スバルの新世代水平対向エンジン「FB型」の疑問点を確認
名前の意味は? ターボや6気筒化は? トヨタとの共同開発車への搭載は?


スバルの新世代水平対向エンジン「FB型」。写真は水平対向4気筒 DOHC 2リッターのFB20

 9月23日に発表されたスバル(富士重工業)の新型水平対応4気筒エンジン。2リッターのFB20型と、2.5リッターのFB25型をラインアップし、FB20型については、フォレスターから搭載していくことが予告されている。

 技術説明会の模様は既報のとおりだが、技術説明会では確認しきれなかった疑問などを改めてスバルに聞いてみた。フォレスターに搭載されるというFBエンジンの詳細と、FBエンジンの将来像について、1問1答形式でお届けする。

 FBエンジンの基本的な部分については、「スバル、新世代水平対向エンジン『FB型』説明会 」を参照していただきたい。

新型フォレスターに搭載されるFBエンジンについて
──FB20、FB25はロングストローク化し、燃費性能と中低速のトルク向上を図っているが、FB20を搭載するフォレスターで、明確な差を体感できるほどの向上はあるのか?
 お客様の感覚、主観による個人差はあるかと思いますが、メーカーとしては燃費性能や走行性能を大幅に向上させたと考えており、ぜひ、お客様にも実感していただけるものと考えております。

──FB20は国内市場、FB25は北米市場との話であったが、FB25の国内投入はないのか?
 将来の商品計画については、回答を控えさせていただきます。

──FB20は吸排気に可変バルブタイミングのAVCS、フリクション低減を図るローラーロッカーアームなどヘッドまわりの重量が増しているように思われる。EJ20と比べて振動面でのデメリットなどは発生しないのか?
 重量増となった部品もありますが、主運動系部品の軽量化、摺動部品に対する徹底したフリクション低減を施すことで全体をバランスさせ、EJエンジン同等の振騒性能を確保しております。

──FB20では、ロングストーク化による組み立て工程の関係上、コンロッド形状が斜め割りとなっている。これにより、デメリットなどは発生しないのか?
 斜め割り化で、ロッドの形状が左右対称にならないため、定性的にはバランスの問題等がデメリットとして挙げられますが、その点も考慮した設計・セッティングをしております。

──FB20では、EJ20のベルトからチェーンシステムに変更され、メンテナンスフリー化が図られている。従来のベルトの耐久年数(耐久km数)と比べて何%ほど向上し、また、どの程度を交換時期と見ているのか?
 タイミングベルトは10万kmでの定期交換部品ですが、タイミングチェーンに関してはメンテナンスフリーで交換は不要です。異常がない限り交換はしませんので、交換インターバル等も設定しておりません。

──FB20ではシリンダーヘッドが、ヘッド本体、カムキャリアの分割構造となっており、部品点数が増えている。これによるコストの上昇などは発生しているのか?
 ご指摘のとおり、FB20のほうがEJ比部品点数は増えておりますが、コストアップはありません。ヘッドとカムキャリアの一体構造としたEJ20では型構成が複雑でその数も多く、ヘッド素材自体のコストが割高でした。今回FB20ではヘッドとカムキャリアの分割構造を採り、型構成をシンプルなものとしたことで、素材コストを削減しております。

──EJ20では、オイル量が4Lを超えるものとなっており、オイル交換の際には4L缶と1L缶が必要だった。FB20のオイル量はどのくらいとなったのか?
 FB20ではチェーンシステムを採用していることからEJに比べ必要オイル量が増えております。エンジンオイルの交換量の目安は以下になります。

・FB(全型式共通)
オイル交換時:5.0L、オイル交換+フィルタ交換時:5.2L
EJ(現行型、全型式共通)
オイル交換時:4.0L、オイル交換+フィルタ交換時:4.2L

──FB20とEJ20では、使用するオイルのグレード(粘度)に変更はあるのか?
 サービスマニュアル上での推奨オイルの油種は以下になります。
・FB(全型式共通)
推奨:0W-20、5W-30、5W-40
・EJ NA DOHC(1.5リッター、2.0リッター)
推奨:0W-20、5W-30、5W-40、10W-30、10W-50
・EJ NA SOHC(2.0リッター)
推奨:0W-20、5W-30、5W-40、10W-30、10W-50
・EJ NA SOHC(2.5リッター)
推奨:5W-30、5W-40、10W-30、10W-50
・EJ ターボ
推奨:5W-30、5W-40、10W-30、10W-50

 0W-20に関しては、より省燃費向けのオイルを、純正品として新たに設定致しました。

──オイル粘度が0W-20となると、非常にサラサラなオイルとなる。EJ20では走行距離が10万kmを超えてくると、オイル漏れのトラブルが発生することがあった。この辺りの対策はなされているのか?
 EJエンジンに関しましてもその様なトラブルがないよう、日々進化させてまいりましたが、FBエンジンにはこれまでのEJ開発で得られた知見からより信頼性の高い各部シール構造、および部品を採用致しました。

──FB20では、燃費効率が高く爆発圧力も向上していると言う。また、チェーン式になったこともあり、EJ20と比べるとエンジン音が大きくなっているのではという懸念がある。エンジン音量の変化などはあるのか?
 FB20はEJ20同等以上の振騒性能を有しており、エンジン音量の悪化はありません。

──FB20、FB25のFBという意味は? Eに続くFならば、FAになるような気もするのだが?
 公式には発表していませんが、今回の“FB”には、FがFHI(富士重工業)、Future、BがBrand New、BOXERの意味を持たせてあり、基幹エンジンとしての思いを込めております。

FBエンジンの将来像について
──FB20、FB25では、コンロッド、ピストンはターボ化を考慮していないという説明だった。FB型式のエンジンは、ターボ化することはできず、ターボエンジンに付いてはこれからもEJ形式が使われていくのか?
 FBエンジンはNAに特化した基本設計としております。将来のターボがどうあるべきか、社内では検討を進めております。それには当然、今回のFBエンジン開発で得られた知見が反映されることになりますが、将来の商品計画となりますので詳細につきましては回答を控えさせていただきます。

──FB型式では、エンジンブロックそのものがターボのトルクに対応できないものになっているのか? どの程度までの、トルクを見込んでいるのか?
 今回発表させていただきましたFB用シリンダーブロックは、北米向けの2.5リッターエンジンの使用環境を上限として開発致しましたので、それ以上のトルク、出力性能アップへの対応には部位によっては手を加える必要があります。

──現在レガシィなどでは、6気筒エンジン搭載車種が存在する。これについても将来的にはFB型式の流れをくむエンジンになるのか? EZ30は80mmだが、EZ36では91mmのストロークとなっており、FB20の90mmよりわずかに長い。生産効率を考えると、どこかで整理するのが妥当だと思えるのだが?
 将来の6気筒エンジンがどうなるかについては、今後の商品計画となりますので詳細につきましては回答を控えさせていただきます。FBエンジンとEZエンジンは気筒数が異なり、生産ラインも異なりますので、ストロークを合わせることによる直接的な生産効率向上は見込めません。

──現在レガシィなどでは、6気筒エンジン搭載車種が存在する。FB型式は6気筒化も視野に入れて開発されているのか?
 今後市場ニーズに応じ、新型エンジンをベースに、あるいはその思想を踏襲した排気量、気筒数の異なるエンジンバリエーションの検討を進めます。

──将来的に発売する直噴エンジンは、このFB型がベースになるとのことだが、直噴化以外に予定している大きな技術的チャレンジはあるのか?
 新型エンジンは、直噴化やハイブリットシステムとの組み合わせ等、今後の市場ニーズに対し柔軟に対応できる発展性の高い設計としております。

──現代のトレンドとしてハイブリッド車というものがある。このFB型はハイブリッド車で利用することはできる設計になっているのか? モーターと組み合わせての利用は可能なよう設計されているのか?
 FBエンジンは、ハイブリットシステムをはじめとした燃費デバイスとの組み合わせに対し、その効果が十分に引き出せるよう、基本である“燃焼改善”そしてフリクション低減を施した発展性の高い設計としています。

──スバルの新型エンジンとなると、気になるのはトヨタ自動車と共同開発している車種が思い浮かぶ。トヨタと共同開発している車種に搭載するエンジンは、EJ系になるのか? それともFB系になるのか?
 将来の商品に関することなので型式の特定はしかねますが、FBエンジン開発で得られた知見を生かし、その商品特性に応じた性能、キャラクターを有するエンジンに仕上げる予定です。


 スバルからの回答により、改めて分かった部分、将来の話なので答えてもらえなかった部分などあるものの、“FB”という形式名には強い思いが込められている。このFB20を搭載したフォレスターが登場した際には、ぜひ“新世代”の水平対向エンジンの走りを味わってみてほしい。

(編集部:谷川 潔)
2010年 10月 22日