SUPER GT第5戦「SUGO GT 300km RACE」リポート【決勝編】 レース途中の雨により、タイヤ選択が明暗を分けた |
SUPER GT第5戦の決勝レースが、7月26日、スポーツランドSUGO(宮城県柴田郡)で開催された。夏の日差しが照りつけ、猛暑の中スタートしたレースは、直後に雨が降り、ゴール間近には路面が乾く天候の影響で、タイヤ選択が明暗を分けた。
第5戦は81周で争われ、GT500クラスは1号車「MOTUL AUTECH GT-R」(本山哲/ブノワ・トレルイエ)が優勝、2位には39号車「DUNLOP SARD SC430」(アンドレ・クート/平手晃平)、3位には18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」(道上龍/小暮卓史)が入った。GT300クラスは33号車「HANKOOK PORSCHE」(木下みつひろ/影山正美)が優勝、2位には2号車「アップル・K-one・紫電」(加藤寛規/吉本大樹)、3位には11号車「JIMGAINER ADVAN F430」(田中哲也/平中克幸)が入った。
SUPER GTは全9戦で行われ、今回のSUGOラウンドは第5戦で丁度折返しとなる。ここまでのポイントは24号車「HIS ADVAN KONDO GT-R」(J.P・デ・オリベイラ/荒聖治)が37ポイントでトップ、2位は35ポイントの36号車「PETRONAS TOM'S SC430」(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー)、3位は33ポイントで8号車「ARTA NSX」(ラルフ・ファーマン/伊沢拓也)となっている。
第4戦がマレーシア・セパンでの開催だったので、国内でのSUPER GT開催は5月4日の富士スピードウェイ以来、およそ3カ月振りとなる。土曜日のフリー走行、予選と猛暑の中で行われ、全車がグリッドに着いた時点でも太陽は照りつけ、路面温度は46度に達していた。だが、サーキットの西側、蔵王方面の空は暗く、レース中の雨は予想されていた。
14時に決勝レースはスタートした。1コーナーは予選トップの3号車「HASEMI TOMICA EBBRO GT-R」がポジションキープ、以下6号車「ENEOS SC430」、24号車「HIS ADVAN KONDO GT-R」、39号車「DUNLOP SARD SC430」、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」と続いた。
序盤から各所でバトルが繰り広げられた |
9周目の最終コーナーで周回遅れのGT300に詰まった3号車「HASEMI TOMICA EBBRO GT-R」を6号車「ENEOS SC430」が抜きトップに立ち、徐々に後方を引き離し独走状態となる。26周目にポツリポツリと雨が降り出したところからレースが動き出した。30周を前後してピットイン、タイヤ交換を行うチームが出始めるが、この段階ではレインタイヤに交換したマシンのペースは上がらない。トップの6号車「ENEOS SC430」はスリックタイヤのままでトップをキープする。一方、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」は早めにタイヤ交換を行い、浅溝のレインタイヤを選択した。
9周目にトップに立ち、一時は独走した6号車「ENEOS SC430」 | 26周目あたりから雨が降り出した | 30周を過ぎた頃から雨は激しくなった |
2コーナーで12号車「IMPUL カルソニック GT-R」に追突されスピンする38号車「ZENT CERUMO SC430」 |
33周目、雨が一気に強くなり、スリックで走るチームも全車タイヤ交換。全車がタイヤ交換を行った時点での順位はトップが6号車「ENEOS SC430」、以下1号車「MOTUL AUTECH GT-R」、3号車「HASEMI TOMICA EBBRO GT-R」、39号車「DUNLOP SARD SC430」、38号車「ZENT CERUMO SC430」、12号車「IMPUL カルソニック GT-R」と続く。
残り30周、雨は小雨、トップは6号車「ENEOS SC430」がキープ。2位以下を10秒以上離し優勝が見えてきた。ところが残り25周となった段階で雨は止み、徐々にレコードラインが乾き出す。浅溝のレインタイヤを選択した1号車「MOTUL AUTECH GT-R」が徐々にトップとの差を縮め出す。残り15周、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」が1コーナーでアウトから6号車「ENEOS SC430」を抜き、ついにトップへ。タイヤ選択の差が、ここに来て大きく順位に影響することになった。
39号車「DUNLOP SARD SC430」も6号車「ENEOS SC430」を抜き2位へ、6号車「ENEOS SC430」は100号車「RAYBRIG NSX」と18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」にも抜かれ、5位に転落した。最終ラップの1コーナーで18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」が100号車「RAYBRIG NSX」を抜き3位を獲得、1号車「MOTUL AUTECH GT-R」はそのままトップをキープして優勝した。
スポーツランドSUGOでは過去15年間優勝できなかった日産チームがそのジンクスを破り、ついに優勝することができた。2位は39号車「DUNLOP SARD SC430」、3位は18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」、GT500クラスの最終順位は以下のとおり。
最終順位 | ナンバー | 車名 | ドライバー |
1位 | 1 | MOTUL AUTECH GT-R | 本山哲/ブノワ・トレルイエ |
2位 | 39 | DUNLOP SARD SC430 | アンドレ・クート/平手晃平 |
3位 | 18 | ROCKSTAR 童夢 NSX | 道上龍/小暮卓史 |
4位 | 100 | RAYBRIG NSX | 井出有治/細川慎弥 |
5位 | 6 | ENEOS SC430 | 伊藤大輔/ビヨン・ビルドハイム |
6位 | 17 | KEIHIN NSX | 金石年弘/塚越広大 |
7位 | 36 | PETRONAS TOM'S SC430 | 脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー |
8位 | 12 | IMPUL カルソニック GT-R | 松田次生/セバスチャン・フィリップ |
9位 | 3 | HASEMI TOMICA EBBRO GT-R | ロニー・クインタレッリ/安田裕信 |
10位 | 38 | ZENT CERUMO SC430 | 立川祐路/リチャード・ライアン |
11位 | 32 | EPSON NSX | ロイック・デュバル/中山友貴 |
12位 | 35 | KRAFT SC430 | 石浦宏明/大嶋和也 |
13位 | 24 | HIS ADVAN KONDO GT-R | J.P・デ・オリベイラ/荒聖治 |
14位 | 8 | ARTA NSX | ラルフ・ファーマン/伊沢拓也 |
優勝した1号車「MOTUL AUTECH GT-R」 |
2位に入った39号車「DUNLOP SARD SC430」 |
最終ラップで3位になり表彰台を獲得した18号車「ROCKSTAR 童夢 NSX」 |
GT300クラスはスタートから81号車「ダイシン アドバン Ferrari」と33号車「HANKOOK PORSCHE」が飛び出した |
GT300クラスも雨で大きく順位が変動した。スタートで飛び出したのは81号車「ダイシン アドバン Ferrari」と33号車「HANKOOK PORSCHE」の2台。その後81号車「ダイシン アドバン Ferrari」が独走し、一時は20秒以上のマージンを稼いでいた。しかし雨が止んだころから順位が大きく変わり出す。
浅みぞのレインタイヤで走行する33号車「HANKOOK PORSCHE」は雨の強かった間は5番手まで下がるが、路面が乾き始めると再浮上。57周目に26号車「UP STARTタイサンポルシェ」を抜き3位、60周目の1コーナーで2号車「アップル・K-one・紫電」をパスし2位、67周目、ついに81号車「ダイシン アドバン Ferrari」を抜きトップに立った。
33号車「HANKOOK PORSCHE」はそのままトップをキープし優勝。第2戦鈴鹿以来の今季2勝目を挙げた。「HANKOOK PORSCHE」は今季、資金の関係で4戦しか参戦できず、今回が参戦2戦目で2勝目となった。2位は2号車「アップル・K-one・紫電」。路面が乾き始めペースダウンしたところで再度ピットインし、スリックに交換して2位をゲットした。あと1周あればトップの「HANKOOK PORSCHE」も追い抜く猛追撃を見せた。3位の11号車「JIMGAINER ADVAN F430」も終盤、スリックへの再交換を成功させた。一時は9位まで順位を落としたが、激しく追い上げて今季初表彰台を獲得した。GT300クラスの最終順位は以下のとおり。
最終順位 | ナンバー | 車名 | ドライバー |
1位 | 33 | HANKOOK PORSCHE | 木下みつひろ/影山正美 |
2位 | 2 | アップル・K-one・紫電 | 加藤寛規/吉本大樹 |
3位 | 11 | JIMGAINER ADVAN F430 | 田中哲也/平中克幸 |
4位 | 81 | ダイシン アドバン Ferrari | 青木孝行/藤井誠暢 |
5位 | 19 | ウェッズスポーツIS350 | 織戸学/片岡龍也 |
6位 | 46 | エスロード MOLA Z | 星野一樹/柳田真孝 |
7位 | 26 | UP START タイサンポルシェ | 阿部翼/黒澤翼 |
8位 | 74 | COROLLA Axio apr GT | 井口卓人/国本雄資 |
9位 | 43 | ARTA Garaiya | 新田守男/高木真一 |
10位 | 31 | avex apr COROLLA Axio | 坂本雄也/峰尾恭輔 |
ハンコックタイヤの利を活かし優勝した33号車「HANKOOK PORSCHE」 |
スリックタイヤに交換するギャンブルが成功して2位に入った、2号車「アップル・K-one・紫電」 |
3位表彰台を獲得した11号車「JIMGAINER ADVAN F430」 |
話題の808号車「初音ミク Studie GLAD BMW Z4」はスタートから最後尾を独走!? したが見事完走し17位。リアウイングの破損は…… |
ゴール直後の本山哲選手、ブノワ・トレルイエ選手 | GT500の表彰台 | GT300の表彰台 |
SUPER GT第6戦は8月23日にポッカ GT サマースペシャルとして、シリーズ最長の700kmで決勝レースが行われる。レース終了時は夜となり、ゴール後には花火も打ち上げられる恒例のイベントだ。灼熱の鈴鹿で行われるSUPER GTのバトルに期待したい。
(奥川浩彦)
2009年 7月 28日