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東洋ゴム、空気のいらないタイヤ「noair(ノアイア)」発表会

スズキ「アルト」、小型EV「Fomm」での試乗会も実施

2017年9月8日 発表

東洋ゴムが発表した空気のいらないタイヤ「noair(ノアイア)」。実際に市販車やEVに取り付けての試乗会も行なわれた

 東洋ゴム工業は9月8日、空気充填不要の近未来型エアレスコンセプトタイヤ「noair(ノアイア)」を発表し、同日ホテル阪急エキスポパーク(大阪府吹田市千里万博公園)において発表会を開催した。

 同社は2012年の横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展」で同様のコンセプトのタイヤを展示。今回発表となったノアイアは、その技術を発展させた進化モデルとなっている。

ノアイアのアンベール

 現在の空気入りタイヤの基本的な機能について、東洋ゴム工業 技術統括部門 技術第一本部長 守屋学氏が説明。守屋氏は、従来のタイヤの機能を「クルマの重量を支える」「路面からの衝撃を和らげる」「駆動力・制動力を伝える」「クルマの方向を転換・維持する」の4つがあるとし、この機能は「空気を充填することで、タイヤが中空空間となって機能を発揮している」と語った。

ノアイアについて語る東洋ゴム工業株式会社 技術統括部門 技術第一本部長 守屋学氏

 その上で、今後は「タイヤメーカーとしてどのようなソリューションを準備するのかということが重要」といい、そのためには「次世代型タイヤの品揃えが大切」と説明。

 空気のいらない、パンクしないタイヤについては2006年から議論研究を重ね、丈夫な車輪を作ればよいというものではなく、「空気によって実現している機能を置き換えることが必要」と説明した。

 その支える部分については、第4世代からはスポークの構造をY字型にすることで強化。この直前のモデルとなる2009年からの第5世代では楕円型スポークを採用。トレッド面のベースにCFRPを使うことで、屋内から屋外のテストができるようになったという。その速度は約10km/h程度の低速で、この第5世代においても課題は多かったとし、今回発表した第6世代のノアイアではスポークをX字型にすることで耐久力を大幅に向上、スポークのピッチも第5世代の約2倍となる約100ピッチとなり、車外騒音のノイズの低減も図られている。

空気入りタイヤの機能
東洋ゴム工業の考える次世代型提案
研究開発経緯
ノアイアの直前となる第5世代のタイヤ。2012年の「人とくるまのテクノロジー展」で参考展示された
ノアイアの構造
トレッドを支える部分がX字構造になってトレッド面の支持強度が向上した

 車内音や乗り心地については課題が残るもの、操縦安定性や車外騒音などは同社市販タイヤに近づく性能を持っているとし、「ノアイア」としてコンセプトタイヤとしてブランド化。カラーリングバリエーションも揃えて展示しており、この発表以降の反響でさまざまな可能性を探っていく形だ。

 発表会においては実用化時期に関する質問が多かったが、それについてはとくにターゲットを定めていないとし、一切の見通しを語らなかった。一方、現時点での性能については具体的な話があり、最高速度は120km/h程度は可能で、転がり抵抗は同社市販品に比べ25%優れている。重量は5.5kgから7.8kgへ増えてしまっており、この重量増もあってすべての転がり抵抗改善が燃費面へ反映されるわけではないが、燃費に優れるのはタイヤとして魅力的な点だろう。

メリット・デメリット
実車走行フィーリング
今後の展望

 この転がり抵抗の小ささは、サイドウォールなどがないことにより、ゴムのヒステリシスロスを通常タイヤより小さくできているためとのこと。また、ゴムの使用量も減らすことができ、そういった意味での環境メリットがあるという。

 一方、リサイクル性についてはこれから、タイヤライフについては定量的なデータをまだ取っておらず、いろいろこれからの研究開発課題も多い。ホイールについては特殊なものが必要とし、雨のテストは行なっているものの、雪についてのテストは行なっておらず、技術開発課題は多い。

用意された試乗車両。左が小型EV「Fomm」、右が市販車のスズキ「アルト」
FFインホイールモーターを採用するFomm。タイ向け輸出を考えている製品で、水に浮くことができるとのこと。ノアイアがよく似合う
インホイールモーター
アルト。重さは1t程度。こちらについては同乗だけでなく試乗もできた

 実際にスズキ「アルト」、小型EV「Fomm」による同乗走行、アルトの試乗も体験してみたが、普通の空気入りタイヤと同じくしっかり転がっていき、ブレーキ時もしっかりと効く。全体的に剛性の高いタイヤでありながら、乗り心地も思ったよりも固すぎない。しかしながら、100本配置されたX字状のスポークの存在感を感じる乗り心地となっており、丸いタイヤが転がるという多角形のタイヤが転がるような細かいピッチのガタガタ感がある。この辺りが、守屋氏の言っていた「車内音や乗り心地については課題」という部分なのだろう。

試乗会場は万博公園の特設コース
最高速度は40km/hでの試乗だった
Fommは同乗走行。車体もそれほど防振となっていないので、アルトよりガタガタ感を強く感じた

 この解決方法としては、X字のピッチや材質変更、トレッド面の厚みの増加なども考えられるが、その分発生するデメリットもあり、守屋氏によると開発課題とのこと。ただ、空気入りタイヤと異なるトレッド面支持方法を採用することで、低転がり抵抗とグリップ力の両立ができているとのこと。航続距離や電費の問題が強く意識されるEVにとっては、その未来的な外観とともに相性のよさを感じた。

 空気入りタイヤも進化をしているが、このようなパンクしないタイヤの進化も楽しみだ。ただ剛性面などが今の空気入りタイヤとあまりに異なるため、クルマのサスペンションまでを含めたマッチングがとても大切になる。ノアイアとブランディングしたことで多くの自動車メーカーにタイヤの存在が知られ、そうした開発のスピードが加速することにも期待したい。