ブリヂストン、環境タイヤ「ECOPIA EX10」発表会を開催
「2014年には日本国内のサマータイヤを100%エコ対応商品にする」

左からブリヂストン取締役常務執行役員 増永幹夫氏、代表取締役社長 荒川詔四氏、執行役員 リプレィスタイヤ販売担当 石橋秀一氏

2010年1月13日開催



代表取締役社長 荒川詔四氏

 ブリヂストンは1月13日、環境タイヤ「ECOPIA EX10(エコピア イーエックステン)」の発表会を都内で開催した。同社はECOPIAブランドで「ECOPIA EP100(エコピア イーピーヒャク)」を発売しており、ECOPIA EP100はプレミアム、ECOPIA EX10はスタンダードという位置づけになる。

 ECOPIAはECOLOGY(環境)とUTOPIA(理想郷)を掛け合わせて作られた造語で、1991年に電気自動車に装着するために開発したのをきっかけに、2002年にトラック・バス用、2005年に小型トラック・バス用、そして2008年に乗用車用を開発してきた。

 ECOPIA EX10の基本コンセプトは「環境にやさしいことを基本性能に」とし、同社の持つ技術を惜しみなく搭載しながらも、購入しやすい価格帯に設定することで、ECOPIA EX10の普及を目指す。価格はオープンプライスだが、店頭での価格はベーシックタイヤの「B'STYLE EX(ビースタイル イーエックス)」と同等ないしは安価になる見込み。

ECOPIA EX10は転がり抵抗低減とウェット性能向上の両方に有効なシリカの配置を「NanoPro-Tech」で最適化し、性能を高めた。さらに高い排水性能を発揮する「周方向ハーフサイプ」や高い制動性能を発揮する「2in1ブロック」などによりウェット性能を向上させている
ECOPIAはトラック・バス用から乗用車用まで幅広くラインアップする今後新車装着の拡大も目指すECOPIA EX10の基本コンセプトは「環境にやさしいことを基本性能に」
ECOPIA EX10の特徴

 発表会の冒頭で、同社の代表取締役社長 荒川詔四氏は昨今のブリヂストングループの環境への取り組み状況について説明。同社は2009年7月に環境に対しての取り組みを定めた環境宣言を行った。環境宣言は「モノづくり」「商品・サービス」「社会貢献」の3つの領域から環境活動を推進するという、環境への基本姿勢を表すもので、これらを「環境マネジメントシステム」「環境コミュニケーション」の2つの基盤で支える。

 モノづくりの領域では、垂直統合を重視した経営を行い、原材料から販売・サービスまで、数多くの内製企業を運営する。原材料段階ではナノレベルから設計を行い、すぐれた環境性能を引き出す技術「NanoPro-Tech(ナノプロ・テック)」の開発や、使用原材料の半減を目指すプロジェクトの推進を行っていると話す。

 生産段階では熱効率を高め、エネルギー資源の効果的な運用につながるコ・ジェネレーションシステムの導入や、産業排出物を出さないゼロ・エミッション達成のほか、全工場でエネルギーの削減に取り組んでいると述べた。

 商品・サービスの領域におけるタイヤ事業では、同社のハイグリップブランド「POTENZA」シリーズ初のエコ対応タイヤ「POTENZA S001(ポテンザ エスゼロゼロワン)」のほか、スタッドレスタイヤ「BLIZZAK REVO GZ(ブリザック レボ ジーゼット)」、スペアタイヤを不要とするランフラットタイヤを発売するなど、環境性・経済性に優れた製品を積極的に開発しており、2014年には日本国内のサマータイヤを100%エコ対応商品にすることを明らかにした。

商品・サービスの領域では、環境対応商品の紹介がなされた同社は電子ペーパーや太陽電池用EVAフィルムなどの開発も行っており、それらも環境貢献に一役買っている
2014年には日本国内のサマータイヤを100%エコ対応商品にランフラットタイヤはパンク後も一定距離の走行が可能なため、スペアタイヤが不要となる。これもまたタイヤの省資源化になる

 環境対応商品の最高峰に位置づけられるECOPIAシリーズは、素原料からの研究開発を担い、独自の技術を創出する中央研究所(2006年10月設立)や、天然ゴム、合成ゴム事業の垂直統合により生まれた。

 数ある環境問題の中で、とくに地球温暖化防止という世界共通の課題に対して、自動車分野はCO2排出量削減が求められている。その中で、「タイヤ分野は転がり抵抗を低減することでCO2削減に貢献できる」と言い、そこで開発されたのがECOPIAシリーズだ。ただ転がり抵抗を抑えただけでなく、「タイヤの基本性能となるグリップ性能といった基本性能を、高い次元で維持した」と自信を覗かせる。

 最後に、「ECOPIAのコンセプト。これこそが、タイヤメーカーであるブリヂストンの一番の環境貢献であり、ブリヂストンが持つ最高の環境技術を、お買い求めやすく、より多くのお客様の元に届けたい」と述べ、締めくくった。

取締役常務執行役員 増永幹夫氏

 次に、取締役常務執行役員 増永幹夫氏からECOPIAの概要説明が行われた。開発理念は「創って安心、買って安心、使って安心」とし、「この安心を実現するために重要となるのはCO2削減を代表とする“環境への配慮”、ウェット性、制動性などの“安全性”、騒音、乗り心地、操縦性などの“快適性”」と述べ、これらを開発・設計における3大要素に位置づけていると言う。

 安全性においては、タイヤ業界は昨年末に安全な低燃費タイヤの普及促進を図るべく、転がり抵抗係数とウェットグリップ性能を分かりやすくグレード化した「低燃費タイヤ等普及促進に関する表示ガイドライン(ラベリング制度)」を構築した。これは低燃費タイヤに地球に優しいタイヤを表現した統一マークを入れることで、消費者に適切な情報提供を行っていくものだが、ECOPIA EP100、ECOPIA EX10ともに全サイズで低燃費タイヤの性能要件を満たしていると言い、「このラベリング制度をECOPIA EX10から導入していく」と述べた。

 なお、同じECOPIA EX10でもグレーディングが異なるのは、サイズによって転がり抵抗値が若干異なるため。これは1つのブランドでサイズラインアップが多用な場合に起こりうることなのだそうだ。

低燃費タイヤ等普及促進に関する表示ガイドライン(ラベリング制度)の説明。タイヤの転がり抵抗性能とウェットグリップ性能それぞれにグレーディングシステム(等級制度)が設けられ、タイヤ個々の性能を一目で分かるものとしている。転がり抵抗係数は5等級、ウェットグリップ性能は4等級に分類されるECOPIAシリーズは全サイズとも低燃費タイヤだが、サイズによってグレーディングが異なるグレーディングが異なるのは1つのブランドでサイズラインアップが多用な場合に起こりうることだと言う

 また、同社の環境に対する取り組みについての説明もなされた。同社は原材料の調達から製品の廃棄・リサイクルなどLCA(Life Cycle Assessment)を通じてCO2削減に取り組んでいる。タイヤにおけるCO2の発生は使用時に全体の87%を占めることが分かっており、「使用時にいかにCO2の発生を抑えるかが、排出量削減へのもっとも近道」だと述べる。また、タイヤ自体の軽量化、摩耗ライフの向上なども重要なポイントだとしている。

LCA(Life Cycle Assessment)を通じての環境に対する取り組みCO2はタイヤ使用時に全体の87%を発生すると言う

 次に、ECOPIA EX10で採用される技術の紹介が行われた。ECOPIA EX10はコンパウンドに使用されるシリカを適正に配列し、それに反応する次世代変性ポリマーを結合させるNanoPro-Tech(ナノプロ・テック)技術を採用することで、転がり抵抗とウェット性能を両立したと言う。

 シミュレーション解析により転がり抵抗と摩耗ライフを予測し、構造とパターンの最適化を図ったほか、部材ごとの重量バランスを最適化することで、転がり抵抗を低減させていると述べた。

 より具体的な商品説明では、ベーシックタイヤの「B'STYLE EX(ビースタイル イーエックス)」と比較し、転がり抵抗を25%低減させたほか、ウェット性能を14%向上させた。

「NanoPro-Tech」により微細構造を制御した末端変性ポリマーをシリカと結合させ、タイヤ回転時に発生するエネルギーロスを抑制して、転がり抵抗を低減しているNanoPro-Tech、重量バランスの最適化、タイヤ回転時に発生する歪みを抑制するエコ形状の採用など、新技術を投入したB'STYLE EXに対し、ECOPIA EX10は転がり抵抗を25%低減しつつ、ウェット性能を14%向上した
執行役員 リプレィスタイヤ販売担当 石橋秀一氏

 最後に、執行役員 リプレィスタイヤ販売担当 石橋秀一氏から、ECOPIAのマーケティングプランの紹介が行われた。

 昨年度は、エコカーに対する関心が高まるとともに、エコタイヤへの意識が非常に強くなったと石橋氏は述べる。そして同社では環境に対して強い意識をもつユーザーを「環境貢献重視層」(リアルエコ)、「バランス重視層」(バランスエコ)、「節約メリット重視層」(実利エコ)とセグメントした。同社のリサーチによると、リアルエコ層は約15%、バランスエコ層は約30%、実利エコ層は約55%の比率としており、今後、バランスエコ層と実利エコ層の領域が急速に増加すると予測した。

 また、昨年の8月に行った調査では、タイヤ購入時に重視する性能のトップは「燃費のよさ」で、次いで「ウェットグリップ性能」だったと言う。その結果を踏まえ、開発したのがECOPIA EX10で、上記で述べたように、今後増加するであろうバランスエコ層と実利エコ層にはECOPIA EX10を、リアルエコ層にはECOPIA EP100というように、ターゲットを棲み分けてECOPIAシリーズをアピールするとした。

 ECOPIAシリーズのメインキャラクターにはハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオ氏を起用。キャッチコピーは「ブリヂストンの世界基準」。

消費者を大きく3タイプにセグメント。理念として環境を追求する率先・追求型を「環境貢献重視層」(リアルエコ)、一挙両得型を「バランス重視層」(バランスエコ)、環境意識もあるが経済性を優先する損得優先型を「節約メリット重視層」(実利エコ)としているタイヤ購入時に重視する性能のトップは「燃費のよさ」と「ウェットグリップ性能」ECOPIA EX10とECOPIA EP100でターゲットが異なる
ECOPIAシリーズのキャッチコピーは「ブリヂストンの世界基準」ECOPIAシリーズのメインキャラクターを務めるレオナルド・ディカプリオ氏環境タイヤ「ECOPIA」ブランドの売り上げの一部を森林整備に活用することで、日本の森を守る活動の推進を目指す「B・フォレスト エコピアの森」プロジェクト

 なお、発表会の後には、ECOPIA EX10とB'STYLE EXの転がり抵抗比較テストや、ECOPIA EX10を装着した3輪車やエコカーの試乗会が行われた。

ECOPIA EX10とB'STYLE EXの転がり抵抗比較テストの様子。同じ車でタイヤを履き変え、傾斜のついたローダーからニュートラルでの空走距離を計測それぞれ看板を掲げるところまで進んだ。結果は見てのとおりECOPIA EX10が優れる同一車両でテストを行ったため、途中でタイヤ交換を実施
ECOPIA EX10とB'STYLE EXを装着した3輪車の試乗会場。グリーンのほうがECOPIA EX10装着車両で、とくにこぎはじめの抵抗の小ささをECOPIA EX10に感じたECOPIA EX10を装着したプリウスのほか、インサイトも試乗車として用意された会場内でデモ走行を行っていたプリウス

(編集部:小林 隆)
2010年 1月 14日