最新スタッドレスタイヤで走ってみた 雪道を求めてBLIZZAK REVO2と668.9kmの旅 |
東京では、まだ積もるほどの雪が降ることはないが、北海道や東北、日本海側では大雪というニュースを聞くようになった。そこで、今回はスタッドレスタイヤへの交換記事において、ブリヂストンの「BLIZZAK REVO2(ブリザック レボツー)」を取り付けた日産自動車の「セレナ」の4WDモデルを使用し、実際に雪道を走ってみることにした。
BLIZZAK REVO2は、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ。前回の記事でも紹介したとおり、昨シーズン投入されたBLIZZAKブランドの中核を担うタイヤだ。氷上性能を特に重視した「MZ-03」、高速性能を重視した「REVO1」の2シリーズを統合する形で発売され、現在のBLIZZAKラインナップは、このREVO2のほか、SUV/4×4向けの「DM-V1」、小型トラックやバス向けの「REVO969」となっている。旧モデルも一部サイズが併売されているようだが、255/35 R19~135/80 R12と幅広いラインナップを誇るREVO2がBLIZZAKの中心モデルと言えるだろう。
セレナに取り付けたREVO2は195/65 R15のもの。11月に交換してから500kmほど主に東京の市街地を走った状態。今回はこのセレナで雪道を走るべく、新潟県の湯沢町を目指した。
■高速道路走行では夏タイヤと変わらない印象
前日から天気予報をマメにチェックし、雪道取材に選んだのは1月18日の日曜日。天気予報によると土曜日は雪が降ったとなっており、雪道になっているであろうという予測のもとに決定した。ルートは今回取材に同行するメンバーの自宅の関係もあって、中央自動車道の調布IC(インターチェンジ)から圏央道を経由し、関越自動車道に向かうことにした。
高速道路を走り出してすぐ気がついたのは走行音が静かなこと。筆者は現在セダンタイプのフルタイム4WD車で、REVO2の前モデルとなるREVO1を使っているのだが、比べるまでもないほどに静かだ。一般的なラジアルタイヤ(以下、夏タイヤ)と変わらないというか、そもそもセレナのエンジン音などもありタイヤの走行音がほとんど分からない。
ハンドリングなどに関しても普通に走っている限り、夏タイヤとの差異はなく、一昔前のスタッドレスタイヤにありがちだった腰砕けな感じや、ちょっとした不安感なども感じない。八王子JCT(ジャンクション)で中央自動車道から圏央道に行く際に、ゼブラ舗装の路面などもあるが、そこでも不快な音などもせず、トントントンと普通に通過していく。圏央道には多くのトンネルがあり、あえて窓を開けてみたりもしたが、「ゴォー」とか「ガァー」というタイヤのトレッドが路面を打つ際に発する音も、ほとんど聞こえてこない。
2人で運転を代わりつつ関越道をひたすら北上。タイヤに関して出てくる感想は「普通だ」「普通だねぇ」というもので、夏タイヤとまったく変わりなく不安のない運転ができる。高崎ICから昭和ICへ向けての上り坂、昭和ICから沼田ICへかけての下り坂でも、しっかりしたグリップ感があり疲れることもない。
関越道を新潟方面に向かう上でポイントとなるものに関越トンネルがある。自動車用のトンネルとしては日本最長のトンネルで、総延長は上りと下りで異なるものの11km弱。安全面からチェーンを付けた状態での走行が禁止されており、群馬県側、新潟県側でともにチェーン規制(チェーン装着もしくはスタッドレスタイヤでの走行)が敷かれた際は、トンネル手前の谷川岳PA(パーキングエリア)でチェーンを外し、トンネルを抜けたところにある土樽PAでチェーンを取り付ける必要がある。もちろんスタッドレスタイヤを履いていれば、それら面倒な作業がなくスムーズに通行できるため、関東に住む人のスタッドレスタイヤ装着率はこのトンネルのおかげで上がったと言う人もいるほど。
■トンネルを抜けいよいよ雪国へ
谷川岳PAで一休みして、いよいよ関越トンネルへ。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」で知られる川端康成の「雪国」の冒頭のフレーズを思い出しつつ(小説に登場するトンネルは鉄道のトンネルなので清水トンネルを描いている)、いざトンネルを抜けると一面銀世界!! のはずが、路面には雪がなかった。
東松山ICの辺りでは「チェーン規制中」という表示を見かけていたのだが、沼田ICや月夜野ICの辺りで見かけなくなり、やっとトンネルを抜けたと思ったら路肩には雪があるものの路面に雪がないという状態。関越道は雪対策に力が入れられており、雪が降り続かない限り路面に雪が積もらなくなっているのだろう。素晴らしい!!
「さすがNEXCO東日本!!」と言うべきところではあるが、今回の目的は雪道を走ること。このまま高速道路を走っていても状況は変わらなそうなので、湯沢ICで一般道に下りることにした。湯沢ICを下り、国道17号を新潟市方面に向かったがここでも状況は変わらず。スキーが趣味のため国道17号は、20年ほど前からスキー場に向かう際によく利用し、年々融雪設備などが整えられてきたのを見ていた。その成果もあってか路肩には雪があるものの路面に雪が積もっていることはなかった。ときたま雪の固まりが転がっている程度で、セレナ4WD+REVO2はまったく問題なく走る(当たり前だ)。
しばし悩んだあげく、進路を志賀高原に向けることにした。上信越道が今のようにできる前は、冬に東京から志賀高原へ行く際のルートは3通り。
1.関越道を高崎ICまで行き、国道18号をひたすら走る
(志賀草津道路が冬季通行止めのため)
2.中央道を豊科ICまで行き、国道403号、国道18号を使う
3.関越道を塩沢石打ICまで行き、国道353号、国道117号を使う
1の方法が一般的だが、国道を走る距離が長いのと、激しい渋滞が夜間に発生するため、2や3のルートを使う人もいた。とくに志賀高原のやや北に位置する野沢温泉に行く場合、それほど遠回りにならず高速道路区間の長い(つまり平均速度を上げられる)、3のルートを使うスキー仲間が多かった。
すでに湯沢にいるため、国道353号→国道117号を使って志賀高原に行くことに決定。国道17号を左に折れ、国道353号を西へ向かった。国道353号は山あいを抜けていく片側1車線の峠道。日陰になるコーナーなどには路面に雪が散見されるものの、それほど雪は積もっていなかった。ただ、セレナ4WD+REVO2であると、不安なく走れるのがありがたい。先の見えないコーナーでも路面の状態をあれこれ心配することなく入っていくことができ、普段と変わりない感覚で運転できる。結果、運転の疲労も少なく安全運転につながる。
■ついに凍結路面の志賀高原に到着
朝9時に東京を出発し、13時半過ぎに志賀高原へ上っていく国道292号に到着。日曜日とはいえすでに昼も過ぎているため志賀高原へ向かう車はほとんどなく、セレナ4WD+REVO2は快調に上っていく。途中から道は冬の志賀高原特有の凍結路面となり、表面には白い雪化粧が。これは、志賀高原の標高が高く気温が低いため。雪の質も新潟の標高の低い個所とは異なり、あまり水分を含まずサラサラのいわゆるパウダースノーとなる。
アイスバーンの路面の上にパウダースノーの状態は非常に滑りやすいはずなのだが、セレナ4WD+REVO2は平和そのもの。相当なスピードを出して、急ブレーキに、急ハンドルというような極端な運転をすれば何かが起きたのかもしれないが、志賀高原の凍結路面を普通に走っている限りにおいては、ブレーキを踏めば普通にブレーキが効き、ハンドルを切れば普通に曲がっていく。セレナにはABSが付いているため、ABSが効くほどのブレーキ操作をしてもきちんと止まる。止まる際にもフロントがぶれるとかリアが流れることもなく真っすぐ止まる。
非常に安心感が高く「普通だ」「普通の道を走っている感覚ですね」と、2人の会話も往路の高速道路での会話と同様なものに終始した。時折チェーンによって荒れた路面はあるが、そこを超えていく際も不快な振動は少なく進路のブレも気になるものはない。グリップの低いスタッドレスタイヤだと、急にハンドルを切った際に1、2秒空走し、その後いきなり向きが変わるなどの動きが出る場合があるがそれもない。やや、アンダーステアが強くなる程度であった。
セレナのATにはSNOWモードが用意されていて、雪道で発進の際などのスリップ状態を低減する機能があるが、上り坂、下り坂でもSNOWモードにすることなく気楽に運転できた。志賀高原から帰る際は、急な下り坂のつづら折れが続くが、そこにおいても突然タイヤが滑ることもないので安心して下ることができ、安心して曲がることができる。
志賀高原からは、信州中野ICで上信越道に乗り、長野道、中央道というルートで東京に向かうことにし、後は往路と同じく高速道路をたんたんと帰るだけかと思ったら長野IC付近で雪が舞い始め、岡谷IC付近では結構な雪に。時刻は18時を過ぎ夜の闇につつまれる中、雪の高速道路を走る羽目になった。
激しく雪が降り始めたため、高速道路の路面にはうっすら雪が積もる。諏訪ICを越えるあたりで中央道にはチェーン規制が敷かれたものの、セレナ4WD+REVO2は車線変更の際にも姿勢が乱れることなく安心感がある。速度は30~50km/hに落ちる中、いきなり前の車にブレーキを踏まれても安心してブレーキを踏め(もちろん後続車のため急ブレーキは踏まない)、とくにおかしな挙動もないので修正舵をあてる必要もない。往路の高速道路と同じく、車の流れにあわせて運転すればよいだけだ。
とくに精神的に楽だったのが、自分がスタッドレスタイヤを履いており、高速道路を走っている車が数多くある中で、もっともブレーキが効くグループに入っているということ。夜の雪の高速道路という悪条件で、車間や車速を考える際の条件を整理することができるのはありがたかった。このような場合に限らず、とくに高速走行の場合は万が一前方で何か起こったときを予測しながら運転するのが大切だが、悪条件の中ブレーキが効く車を運転しているという安心感は重要だ。過信は禁物ではあるものの、刻々と変化する路面状況のなか、不必要な疲れが蓄積することもなかった。
スタッドレスタイヤのメリットとして、雪道でのグリップが高い、チェーンをよっぽどな時以外は付けなくてよい(スタッドレスタイヤでもチェーンの携行は必要)というのが挙げられるが、刻々と変化する路面状況での安心があるというのも大切なポイントだろう。スタッドレスタイヤであれば、「あと少し路面状況が悪化したらチェーンを付けようかなぁ」などと悩む必要がなく走ることが可能だ。また、雪が積もっていたりいなかったり、凍っていたりいなかったりという状態が断続的に現れる路面の場合でも、チェーンを付けたり外したりという作業も不要になる。
小淵沢ICを通過する辺りで雪は雨となり、甲府昭和ICを通過する辺りで雨もやんだ。後はひたすら東京へとひた走り、668.9kmの旅を終えた。おおよそ乾いた高速道路6割、路肩に雪の積もる一般道2割、志賀高原の凍結道路1割、雪や雨が降る高速道路1割という割合で走ったが、どの路面にも不必要な気を使うことなく運転することができた。
雪の積もる状況はあと2カ月(場所によってはそれ以上)ほど続くが、スタッドレスタイヤで走ることのメリットを体感できた1日だった。雪の積もる地域の人ならもちろんではあるが、たまに雪の積もる地方に出かける人もスタッドレスタイヤの装着を検討してみてほしい。1987年公開の映画「私をスキーに連れてって」でスキーの大ブームが起き、1990年のスパイクタイヤ規制によって本格的な普及の始まったスタッドレスタイヤだが、当時と比べて雪道においても高速道路においても格段の進化を遂げている。しかも、このREVO2は、自分が普段使っているREVO1(2003年シーズン投入)と比べても、走行音が静かになり夏タイヤとの違いを見い出すことが難しいほどよくなっていたことを実感できた。
■ミニインプレッション
Car Watch編集部:谷川 潔
スタッドレスタイヤ歴20年くらい。一昨年からREVO1を使っているが、本文中にも書いたようにREVO2は圧倒的に静かなタイヤとなっていたのが印象的。志賀高原の凍結路面+表面雪という状態においても確実なグリップ感も存在した。REVO1を購入する際には、ブリヂストンのスタッドレスタイヤのラインナップが高速走行に優れたREVO1、雪道走行に優れたMZ-03と分かれており相当悩んだものだったが、REVO2に統合されることで車の形態にあわせて選べばよくなったのがありがたい。今回、極度の圧雪路面や、シャーベット状の路面に出会うことがなかったが、極度の圧雪路面についてはもともとスタッドレスタイヤが得意としている路面でもあり問題なく対応できるだろう。シャーベット状の路面については、復路の高速道路が雪のためそれに近い感じになりつつあったが、そこまで悪化せず別の機会に。
一般道、高速道路ともに夏タイヤと同様な感覚で走行することができ、しかも雪道においては過剰に滑ることなく、気楽な運転が可能だ。2人で交代しながら1日で668.9kmを走る(新名神高速道路経由で東京IC[東京都世田谷区]から倉敷IC[岡山県倉敷市]までと同様の距離)、しかも復路の高速道路では雪という悪条件でありがなら、それほど疲れが残らなかった。これは、REVO2の静かさに加え、ある程度の天候の悪化であれば対応できるというスタッドレスタイヤの安心感によるものだろう。
Robot Watch編集部:小林 隆
元ドラテク系自動車雑誌編集部所属のため、タイヤの使い方にはちょこっとだけ自信があった。とはいえ、それはスポーツ系ラジアルタイヤでの話で、スタッドレスタイヤについては“超”がつく初心者。正直な話「寒い冬は家にいるに限る」が身上なので、雪道をクルマで走ること自体が過去に数回程度の経験しかない。今回運転を交代しつつ高速道路から志賀高原の凍結路面まで体験したが、ドライ路面においてのスタッドレスタイヤの扱いやすさに驚いた。
以前スタッドレスタイヤの車に乗ったのは4年前で、そのときはタイヤノイズがうるさく、剛性感に欠ける印象を受けた。それだけに、ドライ路面においてはいくら技術が進化したといえど、あまり変わらないのではないかと思っていた。ところが、一般道でも高速道路でも夏タイヤ並に扱える。ロードノイズはうるさくないし、多少きつめのカーブでも不安定な感じを一切受けない。スタッドレスタイヤを履いていると言われなかったら、夏タイヤだと思って運転していたのではないだろうか。そう言い切ってもいいほどにドライ路面での印象がよかった。
志賀高原の凍結路面においては40~50km/h程度で慎重に運転してみた。「まるで不安感がない」というのが正直な感想だ。ごくごく普通に走る分には雪道においても不安感を感じない。この不安感を感じない理由は、今クルマがどういう状態なのか、しっかりとドライバーに伝わってくるインフォメーション性が高いからなのだろう。ドライ路面と変わらずハンドルを切れば切るだけ曲がっていくし、ブレーキを踏めば踏むだけ止まってくれる。あまりに普通に走ってしまうので、道中にあった空き地で急ブレーキを踏んでみた。挙動がどれだけ乱れるのか見たかったからだ。実際に試してみると、ABSがガツガツと効きながら、自分の思い描いていた停止位置よりも手前で止まった。「路面を咬む」という言葉がしっくりくるイメージと言えばよいだろうか、スタッドレスタイヤはここまで進化しているのかと、ただただ驚きの連続だった。
これからスタッドレスタイヤの購入を検討している方は、自分よりは少なくとも雪道の経験があるだろう。そして実際に雪道への恐怖感・不安感を十分に分かっているかと思う。REVO2はそんな人にこそ一度使ってみてほしいタイヤだ。
■URL
株式会社ブリヂストン
http://www.bridgestone.co.jp
製品情報(BLIZZAK REVO2)
http://www.blizzak.jp/
東日本高速道路株式会社
http://www.e-nexco.co.jp/
「冬のホッとドライブイベント」の開催について
http://www.e-nexco.co.jp/pressroom/press_release/kanto/h21/0109/
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【2008年9月25日】雪が降る前に準備しよう「スタッドレスタイヤ2008年モデル特集」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20080925_37767.html
【2008年11月5日】スタッドレスタイヤへの交換はこんなに簡単
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081105_38040.html
(編集部:谷川 潔)
2009年1月21日