SUPER GT第6戦鈴鹿でエヴァンゲリオンレーシングはリタイヤ
ノーポイントによりシリーズタイトル争いからは脱落か?

予選では9位を獲得したが、決勝は62周でリタイヤとなったエヴァンゲリオンレーシング

2010年8月21日、22日開催



 8月21日、22日、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で2010 AUTOBACS SUPER GT第6戦「第39回 インターナショナル ポッカ GT サマースペシャル」の決勝が開催された。レース結果などは別記事で紹介しているとおり。本記事ではCar Watchの読者に人気の高い、エヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細、マシン、ドライバー、レースクイーンのフォトギャラリーなどをお届けしよう。

前戦の3位でポイントは22点。第6戦鈴鹿でのウェイトハンデは44kgになる

 エヴァンゲリオンレーシングは前戦SUGOで3位表彰台を獲得。8戦中5戦を終え、ドライバーズポイントは22点で8位。トップの7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7(谷口信輝/折目遼)は44点なので、ここで上位入賞をすればシリーズチャンピオンの可能性が残される。第6戦まではウェイトハンデが獲得ポイントの2倍なので、31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは44kg、7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7は88kgとなる。第7戦はウェイトハンデが等倍、最終戦はウェイトハンデなしとなるので、高得点を獲得できる可能性の高い重要な1戦だ。

 チームは鈴鹿に向け空力性能を大幅に改善、ダウンフォースの向上を図った。また、猛暑に加えシリーズ最長の700kmレースのため、昨年まで31号車をドライブしていた、坂本雄也選手を第3ドライバーとしてリザーブし、連続表彰台獲得に向け、十分な体制で挑むこととなった。

公式練習(8月21日、10時5分~11時50分)
 今回はマシンセッティング能力と安定感の高い松浦選手を中心にプログラムを進める計画だ。最初のセッションは松浦選手から走行を開始し、タイヤ比較、マシンセッティングを行った。松浦選手は積極的な周回を重ね、改良を加えた空力性能を評価。狙いどおりのダウンフォース量も確保でき、まずまずのマシンバランス。タイヤとシャシーのマッチングが少し決まらず悩むが、おおむね良好な滑り出しとなった。

 セッション終盤で嵯峨選手にドライバー交代しマシンの速さを確認。その後、特性の違うタイヤを評価し、少し長距離向きではないタイヤをチョイス。最終的に作戦の方向性を変え、そのタイヤにマシンセッティングを合わせることにした。予選のアタックシミュレーションは行わず、タイム的には25周を周回した松浦選手が出した2分10秒644がベストタイム、GT300クラス10番手とまずまずの結果となった。嵯峨選手は6周走って11秒892、坂本選手は4周走って14秒056となった。

 セッションのトップは2号車 アップル・K-ONE・紫電(加藤寛規)の2分09秒207、2位は74号車 COROLLA Axio apr GT(井口卓人)、3位は7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7(谷口信輝)となった。

公式予選(8月21日、13時25分~14時10分)
 今回の予選はノックダウン方式。1回目の予選で基準タイムをクリアすればノックダウン予選に進むことができる。松浦選手が2分10秒810、嵯峨選手が12秒603、坂本選手が12秒609でなんなく基準タイムをクリアした。

 セッションのトップは86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3(関口雄飛)の2分09秒031、2位は26号車 CINECITTAタイサンポルシェ(密山祥吾)、3位は2号車 アップル・K-ONE・紫電(加藤寛規)で31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは11位となった。

ノックダウン予選(8月22日、15時10分~)
 ノックダウン方式の予選は、基準タイムをクリアした22台がセッション1に参加し16位までがセッション2に進むことができる。セッション2は16台中10台がセッション3に進める方式だ。同じドライバーが連続したセッションを乗ることはできないルールなので、ドライバーの腕の差があると上位進出は難しい。また、スーパーラップ方式と違い、混走で走るので、クリアラップが取れないとタイムを出しにくくなる。

 チームはセッション1を嵯峨選手、セッション2を松浦選手、セッション3を再び嵯峨選手の順で挑むことにした。16位以内に入らないと次に進めないセッション1は、NEWタイヤで臨んだ嵯峨選手が2分10秒129で難なく14番手でクリア。セッション2は再度NEWタイヤを投入し松浦選手がアタック。クリアラップがほとんど取れない状況の中、2分09秒185を出し9番手でセッション3への進出を決めた。

 いよいよスターティンググリッドを決めるセッション3。前戦SUGOで予選2番手を獲得した嵯峨選手がアタックに臨むが、コース上はトラフィックが厳しく、クリアなアタックができない状況。結局まともなアタックができず2分09秒660で無念の9番手となる。

 今回は長距離の700kmレースなので、予選順位は普段ほど影響はないが、マシンパフォーマンス、横浜ゴムのタイヤパフォーマンス、ドライバーパフォーマンスが高かっただけにクリアラップが取れなかったことは悔やまれた。


ナイトセッションを走る31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラ

ナイトセッション(8月22日、18時30分~19時)
 昼間よりもやや気温も路面温度も下がった、鈴鹿700km恒例のナイトセッション。31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは少しセットを変更し、決勝に向けてバランスのレベルを改善した結果、いきなりトップタイム。

 その後のコンスタントタイムも非常に安定しており長距離を見据えたセットは完璧に近かった。嵯峨選手もドライバー交代しバランスのよさに満足。最終的に松浦選手が前半に出した2分10秒365のタイムがクラス3番手。決勝は作戦しだいでは表彰台が見える楽しみなレース展開が期待された。

ピット&イベント
 鈴鹿の夏を締めくくるビッグイベントということもあり、サーキットには予選日から多くの観客が詰めかけた。土曜のピットウォークからピットロードは人が溢れるほどの大賑わい。GPスクエアのステージにもファンがたくさん集まっていた。今回はエヴァンゲリオンレーシングとしてGPスクエアにグッズショップも出店。現物を見ながら買えるということもあり、Tシャツなど多くのグッズが売れていた。

 エヴァンゲリオンレーシングの人気は高く、ピットウォークでも、キッズウォークでもカメラの砲列が集まっていた。今回、サーキットでは3人のレースクイーンが初めて一緒に登場した。綾波レイ役の水谷望愛さん、式波・アスカ・ラングレー役の千葉悠凪さん、真希波・マリ・イラストリアス役の和泉テルミさんの3人は猛暑の中、笑顔を振りまいていた。


ピットウォークではレースクイーンにカメラの砲列が集まった猛暑の中、プラグスーツを着てサインをする嵯峨選手松浦選手もミニカーにサイン
レースクイーンはステージでも大人気今回はグッズ販売も実施
31号車のモデルカー。人気も高かった

フリー走行(8月22日、9時55分~10時40分)
 前日よりもさらに気温も路面温度も上がった、決勝朝のフリー走行。予選9番手からのスタートとなる31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラはスタートドライバーを務める嵯峨選手からコースイン。昨晩立てた作戦に基づきタイヤライフを重点的にチェックし松浦選手へとドライバー交代。GT300ポールポジションの26号車 CINECITTAタイサンポルシェがシケインでクラッシュし赤旗中段もあったが、31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラはトラブルもなく終始タイヤライフ確認を行い7番手タイムのセッションを終了した。

決勝(8月22日、15時~)
 スタート時の気温は34度を超える猛暑。その暑さの中、700kmの長丁場ではいかにセーフティに速く走り、クラッシュや接触による破損リタイヤ等を避けチェッカーを受けることが重要となってくる。上位入賞のためには、グリップダウンの小さいヨコハマタイヤのアドバンテージを生かし、いかにプッシュして上位で走行するかがポイントだ。

 今回はレギュレーションで3回のピットストップ、ドライバー交代が義務づけられている。31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラは嵯峨選手→松浦選手→嵯峨選手→松浦選手で4つのスティントを担当することにした。

レース直前の31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラスタートドライバーの嵯峨選手が乗り込むスタートを待つ嵯峨選手
グリッドに向けピットを出るグリッドに着いたマシンと綾波レイ役の水谷望愛さん
式波・アスカ・ラングレー役の千葉悠凪さん真希波・マリ・イラストリアス役の和泉テルミさんグリッドウォークでもマシンのまわりはファンがいっぱい
坂本雄也選手は決勝で乗ることはなかったセカンドスティント担当の松浦選手は余裕のサムアップ
決勝スタート。予選順位をキープし、9位で1コーナーへ

 スタートを務める嵯峨選手は、スタートでの混乱に巻き込まれないように慎重にタイヤに熱を入れながらフォーメーションラップを走行。全車がストレートに戻り、GT300は各車一斉にクリーンなスタートが切られた。長丁場ということもありGT500もGT300も慎重なスタート、大きなクラッシュも無く1コーナーを駆け抜けた。

 9番手からスタートを切った嵯峨選手は1周目は順位をキープ。2周目に前を走る5号車が遅れて8番手にポジションアップした。7位を走る2号車 アップル・K-ONE・紫電に追いつき、ペースが上がらない9号車 初音ミク X GSRポルシェと3台による6位争いを展開した。

S字で8位の5号車に肉薄8位にポジションアップするが、後方から62号車が迫ってきた6位争いをする9号車、2号車の背後に迫った

 後方から追い上げてきた62号車 R&D SPORT LEGACY B4に抜かれ8位に後退したが、順位を落としてきた9号車の背後に迫り果敢に攻め立てポジションアップを狙った。だがそのプッシュが仇となり6周目に単独スピン、すぐにコース復帰するが10秒ほどのタイムロスで18番手まで後退した。

 前を走る17番手には昨年のチャンピオンマシン19号車 ウェッズスポーツIS350、後ろを走る19番手にはポイントラインキング1位の7号車 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7となり、ベテランに挟まれてレースをすることになった。

62号車に抜かれ9位に後退ペースの上がらない9号車に迫ったが……スピンし18位に後退。17位の19号車と19位の7号車に挟まれる

 スタート直後の3周目には2分10秒台、その後も12秒台で走行していたが、スピンによりタイヤを痛めてしまい、2分13秒~16秒台までペースダウン。8周目には7号車に、12周目には27号車、14周目には5号車に抜かれたためGT300では最速の16周でピットインしタイヤ交換、松浦選手にドライバー交代し追い上げを開始した。

タイヤを傷め、ペースが上がらず7号車に攻め立てられる7号車に抜かれ、27号車が背後に迫る
5号車が迫ってきた5号車にも抜かれ、早々にピットイン
松浦選手が順位を上げ、8位争いをする26号車と7号車の背後まで迫った

 ピットインで22位まで後退するが、松浦選手はその後、タイヤを労りつつ、ポジションを元の位置まで戻すレース展開となった。安定感に定評のある松浦選手は2分11秒~13秒のペースで周回を続け、他車のトラブルやピットインで順位を挽回、8番手まで順位を戻すことができた。やや長めの34周の走行を終え、50周でピットイン、再び嵯峨選手にステアリングを譲った。

 コースに戻るとポジションは13番手、レースはまだ半分以上残っているのでポイント獲得は充分可能だ。嵯峨選手は落としたポジションを挽回しようと再度プッシュし続けるが、ストレートスピードに勝る87号車 JLOC ランボルギーニ RG-3がなかなか攻略できない。10周にわたり激しい攻防が続いた。


嵯峨選手はピットアウト後87号車と10周にわたりバトルをしたが……

 61周目、前を走る87号車をスプーンカーブで捕らえようとした瞬間ブレーキングポイントが合わず、後方から87号車に突っ込む形でクラッシュ。双方共に、即座に走行に移ったが、後方から突っ込んだ31号車 エヴァンゲリオンRT初号機aprカローラのダメージは想像以上に大きく、緊急ピットインしたがフロントまわりの修復が不可能と判断。700㎞レースの折り返し地点にきたところで無念のリタイヤとなった。


フロントを大破しピットイン。残念ながらリタイヤとなった

 マシンパフォーマンス、タイヤパフォーマンスが高かっただけに、もっとセーフティにレースを組み立てれれば、上位入賞が狙えたので非常に悔やまれる結果となった。事実、後退した際に同じポジションを走っていた19号車は4位、7号車は6位でゴールしていることを考えると、もう少し我慢のレースをするべきだったと思われる。

 ドライバーズポイントは22点のまま変わらず、ランキングは8位から9位に後退、レースで2位になった43号車 ARTA Garaiya(新田守男/高木真一)が55点でポイントトップに浮上、その差33点で、残りは2戦と厳しい状況になってしまった。

 次戦は9月11日、12日の富士スピードウェイ。エヴァンゲリオンレーシングの応援バスツアーや、予選後に映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の上映があるなど盛り沢山の内容となっている。


 嵯峨選手、松浦選手と金曽チーム代表のコメントは以下のとおり。

嵯峨宏紀選手
 「予選でセッション3まで進めたことで、速さを確認・発揮できた半面、決勝では上手く流れを呼び寄せる力が足りなかったと感じています。まだまだ実力不足であることを再認識し、今後のレースでは今以上にストイックにレースに取り組んで行きたいと思います」

松浦孝亮選手
 「今回ポイントを取れなかったことで、タイトルの可能性を逃してしまったのは非常に残念。マシンにスピードはあったし、確実にマシンもタイヤもよくなってきているけれど、決勝において、今回は運が味方をしてくれなかった部分が大きかったと思います。タイトルの可能性は逃したけれど、残り2戦も姿勢は変わらずにとにかくベストな走りをしたいと思っています」

apr代表 金曽裕人
 「アグレッシブな気持ちはドライバーとしての本能であり、それを抑える必要はないが、ピット側から、もっと冷静なレースを組み立てさせるべきであったと反省が残る。マシンパフォーマンスもタイヤパフォーマンスも非常に高かっただけに悔やまれるが、まとめあげる力が不足している。それが現在のチームの実力であり、どの様な展開でも確実に表彰台を狙える力を付けなければならない。今回ノーポイントによりシリーズタイトル争いからは事実上脱落したが、まだかすかな可能性はある。次回の富士はエヴァンゲリオンのイベントも盛りだくさんなので光が見える限り我々は攻め続ける」

フォトギャラリー
 ここではエヴァンゲリオンレーシングのマシン、ドライバー、レースクイーンの写真を掲載する。画像をクリックすると、フルHD解像度(1920×1080ピクセル)などで開くので、その迫力の写真を楽しんでほしい。

(奥川浩彦)
2010年 8月 30日