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ブリヂストン、生産能力2倍の全自動タイヤ成型機「エクサメーション」を初公開
従来製法と比べ真円性(ユニフォミティー)を15%以上向上
2016年12月21日 19:20
- 2016年12月20日 公開
ブリヂストンは12月20日、滋賀県彦根市にある同社彦根工場に導入している全自動タイヤ成型システム「EXAMATION(エクサメーション)」を初公開する報道関係者向け見学会を開催した。
工場見学の様子をお伝えする前にタイヤの構造を説明すると、タイヤは各部位に求められる性能に合わせたプライ、ビード、サイド、スチールベルト、トレッドといった素材を組み合わせ、1本のタイヤに仕上げられている。
今回紹介するエクサメーションが行なうのは「成型工程」。各機能に合わせて仕上げられたシート状のゴムや線状の素材を丸くタイヤの形状に組み上げるのが成型工程で、プライを巻きつけ、ビードをはめて、サイド部、スチールベルト、トレッドを張り付けるなど、各パーツを持ち寄りタイヤのもととなる「生タイヤ」に仕上げる。
その後、トレッドパターンなどを刻み込んだ金型のなかで熱と圧力を加える「加硫工程」を経て製品タイヤに仕上げている。
工場に導入されたエクサメーションを見学
今回の見学会では、エクサメーションと合わせて既存設備での製造工程も見学することができた。
既存設備での成型行程を見ると、1つのドラムを中心にしてそれぞれの素材を順番に巻きつけたり貼り付けるといった作業を行なっていき、最終的に1つの生タイヤを仕上げていた。巻きつけや貼り付けの作業時には、素材がオーバーラップしたり隙間が発生しないよう、素材の状況に合わせてオペレーターが均一になるよう1つ1つ手作業で修正を加えていたのが印象に残った。
エクサメーションでは作業工程は全自動化されていて、オペレーターによる手作業は存在しない。作業風景を見ると、プライ、インナーライナー、サイドなどそれぞれ専用のドラムで巻きつけ作業を行ない、リング状になった素材を最終的に組み合わせて1本の生タイヤに仕上げている。
従来比で2倍の生産能力を実現させたのは、これまで直列的に進行していた巻きつけや貼り付け工程を並列化させたことによるという。また、各素材を専用ドラムで巻きつけ作業を行ない、リング状に仕上げてから最終的に生タイヤとして組み合わせることで、前工程で巻きつけた素材の状態の影響を受けなくなってタイヤの精度も向上。真円性となる「ユニフォミティー」は115%を実現させたとしてる。
従来製法との比較で、真円性(ユニフォミティー)115%、生産性200%、自律化300%の向上を実現
同見学会で、ブリヂストン 執行役員 タイヤ生産システム開発担当の三枝幸夫氏は「エクサメーションにはさまざまなセンサーが取り付けられており、前工程から集まってくる部材の状況がセンサーによって計測されています。材料となるのはゴムですから、寒ければ硬い、暑ければ柔らかい、伸びたり縮んだりする材料を精度よく加工するために、従来は当社技能員の高いスキルがあったが、これらのノウハウを自動化したのがエクサメーション。材料の状態に合わせて設備を調整する制御を組み込んだ」と紹介。
続けて「なぜ我々が成型行程で新しい技術開発に力を入れるのかと言うと、タイヤの製造工程ですべての情報や材料が集まってくるのが成型行程で、ものづくりの中心的存在となるもの。前工程の品質改善や後工程までを含んだ工場全体の改善活動のキーデバイスとなる」との考えを述べた。
また、三枝氏は「エクサメーションでは品質関係で400点以上の情報が取れる。今後我々は工場のなかだけでなく、原材料メーカーにまでデータをフィードバックしてもらい品質改善に取り組んでもらうなど、サプライヤー全体に展開していく活動に広げていきたい」と話し、さらに「これらの情報を標準化して、メンテナンス関係では設備の情報をメンテナンス会社に共有してもらうメンテナンスサービスを実証しようと準備を進めている」と明かした。
今後の展開については「現在3台目が稼働したばかりで生産量は少ないが、今後2020年までに彦根工場全体の3割~4割をエクサメーションに置き換えていく。2016年と2017年には計画の7割は導入を終えて、その後については生産を続けながら2020年に向けて順次置き換えていく」との見通しを話した。