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日産、独自の高効率エンジン加工技術「NMRP」を独ヘラーにライセンス供給

独ヘラーをつうじて各自動車メーカーで採用可能に

2017年9月14日 発表

日産「GT-R」に搭載される「VR38DETT」で初採用された独自の溶射シリンダーボア粗面化技術「NMRP」を独ヘラーにライセンス供給

 日産自動車は9月14日、同社の独自技術「ニッサン・マシニング・ラフニング・プロセス(Nissan Machining Roughening Process:NMRP)」のライセンスをドイツの大手工作機械メーカー「ヘラー(Gebr. Heller Maschinenfabrik GmbH)」に供与したことを発表した。

 NMRPは自動車のエンジンを生産する工程で用いる日産の独自技術。現代のクルマの多くでは軽量化などを目的に、エンジンのシリンダーブロックにアルミを採用するケースが増えている。この場合、燃焼室で発生する熱や摩擦などからアルミのシリンダーブロックを保護する必要があり、通常はピストンとシリンダーのあいだに鋳鉄製の「シリンダーライナー」を挿入して対応している。

 これに対し、日産では2007年12月に発売された「GT-R」に搭載する「VR38DETT」型エンジンから、溶かした低炭素鋼を吹き付けてシリンダーボアを直接加工する「鉄系溶射皮膜」を採用。通常で2.6mmほどの厚さがある鋳鉄製ライナーから約0.2mmのコーティングに変更することで冷却性能が高まり、ノッキングが起きにくくなるほか、「ミラーボアコーティング」と呼ばれる表面の鏡面仕上げ化で摺動抵抗を低減。エンジンの高出力化、低燃費化を実現する技術となっている。

「ジューク 16GT」の「MR16DDT」型エンジン

 従来は鉄系溶射皮膜を施すために高い技術が必要とされ、採用は一部の高性能エンジンに限定されていた。そこで日産では、ボーリング加工の一種として工具と加工条件を最適化し、溶射皮膜がシリンダーボアに強固に密着するよう内面を粗面化するNMRPを開発。NMRPと適切な溶射技術を組み合わせることにより、鉄系溶射皮膜を持つエンジンを安定的に、安価に量産できるようにした。

 すでに日産では、GT-RのVR38DETT型エンジンのほかにも「ジューク 16GT」の「MR16DDT」型エンジン、インフィニティ「Q50」「Q60」の「VR30DDTT」型エンジンなどをはじめ、ミニバンやコンパクトカーなどの新世代低燃費エンジンにも鉄系溶射皮膜の採用を拡大している。

 NMRPのライセンス供与を行なうことになったヘラーは、シリンダーボアコーティング用の工作機械を従来から製造・販売しており、今後はヘラーの工作機械を導入することで各自動車メーカーでも鉄系溶射皮膜を持つエンジンを量産できるようになるという。