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英ジャガーの新型“コンパクト・パフォーマンスSUV”「E-PACE」発表会レポート

日本では180PSのディーゼル、250PS&300PSのガソリンを展開。451万円スタート

2017年7月13日(現地時間)開催

新型SUV「E-PACE」の発表会がロンドン東部のコンベンションセンター「ExCeL London」で開催された

ロンドンでデビューした新型SUV「E-PACE」

 ちょっとお金持ちのオジさまのための、上品でジェントルなイギリス製サルーン――多少語弊はあるかも知れないが、ほんの10年ほど前までのジャガー車には、確かにそんなイメージが付いて回ったもの。

 実際、当時は日本の発売元も時に高額所得者(のみ)を対象とした新聞広告を打つなどして、そうしたオーナー層の開拓を後押ししたフシもある。何よりも、かつてのラインアップ作品のどれもが、“歴史と伝統”にこそ重きを置いたという雰囲気に溢れていた。まずは「変わらないこと」にフォーカスしたクルマづくりを行なっていたという点に、そうしたイメージがタグ付けされる土壌があったはずだ。

 ところが、もしもそんな“10年前のジャガー”しか知らない人が、突然現在のラインアップを目にしたら、そこでは例外なく驚天動地の反応を示すことになるはず。ある人はただただ驚いて立ち尽くし、ある人はその余り変わりように嘆き悲しむことになってしまうかも知れない。

 いずれにしても、万物流転とはまさにこのこと。どのモデルも躍動感みなぎる現在のラインアップは、10年前のそれからは「隔世の感」という言葉こそが相応しい。久々の2シーター・スポーツカーである「Fタイプ」のローンチを筆頭に、自身はスポーツカー・メーカーであるというDNAを改めて強調。それを踏まえての、スポーティなキャラクターの演出こそが、現在のジャガー・ラインアップすべてのモデルに共通する最大の特徴と言ってもよいだろう。

 もしかすると、これまでの長年のファンを失うことになってしまうのでは……と、むしろそんな心配をしたくなるほどの、2007年秋の初代「XF」の発売に始まった大変革が一巡を遂げ、直近では前年度比の世界販売台数が80%以上増と報じられるなど、幸いにもどうやらブランドそのもののイメージ刷新も順調に進行中。

 そうした中で、さらにその勢いを加速させるべくラインアップに加えられたのが、7月13日(現地時間)に発表された「E-PACE(Eペイス)」だ。

 ちなみに、初のSUVとして2015年に発表された「F-PACE(Fペイス)」に、「2019年前半に登場予定」と発表済みのEV(電気自動車)「I-PACE(Iペイス)」。さらには今回のEペイスを加えた3車を、ジャガーでは“ペイス・ファミリー”と紹介。ライバルの状況を見渡しても、今やプレミアム・ブランドに複数のSUVが用意されるのは当たり前という時代になっているのだ。

Eペイスはスポーツカーのような外観とSUVとしての実用性を兼ね備えたモデル

 かつてはロンドン・モーターショーも開催された、ロンドン東部のコンベンションセンター「ExCeL London」が、好調ジャガーのさらなる躍進の鍵を握るEペイスの発表の場として用意された舞台。世界から多くのゲストが集まり、派手なエンターテイメントも行なわれる夜の発表会本番に先駆け、いくつかのメディアに対して同日午前中により詳細なプレゼンテーションの機会が設けられた。

日本での販売価格は451万円から

 Fペイスに対してコンパクトなボディサイズは、その名称からも予想の付いた事柄。4395mmと2681mmと発表された全長とホイールベースは、Fペイスに対してそれぞれ350mm、190mmほど小さい。

 一方で、ドアミラーを除外する日本の計測法による審査値がまだ未定という全幅は、「ドアミラーを畳んだ状態での幅が1984mm」というのが発表値。ちなみに、同状態でのFタイプの値は2070mmなのでそれよりは幅狭になると推定できるものの、ボディそのものの幅で決まる実際の値がどれほどになるのかは、現時点では未知数ということになる。

 それにしても、ジャガー自身が“新型コンパクト・パフォーマンスSUV”と称するEペイスのルックスは、エクステリアもインテリアも兄貴分であるFペイス以上にFタイプに対するオマージュが明確。いかにもジャガーの作品らしくスポーティな雰囲気に満ち溢れ、舞台上に佇んでいるだけでも躍動感の強さが印象的だ。

Fペイスのボディサイズは4395×1984×1649mm(全長×全幅×全高。全幅はドアミラーを畳んだ状態での幅)、ホイールベースは2681mm

 後方へと引かれたヘッドライトや、横長レンズの中を途中で下方へと折れ曲がりつつ水平基調で輝くテールランプのグラフィック。さらには、これまでのジャガー車に好んで用いられた、イグニッションONとともに姿を現わすダイヤル式でなく、よりオーソドックスなレバー式のシフトセレクターや3連ダイヤル式の空調スイッチなどは、いずれもFタイプと共通のモチーフ。

 そもそも、ダッシュボードの造形自体もFタイプのそれと酷似した印象。上部から斜めに下降してセンターコンソールへと繋がるグリップハンドル状のパーティション部分が、まさにFタイプそっくりのアイデアなのだ。

Fタイプとの共通性が感じられるEペイスのインテリア

 兄貴分であるFペイスがV型6気筒と直列4気筒のラインアップであることから、Eペイスが直列4気筒のみで登場したことは想定内。一方で、MTが用意されるディーゼルのベーシックグレードを除き、9速ATと組み合わされるそのパワーパックが横置きレイアウトだったのは、意外に思えるポイントでもあった。パッケージングとしては「現行ジャガー車唯一のFFレイアウト・ベース」と言える。実際、124g/kmというCO2の低排出量が売り物のディーゼルの2WD仕様では、その駆動輪は前輪となっている。

 とはいえ、そこは“スポーツカーのデザインとダイナミクス”を謳うモデルであるだけに、「低μ路面では、アクセルコントロールによってドリフト状態の維持も可能」とアピールするなど、後輪駆動ライクな走り味を標榜している点も見どころ。ルーフやフロントフード、テールゲートなど、重心高の低下を狙って高い部分に軽量なアルミ材を採用したり、電子制御式の湿式多板クラッチを用いた新開発の4WDシステムで後輪側に多くのトルクバイアスを与えることを可能にするなど、ダイナミックな走りのテイストを追求していることは、さまざまなスペックからも明らかだ。

 451万円からというスターティング・プライスが発表されている日本仕様車に搭載されるのは、最高出力180PSを発生するディーゼル、もしくは同じく最高出力が250PSと300PSという2種類のガソリンエンジンに、9速ATを組み合わせたパワーパック。いずれもターボチャージャーが装着される2.0リッターの4気筒エンジンは、“インジニウム”と愛称が与えられたジャガー・ランドローバー自社開発による最新ユニットだ。ちなみに、トップパフォーマーであるガソリン仕様の300PSエンジン搭載モデルの0-100km/h加速は6.4秒。最高速は243km/hと発表されている。

直列4気筒DOHC 2.0リッターディーゼルターボエンジン。本国では150PS/380Nm仕様、180PS/430Nm仕様、240PS/500Nm仕様が用意される
ガソリン仕様の直列4気筒DOHC 2.0リッターターボエンジン。本国では250PS/365Nm仕様、300PS/400Nm仕様を設定

 そのほか、ステレオカメラを用いた自動ブレーキを筆頭とした運転支援システムや、多彩な機能を誇るマルチメディア・システム。さらには、フルカラーの新世代HUDシステムなど、最新モデルに相応しい数々の先進アイテムを用意するのももちろん特徴の1つ。

 そんなブランニュー・モデルが果たして真にジャガー・ファミリーとして相応しいキャラクターの持ち主であるのか、チェックを行なえる時がやって来るのが本当に待ち遠しい。