三洋電機、エナジーソリューション事業説明会
創エネ、蓄エネ、省エネで、活エネを創出

三洋電機の提唱するスマートエナジーシステム(SES)

2009年12月10日開催



スマートエナジーシステムを手がける、三洋電機 エナジーソリューション事業統括部の花房寛統括部長

 三洋電機は12月10日、同社の進めるスマートエナジーシステム(SES)構想の説明会を開催した。スマートエナジーシステムは、同社の持つ太陽電池技術(創エネ)、二次電池技術(蓄エネ)、省エネ技術を統合的にマネジメントする(活エネ)ことで、効率よくエネルギーを使おうというもの。事業説明は、11月1日に新設されたエナジーソリューション事業統括部の花房寛統括部長が行い、その詳細を語った。

 このスマートエナジーシステムのコア技術となる二次電池技術に関しては、2010年3月より18650タイプの蓄電用標準電池システムを市場投入する。この蓄電用標準電池はリチウムイオン電池を使用し、電池容量は33.6Ahで最大出力は約1.5kW。自己診断機能を持つ通信インターフェースを内蔵し、集積しての使用にも耐えるものとなっている。

2010年3月投入予定の蓄電用標準電池システム。ラックマウントで集積していくことができる三洋電機の持つ技術を統合的に制御する

 太陽電池技術としては、結晶シリコン基板とアモルファスシリコン薄膜を用いて形成したハイブリッド型HIT太陽電池を使用。この太陽電池で作ったエネルギーを蓄電池にため、夜間など太陽電池で発電できない際に利用していくことになる。

 電動ハイブリッド自転車と太陽電池パネルを屋根に持つ駐輪場を組み合わせた小規模事業(小規模SES)、コンビニエンスストアなど店舗に太陽光発電と蓄電池システム、空調・冷蔵システムを導入した中規模事業(中規模SES)、工場などに全面的にシステムを採り入れる大規模事業(大規模SES)の3つの事業規模を想定しており、大規模事業のモデルケースとして加西工場が2010年7月に竣工する。

ソーラー駐輪場と電動ハイブリッド自転車との組み合わせで、エネルギーを効率よく利用していく。小規模SESの例徳島県庁での実証実験2009年度のエコプロダクツ大賞となった
中規模SESは店舗などを想定。広島県のローソン呉広公園店で実証実験を開始しているピーク消費電力を下げ、料金の安い夜間電力を利用することで、電力消費とコストを下げていく体育館での使用例。バックアップ電源としても使えるため、災害時の避難所としての使用にも有利だと言う

 自動車用リチウムイオン電池を生産する加西新工場では、建屋工事費の130億円とは別に約50億円を投資することで、1MWのHIT太陽電池と、1.5MWhの大容量・高電圧リチウムイオン電池システム、エネルギーマネジメントシステムを導入。これらを統合制御することで、通常の工場と比べ年間で2480tのCO2排出量の削減を図ると言う。

 また、この加西新工場には、Solalib(ソラリブ)というソーラーチャージング・ステーションを設置。太陽電池では、いくらかの透過光があるため、上部のパネルに太陽電池を用いることで、Solalibの下部では木漏れ日のような光をイメージしていると言う。このSolalibは“発電する木”とも言えるもので、下部の充電システムを使ってプラグインハイブリッド車や電気自動車、電動ハイブリッド自転車へ充電できる。花房氏は、このSolalibが各自動車ディーラーに1本設置されるような未来を想定しており、「モデルケースとしては小規模SESの導入が早いと思うが、ビジネスとしては環境意識の高い企業に対する大規模SESからになるだろう」と述べた。

大規模SESの例。2010年7月に竣工する加西工場実証実験を開始する加西工場のシステム図。EMS(エネルギーマネジメントシステム)が随所に入る形加西工場では、直流配電も取り入られ、太陽電池で発電した直流の電気をそのまま利用することも可能になっている
加西工場の管理棟の南側には、太陽電池パネルが全面的に採り入れられる。壁面との隙間を設けることで、透過光の壁面反射なども利用していく発電する木、Solalib。加西工場に設置される加西工場は国土交通省のモデル事業となっている

 三洋電機では、太陽電池や蓄電池などを含む2015年度の市場規模を4兆円と想定しており、エネルギーマネジメントシステムなどソリューション事業として2015年度に1000億円の売上げを目指すと言う。ただ、現時点の価格(太陽光発電1kWあたり約70万円、蓄電池1kWhあたり約70万円)では速やかな市場の立ち上がりは難しく、太陽電池の普及に対する国の支援施策は欠かせないものであるとした。

(編集部:谷川 潔)
2009年 12月 10日