フォーミュラ・ニッポン最終戦鈴鹿リポート
オリベイラ選手がシリーズチャンピオンを獲得

シリーズチャンピオンを獲得したオリベイラ選手

2010年11月7日決勝開催



  11月7日、全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの最終戦が、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された。最終戦は通常とは異なる2レース制で行われ、レース1は1号車 ロイック・デュバル選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、レース2は19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(Mobil1 TEAM IMPUL)が優勝した。この結果、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手が初の年間チャンピオンを獲得した。

 全7戦で行われた2010年の全日本選手権フォーミュラ・ニッポンは、最終戦だけ2レース制が採用された。予選はノックアウト方式で行われ、レース1のスターティンググリッドはQ1の結果で決まり、レース2のスターティンググリッドはQ2、Q3の結果で確定する。レース1は20周で行われピットインの義務はなし、レース2は28周で行われ、タイヤ交換(最低1本)が義務付けられている。

 ドライバーズポイントは、通常は優勝者に10点、2位8点、3位6点、4位5点で8位までポイント獲得ができるが、最終戦はレース1、レース2にそれぞれ半分のポイントが与えらる。各レースの優勝者にはボーナスポイントの3点が加算され、優勝者5+3=8点、2位4点、3位3点、4位2.5点となるため、優勝すれば大きくポイントを伸ばすことができる。各レースのポールポジション獲得にも1ポイントが与えられるので、2レースともポールポジションから優勝すれば一挙に18点を獲得できることになる。

 前戦までのポイント上位は、1位 19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(Mobil1 TEAM IMPUL)36点、2位 36号車 アンドレ・ロッテラー選手(PETRONAS TEAM TOM'S)36点、3位 32号車 小暮卓史選手(NAKAJIMA RACING)31点、4位 1号車 ロイック・デュバル選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)28点、5位 20号車 平手晃平選手(Mobil1 TEAM IMPUL)24点、6位 37号車 大嶋和也選手(PETRONAS TEAM TOM'S)21点となっており、計算上は6位の大嶋選手までチャンピオン獲得の可能性を残しているが、実際には上位4選手による争いとなっている。

予選
 予選Q1は参加15台から上位12台がQ2に進むことができる。通常なら上位12台に入るタイムを出せば、それ以上タイムアタックをする必要はないが、今回はQ1のタイムがそのままレース1のスターティンググリッドを決めるため、いつも以上に重要なセッションとなった。

予選Q1で1位を獲得、レース1のポールポジションを獲得したロイック・デュバル選手

 Q1の結果は1位 1号車 ロイック・デュバル選手、2位 19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手、3位 36号車 アンドレ・ロッテラー選手、4位 32号車 小暮卓史選手とポイント上位4人が予選でも上位を占める結果。この時点でデュバル選手はポールポジションの1ポイントを獲得した。

 12台から8台に絞り込まれる予選Q2の1位は小暮卓史選手。ポイントラインキング5位の20号車 平手晃平選手は9位となりQ3へ進出することができなかった。

 レース2のグリッドを決める予選Q2の結果は1位 19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手、2位 32号車 小暮卓史選手、3位 31号車 山本尚貴選手(NAKAJIMA RACING)、4位 1号車 ロイック・デュバル選手、5位 36号車 アンドレ・ロッテラー選手となりオリベイラ選手が1ポイントを獲得した。


予選Q3で1位を獲得、レース2のポールポジションを獲得したジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手

 ルーキー山本尚貴選手が3位に入り、同じNAKAJIMA RACINGの小暮選手には心強い援軍になるかもしれない。2号車 伊沢拓也選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はQ1で6位、Q3で7位のタイムを出したが、予選後の車検でスキッドブロックの寸法違反により予選タイム抹消で最後尾スタートとなった。


レース1
 20周で行われるレース1はタイヤ交換の義務付けはなく、スタートしたらそのままゴールを目指すスプリントレース。スタートで出遅れたのはポイントラインキング1位の19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手。2番グリッドから3番手の36号車 アンドレ・ロッテラー選手にマシンを寄せるが加速が鈍く、逆にガラ空きになったイン側を32号車 小暮卓史選手がすり抜けていった。

 1コーナーへの飛び込みはトップが1号車 ロイック・デュバル選手、4番手スタートの32号車 小暮卓史選手が2位、36号車 アンドレ・ロッテラー選手が3位、19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手は4位に後退した。この時点でポイント上位4人がトップ4となったが、その順位はポイントラインキングとは逆の順位、このままの順位ならポイント差がグッと縮まることになる。

レース1のスタート。オリベイラ選手が遅れた2コーナーでの順位は1号車、32号車、36号車、19号車

 レース中盤、トップのデュバル選手と2位小暮選手の差は約1秒、小暮選手と3位ロッテラー選手の差も1秒、その後ろオリベイラ選手は2秒ほどの差となった。10周目の立体交差を抜けたところで、トップを走るデュバル選手のマシン後方から白煙が上がった。オイルを噴き出したのだ。

 白煙は周を重ねるごとに増え、エンジンブローならトップの座を失うだけでなく、チャンピオン争いから脱落となる。万事休すかと思われたが、ラップタイムはそれほど落ちず周回を続けることとなった。ピットインしてもレースを失うことに変わりはないので、行けるところまで行くしかない状況だ。

 逆に影響を受けたのが、すぐ後ろを走行する小暮選手だ。徐々に噴き出す量が増えるオイルを被りながらの走行となり、早々に捨てバイザーを使い切り、終盤はグローブでバイザーを拭いながらの走行となった。視界不良でトップとの差を詰めることもできず、後方からロッテラー選手に攻められる形となってしまった。

 レース後に判明したが、デュバル選手のマシンから噴き出したオイルは、ミッションオイルクーラーに異物が当たり亀裂が入り、そこからミッションオイルが少しずつ噴き出したものだった。20周の短いレースだったことも幸いし、デュバル選手はトップをキープしたままゴール、レース1を優勝で飾った。2位には小暮選手、3位にはロッテラー選手、4位にはオリベイラ選手が入った。

 これによりシリーズラインキングは、1位 19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手 39.5点、2位 36号車 アンドレ・ロッテラー選手 39点、3位 1号車 ロイック・デュバル選手 36点、4位 32号車 小暮卓史選手 35点となり、その差は縮まることとなった。

 レース2も1位8点、2位4点、3位3点、4位2.5点なので、上位3人は勝てばチャンピオン獲得、4位の小暮選手は優勝してオリベイラ選手が3位以下であればチャンピオン獲得となる。

徐々に後続を引き離す1号車 ロイック・デュバル選手2位争いは32号車と36号車で終盤まで続いた
オイルを吹上ながら走る1号車 ロイック・デュバル選手
2位を走る小暮選手のヘルメット、リアウイングに付くオイルの痕跡
優勝しウィニングラップを走行する1号車 ロイック・デュバル選手レース1の表彰式

レース2
 レース2はタイヤ交換が義務付けられている。最低1本なので、もっとも早く作業できるのは軽いフロントタイヤ1本の交換だろう。各チームの作戦はそれぞれで、リア2本交換、4輪交換、給油を行うチームもある。タイヤ交換義務はスタート10周以降に行うこととなっている。

 前日の予選Q3の結果のとおり、ポールポジションはランキングトップのオリベイラ選手。そのまま優勝すればシリーズチャンピオンが獲得できる。しかしレース1のようにスタートで出遅れ、2番グリッドの小暮選手、3番グリッドの山本選手に先行されると小暮選手にチャンピオンを譲る結果となる。

レース2のスタート。19号車に続いたのはNAKAJIMA RACINGの2台

 午前中は曇っていたが、午後のレース2は晴れ。路面温度も違い、レース1とは異なる条件でのスタートとなった。オリベイラ選手はまずまずのスタートでトップをキープ。好スタートを切ったのは3番グリッドの山本選手。同じNAKAJIMA RACINGの小暮選手と並んで1コーナーへ進入した。

 イン側を走る小暮選手が2位をキープ、山本選手は小暮選手とは争わず少し車速を落とし小暮選手の後方に付け3位で1コーナーを抜けた。その後方はイン側に4番手スタートのデュバル選手、アウト側に5番手スタートのロッテラー選手が並んで1コーナーへ進入した。

 山本選手が少し車速を落とした隙を突いたのがロッテラー選手だ。1~2コーナーをアウト、アウト、アウトと抜け2コーナーで山本選手と並び、立ち上がりで抜きS字進入では3位に浮上した。1周目の順位はオリベイラ選手、小暮選手、ロッテラー選手、山本選手、デュバル選手となった。

 2周目の1コーナー。2位の小暮選手がトップのオリベイラ選手のアウトから並びかけ、豪快な大外刈りで抜き去りトップに浮上した。その後も徐々に差を広げ独走態勢を築いた。

2コーナーで36号車が31号車をアウトから抜きに3位浮上S字進入の順位は19号車、32号車、36号車、31号車、1号車となった2周目に1コーナーで19号車を抜きトップに立った32号車 小暮卓史選手

 10周を終了し各車のピットインが始まった。13周目、上位陣で最初にピットに入ったのは5位を走るデュバル選手。4位の山本選手とは7秒ほど差があったがピット戦略で逆転の可能性はある。デュバル選手は右フロントタイヤ1本の交換を5秒で済ませピットアウトした。

タイヤ1本交換が功を奏し、31号車を抜いた1号車 ロイック・デュバル選手

 2周後、4位の山本選手がピットイン、タイヤ4本と給油を行い14秒でピットアウトした。コースインする横をデュバル選手が駆け抜け山本選手の抜き去った。タイヤ1本交換作戦は成功だった。

 NAKAJIMA RACINGは軽い燃料でスタートし、2台ともオリベイラ選手より前に出て、小暮選手がチャンピオンを獲得できる作戦を採ったと思われるが、結果としてはやや裏目に出た感じだ。

 16周目、トップの小暮選手と2位のオリベイラ選手の差は8.6秒。この後、上位3台のピットインが始まった。17周、トップを独走する小暮選手がピットイン。山本選手と同様、タイヤ4本と給油を行う作戦だ。マシンが停止直後にエンジンストール、作業は15秒ほどで終わったが、エンジン再始動に手間取り23秒でピットアウトとなった。ロスタイムは8~9秒、痛恨のミスを犯してしまった。

 翌周、トップに立ったオリベイラ選手がピットイン。リアタイヤ2輪交換を行い6.6秒でピットアウト。ストレート1本分の差を付けて小暮選手の前に出た。さらに2周後の20周目、ロッテラー選手もピットインし右リアタイヤ1本だけを5.7秒で交換しピットアウト。オリベイラ選手と小暮選手の間に割り込み2位に浮上した。


ピットインで失敗した32号車を抜き2位に浮上した36号車 アンドレ・ロッテラー選手

 トップに立ったオリベイラ選手はこのまま逃げ切ればチャンピオン獲得、2位のロッテラー選手はオリベイラ選手を抜かないとチャンピオンになれない。3位に落ちた小暮選手はかなり厳しい状態、山本選手を抜き4位まで上がったデュバル選手もペースが上がらず苦しい展開となった。

 レース終盤、2位争いのロッテラー選手と小暮選手、4位争いのデュバル選手と山本選手がテール・トゥ・ノーズの接戦となった。残り6周、山本選手がヘアピン進入でデュバル選手にアウトから並びかけ、クロスラインでイン側から立ち上がった。スプーン手前の200Rで半車身ほど前に出るが、スプーンのブレーキングでデュバル選手が粘り4位を死守した。

 2位争いも小暮選手が最後まで攻め続けたが、ロッテラー選手が2位を守りとおした。4位争いはデュバル選手のペースが落ちたため6位の平手選手も加わり3台の争いとなったが、最終ラップまでデュバル選手が粘り0.095秒差で山本選手を抑え4位を守った。

36号車と32号車の2位争いは終盤まで続いた最後まで31号車の追撃を受けたが、4位をキープしたロイック・デュバル選手

 オリベイラ選手はトップに立った後は安定したペースで逃げ切り今期2勝目。念願のトップフォーミュラ復帰1年目で年間チャンピオンを獲得した。

順位ドライバー(チーム)ポイント
1位19号車 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(Mobil1 TEAM IMPUL)47.5
2位36号車 アンドレ・ロッテラー選手(PETRONAS TEAM TOM'S43
3位1号車 ロイック・デュバル選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)39.5
4位32号車 小暮卓史選手(NAKAJIMA RACING)38
5位20号車 平手晃平選手(Mobil1 TEAM IMPUL)25.5
6位37号車 大嶋和也選手(PETRONAS TEAM TOM'S)24
7位31号車 山本尚貴選手(NAKAJIMA RACING)20.5
8位8号車 石浦宏明選手(Team LeMans)16

 2010年ルーキー・オブ・ザ・イヤーは31号車 山本尚貴選手が獲得、チームポイントは1ポイント差でMobil 1 TEAM IMPULが年間チャンピオンを獲得した。2位はPETRONAS TEAM TOM'S、3位はNAKAJIMA RACINGとなった。

ウィニングラップでロッテラー選手から祝福されサムアップするオリベイラ選手
レース2の表彰式年間チャンピオンの表彰式
ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した山本尚貴選手最後にドライバー全員でシャンパンファイトが行われた
年間チャンピオンを獲得したジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手
シリーズラインキング2位となったアンドレ・ロッテラー選手
シリーズラインキング3位となったロイック・デュバル選手

 2010年の全日本選手権フォーミュラ・ニッポンは第6戦まで勝者が異なるという白熱した展開で、最後の最後まで僅差の争いとなり、2勝目を飾ったオリベイラ選手がチャンピオンを獲得した。シリーズは終了したが、今週末、11月12~14日にはJAF Grand Prix SUPER GT & Formula NIPPON FUJI SPRINT CUP 2010が富士スピードウェイで開催される。今年参戦した全チームがエントリーしているので、もう一度、国内最高峰の走りを見ることができる。

 11月29日、30日にはフォーミュラ・ニッポンの第3回合同テストが同じく富士スピードウェイで開催されるなど、来シーズンに向けての動きも始まっている。ぜひ、サーキットに足を運んで迫力ある走りを見ていただきたい。

(奥川浩彦)
2010年 11月 10日