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パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開

2018年度は車載事業で2兆円の売上高に

2017年10月10日 公開

パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)オートモーティブ開発本部の水山正重本部長
パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)オートモーティブ開発本部の水山正重本部長

 パナソニックは10月10日、神奈川県横浜市都筑区のパナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)佐江戸車両試験場において、オートモーティブ事業の開発体制と取り組みについて、報道関係者に対象に説明会を開いた。

 パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 佐江戸車両試験場は、同社の社員寮があったエリアを使い、2016年6月に設置。自動車が実走できるコースを作り、実車を利用したADAS開発などを行なっている。報道関係者に公開したのは今回が初めてだ。

 パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 オートモーティブ開発本部の水山正重本部長は、「パナソニックは、コネクテッド、ADAS・自動運転、電動化(HEV、PHEV、BEV)の領域において、デジタル家電で培ってきた知見を活かして、競争力を高めていくことになる」と語ったほか、「将来の自動車は、90%がエレクトロニクスとソフトウェアで構成されるようになると言われる。パナソニックの民生用技術を活用し、自動車メーカーと一緒になり、次世代のシステムを実現していく。これが、パナソニックにとって、一番効果的な貢献だといえる」とした。

パナソニック、自動運転EVコミュータの旋回走行
パナソニック、自動運転EVコミュータが障害物を自動的に回避&自動停止
パナソニック、自動運転EVコミュータが信号を判断して停止&発進

 同社では、2016年度には、1兆3000億円だった車載事業の売上規模を、2018年度までに、業界平均上回る年率24%増の成長を見込み、2兆円の売上高を計画している。「2020年度の2兆円に関しては、すでに93%の受注率となっている。このなかには、M&Aによる売上高は含まれてない」として、射程距離にあることを強調。また、2021年度には、2兆5000億円の売上高にまで拡大し、自動車部品メーカーのトップ10入りを目指していることを改めて示した。

「2025年度には、年間1億2000万台の新規車両登録が想定されているが、2015年度には35%だったコネクテッドカーは、2025年度には100%の搭載率が見込まれ、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転の搭載率は5倍に拡大。電動化の市場規模は5兆7000億円から、22兆円にまで拡大すると見られている。パナソニックでは、インフォテイメントシステムではトップシェアを持っているが、今後の車室内のデジタル化の進展にもないユニットからコックピット全体へと展開。ADASなどによる『快適』を提供する一方、センサーの強みを生かした『安全』、電池の強みにより電動化を加速する『環境』という3つの領域から取り組んでいくことになる」と説明した。

 2017年4月に設置したオートモーティブ開発本部では、重要性が高まる「コネクテッド」「ADAS・自動運転」「電動化」の領域において、パナソニックが持つ画像処理技術や画像認識技術、通信・ネットワーク技術などのデジタル家電技術を、オートモーティブ事業分野に応用。カーメーカーとともに、5年先の将来を見据え、非連続な技術進化を起こす役割を担うという。

 プラットフォーム開発センター、統合ソリューション開発センター、映像・センシング技術開発センターを擁し、パナソニック全体から、AV技術やネットワーク技術に関するエンジニアを合計で約350人を移管。AIS社のエンジニアと融合し、約500人の開発陣容を持つとともに、本社イノベーション推進部門やAIS社のインフォテインメントシステム事業部、車載エレクトロニクス事業部とも連携。社内関連部門や社外の協業先、政府・自治体、学術研究機関などとの協業にも積極的に取り組む。「AV技術者やネットワーク技術者を集約したことや、デジタル技術に旺盛な開発投資をしている成果を、民生部門などの他のカンパニーにも展開していくことになる。AI技術者は不足しており、AIS社にも数10人規模しかいない。人材教育の進める一方で、協業によって、不足したAI技術者を補っていくことになる」と述べた。

 また、「プラットフォーム開発による事業強化と、統合ソリューション開発による事業領域拡大を重点取り組み分野としていく」とし、HMIとソフトおよびハードプラットフォームによる「IVI(In-Vehicle Infortainment)・コックピット」、自動駐車・自動運転システム、映像処理・検知処理、カメラ・ソナーによる「ADAS」、カメラモニタリングシステムやドライバモニタリングシステムなどの「コックピット×ADAS」、電源および駆動システムの「電動化」の4つの事業領域に取り組むとした。

 次世代コックピットシステムでは、テレビやモバイル、イメージングなどの「デジタルAV技術」と、ディスプレイや無線通信、光学(レンズ)、ソフトウェアプラットフォーム、セキュリティやクラウドなどの「先進技術」を活用。フルTFT(液晶)メーターやIRMS(Intelligent Rea-View Mirror System)、HUD(Head Up Display)、センターディスプレイ(Touch Pro Duo)などを組み合わせることで、統合コックピットシステムを開発していく姿勢をみせた。
 「EV化すると、電池容量の30%が空調に活用されることになる。快適な空間を、最小の電気で実現するために、エアコンで培った空調だけでなく、人体の血流をモデル化し、どうすれば効率的に快適な環境を実現し、最適なエネルギーで済ませることができるに関しても研究している」という。

 さらに、IVIプラットフォームの標準化に向けては、パナソニックがソフトウェア分野でリードしていることを示しながら、「車載機器向けOSは、大きなアップデートがあるごとにソフトウェアが倍増しているが、LinuxではAGL、AndroidではOAAにおいて、パナソニックが標準化をリードしている。昨年、ドイツのオープンシナジーを買収して、Blutooth接続技術に加えて、Hypervisorに関するノウハウを獲得しており、機能強化や安全レベルを高め、次世代コックピットの実現に向けた開発体制を強化できた」としている。

 ADASに関しては、「検知」「認知・判断」「警告・制御」の組み合わせで実現。「テレビ、デジタルカメラで培った画像処理技術によって、センシング精度を向上。夜間や霧、雪などの環境でも画像を鮮明化したり、局所コントラストを強化する技術を持っており、これを活用するほか、ブレた映像を鮮明化する技術も活用できるという。

 さらに、ソナー検知技術を無線技術を活用して、変調音波による音声付けにより、検知できる距離を格段に向上させたほか、深層学習技術により、人物検知や障害物検知、駐車スペース検知にも応用。複雑な駐車環境下に適用するための高度なセンシング技術も開発しているという。

 また、映像処理・検知LSIでは、他社のLSIに比べて、消費電力を他社5分の1に削減したものを開発中であり、「アルゴリズムの軽量化などにより、低コスト、低消費電力を実現し、高性能な車載向け映像処理・検知LSIにより、競争力を高めたい」とした。

 自動駐車システムでは、12個の全周囲ソナーと、4個の全周囲カメラによる全周囲センシングにより、ステリアングとブレーキを自動制御し、自動運転を実現。また、自動運転技術開発に向けて、自動運転EVコミュータと呼ぶ自動運転車両を試作しており、ここでは、LiDARやステレオカメラセンシング、全周囲カメラセンシング、1周波RTK-GNSS受信機を利用することで、車両システムレベルの技術検証と評価を行なうという。

自動運転EVコミュータ

パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 自動運転EVコミュータ
自動運転EVコミュータ

 自動運転EVコミュータは、全長2.5m、全幅1.3m、全高1.4m、車両重量は566kgで、乗車定員は2人。2017年度中に公道走行を目指しているが、これを製品として販売する計画はない。「自動運転EVコミュータは、自動車メーカーの立場に立って、部品などを開発するための実験車である。EVを開発する計画はない」と語った。

 なお、佐江戸車両試験場では、自動運転EVコミュータの自動運転走行や、縦列自動駐車、斜め自動駐車、並列自動駐車、縦列自動出庫、後方緊急ブレーキシステムなどの実験が実車を使って行なわれている。

 一方で、パナソニックでは、自動運転車やコネクテッドカーに対するサイバーセキュリティ対策を実現する「オートモーティブ侵入検知、防御システム」を開発した。

 サイバー攻撃をリアルタイムに検知し、検知したサイバー攻撃を防御できるという。

「2015年には、市販車での脆弱性が報告され、米国では140万台のリコールが発生している。すでに各国でセキュリティガイドラインを発行し、2017年7月には、米国で法案が下院を通過し、自動運転車へのセキュリティ対策を義務化する動きがある。出荷した段階のセキュリティ対策だけでは不十分である。出荷後も車両を継続的に保護するソリューションが必要である。そのために、セキュリティ監視クラウドの活用と、ECUとの連携するセキュリティソリューションによって、こうした課題に対応できる」とした。

 車載機に搭載する監視モジュールと、監視モジュールと連携する監視クラウドから構成。車載機の監視モジュールは、監視ルールに基づいて、車両内部を監視。既存の監視ルールでは検知できない攻撃を発見した場合には、クラウドから車載機の監視モジュールの監視ルールの変更、更新によって、新たな攻撃にも対応でき、「出荷後も車両の安全を維持できる」という。また、攻撃が顕在化する前から予兆を捉えることで、対策検討を先行させることができ、攻撃の影響を最小限に抑えることができるという。

パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 自動運転EVコミュータの内部の様子
自動運転EVコミュータの内部の様子
パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 天井部分に設置されたLiDAR
天井部分に設置されたLiDAR
パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 前方に搭載されているスレテオカメラ
前方に搭載されているスレテオカメラ
パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 後方に搭載されているバッテリー
後方に搭載されているバッテリー
パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 後方用のカメラ
後方用のカメラ
パナソニック、自動運転EVコミュータと試験場を初公開 天井にはアンテナなどが設置されている
天井にはアンテナなどが設置されている