アウディ ドライビング エクスペリエンスでQ5を試乗 ラフロードでも高速周回路でもその実力を実感 |
Q5のポテンシャルをさまざまな試乗で体感する |
アウディ ジャパンが2001年より開催している「Audi driving experience (アウディ ドライビング エクスペリエンス)」。スポーツドライビングから女性を対象にしたエコドライビングまで多くのテーマが用意されるが、今回、報道関係者向けのアウディ「Q5」を使ったプログラムに参加することができたので、その模様をお伝えする。
アウディ ドライビング エクスペリエンスは、ドイツアウディAGが監修、アウディドライビングアカデミーが企画・運営している、一般ドライバー向けプログラム。アウディオーナー以外も参加可能で、アウディの環境技術、アクティブセーフティー技術とダイナミック性能を安全に体験できる。今年も日本と、そしてドイツのサーキットやテストコースなどを使って催される。プログラムの詳細やスケジュールは関連記事を参照してもらいたい。
試乗会会場には、高速周回路や登坂路などさまざまなコースが用意される |
今回記者が参加したのは「Audi Q5 New Model Experience」。その名のとおり、5月21日に発表されたQ5をひと足先に体験できるプログラムだ。このプログラムが開催されたのは5月8日。この日はメディア関係者のみの参加であったが、16日、17日には一般参加者向けに無料で同じメニューが開催されたと言う。もちろんいずれもQ5の発表前で、参加者だけがいち早くQ5の姿と走りを体験できたことになる
開催されたのは、栃木県にある「GKNドライブライン・テストコース」で、参加者はこのテストコースを使って、さまざまなシチュエーションでQ5の走りを自分の運転で体験することができた。
記者が最初に参加したのは、ラフロードを使った体験走行。最近のアウディで採用されている「ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)」では、プログラムをオフにするモードがあるが、最新のQ5では、ESPをオフにできない代わりに、ESPの介入を遅らせる「オフロードモード」が採用されている。砂地でのフルブレーキ体験では、ESPをこのオフロードモードへ切り替えてみて、通常モードとの違いを比較する。
その違いは外から見ると一目瞭然で、通常モードではABSが作動してタイヤはロックしないのだが、オフロードモードへ切り替えると、タイヤがロックして、ブルドーザーが掘り返したようにタイヤの前に砂の山ができる。このような砂地では、タイヤがロックしたほうが制動距離が短くなるのだ。
砂地に穴を掘り、わざとスタックするような状況にしても、難なく脱出することができた |
さらに、タイヤが1輪浮いてしまうような凸凹路も体験。この日は雨のせいである程度土が締まっていたこともあり、タイヤが1輪空転するような状態でも、オンロードモードのままで脱出することができたが、より滑りやすい状態であっても、オフロードモードにすることでスムーズに脱出することができるのだと言う。
街中ではまずお目に掛かることがないであろう急な登坂路では、坂道発進が簡単にできるヒルホールドアシストや、急な下り坂を4~30km/hの範囲で設定した車速に自動で制御してくれるヒル・ディセント・コントロールを体験。まるでジェットコースターのような急斜面を、不慣れな記者の運転でも不安なく走破でき、SUVとしてのオフロードでのポテンシャルの高さを実感することができた。
続いて舗装路で緊急制動・緊急回避を体験する。雨天の白線の上などで不意にABSが作動した、なんてことはあっても、ABSの本領を体験するような機会はそうあるものではないので、これはQ5のポテンシャルを見るだけでなく、参加者自身の経験にもつながるメニューだ。
実際に経験してみないと分からないだろうが、ABSの性能を最大限に引き出す、つまり緊急制動時に最短距離で止まるためには、ブレーキペダルをけっ飛ばすように、一気に奥まで踏み込む必要がある。もちろんその後も、背中がシートバックにめり込むぐらい強くブレーキペダルを踏み続ける。こうすることで、素早く制動力を最大まで持って行くとともに、その踏み方から、Q5が緊急制動状態だと判断し、自動でハザードを点滅させて後続車への注意を促すのだ。
言葉で説明するのは簡単だが実行するのは難しく、参加者の中にはハザードが点滅しない人もたくさんいた。記者はというと、以前ABSの講習を経験したことがあったので、素早くABSを作動させ、Q5のブレーキ性能を最大限に使って短い距離で止まることができた。もちろんハザードも点滅成功。つまり一度でも経験しておくことが重要なのだ。そういう意味でも、この講習は受ける価値があると言える。
ブレーキのインストラクターを務めるのは、JAFジムカーナレディースクラスでV2の経験もある井野まり子さん | ブレーキペダルをきちんと踏めて、Q5が緊急ブレーキと判断するとハザードランプが点滅する | 踏みはじめがゆっくりだと、いくら後から強くブレーキをかけてもハザードは点滅しない |
直線でのABSを体験した後は、フルブレーキ状態で障害物をよける緊急回避や、左右で路面μ(摩擦係数)の異なる舗装路でのフルブレーキを体験。フルブレーキ状態でもハンドルが利くのがABSの最大のメリットであり、また、片輪だけが極端に滑りやすい路面に乗っている状態でも、4輪それぞれでブレーキの利き具合を制御できるESPのおかげで、制動中に大きく姿勢をみだすことがない。こうした状況も、知識では分かっていても、実際にはあまり体験できない貴重な経験だ。
また、Q5の特徴として、フルブレーキ状態でも車の状態が前のめりになりにくいということを実感することができた。インストラクターによれば、Q5が前後輪ともに同じくらい大きい径のブレーキを採用しているからとのことで、一般的な前輪のブレーキだけに頼った車と違い、後輪もしっかりと制動するので、車が全体的に沈み込むようなブレーキ姿勢になるのだと言う。
続いてコースの外周を大きく回る高速周回路で高速走行を体験。試乗車には「アウディドライブセレクト」も付いており、コンフォート/オート/ダイナミックの3つのモードを走り比べることができた。また、バンクの付いたコースを走るというのも、なかなかできない貴重な経験だ。
その走りはというと、一般的にロールやピッチが大きく、高速ではふわふわしがちなSUVだが、そんなことはまったく感じさせず、“らしくない”キビキビした走りをする。スポーツカーやセダンから乗り換えてもSUV特有のだるさに不満を漏らすことはないだろう。
高速周回路を走行。こんなバンクを走るのはなかなかできない経験だ | 「TT」(左)と「R8」(右)の試乗もできた。ちなみにバンクを走っている間は、路面が上に向かって続くので、上方向に視界の広いQ5のほうが運転しやすかった |
最後は、スキッドパッドと呼ばれる超低μ路を使っての走行だ。このスキッドパッドは、ちょうど圧雪路程度のμしかない直径100mの定状円コース。25km/hも出せばタイヤが滑り始めてしまうほど、スリッピーなコースだ。
ここをESPオンロードモードで走ると、アンダーステアやオーバーステアに対し、すぐにESPが介入する。実際にはとても滑りやすい路面なので、トラクションコントロールが介入し、アクセルを踏んでも前に進まないような状況に陥る。
そこでESPをオフロードモードにすると、ESPの介入がほとんどなくなる。スリップ率では60%程度まで許容するのだとか。インストラクターによるデモ走行では、全高1650mmのQ5が、まるでスポーツカーのようにドリフト状態のままスキッドパッドをきれいに旋回していた。
スキッドパッドの講師は、チーフインストラクターでモータージャーナリストの斎藤聡氏 | 写真右側のブロックを敷き詰めたような路面がスキッドパッド。雪道のようによく滑る | 斎藤聡氏によるデモ走行。このドリフトアングルのまま走る姿はSUVとは思えない |
記者がチャレンジすると、さすがにインストラクターほどきれいにはいかないが、ドリフト姿勢には持ち込むことができた。これがとてもおもしろくて、わずか25km/hながら、100km/hオーバーの高速周回路よりエキサイティング。途中インストラクターが同乗して指導もしてくれて、徐々にではあるがドリフトが長く続くようになってくる。このころには自分が運転している車が、背の高いSUVだということを忘れてしまうほどだ。車を降りて運転していたQ5を見ると、その容姿からは想像しがたい挙動の素直さに、あらためて驚きを覚えてしまう。
記者でもそれなりにドリフトができてしまうのはQ5のスポーツセダンのような運動性能ゆえ | 同行した田中記者も挑戦。斎藤氏が同乗してアドバイスをしてくれた | 最後は記者のハイアングルドリフト。でもこのあとスピンしましたが…… |
こういう仕事をしていると、発表前の新車の試乗など慣れたもののハズだったが、終わってみればまるで遊園地に行った子供のようにはしゃいでしまっていた。車を運転する楽しさを満喫できる上に、さらにそれを存分に味合わせてくれるQ5の潜在能力の高さを納得させられてしまう。とかくこのような試乗会では、メーカーからの一方的な安全技術のアピールに終始してしまいがちだが、このように一般参加者が自らハンドルを握り、最新技術を体験することで参加者の技術向上にもつながる企画は、他のメーカーにもぜひ参考にしてもらって、一般ユーザーが参加するより多くの機会を設けてもらいたいものだ。もちろん車に自信がなければできないイベントではあるのだが。
(編集部:瀬戸 学)
2009年 6月 5日