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スバル、新開発水平対向エンジン「CB18型」の疑問点を確認 「EJ20時代の強度剛性思想を採用」
2020年8月28日 10:44
- 2020年8月20日 先行予約開始
- 2020年10月15日 発表予定
10月15日に正式発表が予定されているスバルの新型「レヴォーグ」。その新型レヴォーグには新開発の水平対向4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボ“DIT”「CB18」エンジンが搭載されている。このCB18エンジンは、最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpm。排気量は1795cc、ボア×ストロークは80.6×88.0mm(ボアストローク比約1.09)で圧縮比10.4。現行レヴォーグに搭載されているFB16同様に無鉛レギュラーガソリンを用いている。
このCB18エンジンについて、各種疑問点をスバルに確認してみた。
──CB18エンジンの18は、1.8リッターの略だと思われる。CBの名前の由来を教えてほしい。
A1:Concentration(集中)&Compact+Boxerの意味を持たせております。集中とは、今、我々の持てる技術を結集したとの想いを込めております。
──CB18はリーン(希薄)燃焼をして効率を高めているエンジンという。熱効率はどの程度を達成しているのか? また、λ(ラムダ、空気過剰率。空燃比/理論空燃比)でどの程度の空燃比変動が行なわれているのか?
A2:熱効率=40%。λ=2です。
──CB18のリーン燃焼を実現するポイントはどこにあったのか? 直噴インジェクターの位置などが変更されているが。
A3:リーン燃焼は「着火しにくい」「燃え広がりにくい」という課題があります。着火しにくいという点については、直噴インジェクタの位置を点火プラグ近傍に変更し、確実に着火させることで対応しています。燃え広がりにくいという点については、これまでの燃焼の延長線上で空気の流動を強化し、火炎伝播速度を向上させることで対応しています。
──CB18は直噴ターボエンジンとなっている。この直噴ターボというパッケージでないとリーン燃焼は実現しないのか? 将来的にCB18のNA(自然吸気)版は登場するのか? その際にリーン燃焼は採用されるのか?
A4:リーン燃焼はストイキ燃焼(理論空燃比燃焼)に比べて、空気割合が多い状態になります。その空気は過給(ターボ)によって補っておりますので、あえて命名はしておりませんが、リーン「過給」燃焼状態にあります。CB18のNA版などの今後の計画についてはお答えを控えさせていただきます。
──CB18ではトルクを低回転域から立ち上げるために、FB16より小径のターボチャージャーを採用しているという。具体的にタービン径はどのように変化しているのか? また、特殊なタービンは使われているのか?
A5:FB16はツインスクロールに対して、CB18はシングルスクロールです。特殊ではなく非常にオーソドックスなタービンです。最適なサイズのタービンを使うことで低回転式のレスポンスに加えて、A4でお答えしたリーン燃焼中の過給にも活用しています。タービン径については方式も異なることから、具体的なサイズはお答えを控えさせてください。
──CB18エンジンは、ボア×ストロークが80.6×88.0mm。FB16エンジンの82.0×78.8mmと比べてボアもストロークも変更、完全に新規のエンジンとなっている。このタイミングで新エンジンを作り上げた理由は?
A6:『超・革新』のレヴォーグに相応しいエンジン性能目標を達成するには、現行のFA/FB系のエンジンの延長線上の改良では、難しいと判断したためです。
──CB18エンジンは、エンジン全長が約40mm短くなっているという。ボアピッチは98.6mmと狭く、ボア方向での排気量拡大も厳しく見える。排気量バリエーションを想定せず、追い込んだエンジンなのか?
A7:1.8リッターに最適なエンジンサイズ=ボアピッチサイズを選択しました。将来展開については具体的な回答は控えさせていただきます。
──CB18では全長方向が短くなっているので、全長方向への余裕は増えている。これは、将来的に水平対向6気筒が登場する布石なのか?
A8:将来展開については具体的な回答は控えさせていただきますが、何からの形でお客さまのご期待に添える進化を続けていきたいと考えております。
──CB18では全長方向が短くなっているので、全長方向への余裕は増えている。つまりモーターなどの搭載空間が増えていることになる。全長短縮にはそのような観点はあったのか?
A9:1.8リッターに最適なエンジンサイズを実現した結果、全長短縮を達成することができました。将来展開については具体的な回答は控えさせていただきますが、何からの形でお客さまのご期待に添える進化を続けていきたいと考えております。
──CB18ではターボエンジンとなっているが、吸気系での工夫点はあるのか?
A10:FB16は燃焼室の空気流動を強化できるTGV(タンブル・ジェネレーション・バルブ)を搭載しておりましましたが、よりリーン燃焼時の効率を高めるため、ポンピングロスとなるTGVを廃止しました。(A4回答どおり、リーン燃焼中は過給状態のため、空気量が多い=スロットルはほぼ全開です)。TGVを廃止しても、強い空気流動を得るため吸気ポート形状をゼロから見直しFB16比でより強い空気流動を実現しています(この空気流動の強化は、A3回答の燃え広がりにくいという課題を解決する上でも非常に重要な役割を持っています)。
──CB18とFB16で、インタークーラーの容量などはどのくらい異なっているのか?
A11:排気量も異なることから、具体的な容量についてはお答えを控えさせていただきます。
──EGRなどでの変化点は存在するのか?
A12:EGRはより流量を確保するために、大型のEGRクーラと大容量のEGRバルブを採用しています。一方で、大きい流量のEGRを高精度で制御するため、EGR専用の圧力センサ・温度センサを追加しています。
──排気系での大きな変化点はあるのか?
A13:排気ガス規制対応のため、エンジンで発生した熱をできる限り触媒に与えてやり、早期活性を狙うことを目的として以下を変更しました。
・ヘッド内で排気系を集合させるIEM(Integrated Exhaust manifold)を採用しました。そのため、FB16ではエキゾーストマニホールドは左右2本(合計4本)ですが、CA18では左右1本出しになっております。
・ターボのウエストゲートバルブを電制化しました。
──CB18ではどのようなグレードのエンジンオイルが指定されているのか? また、オイル交換に必要なオイル量はどのようなものか?
A14:新設定の0W-16グレード指定となっております。燃費性能の向上を狙いより低粘度な仕様となっております。交換油量についてはエンジン全体のコンパクト化に伴い削減しました。
具体的な数値は控えさせていただきますが、オイルフィルター未交換の際のオイル交換時には4L以下の設定となっています。一般のお客さまが自ら交換される際にご購入される4L缶以内を目標としました。
※水平対向の弱点克服
──CB18がFB16に比べてオイルまわりで工夫されているところはあるか?
A15:燃費向上を目的として、可変容量オイルポンプを採用しています。ピストン冷却を目的として、ピストン裏へのオイルジェットを採用しています。
──CB18ではオフセットシリンダーが採用されているが、オフセット量はどの程度のものとなっているのか? また、この機構はオフセットクランクとも呼ばれるが、CB18ではこの機構をどう呼んでいるのか?
A17:オフセット量は8mmです(左右バンクそれぞれ8mm)。特に呼び方は定めておりませんが、オフセットシリンダーという呼称をしております。
──全長が短くなったことで、エンジンユニットの重量も軽くなったように見える。どの程度軽くなったのか?
A17:エンジン全体で14.6kgの軽量化を実現しています。
──このCB18では、FB16に採用されていたTGVがなくなっている。リーン燃焼のためタンブル流の発生は必要だと思うが、TGVがなくなった理由はなにか? また、タンブル流の発生をどこで補っているのか?
A18:A10をご参照願います。タンブル流(空気流動)は、吸気ポート形状・燃焼室形状の工夫で実施しています。インジェクタ位置を変更したこともあり、非常に苦労をしこだわった部分ですが、形状の作り込みで実現しました。
──CB18、FB16ともフリクション低減のためのローラーロッカーアームを採用している。このローラーロッカーアームの機構における変更点はあるのか?
A19:機構における大きな変更点はありません。調整方法をシム式からスクリュー式に変更しています。
──CB18では、FB16に比べてクランクウェブが薄くなっている、クランクウェブ、ジャーナルの厚みはどのくらいか? EJ20では薄く、その後FB系で厚くなったクランクウェブだが、また薄くなった。その意図は?
A20:厚さの具体的な数値は控えさせていただきますが、今回は全長短縮を狙った結果、クランクウェブが薄くなりました。
──コンロッドがFB16では斜め割り、一方CB18では水平割りとコンロッドの割り方が異なっている。この変更の理由は何か?
A21:全長短縮を狙った結果、より強度上有利な水平割りを選択しました。
──薄いクランクウェブ、太いジャーナル、そしてコンロッドの水平割りなどCB18のデザインは高回転性能を誇ったEJ20に通じる技術を感じる。CB18はFB16より上で回るエンジンとして設計されているのか?
A22:CB18はロングストロークのため、高回転が得意なエンジンではありません(MAX馬力を狙ったエンジンではありません)。FB16に対して同等レベルの回転数性能を保ちながら、コンパクト化した分を補う形で、結果的にEJ20時代の強度剛性思想を採用しました。
──EJ20は現在もレース用エンジンのベースとなっている。このCB18はボアアップの難しそうなデザインのため2.0リッターレーシングエンジンには難しそうだが、太いクランクジャーナルなど、ダウンサイズして1.6リッターにすればレースエンジンへの可能性があるように見える。1.6リッターへのダウンサイジングは考慮しているのか?
A23:将来展開については具体的な回答は控えさせていただきますが、何からの形でお客さまのご期待に添える進化を続けていきたいと考えております。
スバルとしては当然答えられないことも確認のために聞いており、現時点で答えられない部分も情報として受け取ってもらえればと思う。FBエンジンは、大排気量もカバーしていくためタフなエンジン感があったが、このCB18エンジンには(全長を短くするなどもそうだが)切り詰められた、かつてのEJ20のような研ぎ澄まされたデザインを感じるものとなっている。
その点についてもあえて質問してみたが、「EJ20時代の強度剛性思想を採用」という答えが返ってきたのには、驚くとともに「やはり」という感もあった。
この新型「レヴォーグ」を手に入れるオーナーにとってうれしいのは、オイル交換時のオイル量がFBよりも1L程度減った4L(フィルター未交換時)になっていることかもしれない。ただ、実際はオイル交換時にはフィルターを交換した方が望ましく4L缶だけではすむことはないが、それでも「※水平対向の弱点克服」と特記した回答にスバル技術陣の気合いが見て取れる。
2010年のFBエンジン登場時にも同様の質問を行なっており、興味のある方は関連記事として参照いただきたい。