スーパー耐久シリーズ、開幕直前合同テスト ハイブリッド車も特認、車イスの青木拓磨選手も参戦 |
3月27日、28日にツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)で開幕するスーパー耐久シリーズ。その第1戦に先がけて、ツインリンクもてぎロードコースおよびスーパースピードウエイ(オーバル)で、3月14日にテスト走行が行われた。今シーズンのスーパー耐久には、新たにホンダの「インサイト」や「CR-Z」、トヨタ「プリウスEX」といったハイブリッド車の参加が認められ、耐久レースならではの燃費のよさを活かしたバトルが期待される。さらに元WGPライダーで、脊髄損傷による下半身不随で車イス生活となった青木拓磨選手の参戦が認められており、その活躍にも期待がかかる。
今シーズンは横浜ゴムのスーパー耐久専用エコレーシングタイヤのワンメイクとなる |
テスト走行に集まったのは計23台で、その内最終戦で使われるオーバルコースでテストを行ったのは4台。今シーズンは従来のST-1~ST-4クラスに加え、特認車両としてハイブリッ車の参戦も可能な、排気量1500cc以下のST-5が新設されている。また横浜ゴムより環境性能を向上させた「オレンジオイル」配合のスーパー耐久専用エコレーシングタイヤが供給されるなど、環境に配慮したモータースポーツをアピールする。
テスト走行の参加車両と結果は以下のとおり。写真はベストラップ順で掲載。
■ロードコース(4.801379Km)/ドライ
■スーパースピードウエイ/ドライ
No.28(ST-1)PETRONAS SYNTIUM TEAM(BMW Z4 E86)53.347 | No.08(ST-1)チームアートテイスト(ポルシェ997)56.055 |
No.62(ST-4)ホンダカーズ東京with G/MOTION(インテグラ DC5)58.934 | No.18(ST-4)浅野レーシングサービス(インテグラ DC5)59.322 |
開幕戦のもてぎにすでにエントリー済みのST-1車両は、テストデイでトップタイムを出したチームアートテイストポルシェ、2番手のPETRONAS SYNTIUM BMW Z4の2台のほか、昨年同様PETRONAS SYNTIUM BMW Z4がもう1台エントリーしている。いずれのチームも立川祐路選手(ポルシェ)、谷口信輝選手、柳田真孝選手(Z4)、片岡龍也選手(Z4)とSUPER GTでも活躍する現役ドライバーを起用しており、トップドライバー達による激しいバトルが予想される。また人気が高く観客数も多いSUPER GTと比較すれば、グリッドウォークなどでこうした人気ドライバーとふれあうチャンスもより期待できる。SUPER GTと比べると市販車に近いマシンで争われるS耐は、ベース車の持つ潜在的なポテンシャルの高さも要求されるだけに、より身近なレースとして楽しむことができるだろう。
■元WGPライダー青木拓磨選手が参戦
今シーズンは、1998年にバイクのテスト中の事故により脊髄損傷を負い、車イス生活を余儀なくされた元WGPライダー 青木拓磨選手が、チーム「takuma-gp team KOMACHI」よりST-4クラスに参戦する。テストデーの走行前には、記者会見が行われた。監督には、元レースクィーンで、ドライバーとしてS耐に出場した経験もある高橋佳町(こまち)さんを迎え、ル・マンやSUPER GTでの経験も豊富な土屋武士選手と共に今シーズンを戦い抜く。
青木選手は2007年よりラリーを通じてモータースポーツへの復帰を果たしている。しかしサーキットへの思いは強く、昨年よりライセンス取得の為のレースを重ね、今回14年ぶりの国内選手権への復帰にこぎ着けた。また国内トップドライバーの土屋選手は、世界を舞台に戦った青木選手に敬意を払い、また4輪の先輩として混戦が予想されるST-4クラスで共に戦う。
レース自体が今よりも華やかであった頃、レース活動やレースクィーンとして活躍した高橋さんは、「最近のレース界に感じていた閉塞感を打破したいと思っていた」とのこと。土屋選手も青木選手と共にレースの世界で何か楽しいことをできないかと考えていた矢先に、元々親交のあった高橋さんに昨年袖ヶ浦サーキットで再会。トントン拍子で話が進んだものの、S耐へ向けての準備が始まったのは12月に入ってからなのだそうだ。シビック・インテグラ中心のST-4は、FFのスペシャリスト、いわゆる「シビック乗り」「インテ乗り」がひしめくクラス。高橋さんは「国内トップドライバーの土屋選手でも、油断のできないレースになる」と監督らしい厳しい一面も見せる。その一方で、身障者も健常者も同じ土俵で戦えるモータースポーツへのチャレンジを通じて、今の時代にさらなる「夢」や「元気」をファンと共に分かち合い、そして楽しみたい、と明るい表情で語っていた。
サーキットから離れて14年間、この日のために一歩一歩困難に立ち向かいながらこの日を迎えた青木選手は、時折笑顔を見せるものの、終始感慨深げな表情で、コースに復帰できた嬉しさと、ここまでサポートしてくれた関係者への感謝の気持ちを語った。一方土屋選手は、これから始まるこのチームでの戦いをすでに楽しんでいるかのように、笑顔で会見を行った。
テストデーに行われた記者会見の模様。写真左より土屋武士選手、青木拓磨選手、高橋佳町監督 | 14年ぶりにサーキットへ帰ってきた青木選手は終始感慨深げな表情だった | 土屋選手は何やら楽しそうに会見 |
■イタリア製運転補助装置グイドシンプレックス
takuma-gp team KOMACHIのマシンには、運転補助装置「グイドシンプレックス」が取り付けられる。車いすドライバーの青木選手にとって、必要不可欠なハンドドライブシステムだ。数少ないマニュアル車に対応できるこの装置は伊グイドシンプレックスのもので、ダカールラリー参戦時にもこのシステムを採用している。
今回装着されたグイドシンプレックスで、特徴的なのがアクセル操作の方法。一般的なものがレバーで操作するのに対し、ステアリングに付くリングを引くことで操作するため、ステアリングから手を離さずに運転ができる。また、ブレーキはレバーによって行い、クラッチはスイッチによって電動で作動する。基本的なシステムは、市販車向けに作られたシステムのままだが、レースでの酷使やわずかな操作にも対応するため、レバー類などをカーボンで補強し、たわみを減らすという工夫がされている。こうした設置やセッティングは、車全体のセッティングと同様、土屋選手が代表を務めるサムライが担当し、同社のレース経験が随所に反映されている。
クラッチは、車速20km/hでアクセルOFFの時は自動的にクラッチが切れ停止状態モードとなり、その状態でアクセルを開くとまずクラッチが半クラッチ直前のスタンバイ位置まで動作する。設定したエンジン回転数まで上がるとクラッチがつながり車はスタートする。通常では個々の運転の仕方や好みでセッティングに違いが出る所だが、ローリングスタートのS耐ではあまり問題にはならないとのこと。車速が20~60km/hの範囲では別のセッティングを行っており、60km/hを超えるとスパッと切れてスパッとつながる設定になるが、実はレース中の大半はこの設定でのドライブとなる。
アクセル、ブレーキ、クラッチともに通常のペダルも残されており、土屋選手がドライブするときには、一般的なペダル操作によって運転をすることができるようになっている。
■2010年スーパー耐久シリーズ開幕
2010年のスーパー耐久シリーズが、今週末の3月27日、28日にツインリンクもてぎで開幕する。観戦券は前売りが大人(高校生以上)が3200円、子供(3歳~)が500円。当日売りは大人4000円、子供(3歳~)500円。
今シーズンは国内7戦に加え、マレーシアのセパンサーキットで行われるスペシャルステージを合わせた8戦が行われる。レーススケジュールは以下のとおり。
ラウンド | 日程 | サーキット |
第1戦 | 3月27日、28日 | ツインリンクもてぎ |
第2戦 | 5月8日、9日 | スポーツランドSUGO |
第3戦 | 5月29日、30日 | 鈴鹿サーキット |
第4戦 | 6月26日、27日 | 富士スピードウェイ |
第5戦 | 9月4日、5日 | 岡山国際サーキット |
第6戦 | 10月16日、17日 | 仙台ハイランドレースウェイ |
第7戦 | 11月26日、27日 | もてぎスーパースピードウェイ |
Special Stage | 8月5日~7日 | SEPAN Circuit |
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2010年 3月 24日