【2009 International CES】展示会場リポート
カーナビと情報端末の融合が進む米国の自動車向け製品

Las Vegas Convention Centerの駐車場に設けられたMicrosoft Autoブース
1月8日~11日(現地時間)
米国ネバダ州ラスベガス
Las Vegas Convention Center



 Ford Motor Companyの基調講演リポートでも触れたように、International CESでは、メインの会場であるLas Vegas Convention Centerの3つのホール(North、Central、South)のうち、Northホールが自動車関連製品に割り当てられており、カーナビメーカーなどを中心にさまざまな製品が展示されている。本リポートでは、そうしたInternational CESで見ることができた自動車関連製品についてお伝えしていく。

Microsoftは「Microsoft Auto」に関連した製品を展示
 ここ数年、Microsoftは自動車関連製品に力を入れており、毎年CESでも会場前のスペースに大型のテントを設けて、自動車関連製品のソリューションを展示している。といっても、Microsoft自身がエンドユーザーに対して製品をリリースしているのではなく、あくまで自動車メーカーやカーナビメーカーに対して、ソフトウェアプラットフォームを提供するという形での提供となるため、展示している製品もパートナー企業の製品が中心となっている。今年の展示も例外ではなく、基調講演も行ったFordの車や、今後Microsoft製品の採用を予定しているHyundai(韓国の現代自動車)の車や、「Windows CE」をOSとして採用している日本メーカーのカーナビゲーションなどが展示された。

 今回Microsoftがフィーチャーしていたのは、「Microsoft Auto 3.0」と呼ばれるWindows CE 6.0をコアとした自動車向けのプラットフォームだ。従来提供されていたMicrosoft Automotive 5.0がWindows CE 5.0ベースだったのに比べて6.0ベースになることで、メーカー側の自由度が向上したり搭載されている機能が向上したりしているのが特徴だ(なお、詳しくは関連記事の「Microsoft Car Navigation Day 2008リポート」参照)。

 FordのSYNCなどもこうしたものがベースになっており、実際展示会場ではSYNCに対応したFordの車や、SYNCを採用しワープロソフトや表計算ソフト、PDFビューアなどの機能などを追加した「Mobile Office」というカーコンピューターのデモが行われていた。また、米国でも流行しているPND(Portable Navigation Device)向けには、Microsoftが「MSN Direct」として展開しているFM放送を通じた渋滞情報などの配信機能などがデモされていた。

HyundaiがMicrosoft Autoを採用することを明らかにしたことを記念したデモ車Mobile Officeのデモに利用されていたFordのSUVMSN Directに対応したスズキの純正PND。FM放送を利用して情報をカーナビへ配信する
FordのMobile Officeに対応したカーナビ。写真のように、ワープロ、Operaブラウザ、表計算、メール、PDFビューアなどの各ソフトウェアが搭載されている
ワイヤレスキーボードかタッチパネルを利用して操作するFord車のコンソールにつけられている「SYNC Powered by Microsoft」のロゴこちらは「Windows Automotive」に対応した製品。日本のカーナビの多くが、Windows Automotiveベースになっていることを反映して、パイオニアの「AVIC-ZH9000」、アルパインの「VIE-X077」などが展示されていた

クラリオンは日本未発売のPND+携帯情報端末「MiND」をアピール
 CESには日本でおなじみのパイオニア、ケンウッド、富士通テン、クラリオンといったメーカーも参加しており、多数の米国向けの製品を展示している。ただし、展示している機種は、日本で販売されていないモデルがほとんど。機能も日本で販売されているものの数年落ちというものばかりで、日本の高機能でグラフィカルなカーナビゲーションを見慣れている人からすれば、正直見るべきものはほとんどない。

 しかし、日本では販売されていない製品の中にも、要注目なものはある。たとえばクラリオンは、「MiND(Mobile Internet Navigation Device)」と呼ばれる、情報端末とカーナビゲーションを合体させたようなデバイスを展示していた。このMiNDは昨年のCESでもコンセプトモデルが展示されていたが、カーナビとしての機能だけでなく、インターネットブラウザ、電子メールクライアント、YouTubeクライアントなどを搭載しており、いわばPDAのような機能をも統合した製品となっている。

 その特徴は、従来のカーナビなどがCPUにARMベースのプロセッサーを採用していたのに対して、このMiNDではIntel Atomプロセッサーを採用していることだ。Atomはx86アーキテクチャーであるため、インターネットまわりのソフトウェアの互換性がARMベースの製品に比べて高いという特徴を持っている。ARMベースの製品に比べて、インターネットの新しいサービスなどにいち早く対応できるというわけだ。MiNDは米国では659ドル(約6万5000円)から販売されており、多くの来場者が熱心に質問をしている姿が印象的だった。

パイオニアブースでは、「AirNavi」の米国版(AVIC-F500BT)が展示されていた米国向けの製品を展示していたケンウッドブース
富士通テンのブースでは取り外し可能なPNDから構成されている「AVN4430」が展示されていた。PNDが日本より流行している米国ならではの製品
クラリオンのブース。すでに米国で販売されているMiNDは専用のブースが設けられてアピールされていた

2DINに入る本格的なカーPCやUIを作り込んだ本格的な製品も
 このほか、多くのブースでは大容量のアンプやウーファーといった、アメリカらしいダイナミックな製品が多数展示されており、それらのブースの近くを通過するとズンズンと会場巡りで疲れた体には酷な低音が鳴り響いていた。会場には多数のドレスアップカーも展示されており、会場の雰囲気はちょうど日本で同時期に行われていた東京オートサロンに近いものだと言えばご理解いただけるだろうか。

 このほか、PC先進国の米国ということも反映して、会場には多数のカーPCが展示されていた。なかには2DINに本格的に納めた製品もいくつか展示されており、きちんとUI(ユーザーインターフェース)も作り込んで、普通にカーナビとして使える製品もあった。いずれも日本での発売の可能性を聞くと、“代理店募集中”とのことだったので、日本で販売される可能性は低いが、どこか奇特な代理店の方、チャレンジしてみていただけないだろうか。売れるかどうか分かりませんが……。

AzentekはIntel Core2 Duoプロセッサーベースの2DINカーPC「CPC-1000」を展示。Windows Vistaベースで、タッチパネルUIが完全に作り込まれている。6.5インチのタッチパネル液晶を採用しており、ほとんどの動作はタッチUIで操作可能。専用のUIが起動していれば、Windowsとはまったく気が付かないほど。USBポートやBluetoothなども用意されており、それらを利用して通信が可能になっている
台湾Glantecの2DINカーPC「VPC6000」。Windows XPベースになっており、やはり専用タッチUIでカーナビとして利用可能、かつWindowsに戻して操作することもできる。35W×5chのアンプを搭載しており、5.1chに拡張も可能
IntelのAtomを搭載したカーPCの試作例。下の1DINのユニットに、PCが格納されており、専用のUIでカーナビのように操作できる韓国vilivのAtom搭載2DINインダッシュカーナビの「X7ME」。7インチ液晶で、Menlowプラットフォームベースとなっている。Windows XP Home EditionないしはLinuxをサポート可能
Hyundai/Kia自動車の自宅とPCをネットワークで接続して操作するデモ。車のダッシュボードに設置された画面から、家のエアコンのスイッチを入れたり、車の中にある音楽ファイルをストリームで家庭のステレオから再生したりするデモが行われた(家のPCにあるファイルを車で再生するのではないことに注意
NISSAN GT-Rのドレスアップカー。ドアがガルウイングになっている
会場にはこんな車が多数展示されている。ノリはオートサロンに近い、いやどちらかと言えば大黒ふ頭か……

  

URL
2009 International CES
http://www.cesweb.org/default.asp
CES日本語サイト事務局
http://biz.knt.co.jp/pm/ces/
関連記事
【2008年9月24日】クラリオン、インターネット接続できるPND「ClarionMiND」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20080924_37794.html
【2008年11月27日】「Microsoft Car Navigation Day 2008」リポート
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081127_38183.html

(笠原一輝)
2009年1月13日