NEXCO東日本、関越道に「寄居 星の王子さまPA」をオープン 寄居PA(上り)がリニューアル |
NEXCO東日本(東日本高速道路)は6月30日、関越自動車道上り線の本庄児玉IC(インターチェンジ)~花園IC間にある寄居PA(パーキングエリア)をリニューアルし、サン=テグジュペリ「星の王子さま」とコラボレーションした「寄居 星の王子さまPA」としてオープンした。前日の6月29日はサン=テグジュペリ誕生110年にあたり、この日に施設内覧会が行われた。本記事では、前日の内覧会と、オープン日に行われた式典の模様をあわせてお届けする。
寄居 星の王子さまPAは、NEXCO東日本のSA(サービスエリア)・PAのコンセプトである“クルマの旅に、もうひとつのよろこびを”に基づいて計画・施工されたもの。星の王子さまとコラボレーションしたことで、その世界観をPAに再現した。30日のオープニングセレモニーでは、NEXCO東日本の代表取締役会長兼社長の佐藤龍雄氏をはじめ、フランス観光開発機構のフレデリック・メイエール氏、サン=テグジュペリ権利継承者のオリビエ・ダゲイ氏が挨拶に立った。
佐藤会長は、「今回、星の王子さまをモチーフに、その世界観をPA全体で表現しました。テーマ型PAはNEXCO東日本としては初の試みとなります。今回の試みがフランスと日本を結ぶ掛け橋になってくれれば幸いです」と挨拶。メイエール氏は、「観光はフランスにとって第一の産業です。年間2400万人がフランスを訪れます。このPAは年間160万人の方が利用されると聞いています。ここでフランスの魅力に触れ、さらにフランス本国に来ていただければ素晴らしいことです。星の王子さまの心で皆さまをおもてなししたいと思います」と語った。
最後に挨拶したダゲイ氏は、「モチーフに星の王子さまを選んでいただいて光栄です。このPAによって、星の王子さまは現在でもモダンであり続けることを示していただいた。サン=テグジュペリにとっても、素晴らしい誕生日のプレゼントです」と語った。
挨拶の後、テープカットが行われ、各施設をオープン。先着100名の利用者には、記念品が贈呈された。
星の王子さまの世界観はPA全体で表現されている。施設は中央にレストラン「ル・プチ・プランス(LE Petit Prince)」や、ショップ「サンク・サン・ミリオン・ドゥ・グルロ(Boutique Cinq Cents Millions De Grelots)」、そしてシンボル塔の連なる棟があり、右手はたっぷりとスペースを取ったトイレ棟。左手には少し離れてサテリットと呼ばれる飲食外売店が置かれ、さらにその左には星の王子さまのスタチュー(像)とバラ園、ガーデンが配置されている。
どの施設も、サン=テグジュペリゆかりの地である南フランス・プロバンス風のデザインが施されており、とてもPAとは思えないほど。それは飲食店だけでなく、ゴミ箱や旧来のPA施設にまでおよんでいる。そして目を引くのはあちこちに描かれたフランス語のメッセージ。「On ne voit bein gu'avec le coeur, L'essentiel est invisible pour les yeux.」(心で見なくちゃ物事はよく見えないということさ。肝心なことは目に見えないんだよ)といったように、星の王子さまの中の印象的な文章が施設にちりばめられている。星の王子さまのファンであれば、これらがどこから引用されたものか探すだけでも楽しめるはず。
看板などもすべてフランス語。発見した唯一の日本語の看板は「お手洗い」と「喫煙所」だけだった。これでは何がどこにあるかわかりづらいと思ったが、施設のパンフレットが用意されていて、それに各施設がていねいに解説されている。また、施設の配置がシンプルなので、しばらく眺めていれば理解できるだろう。
■レストラン
レストラン「ル・プチ・プランス」では、プロバンス地方のカジュアルな家庭料理がブッフェ(バイキング)スタイルで楽しめる。プロバンス地方は地中海に面しており、ローマなどの影響も強く受けている。北部のソースを中心としたフランス料理とは異なり、オリーブオイルをふんだんに使った、素材を活かした料理法が特徴。星の王子さまPAで提供する料理も、地元の農家や農場と協力した新鮮な素材を利用している。特に豚については、肉のきめが細かく、臭みのない「古代豚」を使用しているとのこと。これも近隣の農場で飼育されていると言う。
ブッフェ料理は1280円で食べ放題だが、そのほかに単品料理もオーダーできる。注意したいのはレストランが20席強と少々狭いこと。晴れていれば屋外のオープンテラスも利用できるが、料理の内容からすると行列ができてもおかしくないだろう。
■ショップ
ショップ「サンク・サン・ミリオン・ドゥ・グルロ」は日本で2番目となる星の王子さまトータルショップ。ショップにはステーショナリーやアクセサリー、ストラップなど、世界各地の星の王子さまグッズが置かれている。
奥の壁には一面、星の王子さまの本が並ぶのが圧巻。そのほかプロバンス地方の特産物や、この星の王子さまPAでしか販売されないオリジナルグッズも用意されている。なお、店名は「5億の鈴」という意味で、星の王子さまが自分の星に帰っていく最後の場面から来ていると言う。
■サテリット
向かって左手のサテリットには、ソフトクリーム「マニフィック・イマージュ(MAGNIFIQUE IMAGE)」、カフェ「サン=テグジュペリ(CAFE SAINT-EXUPERY)」、オムライス専門店「シャセー・レ・ブル(Chassez les poules!)」、そしてパン屋「シュブー・トゥ・ドレ(CHEVEUX TOUT DORES)」が並ぶ。
カフェではサン=テグジュペリが生きた1930年代のコーヒーのブレンドをベースに、現代にもあうようアレンジされたヨーロッパ風のコーヒーが味わえる。価格は200円から。パン屋では店内で粉をこねるところから始めた焼き立てのパンが味わえる。オムライスも注文してから調理するというていねいさ。レストランに行くほどお腹が空いてないのなら、このサテリットがお勧めだ。
■ガーデン施設など
サテリットの左手には、PAの入口側に向かってガーデンが広がっている。ここにも星の王子さまのモチーフが活かされている。入口近くには「キツネのほこら」。物語と同じようにリンゴの木の下に作られている。そして「渡り鳥のプロムナード」が続き、王子さまが出合った各惑星の登場人物が迎えてくれる。ガーデンの奥にはぶどう園。これはワインの産地でもあるプロバンス地方に由来している。一番奥には喫煙所が用意されている。これらのガーデンを眺めながら一服できる、ちょっとぜいたくな喫煙場所である。
星の王子さまPAは、ミニテーマパークと呼べるほど、しっかり作り込まれていた。関越道の上り線にあるため、軽井沢や新潟旅行の帰りに、もしくは東京に出かける途中に、ぜひ訪れてほしい。最後に施設にちりばめられたメッセージを集めてみた。どこに描かれているか探してみてほしい。
(西尾 淳(WINDY Co.))
2010年 6月 30日