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日本TI、自動車向けインタラクティブ・ディスプレイをデモ

半導体ビジネスの現況説明会

日本テキサス・インスツルメンツ 代表取締役社長兼営業・技術本部長 田口倫彰氏
2013年8月1日開催

 米国の半導体メーカーTexas Instruments(テキサス・インスツルメンツ、以下TI)の日本法人となる日本テキサス・インスツルメンツ(以下、日本TI)は東京都内のホテルで記者会見を開催し、今年4月に同社の代表取締役社長兼営業・技術本部長に就任した田口倫彰氏から、TIの半導体ビジネスの現状が説明された。

 TIの半導体ビジネスは、アナログ製品と呼ばれるセンサーや電源ICといったアナログ量をデジタル信号に変換する半導体や、組み込み向けプロセッサが中心になっており、それらを自動車メーカーや民生機などを開発メーカーなどに販売している。そうした現状が説明されたほか、同社製品を利用した具体的な利用例として、17型の投射型ディスプレイを採用した車載情報システムのリファレンスデザインなどが紹介された。

TIが参考展示したDLP(Digital Light Processing)を利用した車載情報システムのリファレンスデザイン。17型のディスプレイは、裏側からDLPを利用して投射されているため、スクリーンは湾曲しているのが特徴となっている。液晶パネルなどではこうした自由なデザインは難しい
機械式のボタンがスクリーンに埋め込まれていて、スクリーンと連動して操作できる。こうしたボタンの埋め込みは液晶パネルではできないことの1つ

車載向けにはHUDや車載情報システム向けのDLPなどを投入

 TIの創業は1930年。2012年度には128億ドル(日本円で約1兆2800億円)の売り上げを記録しており、世界各地に3万3000人近い従業員を抱えるグローバルなメーカーとなっている。古くから日本に進出しているTIは、日本に製造拠点も所有しており、茨城県の美浦と福島県の会津に半導体製造工場を持っている。

 そのTIの日本法人である日本TIを率いるのが、今年の4月に社長に就任した田口倫彰氏だ。田口氏は1981年4月に日本TIに入社した後、製造関連、販売などの役職を歴任し、社長に就任すると同時に、営業・技術本部長として同社製品の売り込みの陣頭指揮を執っている。

 田口氏によれば「TIはここ数年アナログ製品と組み込み向けプロセッサの販売に注力してきた。2006年には(売上高の)40%前後でしかなかったが、現在は両方を合わせて78%に達している」とのことで、アナログ製品と組み込み向けプロセッサにフォーカスした販売戦略が功を奏している説明した。先日発表された米TIの第2四半期決算では、アナログ、組み込みともに6%および10%の成長を遂げたことなどが説明された。

TIの2013年上期のまとめ、2013年第2四半期の売り上げのうちアナログと組み込みプロセッサで78%を占めている
TIの基本戦略は、製品ラインアップの拡充、グローバルでのサポート、安定した製造能力の3つを組み合わせて、他社と差別化していく
さまざまな製品カテゴリーに向けた製品群があるが、自動車向けにはHUD(Head Up Display)と車載情報システム向けのDLPなどが挙げられた
今後展開していく製品では、車載情報システム、アクティブセーフティーなどをカバーしていく

 田口氏は「弊社の基本戦略としては、製品群を充実させ、それに世界各地にある拠点を活かしたグローバルレベルでの営業とサポート、安定供給を可能にする製造能力という3つの特徴を活かして他社と差別化していきたい」と述べ、日本のメーカーが必要とするカスタム化された製品などにも積極的に応えることで売り込みを図っていきたいと説明した。その例として半導体をパッケージに入れて提供するのだけでなく、ベアダイと呼ばれるパッケージに封入しないで形での供給にも対応するなどを紹介した。

 同社の製品で自動車関連と言えば、現在では車載向けのHUDやスクリーン投影型の車載情報システムを実現するためのDLPモジュールなどのほか、アクティブセーフティー向けのセンサーやブレーキ関連部品などがあると田口氏は説明。なお、会場では、同社のDLPモジュールを利用した、17型の車載情報システムのデモが行われており、背面から投射する形を生かして、スクリーンが曲面になっていることなどがアピールされた。

(笠原一輝)