ヨコハマタイヤ、新スタッドレスタイヤ「アイスガード ファイブ」発表会 “YOKOHAMAの最高傑作”として凍結路面性能などを向上 |
ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)は7月30日、、新スタッドレスタイヤ「iceGUARD 5(アイスガード ファイブ)」(製品名:アイスガードiG50)の発表会を開催した。アイスガード ファイブは、7月2日に発表されており、発表会ながら技術説明会を兼ねたものとなっていた。
アイスガード ファイブは、ヨコハマ第5世代のスタッドレスタイヤになり、サイズは135/80 R12 68Q~245/45 R19 98Q の全89サイズをラインアップ。9月3日からオープンプライスで、順次発売される。
横浜ゴム代表取締役社長 野地彦旬氏は、発表会の冒頭、昨年発生した東日本大震災に触れ、震災によって改めてタイヤの大切さを感じたと語った。とくにスタッドレスタイヤに関しては、装着の有無によって移動時間の差が発生し、それが大きな意味を持っていたと言う。
代表取締役社長 野地彦旬氏 | アイスガード ファイブ |
アイスガード ファイブの概要については、執行役員 タイヤグローバル製品企画本部長 兼 タイヤグローバル技術本部長代理 岸温雄氏が解説。アイスガード ファイブは、1985年に発売した第1世代の「GUARDEX(ガーデックス)」から数えて5世代目にあたり、また、第3世代の「iceGUARD(アイスガード)」の5番目の製品でもあるので、それが製品名の由来にもなっている。
タイヤグローバル製品企画本部長 兼 タイヤグローバル技術本部長代理 岸温雄氏 | ヨコハマスタッドレスの世代変遷 | “YOKOHAMAの最高傑作”アイスガード ファイブ |
アイスガード ファイブに付けられたキャッチコピーは、“YOKOHAMAの最高傑作”。降雪地域での利用、非降雪地域での利用、節約志向という市場ニーズに応えるため、優れた氷上性能、さまざまな路面に対応する性能、省燃費性能の3つの性能のよさを強く強調。とくに、さまざまな路面の例として、ブラックアイスバーン、ミラーバーン、ソロバン路面、洗濯板路面、圧雪アイスバーン、砂雪と6つの凍結路面を紹介し、同社のテストコースがある北海道・鷹栖近辺で実走試験を繰り返していると言う。ソロバン路面、洗濯板路面などは聞き慣れない言葉だが、北海道では一般の人も普通に使っている言葉とのことだ。
氷上性能、省燃費性能を追求した結果、前モデルである「アイスガード トリプルプラス」に比べて、氷上制動性能は8%向上。スタッドレスタイヤとして初めて転がり抵抗の小ささに言及したアイスガード トリプルプラスと比べても、転がり抵抗を5%削減したと言う。
開発性能目標 | 達成目標 | 各種凍結路面でテスト |
北海道で使われている用語で分類された凍結迂路面 | アイスガード ファイブの達成性能 |
概要 | 135/80 R12 68Q~245/45 R19 98Q の全89サイズをラインアップ |
■8%の氷上制動性能向上、5%の転がり抵抗削減技術
8%の氷上制動性能向上、5%の転がり抵抗削減を実現した技術については、タイヤグローバル技術本部長 狭間浩久氏が解説。第2世代のスタッドレスタイヤからコンパウンドに採用している、同社独自の吸水ゴムの改良があると言う。
タイヤグローバル技術本部長 狭間浩久氏 | スーパー吸水ゴム |
アイスガード ファイブに採用された吸水ゴムは、新マイクロ吸水バルーンと吸水ホワイトゲルを持つ「スーパー吸水ゴム」。これらにより、従来比21%の吸水性能を達成した。このスーパー吸水ゴムは、低温でも硬くならないゴムのため、路面との密着性能が向上。21%増加した吸水性能によって、凍結路面の水分を取り除き、グリップ力もアップする。また、新マイクロ吸水バルーンの形によってエッジ効果が発生しており、それもグリップ力のアップに貢献している。さらに、このスーパー吸水ゴムは経年劣化も抑えられており、3年後には大きな差となって現れる。
新マイクロ吸水バルーンと吸水ホワイトゲルで水膜を取り除く。吸水効果は約21%向上 | 路面への接地性も向上 | 水の動き |
エッジ効果も発生する | 経年劣化も抑えた | 低下割合は、前モデルの1/3 |
コンパウンドでは、このスーパー吸水ゴムによって性能向上を図ったわけだが、トレッドパターンも最新のIG50パターンを採用。イン側に氷上性能を重視したパターンを、アウト側に雪上性能を重視したパターンを持つ非対称パターンとなっており、路面に適した能力を発揮する。イン側が氷上重視、アウト側が雪上重視となっているのは、路面を走る際の速度差のためで、ゆっくり走る凍結路面ではイン側が使われ、凍結路面より高速になりがちな雪上ではアウト側が使われるためだ。
そのほか、タイヤセンター部のロングタイプブロックには、トリプルピラミッドディンプルサイプを採用。これはブロック内に大型ディンプルを配することでブロックの倒れ込みを抑制し、大きなサイプを持ちながらブロック剛性を向上させるものだ。
また、さまさまな角度で配されたグルーブ(溝)により、雪上やシャーベット、ウェット路面に対応する。このパターンは、79サイズが標準パターン、17インチ以上で235幅以上の10サイズは、センター部のブロックが1列増やされた幅広タイヤ向けパターンとなっている。
非対称パターンを採用 | さまざまな形のブロックで、多様な路面に対応していく | トリプルピラミッド ディンプルサイプ |
水の流れ | 内部には大型のディンプルが配されている | ディンプルがあることにより、ブロックの倒れ込みを防ぎ、剛性がアップする |
グルーブも各種の角度で配置 | 氷上制動性能が8%向上 | トレッドパターンは2種類 |
実際のパターン。標準パターン | 幅広タイヤ向けパターン |
転がり抵抗低減については、たわみ制御プロファイルを投入。タイヤのたわみを制御することで不要な発熱を抑制し転がり抵抗低減につなげている。そもそもスタッドレスタイヤは、凍結路面で路面を溶かさないように発熱が制御されているタイヤであり、発熱コントロールが性能を左右する面を持っている。そのため、低燃費タイヤが一般的になる以前から、転がり抵抗は比較的低いタイヤとなっていた。そこへ、近年激しい技術競争が起きた低燃費タイヤの転がり抵抗制御技術を本格投入したわけだ。
この結果、転がり抵抗はアイスガード トリプルプラスに比べて5%低減。これは、同社のスタンダードエコタイヤ「DNA ECOS(ディーエヌエー エコス)」より優れているものであると言う。
たわみ制御プロファイルを投入 | 発熱比較。アイスガードファイブでは、サイドの発熱が低くなっているのが分かる |
転がり抵抗が5%減 | 夏タイヤとの転がり抵抗比較。スタンダードエコタイヤより優れているが、さすがに最新の製品には届かない |
狭間氏が最後に強調していたのが、同社がこれまで培ったさまざまな凍結路面、とくに温度の異なる路面への対応技術。アイスガード ファイブでは、この路面対応技術を核に、“氷で止まる”性能をアピールしていく。また、テレビCMに関しても矢沢永吉氏の楽曲に乗せて、この“氷で止まる”が強くメッセージとして打ち出されている。
なお販売店施策として、キャンペーンキャラクターに昨年同様ロシアの国民的キャラクター「チェブラーシカ」を起用する。
さまざまな路面に対応する | “氷で止まる”性能をアピール |
キャンペーンキャラクターはチェブラーシカ | 販売店の什器イメージ |
チェブラーシカとヨコハマタイヤ |
(編集部:谷川 潔)
2012年 7月 31日