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UL Japan、愛知県みよし市の自動車業界向け新試験所「オートモーティブ テクノロジー センター」公開
6つの電波暗室、2つのシールドルームなどで車載機器の各種試験を可能に
2017年6月2日 00:00
- 2017年6月1日 開催
UL Japanは6月1日、愛知県みよし市に開所する新たな自動車業界向け試験所「オートモーティブ テクノロジー センター」(ATC)の内部を公開した。ATCは6月6日に正式オープンし、サービスの提供を開始する。
UL Japanは米国で製品などの性能・安全性の試験、分析、認証などを行なう第三者安全科学機関であるULの日本法人。日本国内では東京、千葉、神奈川、三重、京都に、電機・医療・化学・材料といった分野に向けた試験設備を保有しているが、自動車向けの本格的な試験設備として開設するのはこのATCが初めてとなる。
電波・電磁性能試験のほか、環境試験、スマートフォンとの相性試験も
ATCは、主にEMC(Electro-Magnetic Compatibility、電磁両立性)の試験が行なえる設備で、6つの電波暗室や2つのシールドルームで、車載機器における電波・電磁性能の検証が可能。製品や部品が国内外の自動車メーカー各社が独自に取り決めている多数の規格、もしくは国際標準に沿った性能を有しているかどうかなどを正確に検証するための設備、機器を備えている。
また、電波・電磁性能以外にも、高圧電流試験、振動試験、温度(-65℃~180℃)、湿度10~95%に対応する恒温恒湿試験、IPX1~6の防水試験、IP1X~6Xの防じん試験が可能。さらに、2015年以降に国内で発売されたスマートフォンを全て取りそろえ、車載オーディオなどとの相性試験が行なえる設備も用意している。
複雑化する製品開発の課題をATCがサポート
ATCの内部公開とともにメディア向けの説明会も行なわれ、UL Japan 代表取締役社長の山上英彦氏が、ATCのような試験設備が求められている背景を説明した。自動車部品をはじめとする製造業の企業においては、近年、海外市場に進出するにあたって製品開発の際に考慮しなければならない課題が増加し、複雑化している。そのため、それらの課題を解決するリソース、専門家による支援などを必要としているという。
一方、ULとしても、そういった顧客のニーズの多様化や複雑化、世界における法規制のめまぐるしい変化という課題が突きつけられる形になっている。先進安全装備や自動運転という新しい技術を取り入れ始めている自動車業界はその最たるもので、2017年は「エネルギー&マテリアル」と並び、「オートモーティブ」を同社の重点注力分野として挙げている。具体的には、自動車業界に対する「(ULの)既存サービス、技術革新への支援、次世代自動車技術への貢献、セキュリティの評価・検証」といった部分の強化、拡張を目指すとしている。
その活動の1つが今回のATCの開設となる。自動車・輸送関連のメーカー、サプライヤーの開発・製造拠点が集積する愛知県に、2階建てで延床面積1900m2という比較的規模の大きい自動車業界向け試験所として設置。EMC試験に加え、電気・無線・環境・相互接続性の各試験が可能な設備を網羅する。メーカー自身による検証だけでなく、専門スタッフが代行する依頼試験に対応するのも特徴だ。
自動車部品メーカーは、ATCが備える多様な設備を活用することで、自社で開発中の製品・部品が特定の自動車メーカーが規定している仕様を満たしているかどうか、あるいは法規制や国際標準、各種認証規格に則った機能、動作を実現できているかどうかを検証できる。ATCで検証して性能に問題がないことを確認できたあとは、ティア1メーカーに製品を納入したり、公的機関で認証を受けるという流れになる。
対象になる自動車部品は主に電子機器類となるが、カーナビやカーオーディオ、キーレスエントリーシステム、先進安全装備や自動運転などで必要となるレーダー類、V2X(車車間通信)を含むテレマティクス用通信機器、EV向けのバッテリーやインバーター、そのほか材料、繊維など、検証・評価が可能な機器・分野は多岐にわたる。
UL Japanのコンシューマーテクノロジー事業部でアジア地域を担当する古澤卓万氏は、ATCをつうじて「広範な分野に(評価試験に関わる)ワンストップサービスを提供したい」と述べ、高度化する自動車開発のパートナーとして活動していくことをアピールした。