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車掌はロボット「Pepper」、日本初となる自動走行バスの公道実証実験に乗ってみた

先進モビリティとSBドライブによる沖縄自動運転コンソーシアムが実施

2017年3月30日 実施

沖縄県南城市あざまサンサンビーチで自動走行バスの試乗会が開催された

 3月20日より、沖縄県南城市で内閣府が推進するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「自動走行システム」による、日本初の自動走行バスの公道実証実験が行なわれているのは、関連記事「内閣府、沖縄で日本初となる自動走行バスの公道実証実験開始」で既報のとおり。3月30日に、報道陣向けに試乗イベントが行なわれたので、ここに紹介していく。

 この自動走行バスの開発・走行を実施しているのは、先進モビリティとSBドライブにより構成される「沖縄自動運転コンソーシアム」。SIP「自動走行システム」から受託をして実施している。

 報道向け試乗会に先立ち、内閣府の森下信氏が挨拶。「自動走行システムをさまざまな地域、とくに交通の不便な地域の改善に役立てられるよう取り組んでいる。沖縄は交通事情が厳しいと聞いているので、公共バスに活用できれば」と述べた。

 また、先進モビリティ 代表取締役社長の青木啓二氏は、「今年2月から取り組み、実証実験ができるまでになった。これを広く発信してもらえたら嬉しい」と挨拶した。

自動走行バスのボディには、内閣府、SIP、先進モビリティ、SBドライブのロゴなどが描かれる
内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム 自動走行システム担当 森下信氏
先進モビリティ株式会社 代表取締役社長 青木啓二氏(中央)

 実験ルートは、南城市あざまサンサンビーチすぐ近くの片道約1.0km。海沿いの緩やかな曲線を描く信号のない車道で、折り返し点の手前、往路と復路の途中各1カ所に仮想バス停が設けられていた。

実験走行ルートは、あざまサンサンビーチから北方面の約1kmの交通量の少ない片側1車線の公道
ルートには実験中を知らせる看板が設置されている

 初めて走行した3月20日から10回にわたり地元住民などを対象に試乗会を実施。60名が乗車し、98%が満足したと回答している。2日間にわたりモニター調査を実施してアンケートを取ったところ、乗車前に多くの人が“不安”と答えていたが、乗車後は“安心”の回答が多くなり、評価が変わった。

モニター調査における乗車前の回答。車線維持、障害物回避、正着制御それぞれにおいて不安(赤帯)が多かった
乗車後にはすべての項目で安心(青帯)が上まわった

 実験車両の開発は先進モビリティが担当しており、市販の小型バスにセンサー類、GPSを搭載し車線維持や障害物回避、バス停での正着制御を行なっている。

 今回の実験車両では、ステアリングとアクセルを自動制御しており、ブレーキ制御はドライバーが行なっている。技術的にはブレーキ制御の自動化も可能で、将来的には搭載するとのことだ。

バスの上部にはGPSアンテナを設置
説明員が手で示しているのがカメラユニット。単眼カメラを用いている
車体前面に設置された各種LiDAR。一番上の半円形はヴェロダイン製の遠距離用LiDAR。中段に3つ設けられているのは近距離用LiDARで、前方、左右をそれぞれモニターする。下段はミリ波レーダーユニットになる

 遠隔運行監視システムはSBドライブが設計・開発。走行状況のデータ収集・モニタリング、運行管理に関するシステム検証などを実施している。また、実験車両にはソフトバンクのロボット「Pepper」が乗車し、案内アナウンスなど車掌的な役割を担っていた。

ソフトバンクのロボット「Pepper」も案内役として乗車
車内に設置された運行システム
リモートモニターの画面。運行状況や車内カメラの映像がモニタリングできる

 実際にバスに乗車してみたが、手動運転と変わらない乗り心地だった。走行速度は30km/hほど。路上駐車などの障害物も問題なく回避した。その際には20~25km/hに減速。折り返し地点でのUターン走行も自動で問題なく行なっていた。

 停止位置では縁石との距離が10cmほど。最終的には4cm±2cmを目指すとしている。車いすでの乗車を想定して設けた目標数値だ。

バス停に滑らかに停車
縁石との距離は10cmほど。最終的に4cm前後を目指す

 今回の実験では、事前に手動運転で軌跡情報を登録し、それに沿っての自動運転だが、将来的には地図を使っての軌道制御をしたいとしている。車内カメラで乗客の立ち上がりなどのモニタリングを実現しており、データをさらに蓄積すれば異物発見や子ども・お年寄りなどの検知にも活かせるとのこと。事業者側はモニタリングデータから車内異常や、乗車率等を把握でき対処できるようになる。

運行管理システムのデモ。カメラとAIを使い、車内の人の立ち上がりを検知。データはソフトバンクの通信網を使いバス事業者など管理部門に送ることができる
車外のモニタリングのデモ。写真左上部(カーテンの上)に取り付けられたライダーが感知した人の動きを写真右側のモニターに映し出している

 今後の課題としては、さらなる障害物回避の複雑性への対応を図るとしている。安全性がもっとも重要だからだ。また、運賃支払の方法、またコストの面でも仕組み作りが必要だ。一方で、自動運転ならではの活用方法も見いだせると期待を寄せる。

 今回の実証実験は、公道でのバス停への正着制御、車線変更を行なうステップ1の段階。ステップ2では公道上の通常の交通環境にて同上の運行の実証実験をおこない、2018年度には、さらに高度な自動運転バスによる公道上の通常の交通環境での実証実験を行なう予定としている。