「カーエレJAPAN」でIT/ITS関連の自動車技術セミナーを開催
日産、オリックス、グーグル、ヤフーがサービスなどを説明

1月28日~30日
東京ビッグサイト
入場料5000円(事前登録で無料)


  東京都有明の東京ビックサイトで開催されているカーエレクトロニクス技術者向けの展示会「第1回国際カーエレクトロニクス技術展(カーエレJAPAN)」にて、専門技術セミナー「Google・ヤフー・日産・オリックスが語る! IT/ITSが創るクルマ社会とは?」が1月28日に開催された。

日産自動車株式会社技術開発本部IT&ITS開発部エキスパートリーダーの福島正夫氏
  セミナーでは、初めに日産自動車の技術開発本部IT&ITS開発部エキスパートリーダーである福島正夫氏が登壇し、「最新IT・ITSがもたらす運転支援システムの最新技術動向」と題して、日産が提供および開発している運転支援システムの紹介を行った。

  はじめに、通常運転から衝突までを6段階に分類し、段階に応じた安全技術を提供することで運転者を危険に近付けない、という同社の概念「セーフティ・シールド」を解説。関連して、2015年までに重傷・死亡事故を半減、2030年までに交通事故ゼロを目指すと言う、日産の目標を示した。

  この上で、現在提供・開発している運転支援システムについて、自動車単体で動作するものでは、隣接車線の車両を検知し車線変更開始時にヨー・モーメントを発生させて接近を防ぐ「サイドコリジョンプリベンション(SCP)」、後退時に後部の障害物を検知しブレーキを自動動作させる「バックアップコリジョンプリベンション(BCP)」など紹介。自動車と人間、社会と連動した運転支援システムでは、神奈川県で実施している交通事故低減と渋滞緩和を目的とした「SKYプロジェクト」、学校付近の道路で速度超過を抑制する「スクールゾーンISA」を紹介。また、カーナビ向け情報配信サービス「カーウイングス」で提供している、スリップする可能性があるエリアで注意喚起する「スリップ情報提供サービス」、燃費走行を促すサービス「エコ運転アドバイス」などを紹介した。

  このほか、福島氏はこれらの運転支援システムの課題について語った。特に運転支援システムが普及した場合は、システムの機能を過信することによる覚醒度の低下、システムの動作状況を理解できず動作に驚く、警告の出すぎなどでシステムを信用しなくなる、といったことが事故を誘発する側面もあるとしているほか、システムを試すための故意の悪用、ドライバーの運転技量の低下、事故形態の予期せぬ変化といった間接的なリスクも発生する可能性があるとしている。福島氏は、人間の特性を解析することも必要だが、とても難しいことだとしている。


サイドコリジョンプリベンション(SCP)バックアップコリジョンプリベンション(BCP)SKYプロジェクト
スクールゾーンISAスリップ情報提供サービスエコ運転アドバイス
緊急時のドライバーの反応を検証する機器ITSの負の面ドライバー責任とシステム責任

オリックス自動車株式会社営業本部カーシェアリング部部長の高山光正氏
  続いて、オリックス自動車のレンタカー営業本部カーシェアリング部部長である高山光正氏が登壇し、「IT/ITS技術が可能にしたカーシェアリングビジネス ~その現状と将来~」と題して、同社が提供しているカーシェアリング事業についての説明を行った。

  高山氏は同社のカーシェアリング事業について、「第4の公共交通システム」というコンセプトの下に、鉄道、バス、タクシーを補完する機関であるとしており、公共交通が発達している都市部で展開可能な仕組みだと説明。現在は、首都圏、名古屋、大阪、京都でサービス提供を行っている。会員数については、2002年4月のサービス開始から2007年4月までに1000人に達した後に、ガソリン価格の高騰などから自動車所有に必要なコストの見直しを図るユーザーが増え、2008年4月には1年間で2500人増の3500人を達成。2009年には4000人を突破すると予想している。

  カーシェアリングの効果については、コスト面では休日のみ自動車を利用する場合で1カ月で5万5000円、年間で65万円の費用節約につながると説明。また、都市部の交通量が減少することによる渋滞緩和や、不必要で非効率な自動車利用の抑制が図れることから地球温暖化対策にもつながるとしている。これらの効果について高山氏は、都市部においては、自動車利用が減少する一方で既存の公共交通機関の利用頻度が増えることから、カーシェアリングは公共交通機関と自動車の交通量のバランスを保つサービスだとしている。

  また、高山氏はITやITSがカーシェアリングの提供をより身近にさせたと説明。予約がインターネット経由で可能となり、無人での貸出や返却がNTTドコモの回線を利用したパケット通信による確認に、個人認証も暗証番号入力からソニーの非接触ICカード技術「FeliCa」を使用した認証に、自動車の点検は巡回からCAN情報を利用した遠隔モニタリングになったことで、以前では難しかったサービスが提供可能になったと言う。

  ただし、駐車場オーナーがカーシェアリングを認知しておらず、トラブルなどを懸念して提供を断るケースが多いという課題もあると言う。今後の展望については、都心のビジネス街やマンションに提供し社有車やマイカーを削減、外部から来るビジネス者や観光客向けに提供して都市部流入車を削減することで、既存の公共交通機関との連携やバランスが保たれた地域交通システムとして認知されたいとしている。


日本のカーシェアリグ事業推移オリックスのカーシェアリグの概要オリックスのカーシェアリグのコンセプト
会員数の推移カーシェアリグのコストでの効果カーシェアリグの導入効果
カーシェアリグのステーション配置と今度の課題カーシェアリグのシステム構成個人認証にFeliCaを採用

グーグル株式会社シニアプロダクトマネージャーの及川卓也氏
  続いて、グーグルのシニアプロダクトマネージャーである及川卓也氏による「偏在化するインターネットにおけるGoogleの役割」と題した説明が行われた。

  及川氏は、Googleで提供している検索サービスをはじめ、地図サービス「Google Maps」、Webメールサービス「Gmail」、Webブラウザー「Google Chrome」、携帯電話プラットフォーム「Android」などを紹介。この上で、Webサービスは普遍的にどこでも使えるのが重要であり、その点で日本は携帯電話が普及しているほか、パケット定額プランの低価格化、無線LAN機器の普及などから非常に恵まれた環境にあるとしている。こうしたことから、Webサービスは利便性、パフォーマンス、アクセス性が重要視されており、どれかが欠けてもどこでも利用できるサービスにはなり得ないのが現状だという。自動車を対象としたWebサービスも同じ課題があり、克服に向けた努力が必要であると説明した。


Googleのモバイル向けサービスAndroidGoogle Chrome

ヤフー株式会社事業推進本部デジタルホーム事業室室長の坂東浩之氏
  最後に、ヤフーの事業推進本部デジタルホーム事業室室長である坂東浩之氏が「Yahoo! Everywhere構想 ~ネットとつながるカーライフの未来~」と題して、同社の自動車向けWebサービスを紹介した。

  Yahoo! Everywhere構想は、パソコンのほか、携帯電話、テレビ、カーナビなどのさまざまな端末を通じて、生活のあらゆる場面でWebサービスを提供し、それぞれのサービスがシームレスに連携できるようにも提供するという同社のコンセプトだ。このコンセプトの成果として、坂東氏は「iPhone 3G」などのモバイル端末、ソニーの「ブラビア」などの液晶テレビ、任天堂の「Wii」などのゲーム機向けにYahoo! JAPANのコンテンツを提供してきたことを説明した。

  また、カーナビ向けサービスでは、2007年3月から開始したカーウイングス向けのコンテンツ配信をはじめ、2008年3月の富士通テンのカーナビとの赤外線通信による目的地情報の連動機能の提供、2008年9月のパイオニアのPND「AVIC-T10」向けポータルサイト「ナビポータル」の提供などを紹介。直近では、2008年10月より提供開始した、ホンダのカーナビ情報サービス「インターナビ」と、Yahoo! JAPANのドライブ情報サイト「Yahoo!ドライブ」との目的地情報の連動機能を説明。同機能は、現在はYahoo!ドライブの目的地情報をインターナビに反映することのみが可能だが、2009年中にはインターナビの走行軌跡をデータをYahoo!ドライブに反映できる機能をリリースする予定であることも明らかにした。

  今後のカーナビ向けサービスの構想としては、Webサービス上でのクチコミ情報を元に、ユーザーの行動履歴や嗜好を加味したスポット情報の提供、携帯電話やテレビなどでソーシャルブックマークに登録したブックマークから、カーナビ向けの目的情報を生成し反映させるサービス、自動車の走行地点やユーザーの嗜好などから適宜関連した情報を提供できるサービスなどがあるとした。


Yahoo! Everywhere構想Everywhere構想によるサービス展開カーナビ向けサービス
ホンダのインターナビとの連携機能インターナビの走行軌跡をYahoo!ドライブに反映する機能クチコミ情報を元にしたスポット情報提供
ブックマークからカーナビの目的情報を反映する機能自動車の走行地点と連動したコンテンツ配信

 

URL
国際カーエレクトロニクス技術展
http://www.car-ele.jp/
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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090128_38523.html

(編集部:大久保有規彦)
2009年1月28日