試乗レポート

新型「レヴォーグ」を袖ケ浦サーキットで試す

これは「SGP2.0」では!?

新型「レヴォーグ」を袖ケ浦サーキットで試してきました

 前回、アイサイトXと簡単な動的性能についてレポートした新型「レヴォーグ」のプロトタイプを、今回は袖ヶ浦フォレストレースウェイで、スキール音を鳴らさない程度でありながら、存分に走らせることができた。

 まず、現行の初代STIスポーツで走ってあらかじめ感覚を確かめておく。初代もわるくないことを改めて確認したのだが、新型はドアを閉じたときの音からして別物で、シートに収まった瞬間からよりしっくりくる。

 まずは標準系の「GT-H」から。コースインしてほどなく、いかにもボディがしっかりしていそうな感覚が伝わってくる。ステアリングを切ったときの動きがぜんぜん違う。圧倒的に身のこなしが軽やかで素早く、走りに一体感があり、ロールも小さい。

新型レヴォーグ プロトタイプ サーキット試乗

 このコースには低速から高速までいろいろな種類のコーナーがあるが、JARIでも感じたタイヤがより理想的な状態で接地している感覚があるのは同じ。コーナーでは内輪側もグリップして4輪がしっかり路面を捉える感覚が伝わってくる。コーナリング中に切り増してみても初代はそれ以上は曲がれないところ、新型はさらに曲がれることにも感心した。

 走りのよさに効いているであろうデュアルピニオンを採用したステアリングフィールも上々だ。クイックでかつ極めて正確に応答するので舵角がピタッと決まる。一方のリアもスタビリティが極めて高い上に横力が即座に出るので、操舵に対する応答遅れもなくスイスイとよく曲がり、本当に気持ちよく走れる。SGPの導入はスバル車を大きく変えたが、新型レヴォーグはそれらともまた次元が違う印象で、別の名前を付けたほうがよいのではと思ったほどだ。

印象深いSTIスポーツの走り

新型レヴォーグ STIスポーツ

 パワートレインの印象も別物だ。1.6リッターエンジンを搭載する現行はやや線が細く、リニアトロニックもCVTとしてはがんばっているほうだと思うが、新旧を乗り比べるとリニアさに欠けるのは否めない。

 一方の新型は不満を感じない力強さを備え、フラットトルクで扱いやすく、ステップ変速する際のダイレクト感もある。全開で周回を重ねて熱を持つと、だんだんシフトチェンジの歯切れがわるくなるのはCVTの宿命といえそうだが、全体としては大きな進化を実感することができた。

 STIスポーツになると、さらに走りに磨きがかかる。ドライブモードを4段階に選択可能で、それぞれ分かりやすく走り味が変わり、加速フィールも大きく変化するのだが、電制ダンパーの与えられるSTIスポーツは、同じタイヤを履くとは思えないほど全体的にグリップ感が高まることも印象的だ。

 そして最強のS+モードを選ぶと、よりステアリングの手応えがしっかりとして骨太な印象となり、足まわりがしまってロールやピッチングも抑えられる。

 さらにはAWD制御がスポーツモードになり、アクセルOFFでもリアをつないで後輪への駆動力を保ってアクセルONに備えてスタンバイし、即座に駆動力を伝えることができるので、コーナー立ち上がりで前に進もうとする感覚がぜんぜん違う。GT-Hでも進化のほどは十分に体感できたものの、STIスポーツはさらにもう一段階上のパフォーマンスを味わわせてくれる。

メリット絶大! アイサイトXの新機能

新型レヴォーグ アイサイトX 予防安全機能

 パドックではJARIでは試せなかった進化したアイサイトXのいくつかの機能を体験した。機構的には広角化した新しいステレオカメラや前側方レーダー、電動ブレーキブースターの採用がポイントで、これにより新たに衝突回避をサポートできるシチュエーションが増えた。今回は見通しの悪い交差点で直交する車両との衝突と、右折時の歩行者との衝突を回避するという状況を試した。

 いずれもこうした状況には実際にもよく出くわすわけで、見通しのわるい交差点で人間の目だけではもっと前に出ないと安全を確認できず、たとえカーブミラーが設置されていても、接近車両が死角に入る可能性もあり見落とす可能性もある。ところが、フロントバンパーに設置されたミリ波レーダーは確実に前側方からの接近車両を検知してくれる。

 さらには横断歩道にいる歩行者についても、フロントピラーと重なって見えないことも大いにありえるが、従来のアイサイトではデモの位置関係では角度が大き過ぎでカメラの視野に入ってこなかったところ、広角カメラを採用したアイサイトXでは認識できるようになったわけだ。

 また、応答性に優れる電動ブレーキブースターを採用したことで、よりセンサーにとって有利な範囲に対象物が入ってくるギリギリまで判断を遅らせることができるのもアイサイトXの大きな進化点だ。

交差点でのアイサイトXを体感した

 これも効いて、対停止車両に対して衝突を回避できる車速も50km/hから60km/hに向上したほか、ブレーキ制御だけでは衝突回避が難しい場合、システムが操舵制御を行ない、80km/h以下で衝突回避をサポートするという機能が新たに加わった。今回これらについても車外から見学することができ、60km/hという比較的高い車速からでもスーッとスムーズに停止する様子や、他車ではブレーキが先に作動してしまいそうなところをステアリングで上手く避けることができるのを目の当たりにした。

 前回JARIでも感じたのだが、本当に知れば知るほど現行オーナーがうらやみそうな大きな進化を遂げている。大いに期待して、市販版の登場を待つことにしたい。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛