらすという。トレッドパターンの役割については、メーカーの製品ページを参照してほしいが、明らかに標準タイヤとは異なる顔つきだ。
小一時間ほどでタイヤ交換作業は終了し、BluEarth-Aを履いたXVをショップ前で撮影。XVを購入してからすでに3年半が経過し、野ざらしの屋外駐車なので塗装の艶もかなり失せ、ドアやトランクまわりには機材の出し入れに伴う小傷もいっぱい。それどころか左フェンダー部を少しぶつけて凹んでいたりして……(汗)。でも、新しいタイヤを履くと、足下がグッと引き締まり、クルマ自体も精悍に見えてくるから不思議だ。
ただ、クルマの専門家ではないボクに、こうしたタイヤの違いが感じられるのかどうか、正直、不安だったが、タイヤ交換を終えてショップを出た瞬間、明らかに乗り心地と静粛性の違いが分かった。まあ、3年半(実質24カ月 推定約3万km走行)の標準タイヤとハイグレードの新品タイヤなので、明らかな差があって当然と言えば当然なのだが、初めて標準タイヤからiG50に履き替えたときよりも乗り心地がマイルドで、ロードノイズも少なめだ。まだひと皮剥けていない状況で判断するのは早計かもしれないが、B型XVの突き上げ感の強さをかなり低減してくれる感じだ。
ところで、こうしたタイヤのレビューはどうしても主観に頼らざるを得ず、客観性に欠ける部分がある。そこで、クルマの振動を測定して、それを数値なりビジュアルなりで比較することができれば、乗り心地の差を客観的に見せられるのでは?と、タイヤ交換を決めたときから、どうやって測定すればいいのかあれこれ考えていた。最近のスマートフォンにはさまざまなセンサーが搭載されているので、アプリを使って加速度や角速度の計測はできる。ただ、テストコースではなく、公道を走って測定するとなると、ほかのクルマや信号があるので、走行条件をまったく同じにするのは極めて難しい。そのため、振動波形を並べてみても、厳密には同じ条件ではないので、タイヤの特性の差を見極めるのは困難だ。
そこで思いついたのが、スマートフォンのアプリで直線加速度を測定しつつ、その波形画面をビデオキャプチャーし、ドライブレコーダーで撮影した映像と同期させ、重ね合わせ表示することだ。これなら、厳密に同じ速度で走れなくても、ドライブレコーダーの映像からどんな走行状況かが分かるので、波形の傾向の違いをある程度は読み解くことができる。とはいえ、この方法にたどり着いたのがタイヤ交換の前日だったため、高速道路の走行データを取ることができなかったが、比較的よく似た走行シーンを抜き出し、新旧タイヤの直線加速度の違いを動画としてまとめてみた。
画面左側が約3万km走行後のBluEarth E70、右側が新しく履き替えた新品のBluEarth-A AE50の映像だ。本来はどちらも新品で評価すべき部分もあるだろうが、一般ユーザーがタイヤを履き替えるのはタイヤが減ってから。タイヤ履き替え時に得られたメリットを加速度グラフで見てもらえればと思う。
オーバーラップ表示されているグラフは「直線加速度」で、水色が縦揺れ、赤が横揺れ、緑が前後の揺れ(基本的に加減速に伴うG)だ。ドライブレコーダーは、パナソニックの「CA-XDR51D」を使用している。
段差を越えるような大きな衝撃に対しては、BluEarth E70もBluEarth-A AE50も波形の大きさにほとんど差はないが、その後の走行シーン(30~40km/h)を見てもらえば分かるように、BluEarth-Aのほうが細かな縦揺れや横揺れが少なく、揺れの収束も速い。これまで履いていたBluEarth E70は、路面の凸凹を拾って細かな縦揺れだけでなく横揺れも合わさり、段差を越えたときも収束が遅かったので、それが不快な印象につながっていたようだ。
今回は、ロードノイズの違いまでは測定できなかったが、前述したように、BluEarth-Aのほうがロードノイズが静か(高音成分が少ない感じ)で、特に路面の凸凹が少ない状態だと驚くほど車内は静かだ。これから先、走行距離が増え、タイヤが摩耗してきたときに、この振動や静粛性がどう変化するのかは不明だが、少なくとも、XVを購入して感じた突き上げ感の強さは感じなくなった。その意味では、今回、BluEarth-A AE50を選んでよかったと思う。
ただ、まだタイヤを履き替えて1週間も経っていないので、タイヤを替えたことで燃費がどう変わるのか? や、ウェットグリップ性能については、もう少し走ってからレビューをお届けしたい。
伊達淳一
1962年生まれ。作例写真家。学研「CAPA」、Impress Watch「デジカメWatch」等でデジタルカメラ評価記事を執筆。レビューする機材の自腹購入が多いヒトバシラーだ。これまで乗ってきたクルマはトヨタコルサ、三菱ランサー、日産ウイングロードと、すべて1.5リッターの2WD。都内を走ることが多く、どちらかといえば小回りが効き、できるだけたくさん荷物を積めるというのがクルマ選びのポイント。今回、自身初となる2.0リッタークラスAWD(4WD)の「スバルXV」を新しい相棒として選んだことで、果たして行動範囲はどう広がるのか? クロスオーバーな日常がスタートした。