自工会、次世代自動車についての意見
次世代自動車戦略2010の達成は「野心的で大変厳しい目標」

今回の定例記者会見で会長職を退く青木哲氏

2010年4月23日開催



 自工会(日本自動車工業会)は4月23日、定例の記者会見を行い、青木哲会長は次世代自動車の普及についての意見を述べた。

 4月12日に、経済産業省は「次世代自動車戦略2010」を公表した。これは、自動車や関連産業および社会全体の中長期的な対応のあり方についての新たな戦略を、各自動車メーカーや電機メーカー、経産省、大学など産官学のスタッフで構成される次世代自動車戦略研究会が取りまとめたもの。

 その中で、日本を次世代自動車の開発・生産拠点となることを目標とし、2020年に次世代自動車(ハイブリッド車、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、クリーンディーゼル車)の普及率20~50%を目指すと発表。あわせて、環境省が4月17日に発表した地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ試案では、自動車販売台数の50%をハイブリッド車にするとの考えを明らかにした。

 それについて青木氏は、「自動車業界としても、地球温暖化対策を最重要課題に位置づけている」とし、運輸部門のCO2削減に貢献すべく、ガソリン車やディーゼル車の燃費改善とともに、次世代自動車の商品化と低コスト化に向けて最大限の努力をしていると述べる。

 いっぽうで、普及率については「実際にクルマを購入してもらえるかが鍵になる」とし、2008年度の普及率が2~3%だったのに対し、2009年度は環境対応車普及促進税制(エコカー減税)、環境対応車普及促進対策費補助金(エコカー補助金)の効果で約10%まで拡大したものの、20~50%という普及率は「野心的で大変厳しい目標」だと言う。

 次世代自動車の開発にあたっては、いくつかの課題があると言う。1つに、さまざまな車種に対応するための研究開発要員がすでにフル稼働していること。次に、2020年までに実行できるモデルチェンジの回数が1~2回しかないことを考えると、ハイペースで次世代自動車の開発/商品化するのは、人的にも時間的にも制約が大きいこと。そしてグローバル展開している日本メーカーにとって、国際競争力の観点から(次世代自動車のみならず)従来車の開発も続けていかなければならないこと、複数ある次世代自動車技術の中から、特定の技術に集中するのはリスクが大きいことを挙げる。

 次世代自動車については、「将来的にCO2削減、エネルギーセキュリティの有力な答えになると確信しており、各社とも全力で開発に取り組んでいる」と言い、政府が掲げる目標に達成するには上記の課題を解決するとともに、「政府の責任において強力な政策的支援を講じてもらわなければならない」と言う。あわせて、支援がない場合の次世代自動車の普及率は10%+α程度だろうとの見方も示した。

 今回の会見を最後に会長職から退く青木氏は、最後の挨拶を行うとともに就任してからの2年間を振り返り、リーマンショックにより自動車業界を取り巻く環境が悪化したことをもっとも印象深い出来事に挙げた。

 なお、次期会長には日産自動車 最高執行責任者(COO)の志賀俊之氏が就任することが決定している。

(編集部:小林 隆)
2010年 4月 23日