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【SUPER GT 第5戦富士】ARTAの小林崇志選手、野尻智紀選手、高木真一選手、ショーン・ウォーキンショー選手による優勝会見レポート

2017年8月6日 決勝開催

GT500クラスで優勝した小林崇志選手、野尻智紀選手、GT300クラスで優勝した高木真一選手、ショーン・ウォーキンショー選手(左から)

「2017 AUTOBACS SUPER GT ROUND 5 FUJI GT 300KM RACE」(以下、SUPER GT 第5戦富士)が、8月5日~6日の2日間にわたって富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催され、8月6日の決勝レースではGT500クラスは8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志組、BS)、GT300クラスは55号車 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー組、BS)がそれぞれ優勝を果たした。

 GT500とGT300の両方に出ているチームが同時に優勝するのは、2013年の第4戦スポーツランドSUGO戦以来のことで、大会スポンサーでもあるオートバックスセブンのチームということもあって現地では大変な盛り上がりを見せた。

 決勝レース終了後には優勝クルーによる記者会見が行なわれたので、その模様をお伝えしていく。今回の記者会見に登壇した4名のドライバーのうち、3名が初優勝というフレッシュな記者会見となった。

8号車が優勝できた要因は選択したブリヂストンのソフトタイヤが路面にマッチしていたから

──今日の自分の担当スティントの振り返りと、優勝の気持ちをそれぞれにお願いします。

高木真一選手:最高です。今年ARTAが20周年記念ということで、チャンピオンを獲ってほしいと(チームオーナーの鈴木)亜久里さんが言ってたのだけど、今日はチャンピオンに匹敵するポール・トゥ・ウィン。今日は前半のスティントで、ショーンに20秒広げてきてくれと言われたのだけど、実際には9秒だった(笑)。でもショーンもこのクルマならいいタイムを出してくれると思っていたけど、まさか自分のファステストを抜くタイムで走ってくれるとは(笑)。4秒差までグッドスマイルが来た時はヤバいと思ったけど、その後ショーンがどんどん引き離してくれた。今回はショーンに感謝。

 また、スポーツランドSUGOのレースでクラッシュしてモノコック全交換になるほどだったが、それをメカニックが早く作業してくれて、ギリギリの中で仕上げてくれて、かつ交換前と同じフィーリングを実現してくれた。メカニックにも感謝したい。

 もう1つ、ブリヂストンにも感謝を述べたい。新しく開発したタイヤは最初から最後まで40秒台で走ることができる素晴らしいタイヤだった。

高木真一選手

ショーン・ウォーキンショー選手:すべて高木さんが言ってくれたので、僕に追加することはないよ(笑)。高木さんが本当にいい仕事をしてくれたし、ピット作業時もチームがいい仕事をして送り出してくれた。最初はプリウスのプレッシャーがあり、その後はグッドスマイルのプレッシャーがあったが、タイヤをケアしながらプッシュした。チーム全員に感謝したい。

ショーン・ウォーキンショー選手

野尻智紀選手:いろいろ言いたいことがあるぐらい、いろんな感情がある。ホンダ、オートバックス、チームメンバー、ブリヂストン、そして応援してくれたファンの皆様に感謝したい。ARTAが20周年ということで、結果を残したいと思っていた。カートをやってきて、15歳ぐらいの時にARTAのイベントに参加して、そこで亜久里さんに出会って、次の年からサポートしてもらえてここまで上がってこれた。このチームでGT500を戦うのにプレッシャーも感じるし、自分自身を制御できなくなるときも多かった。それでも、こうやって勝てたのはチームの力だったり、皆さんの力があってのことで、感謝の気持ちで一杯だ。今週は言うことがないぐらいハッピー。

野尻智紀選手

小林崇志選手:今の気持ちは“感謝”。今年からGT500に復帰させてもらった。それまでの4年間、GT300に4年間乗らせてもらってきた。その前はGT500に乗っていたので、ここで結果を出さないとクビになってしまうと思って頑張ってきた。それからGT500にふたたび上がれたのだが、上がれたから満足ということではなく、まだまだ自分自身のドライビングで足りないなと思う部分があると感じている。その中で今日のレースでは結果を出さなければならないと思っていた。

 (第1スティントを担当した)野尻選手が10秒のマージンを築いてくれた。自分のスティントでは序盤にタイヤの温存を意識して走っていて、2秒近くまで迫られてしまった。そこで無線で野尻選手と話し、アドバイスを受けながら自分の走りを調整して、5~6秒に広げることができた。また、こうしてGT500で走ることができたのもホンダさんがチャンスをくれたおかげだし、ホンダの人たちがいいクルマを作ってきてくれたからだし、ブリヂストンタイヤも本当によかった。チームやメカニックにもお礼を言いたい。

 また、昨年までGT300のチームメイトだった高木さんにもお礼を言いたい。20代そこそこの若造が来て、本来であれば蹴落としてくれても不思議ではないのに、4年間にいろいろ教えていただき、その経験がこの勝利につながっている。ARTAに来て7年目になるが、1回1回のレースがよい経験になっている。

小林崇志選手

──昨日の会見では朝にお告げがあるという話だったが、お告げの内容はなんだったのか?

高木真一選手:誰かにも聞かれたんだけど、今日はさすがに言えないんじゃないかという話をした(笑)

──100Rで飛び出したり、タイヤカスに乗った時の話をしてほしい。

小林崇志選手:結構ドリフトしていたと思うのだが、すべて土屋(圭市)さんリスペクト(笑)。実はあの時、前を走っていたGT300の86がふらついていたので、当たったらやだなと思ってアウトへ逃げたらタイヤカスに乗ってしまった。ラッキーだったのは、そこからタイヤカスがとれないということはなく、その周が終わるころにはほとんど取れた。前のNSXではそういう時に取れないことが多かったので、NSXもブリヂストンも進化していると言える。

──野尻選手は始めの方で10秒近い差があった。他の選手はスティントの後半はタイヤがなくなって大変だったと言っていたが、野尻選手の後半はそんなことはなかったのか?

野尻智紀選手:そんなことはありました。35周ぐらいまで引っ張る予定だったが、100Rとか高荷重のコーナーだとズルズルきてしまったので、早めにピットインすることにした。

──昨日は厳しい戦いになると言っていたが、比較的楽な戦いになった理由は?

野尻智紀選手:アグリ教だ(笑)

高木真一選手:みなさんの参加をお待ちしている(笑)。真面目な話をすると、走る前はみんな不安で、特に新しいタイヤは走ってみないと分からないところがある。ものすごい熱い路面だと分からないというところもあったが、天候が曇りになってくれて、未知のタイヤが性能を発揮した。それが上手くいったことの要因だったのでは。

ショーン・ウォーキンショー選手:タイヤが機能していた。ロングランも、燃料が重い状態で走るのも初めてだったので心配だったが、あまり暑くならなかったのでそれがよかったと思う。

小林崇志選手:チームのみんなが頑張ってくれたおかげ。僕がコースアウトしてしまったのは余計だったけど、野尻選手も完璧な走りだったし、日曜日のフリー走行がなくなったことでロングランのセッティングを出すことが難しくなったのに、土曜日のフリー走行で決勝にうまく合わせてくれたことが大きかった。

野尻智紀選手:ドライバーにとってはクルマが速くないと結果を残せないが、今回チームがいいクルマを作ってくれた。気温もちょうどよく、ソフトタイヤが使えるようなコンディションに収まってくれた。それが勝てた要因。

最多勝は自分だけで獲ったのではなく、関係者すべてで獲った記録と高木選手

──昨日の会見では足まわりに関してまだ不満がという話をしていたが、それは決勝レースに向けて解決したのか? また次戦の鈴鹿1000kmへの意気込みを。

野尻智紀選手:基本的には予選後に話をしたところから、決勝向けのセットアップにした。第2戦富士のデータを元にクルマを作った。100点なクルマなんて作れないので、その中でドライブするわけだが、今回は僕たちがいい走りができるだけのクルマになっていた。

小林崇志選手:僕に変わってしばらくバランスがよくなかった。走りをそれにアジャストしていって、スティントの中盤はよく走れていた。残り10周ぐらいでタイヤにタレがきてバランスが変わっていったので、タイヤをいじめないようにペースを落として走り切ることができた。鈴鹿に向けてはさらにいいクルマを作らないといけない。鈴鹿では(ウェイトハンデが50kgを越えたので)リストリクターの制限も入るが、より進化していけば鈴鹿でも上位で入賞することは不可能ではない。タイではよいレースができると思うので、そのようにしてチャンピオン争いもしていきたい。

野尻智紀選手:今回勝ったことでウェイトを積むことになる。事前の公式テストでは、次戦に乗せるぐらいのウェイトを想定したテストもすでに行なっている。チームがいいクルマを作ってくれているし、長いレースなのでチャンスがあると思っている。

──次の1000kmについて、抱負をGT300のお2人にも聞きたい。また、高木選手には鈴鹿1000kmの思い出を何か語ってほしい。

高木真一選手:去年は予選で24位ぐらいだったので、実はあまり相性のいいサーキットではない。去年もノーミスで頑張ったが、それでも12位ぐらいとポイントに届かなかった。それよりは、昨年のタイでは3位だったので、そこに向けて頑張っていきたい。ただ、今回のタイヤは鈴鹿にもすごく合ってるのではないかと思っているので、それはよい兆しだ。

ショーン・ウォーキンショー選手:高木選手と同じだ。ブリヂストンタイヤの改善はすごいし、鈴鹿は長いレースになると思うので、ポイントを狙っていきたい。

高木真一選手:鈴鹿にはいい思い出があまりないけれど、過去にGaraiyaで走っていた時代に表彰台に上がったことがある。その時にチームメイトだった新田(守男)さんに「僕は鳥目なので夜は嫌だ」と言った。

小林崇志選手:それ、去年も言ってた(笑)

高木真一選手:新田さんに走ってもらったら彼は(視力が)5.0じゃないかと思うぐらい遠くが見えていた。今は老眼だけど(笑)。なので新田さんがよければぜひ第3ドライバーで来てほしい(笑)。

──高木選手は今回の優勝で新田選手の最多勝に並んでいる。その感想を教えてほしい。

高木真一選手:記録を追いかけたことは一度もないが、達成したことは嬉しい。ただ、言っておきたいのはその背後にはチームが用意してくれたいいクルマがあって、一緒に走ってくれたパートナーがいる。実際、小林君とは一緒に5勝もしているし。他にも亜久里さんだったり土屋さんだったり、最多勝という記録は関わってくれたすべての人と一緒に獲ったものだと思っている。