トヨタ、「トヨタ博物館クラシックカーフェスタ」
神宮外苑に100台のクラシックカーが集結、原宿・渋谷をパレード

宮益坂を上るパレードの車列
11月29日、30日開催
明治神宮外苑(東京都)



 トヨタ自動車は11月29日、30日に東京都の明治神宮外苑で、「トヨタ博物館クラシックカーフェスタ in 神宮外苑」を開催した。

トヨタ博物館の収蔵車と一般公募車が展示、パレード
 トヨタ博物館は、愛知県長久手町に1989年に開館した、同社が運営する自動車博物館。同社の車だけでなく、19世紀から20世紀にかけての世界中の自動車を収集、動態保存し、延床面積1万9000m2に150台以上を展示。体系的に自動車史、自動車文化を学べる施設としている。

 同館では毎年、クラシックカーファン、自動車ファン創出のために収蔵車両を愛知県内で展示、動作させるイベントを行っているが、2007年にはトヨタ自動車創立70周年を記念して初めて東京都のお台場で開催。2回目の東京開催は、会場を明治神宮外苑の聖徳記念絵画館前に移した。

 クラシックカーフェスタには、同館の収蔵車両のうち「ベンツ・パテントモトールヴァーゲン(レプリカ)」「ベイカー・エレクトリック」「ロールスロイス・40/50HPシルバーゴースト」「フォード・モデルT」「デューセンバーグ・モデルJ」「トヨダ・AA型乗用車」を展示、さらに国立科学博物館の「オートモ号」も展示された。

会場は明治神宮外苑の聖徳絵画館前ベンツ・パテントモトールヴァーゲン(レプリカ)ベイカー・エレクトリック
ロールスロイス・40/50HPシルバーゴーストフォード・モデルTデューセンバーグ・モデルJ
トヨダ・AA型乗用車トヨタ博物館と国立科学博物館が共同でレストアしたオートモ号シルバーゴーストのエンジンルーム

トヨタ博物館の学芸員による解説も行われたいすゞのボンネットバスは来場者を乗せて外苑を走行

 また、公募された一般オーナーが所有するクラシックカー延べ100台が展示されたほか、29日には神宮外苑から表参道、渋谷をパレード走行した。

 朝10時半には、聖徳絵画館前のステージで、オープニングセレモニーを開催。トヨタ博物館館長の川本常敬氏や日本クラシックカークラブ会長の小林正太郎氏、クラシックカー好きとして知られる俳優の唐沢寿明氏らがテープカットを行ない、クラシックカーパレードが始まった。

日本クラシックカークラブ会長の小林正太郎氏。「トヨタ博物館ができるとき、トヨタ以外の日本や世界の自動車も扱うこと、展示するだけでなく、動態保存することを望んだ。理想的に運営されている」クラシックカーオーナー代表として挨拶したのはロールスロイス・シルバーゴーストで藤沢から参加した和田篤泰氏。「走れる状態にしておくのがクラシックカーを持つ意義。本来なら同乗して走って欲しいが、せめて止まった状態で運転台に座って欲しい」テープカット

トヨタ博物館館長の川本氏(左)と唐沢氏。唐沢氏が所有する車で壊れないのはフォルクスワーゲン・ビートル(オリジナル)だけだとかトヨタテクノクラフトが復元したトヨタ・2000GTスピードスターで唐沢氏もパレードに参加
 

 パレードのコースは絵画館前から神宮外苑外周道路で国道246号線に出て、表参道、原宿、代々木公園、渋谷駅前、NHK放送センター、公園通り、渋谷駅前、宮益坂を経て絵画館に戻るというもの。町中で異彩を放つクラシックカーに、沿道から手が振られたり、あるいは信号待ちのクラシックカーのドライバーと沿道の人が会話したりする様子も見られた。


パレードに向かうベントレー・3 4 1/2メッサーシュミット・KR201ロードスターアストンマーチン・DB2/4 Mark III
MG・マグネットZBランチア・フルビア2Cトヨタ・セリカ1600GTV

展示された一般オーナーのクラシックカー
 パレードから戻ったクラシックカーは、絵画館前でオーナーが収集した関連グッズとともに展示された。

 折から明治神宮外苑はいちょう並木の黄葉がクライマックスを迎え、「いちょう祭り」も開催されている。いちょう祭りにもクラシックカーフェスタへの誘導ブースが設けられており、車好き以外でも、いちょう見物後に立ち寄る人も多かった。

 展示会場ではオーナーが来場者の質問に答えたり、来場者を運転席に座らせたりするなど、さまざまなコミュニケーションが展開されていた。


神宮前交差点を通過するパレード渋谷駅前交差点を通過するパレード信号待ちで写真を撮られたり話しかけられたりする光景が随所で見られた
パレードから戻ってきた参加者早速整備するオーナー。「渋滞を走るとどうしても水温が……」エンジン音を聞かせるブガッディ・ブレシア22
日産・スカイライン2000GT-Rシボレー・コルベットC1アストンマーチン・V8シリーズII(左)とアルファロメオ・モントリオール
フォード・ランチェロ・スクワイアフォード・モデルTツーリングスバル 360の説明

ロールスロイス・シルバークラウドIシューティングブレーク

クラシックカーを持つ楽しみ
 公募車の展示会場で、3人のクラシックカーオーナーに、クラシックカーとともに生活する楽しみについて聞いてみた。

●高校生の頃にあこがれた車に乗る

エレクトラと石井さん。このほかには1990年式フェアレディZ(Z32)と、1999年式セドリック(Y34)を所有。どちらも気に入っていて、買い換えていない。セドリックは「エクストロイドCVTに乗ってみたかったから」
 アメリカは世界一の自動車大国だが、クラシックカーフェスタではなぜか少数派だ。その中で、ひときわ大きく華やかボディで注目を集めていたのが石井英機さんの「ビュイック・エレクトラ225」(1959年)だ。

 石井さんは東京出身。高校時代には、赤坂見付や虎ノ門、溜池あたりの外車ディーラーでよく車を見ていて、エレクトラはお気に入りだった。退職を機に世界の自動車ショー巡りをした際、ジュネーブで立ち寄った自動車博物館に1960年式のエレクトラと出会う。どうしても手に入れたくなった石井さんは、6年前にこのエレクトラを日本で見付け、前オーナーに懇願してゆずってもらい、3年かけて今の状態にした。

 手を入れたのは、機関では電装系とキャブレターくらいで、そのほかはオリジナルだと言う。極力オリジナルに近い状態で、しかもちゃんと走るようにするのが石井さんの方針だ。

 今後手を入れたいのはインテリア。「オリジナルは青みがかった内装色で、金のステッチが入っているのですが、さすがにこれは難しいと言われまして」。さらに、クーラーユニットをオリジナル(入手済み)に換装する予定だ。

 エレクトラで困るのは「突然どこが壊れるか分からないところ」。これまで大きなトラブルは、ミッションオイルが噴き出したり、パワーステアリングのホースがパンクしたりといったことがあると言う。しかし「シンプルなメカなので、あまり壊れません」とも。

 こうしたイベントにも積極的に参加する石井さんだが、やはり同年代の人が懐かしがって話しかけてくれるのが楽しいと語る。

 

●オーナーズクラブが重要

コンテッサと小林さん(右から2人目)、オーナーズクラブのみなさん。このほかに、普段のアシに軽自動車を所有
 「日野・コンテッサ1300セダンDX」(1966年)のオーナーである小林芳文さんは、栃木から駆け付けた。33歳と公募者の中では若く、現役時代にはリアルタイムでは接してないコンテッサだが、「近所の古い車が好きなおじさんが持っていた雑誌で見て、好きになりました」という。魅力はやはり「ミケロッティが手がけたスタイリング」。

 しかしコンテッサの現物を見たことがなかった小林さんはまず、コンテッサのオーナーズクラブ「日野コンテッサクラブ」に入って、どんな車かを勉強し、個人売買で入手した。

 整備の方針は石井さんと同じく、「極力オリジナルで、ちゃんと走るようにする」こと。部品がないのが悩みと言うが、そのためにはオーナーズクラブの情報が必須と言う。「どんな部品が流用できるか、どう調達するかなど、オーナーズクラブの情報に大いに助けられていると言う。どうしてもない部品は、オーナーズクラブで作ることもあるそうだ。

 その結果、小林さんのコンテッサは栃木から糸魚川や御前崎のイベントにも自走して行けるほど、良好なコンディションを保っている。「カーナビとETCも付けてます。高速道路で行くことが多いので。電装系? オリジナルのままで大丈夫ですよ」。

 クラブのメンバーには、九州まで1400kmをコンテッサで往復した人もいると言う。

カーナビとETCを装備する

●カレが引くほどのめり込む

BMWイセッタ300とのりたまこさん
 「BMWイセッタ300」(1957年)オーナーは、この会場だけでなく、クラシックカー界では少数派と思われるうら若い女性だ。

 オーナーののりたまこさんに「普段のアシはなにを?」と聞いてみたら、衝撃的な答えが返ってきた。「イセッタしか持ってません! 東京は駐車場代が高いですから。これで買い物にも冠婚葬祭にも行きます」。つい先だっては、土浦、桐生と2泊3日のドライブ旅行までこなしてきたと言う。

 デザイナーであるのりたまこさんは、仕事で自動車の素材などを探すうちに、イセッタに出会い、さらにこの車について調べるうちに、どうしても欲しくなったのだという。もちろんかわいらしいスタイリングが最大の魅力だが、「この車が生まれた時代背景を知って、もっと好きになりました。終戦後のドイツで、安くてよい車を作ろうということを」。

 イセッタの悩みもやはりメカトラブル。「日々体調が変わる生き物みたいな車なので、突然トラブルが起きます」。メンテナンスは工場におねがいしているが「よい工場に巡り会えたのも、大切なことですね」。

 イセッタはやはり女の子や子供にとても人気がある。インタビューの前後にも、のりたまこさんのイセッタにはひっきりなしに女性や子供が集まってきては、のりたまこさんとコミュニケーションしていた。「車離れって言われていますけど、みんなにこの車のことをもっと知ってもらって、車の魅力を分かってもらいたいと思っています」。

BMWイセッタ300コーディネートされたトランクが車のかわいさに拍車をかける
興味を示した人を運転席に座らせるのりたまこさんがオークションで落とした当時のパンフレット。左上と右下はのりたまこさんオリジナルのポストカード。もちろん主役はイセッタ

 

 女性オーナーも多いそうで、カフェで女性イセッタオーナーが集まっては「ピストンが……メーターが……」などとガールズトーク(?)を繰り広げていると言う。

 それにしても、のりたまこさんのイセッタへののめり込み方はすごい。イセッタの脇には、のりたまこさんがオークションで落札した発売当時のパンフレットなどが展示されていたのだが、やはり結構な値段がしたそうだ。“イセッタ愛”が高じて、オリジナルのグリーティングカードまで作成した。「洋服や海外旅行はあきらめてます。お小遣いはまずイセッタに行っちゃうので。一生に1回くらいは、乗りたい車に乗りたいですから」。

 彼氏が“俺とイセッタとどっちを取る?”って言ったら? 「私のイセッタへののめり込み方を見たら、そんな話になる前に彼氏から身を引くと思います」。

 

URL
トヨタ自動車株式会社
http://www.toyota.co.jp/
ニュースリリース
http://www.toyota.co.jp/jp/news/08/Oct/nt08_1006.html
トヨタ博物館
http://www.toyota.co.jp/Museum/index-j.html
トヨタ博物館クラシックカーフェスタ in 神宮外苑
http://www.toyota.co.jp/Museum/data/h134_1.html
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【2008年10月22日】トヨタ、「トヨタ博物館クラシックカーフェスタ」を東京で開催
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081022_37970.html

 


(編集部:田中真一郎)
2008年12月1日