【SUPER GT 第5戦富士】GT500は8号車 ARTA NSX-GT、GT300は55号車 ARTA BMW M6 GT3が優勝

GT500クラスを優勝した8号車 ARTA NSX-GT（野尻智紀/小林崇志組、BS）。ドライバー2人はGT500クラス初優勝

「2017 AUTOBACS SUPER GT ROUND 5 FUJI GT 300KM RACE」（以下、SUPER GT 第5戦富士）が、8月5日～6日の2日間にわたって富士スピードウェイ（静岡県駿東郡小山町）で開催された。

　8月6日15時30分から決勝レースが行なわれ、GT500クラスは8号車 ARTA NSX-GT（野尻智紀/小林崇志組、BS）が、GT300クラスは55号車 ARTA BMW M6 GT3（高木真一/ショーン・ウォーキンショー組、BS）がそれぞれポール・トゥー・ウインを果たした。

　GT500クラス、GT300それぞれでシリーズ・スポンサー（オートバックスセブン）のチームであるARTAが優勝したのは、2013年の第4戦スポーツランドSUGO以来で、野尻智紀選手、小林崇志選手はGT500クラス初優勝、ショーン・ウォーキンショー選手はGT300クラス初優勝、高木真一選手はGT300クラス12勝目で、これまで最多勝だった新田守男選手に並ぶ最多勝タイとなった。

GT500、ポールからスタートした8号車 ARTA NSX-GTがレースを支配。そのまま優勝

　決勝レースは、通常のレースよりも1時間近く遅い15時30分にスタートが切られることになった。パレードラップでは第2戦富士500kmレースよりも台数が多い白バイとパトカーに先導されていき、その次の周にはセーフティカー先導によるフォーメーションラップが行なわれた。

　その後切られたスタートでは、各車予選順位どおりに静かにスタートすることになった。レースでは野尻智紀選手がドライブする8号車 ARTA NSX-GTがポールからスタートすると、2位のロニー・クインタレッリ選手がドライブする23号車 MOTUL AUTECH GT-R（松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI）を徐々に引き離していき、十数周の周回で5秒差という展開。その後も徐々に2位以下を離していった。

スタート直後

　今回8号車 ARTA NSX-GTは、他のブリヂストン＋NSX勢に比べるとややソフト目のタイヤを選択していたが、それが戦前に予想されていたよりも上がらなかった路面温度にマッチして速さを発揮したのだ。

　レース中に追い上げを見せたのは6位からスタートした38号車 ZENT CERUMO LC500（立川祐路/石浦宏明組、BS）。立川祐路選手がドライブする38号車は、前を走る17号車 KEIHIN NSX-GT（塚越広大/小暮 卓史、BS）を9周目に、24号車 フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R（佐々木 大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組、YH）を24周目に、36号車 au TOM'S LC500（中嶋 一貴/ジェームス・ロシター組、BS）を27周目にオーバーテイクして3位に上がる展開に。

　38号車はウェイトハンデが60kgとブリヂストンタイヤを履くレクサス勢の中では一番軽く、それだけにこのレースに賭けるものがあったのだ。なお、抜かれた17号車 KEIHIN NSX-GT、24号車 フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rは、GT300との接触やマシントラブルなどで後にリタイアとなっている。

　25周前後からトップ勢のピットインが始まり、2位の23号車 MOTUL AUTECH GT-Rと3位の38号車 ZENT CERUMO LC500が31周目に、トップの8号車 ARTA NSX-GTが32周目にピットインを行なうと、レース順位は落ち着き、1位は8号車 ARTA NSX-GT、2位は23号車 MOTUL AUTECH GT-R、3位は38号車 ZENT CERUMO LC500、4位は36号車 au TOM'S LC500、5位は37号車 KeePer TOM'S LC500（平川亮/ニック・キャシディ組、BS）、6位は12号車 カルソニック IMPUL GT-R（安田裕信/ヤン・マーデンボロー組、BS）という順位に。

36号車 au TOM'S LC500、37号車 KeePer TOM'S LC500の争い、12号車 カルソニック IMPUL GT-Rも見える

8号車 ARTA NSX-GTは、2位の23号車 MOTUL AUTECH GT-R、3位の3位は38号車 ZENT CERUMO LC500に若干の差を付け最終局面に

　これで決まりかと思われたが、その後レースは各所で激しい順位争いが起きた。まず激しいレースになったのは、4位の36号車 au TOM'S LC500と5位の37号車 KeePer TOM'S LC500のTOM'Sの2台。中嶋一貴選手がドライブする36号車と平川亮選手がドライブする37号車は同じチームでありながらポイント的には同じようなポイント数でチャンピオンシップを激しく争っており、どちらも譲れず何度も1コーナー、2コーナーで平川選手が中嶋選手に仕掛ける展開に。しかし、すでにベテランの域に達している中嶋選手は老獪なブロックでこれを許さず、結局4位の座を守ってゴールした。5位だった37号車の平川選手は、最終ラップで後ろから追い上げてきた安田裕信がドライブする12号車 カルソニック IMPUL GT-Rにも抜かれて6位に終わった。

36号車 au TOM'S LC500と37号車 KeePer TOM'S LC500のTOM'Sの争い

37号車 KeePer TOM'S LC500と23号車 MOTUL AUTECH GT-Rの争い

23号車 MOTUL AUTECH GT-Rと38号車 ZENT CERUMO LC500の2位争い

　2位の23号車 MOTUL AUTECH GT-Rと3位の38号車 ZENT CERUMO LC500による2位争いも激しい展開に。石浦宏明選手がドライブする38号車が何度も松田次生選手の23号車に迫るが、松田選手は何度もラインを変え、38号車が取りたいよいラインを潰すというまさにベテランの味とも言える走りで、全くつけいる隙を見せないという激しいレースが展開された。

　これでレースは落ち着いてゴールを迎えるかと思いきや、トップを独走していたはずの小林崇志選手がドライブする8号車 ARTA NSX-GTと、2位の23号車、3位の38号車との差が徐々に詰まってくる。特に終盤にはGT300車両を抜こうとしてオーバーランをしてタイヤカスがあるところを通ることになり、ややタイムをロスするなどして残り1周となった段階でその差は2秒近くに。ファイナルラップではさらに詰まっているように見えたが、結局ゴールの時点では1.5秒差を維持することに成功し、8号車 ARTA NSX-GTがトップでゴールし、ポール・トゥー・ウインを果たした。なお、8号車の2人のドライバーは、野尻智紀選手はSUPER GT初優勝、小林崇志選手はGT500クラス初優勝となる。

　2位は23号車 MOTUL AUTECH GT-R、3位は38号車 ZENT CERUMO LC500、4位は36号車 au TOM'S LC500、5位は12号車 カルソニック IMPUL GT-R、6位は37号車 KeePer TOM'S LC500となった。この結果、今回のレースで4位に入った36号車がシリーズリーダーとなり、次戦8月26日～8月27日に鈴鹿で行われる鈴鹿1000kmに臨むことになる。

優勝した8号車 ARTA NSX-GT（野尻智紀/小林崇志組、BS）

構造区を抑え2位になった23号車 MOTUL AUTECH GT-R（松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI）

38号車 ZENT CERUMO LC500（立川祐路/石浦宏明組、BS）

GT300は、ブリヂストンの新タイヤが今回の温度にマッチした55号車 ARTA BMW M6 GT3がスタートから独走

GT300クラスを優勝した55号車 ARTA BMW M6 GT3（高木真一/ショーン・ウォーキンショー組、BS）

　GT300のレースもスタートに関しては順位どおりに1コーナーに入って静かに始まったかに見えたが、8位からスタートした3号車 B-MAX NDDP GT-R（星野一樹/高星明誠組、YH）が、65号車LEON CVSTOS AMG（黒澤治樹/蒲生尚弥組、BS）にヒットされ、1コーナーでクラッシュしてリタイヤすることに。後に65号車にはドライブスルーペナルティが出され、こちらも上位争いからは交代することになってしまった。

　レースの大半をリードしたのはトップからスタートした55号車 ARTA BMW M6 GT3（高木真一/ショーン・ウォーキンショー組、BS）。高木真一選手がドライブする55号車はスタートから徐々に2位以下を引き離してレースを独走した。55号車は、前回のスポーツランドSUGO戦でクラッシュしてモノコックを交換するほどの修復作業を行なって今回のレースに臨んでおり、ブリヂストンが投入した新しいタイヤが今回の路面温度などにマッチして速さを発揮した。

　一時期は10秒近い差を築き、レースはそれで決定かと思ったが、ピット作業が終わってみると、トップ55号車のすぐ後ろには誰も予想していなかった伏兵が現われることになった。それは予選6位の31号車 TOYOTA PRIUS apr GT（嵯峨宏紀/久保凜太郎組、BS）で、なんと31号車はピット作業でタイヤ無交換作戦というギャンブルにでて、ピット作業が終わってみると、トップ55号車のすぐ後ろにいるという展開になったのだ。しかし、同じブリヂストンタイヤを履く両車の戦いは、もちろんフレッシュタイヤを得ている55号車の方が有利で、31号車を徐々に離す展開になっていた。

　その31号車を抜き、レース後半にトップ55号車に迫っていったのが4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG（谷口信輝/片岡龍也組、YH）。予選3位からスタートした4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGは、序盤で予選2位の7号車 Studie BMW M6（ヨルグ・ミューラー/荒聖治、YH）を抜いて2位にあがると安定した走りで2位をキープしていた。31号車 TOYOTA PRIUS apr GTがタイヤ無交換作戦を決行すると、一時的にそれに抜かれることになったが、44周目に31号車を抜き返すことに成功した。

　その後4号車は徐々にトップの55号車に迫るが、結局終盤には再び引き離され、55号車 ARTA BMW M6 GT3がそのまま優勝することになった。これにより、高木真一選手は、新田守男選手のGT300クラス12勝と最多記録に並ぶことになり、今年からGT300にデビューしたショーン・ウォーキンショー選手は初優勝を果たすことになった。

　2位は4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG、3位は31号車 TOYOTA PRIUS apr GT、4位は61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT（井口卓人/山内英輝組、DL）、5位は9号車 GULF NAC PORSCHE 911（ジョノ・レスター/峰尾恭輔組、YH）、6位は7号車 Studie BMW M6となった。

　なお、この結果によポイントリーダーには4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGの2人が浮上することになり、次戦の鈴鹿1000kmレースに臨むことになる。

2位になると同時にポイントリーダーとなった4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG（谷口信輝/片岡龍也組、YH）

3位は31号車 TOYOTA PRIUS apr GT（嵯峨宏紀/久保凜太郎組、BS）