新旧ブガッティの饗宴「ブガッティ・ブランチ2010」 |
2010年3月14日の早朝、東京 六本木のアークヒルズ・カラヤン広場に、17年ぶりにブガッティの咆哮が木霊することになった。この日、自動車界の至宝ブガッティによるミーティング、「ブガッティ・ブランチ」が初めて開催されたのだ。
一定の年齢以上のスーパーカー・ファンの中にはご記憶の方も多いかもしれないが、1993年4月3日、同じアークヒルズ・カラヤン広場にて、当時の世界最速スーパーカーであったブガッティ「EB110」のジャパンプレミア・イベントが行われた。
その会場には4台のEB110に加えて、当時本国でも発表されたばかりのコンセプトカー「EB11」も登場。東京都内でパレードランも行われた。さらには、隣接するサントリーホールに於いて本場のソプラノ歌手を招いてガラ・コンサートまで開催するという、驚くほどに豪華な発表イベントは、バブル期直後のこととはいえ、当時の日本のエンスージアストの度肝を抜き、今なお伝説として語り草となっているのだ。
そして今回の「ブガッティ・ブランチ」は、新旧ブガッティ・エンスージアストによるミーティングであるとともに、17年前の発表会へのオマージュを示した、いわば復刻イベントとしての意味合いも込められていたのである。
今回のブランチ当日にカラヤン広場に並んだブガッティ車は、1920年代のヴィンテージ期に製作されたクラシックモデルが11台と、1990年代中盤に製作されたEB110シリーズ5台を合わせた16台。既に“モダンアート作品”としての評価も受けているヴィンテージ・ブガッティは、ファーストモデルたる「T13ブレシア」が2台、グランプリ・ブガッティと称される「T35」(8気筒)、「T37」(4気筒)が合わせて8台、そして8気筒スーパースポーツの「T43」が1台参加した。
一方のモダン・ブガッティ、EB110は、ハイパワー&軽量版の「EB110SS」(スポルト・ストラダーレ)が2台、スタンダード版であるとともに豪華版でもあった「EB110GT」が3台エントリー。その内の2台(EB110GTとEB110SSが1台ずつ)は、17年前の発表会場に展示された車そのものであった。
私事で恐縮だが、実は筆者はかつてイタリア・ブガッティ本社(1995年に破綻)の日本事務所ブガッティ・ジャパンに勤務していた経歴があり、1993年のEB110発表イベントを取り仕切ったのは、かつてのわが恩師である元ブガッティ・ジャパン社長、故岩城正興氏だったことから、復刻イベントにあたる今回のブランチ開催には非常に感慨深い想いがあった。
あれから17年もの歳月が経過し、自動車業界の状況やクラシックカー界も大きく様変わりしたが、ブガッティ各世代の車が持つ芸術的な美しさと、ブガッティというブランドの持つ普遍的魅力にはなんら変わりがないことを、ここに再認識することができたのである。
(武田公実)
2010年 5月 6日