メルセデス・ベンツ、「Eクラス ステーションワゴン」とクリーンディーゼル発表会
「環境対応車でも、メルセデスの価値観をすべて享受できる」

E 350 BlueTECとテンペル社長

2010年2月24日開催
東京国際フォーラム



メルセデス・ベンツ日本のテンペル社長

 メルセデス・ベンツ日本は2月24日、新型「Eクラス ステーションワゴン」と、「E 350 BlueTEC」の報道関係者向け発表会を、東京国際フォーラムで開催した。

 ポスト新長期規制に対応したクリーンディーゼル投入の発表であるとともに、Eクラス ワゴンのディーゼルエンジンモデルは世界初とあって、独ダイムラーAGのBlueTEC開発プロジェクトマネージャーであるベルント・リンデマン氏が登場し、「BlueTEC」(ブルーテック)と銘打った同社のクリーンディーゼル技術を解説した。


クリーンディーゼルを搭載したE 350 BlueTEC。ステーションワゴン(左、中)とセダンが用意される。ステーションワゴンはこれが世界初公開

尿素でNOxを低減するBlueTEC
 メルセデス・ベンツは1936年に世界初のディーゼルエンジン乗用車「260D」を発売して以来、4バルブ化やターボや直噴、コモンレールシステム、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)などで、年々厳しくなる各国の排出ガス規制に対応してきた。

 今回発表されたBlueTECはこれらに、「尿素SCR」(Selective Catalytic Reduction:選択型触媒還元)を加え、世界で最も厳しいと言われる日本の「ポスト新長期規制」(平成22年排出ガス規制)や欧州の「ユーロ6」、米国の「Tier2 Bin5」をクリアしたもの。

 尿素SCRとは、排出ガスに「AdBlue」(アドブルー)と呼ぶ尿素水溶液を噴射することで、人体に有害な窒素酸化物(NOx)を、窒素と水に分解する技術。これにより排出ガス中のNOxを従来より約69%低減する。

 米国ではこの技術を搭載したMLクラス、Rクラス、GLクラスが2009年に発売されており、同年に欧州でもEクラスセダンの搭載車が発売されている。このEクラスのディーゼルは、2010年に米国にも投入される予定。

独ダイムラーAGのBlueTEC開発プロジェクトマネージャー、ベルント・リンデマン氏世界初のディーゼル乗用車はメルセデス・ベンツによるもの日本でもメルセデス・ベンツのディーゼルエンジンは独自の地位を築き、愛好家も多い
年々厳しくなる排ガス規制を、メルセデス・ベンツは様々な技術でクリアしてきたE 350 BlueTECが搭載するOM642エンジンは、コモンレールシステムを備えた最新の直噴ターボディーゼル
BlueTECは、エンジンだけでなくDPFやSCR触媒により構成される

 BlueTECの尿素SCR搭載車は、通常はスペアタイヤを納める空間にタンクを設置し、ここにAdBlueを貯蔵する。スペアタイヤを搭載するスペースがないため、BlueTEC車はランフラットタイヤを履くことになる。

 AdBlueタンクの容量は24.5Lで、1000kmの走行で1LのAdBlueを消費するので、1充填で2万4500kmを走行できることになる。一般的なユーザーなら1~2年に1回の補充サイクルとなる。

 AdBlueがなくなるとエンジンが始動できないように制御されており、航続可能距離2000km(AdBlue残容量約2L)からメーターパネルに警告灯が点灯し、AdBlueの補充を促すメッセージがカウントダウン表示される。AdBlueの補充はディーラーで行う。AdBlueの価格は10Lあたり2000円だ。

BlueTECを搭載車とほかのEクラスの外観上の違いは、BLUE EFFICIENCYとBLUETECのバッジのみ。給油口には当然ながらディーゼル車であることが表記されている
室内もほかのEクラスと同じ。ディーゼル独自の計器もない
ステーションワゴン(上)もセダンも、ラゲッジルームの床下、本来ならスペアタイヤがある場所に、AdBlueのタンクを設置してある。スペアタイヤを積めないので、BlueTEC車はランフラットタイヤを履く
BlueTECのエンジン(左、中)とAdBlueのタンク

 

メルセデス・ベンツ日本の上野副社長

環境対応車でもユーザーに犠牲を強いることはない
 「E 350 BlueTEC」にはセダンとステーションワゴンが用意されるが、どちらも搭載するのは、3リッターV型6気筒DOHC 24バルブの「OM642」エンジン。540Nm/1600-2400rpmの最大トルクを得つつ、粒子状物質(PM)やCO2を低減していることから、リンデマン氏はこのエンジンを「パワフルなトルクと燃費効率を同時に達成できる最適のソリューション」と呼んだ。

 E 350 BlueTECの登場により、メルセデス・ベンツは直噴ガソリンターボ、クリーンディーゼル、ハイブリッドの3種類のエンジンによる環境対応車を揃える、唯一の自動車メーカーとなった。

 同社の上野金太郎副社長によれば、E 350 BlueTECの10・15モード燃費は13.4km/L(ステーションワゴン)で、「同排気量のガソリンエンジンより45%よく、すでに平成27年度燃費基準を10%以上優れた数値でクリア」しており、エコカー免税が約43万円、新車購入補助(13年超の廃車を伴なう場合)が25万円と、最大で約68万円のメリットを享受できると紹介。さらに「ディーゼルはガソリンに比べ燃料コストが安価なので、ランニングコストは同セグメントのハイブリッドモデルをもしのぐ」としている。

BlueTECによりエンジンのパフォーマンスを維持しつつ、環境性能を向上。燃費も改善され、エコカー減税の対象に

 テンペル社長は「環境対応車でもユーザーに犠牲を強いることはない。環境に優しい一方で、安全性や信頼性といったメルセデス・ベンツの価値観すべてを享受できるクルマ」「ポスト新長期規制に対応したATのディーゼル乗用車は日本初。ステーションワゴンのディーゼルモデルは世界のどの国にも先駆けて日本で発表した」とE 350 BlueTECをアピール。「メルセデス・ベンツは、単に環境に優しいドライビングテクノロジーを約束しているだけでなく、エミッションフリーに向けさまざまなテクノロジーを投入している。日本にも継続的に新しいテクノロジーを日本に導入する」とした。

E 350 BlueTECとリンデマン氏(左)、テンペル社長。オーストラリアへの異動が決まっているテンペル社長は、これが日本で最後の発表会となった

クラス最大のラゲッジルーム
 一方、Eクラス ステーションワゴンは、1977年のS123に始まり、歴代アッパーミドルクラスで定評を得てきた車種。累計販売台数は世界で100万台以上、日本でも4万台以上にのぼる。

 2009年5月に日本に導入されたW212の、セダン、クーペに続く3種目のボディーバリエーションとなるが、ラゲッジルーム容量は最大1910Lで、ステーションワゴンとしてこのクラスで最大と言う。

 この広大なラゲッジルームは、「EASY-PACKコンセプト」により使い勝手を向上。リアゲートからワンタッチで後席を折りたたむ「EASY-PACKクイックフォールド」が新たに備えられたほか、トノカバーやラゲッジネットを備えた「EASY-PACKラゲッジルームカバー」、「EASY-PACK自動開閉テールゲート」を標準で備える。またE 350 BlueTEC、E 250 CGI Blue Efficiency以外にはラゲッジルームアンダートレーが備えられ、ラゲッジルーム整理に便利な組み立て式ボックスなどが付属。オプションで荷室を仕切る用品のパッケージ「EASY-PACKフィックスキット」が用意される。

E 250 CGI BlueEFFICIENCYE 300
E 350 4MATICE 550
リアゲートは電動が標準トノカバーとラゲッジネットがついたラゲッジルームカバー
リアシートは6:4の分割可倒式でシングル・フォールディングタイプリアシートを倒して、ラゲッジネットを取り付けること もできる
ラゲッジルーム床下のトレイラゲッジルームを仕切るための箱などゲートのすぐ脇にあるレバーで、リアシートを倒せる
アテンションアシストやアダプティブハイビームアシストをはじめとするハイテク装備や、各種燃費向上技術はステーションワゴンにも搭載される青空を多用したクリーンディーゼルのTV CMは「ハイブリッドとならぶ、もうひとつの解答。」
ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドで環境対応車をラインアップ
BlueTECとステーションワゴンの発表イベントを全国4カ所で開催するディーラーでの発表会とフェアも
会場の東京国際フォーラムでは、25日まで「Blue PREMIERE」と題した発表イベントを開催している

(編集部:田中真一郎)
2010年 2月 25日