日産、“キング・オブ・ミニバン”新型「エルグランド」発表会
「ライバルとは比較にならないデザインと乗り心地」

志賀俊之COOと新型エルグランド。志賀COOは新型を個人的に購入したと言う

2010年8月4日開催



 日産自動車は8月4日、同日発売した新型ミニバン「エルグランド」の発表会を、横浜の日産グローバル本社で開催した。

 新型エルグランドは、従来モデルの持つ風格を保ちながら、「特別感」「最高級」「最上質」を感じられる室内空間、クラストップレベルの燃費性能、使い勝手のよい装備類など、すべての面において性能を進化させたと言う。

 エンジンはV型6気筒DOHC 3.5リッターの「VQ35DE」と、直列4気筒DOHC 2.5リッターの「QR25DE」のラインアップとなり、VQ35DEの最高出力は280PSまで高められ、QR25DEは低速から発生する高トルクによるレスポンスのよさを特徴とした。

 トランスミッションはすべて6速マニュアルモード付きエクストロニックCVTを採用し、高い燃費性能を実現。3.5リッター車では4WD全車および2WDの一部グレードがエコカー減税(環境対応車普及促進税制)に適合し、自動車取得税および自動車重量税が50%減税されるとともに、2.5リッター車では全車で自動車取得税および自動車重量税が75%減税される。

ボディーサイズは4915×1850×1805~1815mm(全長×全幅×全高)
キャビンまわりを囲うようにクロームモールがあしらわれる全グレード18インチホイールを標準装備する従来の一般的なミニバンでは、居住空間をギリギリまで取りたいためウエストラインとサイドウインドーが同じくらいの位置にくるが、新型エルグランドはサイドウインドーの位置が室内側に絞られている。こうすることで土台が上屋をしっかり支えるような演出がなされている
新型でも水平/垂直で構成したリアコンビランプが採用された全グレードとも6速マニュアルモード付きエクストロニックCVTを採用
フロント、サイド(×2)、リアのカメラを用いてアラウンドビューモニターの表示を行う
直列4気筒DOHC 2.5リッターの「QR25DE」エンジンV型6気筒DOHC 3.5リッターの「VQ35DE」エンジン
インストゥルメントパネルでは艶のあるグラデーション木目調パネルやクローム加飾がふんだんにあしらわれるセンターコンソールボックスはドリンクホルダーのほか小物入れもあるステアリングスイッチでオーディオ、ナビ、ハンズフリーフォン、ボイスコマンド、インテリジェントクルーズコントロールの操作が行える
全グレードとも車両情報ディスプレイ付きファインビジョンメーターを採用。瞬間燃費、平均燃費、平均車速、航続可能距離などの表示が可能
3列目シートは6:4分割可倒式7人乗り仕様では2列目がキャプテンシートになる。シート一体型オットマンやシートバック中折れ機構などにより、快適な居住性を実現した運転席。ダークエスプレッソカラーの本革シートはハイウェイスター プレミアムの専用カラー
2列目シートの一体型オットマン機構は使用者の好みの位置で固定できる
3列目シートは自動で格納と復帰ができる
自動格納/復帰ボタンバックドア下端のスイッチを押すだけでバックドアを閉じられるオプション設定のボーズ5.1chサラウンド・サウンド付後席プライベートシアターシステムは11インチの大型ワイドモニターを採用。従来の9インチモニターより画面比は約1.6倍になったと言う
8人乗り仕様のため2列目はベンチタイプだが、大型アームレストを採用したことでキャプテンシートのような快適性を実現する250ハイウェイスターのシート。カラーはブラック/ベイブラウン(ネオソフィール/ジャガード織物)
志賀俊之COO

 発表会の冒頭の挨拶で、志賀俊之COOは「“高級ミニバン”市場は初代エルグランドが切り開いたが、ライバルの台頭によりトップの座を奪われてしまった。私自身、悔しい思いをした」と心中を語る。

 その悔しさをバネに新型エルグランドの開発が始まり、「エルグランドに求められているもの」「エルグランドでしか味わえないもの」は何かという点を振り返り、「エルグランドの持つ本来の価値を進化させるとともに、時代にマッチした価値を持たせることを開発陣に要求した」と言う。

 そして今回登場した新型エルグランドはその要求に見事に応えてくれたと言い、完成度の高さからキャッチコピーを「キング・オブ・ミニバン」とした。この言葉には、高級ミニバン市場におけるトップブランドを奪回し、王者として復活するという強い思いが込められていると言う。

商品企画本部 商品企画室 チーフ・プロダクト・スペシャリスト 平野剛志氏

 商品概要の説明は、商品企画本部 商品企画室 チーフ・プロダクト・スペシャリストの平野剛志氏が行った。

 歴代エルグランドは、個性的なクルマとして新しい市場を開いてきたモデルで、「ゆるぎない存在感」「パイオニア精神」がエルグランドのDNAと説明。新型エルグランドを開発するにあたり、従来のエルグランドで満たされていないニーズを調べたと言う。それが「高速道路で安定感があり、安心できること」「存在感があっても怖く見えないデザイン」「家族(奥様)が購入に賛成してくれる」で、この3点を解決することに挑戦した。

 そして完成した新型エルグランドのアピールポイントは3点。1つはしっかりとエルグランドと分かりながら、新しさを感じられるデザインとしたこと。2つめはクルマは移動しているときの快適性がもっとも重要であることから、“高揚”と“くつろぎ”を極めたと言う。3つめはこのクラスでは実現が難しかったと言う「意のままの走り」「燃費性能」に挑戦したほか、スマートな使い方をサポートする、考え抜かれた装備類と取りまわしのよさを追求した点だと紹介した。

エルグランドのDNAは「ゆるぎない存在感」と「パイオニア精神」従来のエルグランドで満たされていなかったニーズ商品コンセプトは「ダイナミック&ラグジュアリー エモーショナル・マルチパッセンジャーカー」
新型エルグランドのアピールポイントグレード構成。2.5リッター車は全車がエコカー減税により自動車取得税と自動車重量税が75%減税され、3.5リッター車は4WD全車と2WDの一部グレードが50%減税を受けられるユニットバリエーション
チーフ・ビークル・エンジニア兼製品開発部長 金子晃氏

 パワートレーンや装備類の概要はチーフ・ビークル・エンジニア兼製品開発部長を務める金子晃氏が説明を行った。

 平野氏が語っていた「意のままの走り」を実現するべく、新型エルグランドはFF用のDプラットフォームを採用した。駆動方式をFRからFFとし、エンジン搭載位置の変更、大容量薄型燃料タンクの採用などにより、低重心・低床フロアを実現した。これにより、先代エルグランドよりも95mm全高を低くしながら、1列目シートでは130mmフロアを下げることに成功し、高い走行性能を実現するとともに十分な室内空間を確保できたと言う。

 また、優れたハンドリングを実現するべく、車体は高剛性フレームとしたほか、操縦安定性と乗り心地の向上に寄与するマルチリンクサスペンションをリアに採用したことなどにより、ひとクラス上の乗り心地も実現したと言う。

 乗り心地を向上させることを目的に、シートにもこだわった。7名乗りには助手席と2列目シートで同時に使用できるトリプルオットマンシートを採用するとともに、オットマンはシート一体型とした。さらに2列目シートにはシートバック中折れ機構を備え、座り心地には徹底的に配慮したと言う。

 一方で女性ドライバーも扱いやすいよう、最小回転半径をひとクラス下のミニバン並みの5,7m(18インチ車)としたことで、見晴らしのよさ、取りまわしのよさを高めた。また、アラウンドビューモニターも「駐車ガイド機能」「フロント/リアワイドビュー機能」「ナビ連動フロントワイドビュー機能」を加えたことで、とくに駐車時のドライバーの負担を軽減させている。

 こうした装備を備えることで、家族(奥様)が購入に賛成してくれる仕様に仕上げていると言う。

プラットフォームはFF用のDプラットフォームを採用エンジンはV型6気筒DOHC 3.5リッター「VQ35DE」と直列4気筒DOHC 2.5リッターの「QR25DE」をラインアップ。トランスミッションは全車CVT最小回転半径はクラストップレベルの5.7m(18インチ装着車)
スライドドアやリアゲートなどは使い勝手を重視してワンタッチで操作できるボーズ5.1chサラウンド・サウンド付後席プライベートシアターシステムは全グレードにオプション設定される
グローバルデザイン本部 プロダクトデザイン部 プロダクト・チーフ・デザイナー 大月圭介氏

 デザインについては、グローバルデザイン本部 プロダクトデザイン部 プロダクト・チーフ・デザイナーの大月圭介氏が解説した。

 新型エルグランドは、最適な全高の中で、どれだけ分厚くかつ重心が低くできるかがポイントだったと言う。分厚いフロントフェイス、グラマラスなアンダーボディーなどを特徴に、エルグランドらしさを表現するため水平/垂直で構成したリアコンビランプを採用。また、キャビン全周をとりまくクロームモールティングも1つのハイライトとし、効果的なアクセントを加えている。

 インテリアは快適さをテーマに、乗る人すべてが仕事や家庭を離れ、第3のプライベート空間(高揚感、プライベート感)を感じられるよう意識したと言う。つややかな高級感のあるインテリアでは、センターからドアに流れるグラデーション木目調パネルを特徴としたほか、カラーにもこだわり、基調色をブラックとしながら、茶系のアクセントを効果的に使うことで上品に仕上がったと紹介した。

先代エルグランドよりも「安定感」「ワイドスタンス」を際立たせた乗る人すべてが仕事や家庭を離れ、第3のプライベート空間を感じられるように仕上げたと言うインテリアは艶やかで豊かな高級感あふれるものとした

 なお、プレゼン終了後の質疑応答ではFF化されたことについての質問があった。これに対して平野氏は「快適な空間を作るにはまず上屋(ボディー上部)をしっかり固定しなければならない。そのためには低重心化が重要という点が1つ。もう1つは燃費が重要なファクターであり、それを解決する方法がFF化で、これは開発当初からの決定事項だった」と説明。

 また、ライバル車(具体的にアルファード/ヴェルファイア)と比較したときの優位性について金子氏は「デザインの時代感が違う、高級さが違う。あとは乗っていただくと乗り心地が違うことを体感していただけるはず。比べものにならないということを伝えておきたい」と説明し、その完成度の高さに自信を覗かせた。

(編集部:小林 隆)
2010年 8月 4日