長期レビュー

伊達淳一のスバル「XV」と過ごすクロスオーバーな日常

第3回「いざ!雪道へ!!」

初めての雪国での走行へ

 これまで雪道走行の経験は3回。いずれもFF車にゴムチェーンを巻いて、雪の積もった都内を数時間走った程度。これまで乗っていたウイングロードに至っては、チェーンを買ったものの、チェーンの着脱が面倒なのと、雪が降り始めてうっすらと積もったときのノーチェーンでのクルマの挙動に不安を感じ、結局13年間一度も使わずじまいだった。

 しかし、スバル「XV」という強力な相棒とヨコハマタイヤの「アイスガード ファイブ(iG50)」という最新のスタッドレスタイヤを得た今、もはや雪道を恐れる理由などない(笑)。でも、さすがに1人では不安だったので、雪道に慣れている友人に助っ人として同乗してもらうことにした。

 行き先は……とにかく雪の積もっているところだ。とりえあえず、関越自動車道を北上する。幸い渋滞もなく、流れは非常にスムーズだ。当初は長野方面に向かおうと思っていたのだが、天気予報では長野よりも新潟方面のほうが雪の確率が高いという。なので、藤岡JCT(ジャンクション)では上信越自動車道へは向かわず、そのまま新潟方面に直進する。

 しかし、赤城IC(インターチェンジ)を過ぎても空は抜けるような青空だ。こんなに晴れ渡っているのに、果たして雪が降っているのかちょっと心配になるが、太平洋側が快晴だと日本海側は天気がわるいはず。電光案内板にも「土樽から先、チェーン規制」と表示されている。雪が降っているのは間違いなさそうだ。昭和IC付近からようやく空が白っぽくなってきて、月夜野ICが近づいてきたあたりから、ようやくチラホラと小雪が舞ってきた。でも、まわりを見ても雪はまったく積もっていない。渕尻トンネルを抜け、水上ICを過ぎると、だんだん周りの風景が雪化粧に変わってきた。道路の両脇にも雪が溶けずにうっすらと積もり始めている。

 ここでトイレ休憩のため、谷川岳PAに立ち寄り、関越トンネル入口の形状を模した「とんねる館」の前で、雪景色のスバルXVを記念撮影する。無彩色の雪景色の中に、オレンジ色のXVがクッキリと浮かび上がる。うんうん、やっぱりオレンジにして正解だ。

谷川岳PAでトイレ休憩。とんねる館の前で記念撮影
いざ全長日本一を誇る関越トンネルへ!
トンネルは続くよ、どこまでも~

 トイレ休憩も終わり、関越トンネルに入る。関越トンネルは、道路トンネルとしては現時点で日本一の長さを誇り、なんと全長は約11Kmと長い。関越トンネルには12個所に天井板が設置されているそうだが、中央自動車道 笹子トンネル天井板崩落事故の直後に打音検査など緊急点検を行ったという。この日もトンネルの一部が片側通行規制になっていて、天井から吊られている標識や電光表示板などをチェックしていた。

 関越トンネルを出ると、そのまま本線を進むことはできず、すべてのクルマが強制的に土樽PAに誘導される。そこでチェーンまたは冬タイヤを装着しているか、係員が目視でチェックしている。初めて見る光景だ。チェーン規制っていったいどうやってチェックしているのか疑問に思っていたのだが、こうやってチェックしていたんだ。なるほど、なるほど。

 土樽PAを出発してすぐにのろのろ運転の集団が前に見えてきた。いくら雪が降っているとはいえ、このスピードは遅すぎると思ったが、よく見ると先頭は除雪車。しかも、2車線を塞いでの除雪作業で、最後尾の車両は「追い越し禁止」のバーを右側に伸ばし、追い越し車線を塞いでいる。まあ、こちらも雪道初心者だし、下手に流れが速いよりも安心だ。

関越トンネル(下り)の出口が見えてきた。全車PAへという電光案内板の表示が出ている。いったいなんだろう?
関越トンネルを出ると強制的に土樽PAへ誘導され、ここでチェーンや冬タイヤの装着状況を確認される。また、関越トンネルはチェーン走行禁止なので、チェーンを使っているクルマは、谷川岳PAでチェーンを外し、土樽PAで再びチェーンを装着し直すことになる。やっぱりスタッドレスタイヤは便利だ
土樽PAを出てすぐに除雪車に遭遇。走行車線だけでなく追い越し車線もバーを出して走行できないようにしている。高速道路や主要道はこうしてキチンと除雪を行ってくれるので、雪が降ったときの都内の道よりも遙かに走りやすい

 そのまま除雪車の後をゆっくりとついて行き、次の湯沢ICで降りて一般道を走る。高速よりは路肩に雪が残っているが、幹道はちゃんと除雪されていてまったく不安はない。東京で数cmの雪が積もったときよりは遙かに走りやすい。

 ただ、脇道に逸れると、いきなり雪がびっしり積もっている。さあ、いよいよ本格的な雪道に突入だ。が、これが雪道? と拍子抜けするほど普通に走れることにビックリ。走り出す瞬間、もっとタイヤが滑るかもと思っていたのだが、20~30km/hはおろか40~50km/hでも実に安定している。まあ、まだ新雪で凍っていないので、滑りにくいといえば滑りにくいのだが、スバルXVとiG50の雪上走行性能の高さに驚かされる。

 広めの脇道で、まわりに走行車両がいないことを確認して、パニックブレーキを踏んでみる。さすがに、ズズッと滑るが、ツーッと滑るのではなく、ガガガッと雪に食いつく感触が感じられるので安心感がある。また、広い場所を探して、円を描くようにコーナーリングを試してみたが、積もったばかりの雪ということもあり、想像以上にしっかりグリップしてくれる。限界を超えて、少し前輪が滑り始めてもすぐに姿勢を立て直せる。これなら、もう少し雪が積もった道でも大丈夫そうだ。

 というわけで、越後湯沢で昼食を食べた後、三国街道に入り、苗場方面に向かう。さすがにもう路面は真っ白だ。左折のため、一時停止して発進しようとすると、軽く車輪がスリップするが、すぐにグリップを取り戻し、姿勢が崩れることもなく、スムーズに加速する。40~50km/hで雪道を走っても、普段とさほど変わらない安定感だ。FF車にゴムチェーンを巻いて走るよりも遙かに楽だ。これがAWD+最新スタッドレスタイヤの実力か、と改めてそのポテンシャルの高さに驚くと同時に、買ってよかったという満足感が沸き上がってくる。

マルチファンクションディスプレイの[走行状態表示]画面。VDC初期作動時にはタイヤが黄色に点灯し、画面下にはVDCの作動履歴が表示される。今回、VDCが作動したのは、意図的に急発進させたり急ハンドルを切ったときを除けば、少し上り坂の交差点で左折のため一時停止し、そこから発進するときだけだった
スキー場の駐車場は平日で来場者が少なかったこともあって、結構雪が深い場所もあり、ホイールやエアロパーツの隙間が雪だらけに。でも、これはこれで雪国に来たッ!って感じで結構楽しかったり
雪の質は、越後湯沢ということもあってやや湿ったもの。iG50は、このような湿雪でもなんら問題なく初めての雪国走行をサポートしてくれた
ドライブレコーダーで撮影した雪道映像
外気温計を見ると-6℃。冷蔵庫の中よりも寒い。どおりでワイパーブレードに付着した雪が凍ってじゃりじゃりいうわけだ
スバルXVに設置したドライブレコーダーは、韓国製のITB-100HD。衝撃を感じたイベント記録だけでなく常時記録もハイビジョン画質で行え、GPSも内蔵しているので、走行場所や走行スピードもパソコンの専用ビューアで確認できる。これはそのキャプチャー画面と動画の一部だ

 そもそもクルマを買うということは、いつでもどこにでも行ける自由を手に入れるということだ。ただ、そうはいっても、雪の存在がその行動範囲に制約を加えていた。しかし、スバルXVとiG50という最強のアイテムを手に入れた今、そうした雪の制約から解放され、真の自由を手に入れたのだ←新車を買った歓びでちょっと自己陶酔しています(笑)。

これが今回の「雪道初体験ツアー(笑))」のドライブルートだ。ログの記録は、キヤノンEOS用のGPSユニット「GP-E2」を使用。走行距離は往復でおよそ540km。結構な距離を走っているが、関越自動車道の大半はEyeSight(ver.2)の全車速追従機能付クルーズコントロールのおかげで、あまり疲れは感じなかった
主に雪道のエリアをGoogle Earthに表示させてみた。比較的アップダウンが少なく、まだ雪が積もったばかりでコンディションがよかったこともあり、雪道初心者のボクでもなんの不安もなくドライブできた。もちろん、スバルXVのAWDとiG50のポテンシャルの高さに救われているのはいうまでもない

 湯沢を出発してから約40分ほどで苗場に到着。コーヒーでも飲んで一休みしようと、苗場スキー場の駐車場に入る。駐車場はほとんど除雪されていないので、まるで鼻で雪を掻き分けるラッセルわんこ状態。ノーズもホイールも雪まみれだ。駐車場にクルマを止めて、雪まみれの愛車を記念撮影した後、ワイパーアームを上げようとしたら、まだ1~2分しか経っていないのに、ガラスにブレードが軽く貼り付いていた。外気温計を見ると-6度を示している。友人によると、寒冷地用ワイパーブレード(ウィンターブレード)というのがあるそうで、通常のワイパーブレードよりも硬化しにくく、雪が付着しにくいという。氷点下が当たり前の場所に行くなら、ウィンターブレードに換装しておいたほうが無難なようだ。

 キーをロックしてレストランに向かおうとしたら、友人が一言「サイド(駐車)ブレーキは引いてないよね? 凍るよ」。ああ、遠い昔にそんな話を聞いた気もするが、すっかり失念していた。危ない、危ない。クルマに戻って、サイドブレーキを解除する。納車時に入っていたウォッシャー液を抜いて、1:1希釈のレインX(これでマイナス-10度まで凍らない)に入れ換えたところまでは寒さを考慮していたのだが、サイドブレーキは盲点だった。

 コーヒーを飲んで一休みしたら、再び三国街道に戻り、月夜野ICを目指す。雪道にもだいぶ慣れてきたが、三国峠のトンネルを抜けると、路肩に少し雪があるものの、路面にはほとんど雪はない。ただ、油断は禁物だ。下り坂なのでエンジンブレーキを効かせ、特にカーブではスピードを抑えて進入する。雪はないとはいえ、外気温計は-3度を示しているので、路面凍結の恐れがあるからだ。とはいえ、危ない目に遭うこともなく、猿ヶ京温泉まで降りてくると、まわりの風景からも雪は完全になくなっていた。とりあえず、ミッションコンプリート。月夜野ICから関越自動車道に戻り、自宅を目指す。

 気になる燃費は、行きは登りが多く10~12km/L前後といまひとつな燃費だが、帰りは下りでうまくアクセル開度を0に保つような走行を心がけ、高速道路も渋滞に巻き込まれなかったこともあって17km/Lと好結果を叩き出せた。今回の全行程の燃費は、燃費計では14Km/Lを示していたが、給油満タン法による燃費は13.2km/Lという結果だった。最新のコンパクトカーやハイブリッドカーならもっと燃費はよいのだろうが、排気量2.0LでAWD(4WD)、スタッドレスタイヤ装着ということを考えると、かなり満足すべき燃費と言えるのではないだろうか?

雪国に行った後はメンテナンスが大切

 関越道から圏央道経由で中央道に入り、八王子ICが近づいてくると、友人がまたもや一言。「すぐに下まわりを洗車しないとダメだよ」。というのも、雪や氷を溶かし、路面の凍結を防ぐため、道路に融雪剤が撒かれているのだが、この融雪剤というのが「塩化カルシウム」。つまり、塩。それがクルマに付着したままにしておくと、当然錆びてしまう。だから、雪道を走った後は、できるだけ速やかに、スプレーの洗車ガンなどで下まわりや足まわりを念入りに洗って、融雪剤を落としておいたほうがよいと言う。

 確かに下まわりが錆びたら大変だ。幸い自宅近くにコイン洗車場があるので、ホイール、タイやボックス、そして、下まわりをスプレーガンで念入りに洗浄する。日が暮れて寒いので、水しぶきが身にしみるが、愛車を錆びさせないためには仕方がない。ジーンズを濡らしながらも、なんとか一通り、足まわり、下まわり、ボディーをスプレーガンで洗い流し、本日のミッションはこれですべてコンプリート。友人のアドバイスがなければ、単にボディーを洗車機にかけるだけで済ますところだった。危ない、危ない。

帰りがけに近くのコイン洗車場に立ち寄り、スプレーガンでホイールや下まわりを洗浄する。水圧が強く、みるみるホイールやタイヤボックスの汚れが落ちていく。ただ、下まわりは車高が少し高めのXVとはいえ、かなり姿勢を低くして水を噴射しても、ちゃんと洗えているかどうか不安。でも、やらないよりはやったほうがいいので、水しぶきと寒さに耐えながら洗浄する

 数日後、注文しておいたウィンターブレードの入荷連絡があり、スバルディーラーに行き、ワイパーブレードの着脱方法を教えてもらう。ウィンターブレードは、ブレードのアーム部分もゴムで覆われているので雪が付着して凍りにくく、ワイパーのゴムも寒さに強いのが特徴だ。ただ、高速走行時には、通常のワイパーブレードよりも拭き取りにくくなることがあるらしく、冬が終わったらノーマルのワイパーブレードに戻した方がよいという。なので、暖かくなったらワイパーブレードも通常仕様に自分で戻せるよう、一応着脱方法を聞いておいたのだ。取扱説明書を読めば手順は書いてあるんだけど、やっぱり最初は手順を見せてもらって注意すべき点を聞いておいたほうが無難。何事も知らないことは素直に聞いてみるのが一番だ。

左がウィンターブレード、右が通常のワイパーブレード。ウィンターブレードは、金属部分がゴムで覆われているので、雪が付着しても凍りにくくすぐ落ち、ブレードも低温で硬くなりにくいらしい
ウィンターブレードに換装。これで寒冷地でも雪が付着しにくく、窓ガラスに貼り付きにくくなるはず……。フロントだけでなく、リアワイパーも忘れず交換
ディーラーで目に止まったチラシ。雪道走行から帰っていろいろ調べ、防錆処理もしなけりゃなぁ、と思っていたところだったので渡りに船。下まわり洗浄だけだとちょっと割高に感じるが、自分では難しい防錆処理もお願いすることを考えればとりあえず仕方がないかなって感じ。今回は期間限定で30%OFFだったので、この価格ならなんとか納得

 精算を済ませ、帰りがけに入り口に貼ってある「ウィンターフェア」のチラシに目が止まった。そこには、スタッドレスタイヤやタイヤ保管システムとともに、下まわりメンテナンスメニューが掲載されていて、年内なら全メニュー30%OFFというのだ。どうせなら、下まわり洗浄だけでなく、下まわり防錆処理もしてもらったほうが安心だ。というわけで、下まわり洗浄と「スリーラスター」アンダーコート、そして排気系防錆塗装「サーモガード」の「下廻り洗浄フルパック」を依頼。できれば納車時に下まわり防錆処理も依頼するのが理想なんだろうけど、これまで融雪剤が撒かれているような雪国に遠征したこともなく、防錆処理のことはまったく頭になかった。う~ん、雪道を走るのもスタッドレスタイヤでお金がかかるけど、雪道を走った後もメンテにお金がかかるなぁ~(笑)。でも、このスバルXVも10年以上は乗るつもりだから、ドレスアップパーツなど見た目にお金をかけるよりも、オイル交換や防錆処理などクルマの寿命を左右する部分のメンテはちゃんとしておかないとね。

下まわり洗浄にはいくつかのタイプがあるらしいが、このディーラーにあるのは、下から水を噴射させ、そこをメカニックがクルマをバックさせて洗浄するという方式。下まわり全体に全方向から水を当てられるので、コイン洗車場のスプレーガンよりも洗い残しが少ない。近くのコイン洗車場にもこんな設備があればいいのに……
下から水を噴射する洗浄が終わったら、スプレーガンを使って手作業で要所要所を洗浄。コイン洗車場のスプレーガンよりも長く、先端の曲がりも大きいので、水が当たりにくい部分まで洗浄できる
下まわり洗浄を終え、水分を飛ばしたら、防錆効果と傷つき防止のスリーラスターアンダーコートと、耐熱性と防錆効果に優れたシルバー塗料、サーモガードを排気系に吹き付け、下まわりのメンテは終了。個人ではなかなかここまでの作業は行えない。これで、融雪剤の撒かれた雪道もとりあえず今シーズンは安心かな
クルマだってお尻を洗ってもらいたい~、なんちゃって。でも、超強力なお尻洗浄機みたいな感じです

伊達淳一

1962年生まれ。作例写真家。学研「CAPA」、Impress Watch「デジカメWatch」等でデジタルカメラ評価記事を執筆。レビューする機材の自腹購入が多いヒトバシラーだ。これまで乗ってきたクルマはトヨタコルサ、三菱ランサー、日産ウイングロードと、すべて1.5リッターの2WD。都内を走ることが多く、どちらかといえば小回りが効き、できるだけたくさん荷物を積めるというのがクルマ選びのポイント。今回、自身初となる2.0リッタークラスAWD(4WD)の「スバルXV」を新しい相棒として選んだことで、果たして行動範囲はどう広がるのか? クロスオーバーな日常がスタートした。