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日本TI、車載用向け半導体事業に関する記者説明会

ADASなどの安全運転支援システム、HV/EVのパワートレーン、ボディ/ランプ、インフォテインメント・クラスターなどに注力

2016年6月16日 開催

テキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッド オートモーティブ・システムズ ゼネラル・マネージャ ハインツ・ピーター・ベッケンマイヤー氏

 米国の半導体メーカーTexas Instruments(以下TI)の日本子会社となる日本テキサス・インスツルメンツは6月16日、東京都内のホテルで記者説明会を開催し、同社の自動車ビジネスについての説明を行なった。

 この中でTIは、先週発表されたより集積度を上げたHV/EVなどで利用されるモーター向けのセンサー装置「PGA411-Q1」や、同日付けで発表されたモーター制御向けの半導体となる「DRV8305-Q1」「UCC27211A-Q1」などについての説明を行なった。

 TIによれば、PGA411-Q1は従来製品に比べて統合度が上がっており、同社が提供するリファレンスデザインの形で自動車メーカーやティアワンのパーツメーカーなどに提供される。

 TI オートモーティブ・システムズ ゼネラル・マネージャ ハインツ・ピーター・ベッケンマイヤー氏は「TIはアナログからデジタルまで幅広い自動車向けの製品群を持っており、それらをリファレンスデザインの形で自動車メーカーなどに提供できる。これにより自動車メーカーは短期間で製品化を行なうことが可能だ」と述べ、TIが用意しているリファレンスデザインにより、短期間で製品を開発して市場にタイムリーに投入できるようになるとアピールした。

アナログからデジタルまで様々な車載向け半導体を取りそろえるTI

 TIは1930年創業の歴史ある半導体メーカーで、アナログ半導体、組み込み向けプロセッサやマイクロコントローラ、DSPなどが主力製品として知られている。TIは歴史的に組み込み向けとされる分野に非常に強い半導体メーカーで、アナログ半導体に強かったNational Semiconductorを2011年に買収したことで、アナログ半導体の分野では市場シェアNo.1のトップメーカーでもある。

 ベッケンマイヤー氏は「1990年代には自動車1台あたりに搭載されている半導体の額は62ドルに過ぎなかったが、2015年には309ドルに上昇している。また、2014年の段階で8800万台だった自動車の生産台数は、2020年には1億1300万台に上昇すると考えられている」と述べ、自動車で必要とされる半導体の用途が増えていることで搭載されている半導体の量が増え、さらに自動車産業自体のパイも広がっていくため、今後も車載半導体の市場が拡大していくだろうとの見通しを説明した。

今後の車載半導体の見通し

 その上で、今後も車載情報システム、ADAS(Advanced Driver Assistance System)、さらにその先にある自動運転/自律運転などのイノベーションにより車載半導体の重要度が高まっていくだろうとし、「TIはアナログからデジタルまで非常に幅広い各種の半導体の製品群を顧客に提供している。2000を超える承認済みの自動車向け製品、メーカーをサポートする専門のエンジニア、新しいプロセスルールやパッケージの導入などを提供することができる」と述べ、幅広い製品を用意していることがTIの強みであると説明した。

TIの強みは多数の半導体の製品群を持っていること

 また、ベッケンマイヤー氏は「TIではti.comなどを通じて各種のリファレンスデザインを提供していく。そこには基板のスケッチ図、ブロックダイアグラム、開発ツール、ソフトウェアなどが含まれており、現在280以上を提供している。メーカーはそれらを利用することで、これまでよりも迅速に市場に製品を投入することが可能になる」と述べ、ADAS、パッシブ型の安全運転支援システム、HV/EVのパワートレーン、ボディ/ランプ、インフォテインメント・クラスターなどの市場に力を入れて製品の開発をしていくと説明した。

リファレンスデザインを提供することで開発期間を短縮できる
ADAS、パッシブ型の安全運転支援システム、HV/EVのパワートレイン、ボディ/ランプ、インフォテインメント・クラスターなどに力を入れていく
アナログ半導体では市場シェア1位

従来よりもより統合した車載向け半導体を投入

 ベッケンマイヤー氏は、日本TIが6月10日、そして記者説明会の当日の6月16日に発表した新しい半導体製品を紹介し、その特徴が従来製品よりも統合性が高まっていることだと紹介した。TIが発表したのは、PGA411-Q1という製品と、DRV8305-Q1およびUCC27211A-Q1の各製品だ。

 PGA411-Q1はレゾルバ・センサ・インターフェイスの新製品で、レゾルバ・センサのコイルの励磁(れいじ、磁化していない強磁性体を磁化すること)とモーター回転軸の角度や速度の計算を外付け部品なしでできるようにするデジタルコンバータ。

 DRV8305-Q1は多機能の三相ブラシレスDCゲート・ドライバの新製品、UCC27211A-Q1は大電流ハーフブリッジ・ゲート・ドライバの新製品となる。いずれもHV/EVなどに使われるモーターの制御などに使われる半導体となる。

 ベッケンマイヤー氏によれば例えばPGA411-Q1では「従来のソリューションではアナログコンバーターなどがすべて別チップになっていた。しかし、新しい製品ではそうした外付けの部品を無くして、1チップのソリューションにすることで、開発サイクルの複雑なプロセスを短縮できる」と述べ、開発期間の削減などによりメーカーに大きなメリットをもたらすと説明した。

 また、自動車では重要な機能安全の基準となるISO 26262に対応しており、機密保持契約を結んだ顧客に対して詳細な情報を開示できることなどを説明した。また、それらの製品を搭載したリファレンスデザインのボードも提供できると述べた。

自動車だけでなく他の産業用にも利用されている
各種の課題を解決するソリューション
統合性を高めた新製品を投入
開発期間の短縮などを実現できる
機能安全も実現できる
新製品のリファレンスデザインも提供予定