三菱ふそう、小型トラック新型「キャンター」発表会
トラックとしてデュアルクラッチATを世界初搭載

新型キャンター

2010年11月11日発売
418万2000円から



 三菱ふそうトラック・バスは11月11日、小型トラック「キャンター」をフルモデルチェンジ、5速MT搭載車のほか、トラックとしてデュアルクラッチAT搭載車を世界で初めて用意するなどして発売した。商用トラックのため、さまざまな車形が用意されており、2t積み標準キャブ、全低床、平ボディー完成車で418万2000円から。

 また、発売にあわせ東京ビッグサイトで発表会を開催。新型キャンターをアンベールするとともに、搭載されたさまざまなテクノロジーなどについての説明が行われた。

アンベールされる新型キャンター

 新型キャンターのフルモデルチェンジは8年ぶりとなり、8代目のモデルとなる。新開発の4P10型 直列4気筒 3.0リッター インタークーラーターボディーゼルエンジン、再生制御式DPF(Diesel Particulate Filter)と尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)を用いた排ガス外浄化機構「BlueTecシステム」を搭載。5速MTのほか、6速デュアルクラッチAT「DUONIC(デュオニック)」を選択でき、後輪を駆動する。4P10型3.0リッターディーゼルエンジンとBlueTecシステムにより、小型トラックとして初めてポスト新長期排出ガス規制(平成22年規制)に適合している。

三菱ふそうトラック・バス 代表取締役社長兼CEO アルバート・キルヒマン氏

 三菱ふそうは、現在メルセデス・ベンツと同様ダイムラーグループの一員で、世界トップのトラックメーカーであるダイムラーのアジア拠点ともなっている。BlueTecシステムは、メルセデス・ベンツの搭載するシステムと同様のもので、国内の小型トラックとしては初搭載となるものだ。

 三菱ふそう 代表取締役社長兼CEOのアルバート・キルヒマン氏は、このキャンターを「環境、経済、安全+αの3つの特徴を持つクルマ。現代社会に要求に応え、効果的なインフラ構築ができる。青い地球とユーザーニーズに貢献する」と紹介。新型キャンターの持つ、環境対応性能と経済性能への自信を見せた。


プロジェクトリーダー ミハエル・グラーヘ氏

 技術的な側面については、プロジェクトリーダーのミハエル・グラーヘ氏が説明。環境性能については、BlueTecシステムの再生制御式DPFによって排ガス中のPM(Particulate Matter)を除去。尿素水(AdBlue)によってNOx(窒素酸化物)をSCR触媒で分解し、酸化触媒でアンモニアを無害化する。これにより、ポスト新長期規制の規制値よりPM、NOxとも30%少ない排出量になっていると言う。

 2t積みトラックで月間1800km走行を1年間続けた場合、1台あたりのCO2排出量も730kg削減でき、これは杉の木52本分のCO2吸収量になると言う。

新開発の4P10型エンジンとBlueTecシステムにより、高い環境性能を獲得
4つのパワーバリエーションを持つ4P10型エンジンディーゼルエンジンのため、ピストン上部は大きく凹んだものになっているコモンレール、ピエゾインジェクターと、現代のディーゼルエンジンテクノロジーを用いる
BlueTecシステム。手前がエンジン側となるBlueTecシステムの再生制御式DPF部。左から排ガスが入り、PMを除去するBlueTecシステムの尿素SCR触媒。黒いタンクから尿素水(AdBlue)が噴出され、右のSCR触媒でNOxなどが分解される

 経済性能については6速デュアルクラッチATのDUONICをアピール。トルコン式ATと比べデュアルクラッチATは伝達効率に優れ、新開発の4P10型エンジンとあわせ、トラックの燃費基準を達成。このDUONICは湿式クラッチを装備し、クリープ運転が行えるようになっており、通常のAT車と同様の感覚で運転できる。

 4P10型には、積載量にあわせて最高出力81kW(110PS)/3500rpm、最大トルク260Nm(26.5kgm)/1200rpmのT1、最高出力96kW(130PS)/3500rpm、最大トルク300Nm(30.6kgm)/1300rpmのT2、最高出力110kW(150PS)/3500rpm、最大トルク370Nm(37.7kgm)/1320rpmのT4、最高出力129kW(175PS)/3500rpm、最大トルク430Nm(43.3kgm)/1600rpmのT6の4つのバリエーションが用意され、メーカーオプションでISS(アイドリングストップシステム)付きも選択できる。

 最大積載1.5t以下で、4P10(T1)型、6速DUONICの場合、重量車モード燃費値で、ISSなしが11.2km/L、ISSありが12.0km/L。乗用車で一般的に使われる10・15モード燃費とは算出基準が異なるため単純比較はできないものの、3.5tから8tまで、車両重量による燃費基準をクリアすることに成功している。

 この6速DUONICには、ECOモードも用意され、積極的に高いギヤにシフトしていくことで、渋滞時の燃費を8%アップすると言う。

6速デュアルクラッチAT DUONICデュアルクラッチは湿式を採用ギア部。トルコン式ATと同様パーキングブレーキを装備し、使い勝手は通常のAT車と変わらない
新型キャンターでは車形により異なるものの、最大90kgの軽量化を実現車両重量別の燃費基準を2~7%良好な数値で達成している燃費値が良好なため、尿素(AdBlue)のコストをあわせても、従来より10%運用コストが低いと言う
シフトスケジュールには、通常モードに加え燃費が8%アップするECOモードを用意アイドリングストップ機構もオプションで装備できる

 安全+αに関しては、全車、全輪にディスクブレーキを装備。これまで前輪のみだったディスクブレーキを全輪に装備することで、高速域の制動距離を最大15%短縮できたとした。そのほか、アクセルとブレーキを同時に踏んだとき、アクセル操作をキャンセルするブレーキオーバーライド機能を国内のトラックとして初搭載。乗用車なみのイージードライブを実現できるとした。

全車に全輪ディスクブレーキを標準装備ブレーキオーバーライド機能も国内の小型トラックとしては初搭載
ダイムラーグループの商用車部門を統括するアンドレアス・レンシュラー氏

 発表会には、ダイムラーグループの商用車部門を率いるアンドレアス・レンシュラー氏もドイツから駆けつけ、新型キャンターの発売を祝うともに「キャンターは、ダイムラーグループにとって象徴的な製品。新型キャンターは日本での発売を皮切りに、2011年末までに46カ国で販売する。現在アジア市場が伸びており、トラック市場のパワーバランスはアジアにシフトしている」と語った。

 6t以上のトラックの2台に1台は、中国で販売されている状況で、ダイムラーでは中国市場だけでなくネクスト11と呼ばれる新興国市場(イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、ベトナム、メキシコ)に力を入れていくと言う。

 とくにインターネットの普及による通信販売の伸長は、小型トラックの市場に大きな影響を与えると言い、「クリーンな商用車を用意して、市場のニーズに答えていく。新型キャンターは(その市場に対して)最大の影響力を持つ、小型トラックになる」と述べた。

新型キャンター 標準ボディー車
フロンドドアには、BlueTecとDUONICの文字が入る軽油の燃料タンクと、尿素タンクは車体右側面に装備
キャブオーバーのため、エンジンは運転席下に配置される
新型キャンターの運転席まわりステアリングホイールは2本スポークタイプメーターには、「Ivis(アイヴィス)」と呼ばれるマルチインフォメーションパネルを装備。瞬間燃費値や燃費グラフ、DPFの状態などが表示される
シフトレバー。走行時は一旦Nの位置に移動し左へシフトすることでDモードになる。MTモードも備えるデュアルクラッチATなので、2ペダル式

 8年ぶりのモデルチェンジとなった新型キャンターでは、大規模な販売キャンペーンなどが行われる。この販売キャンペーンについては、代表取締役副社長 国内販売本部長兼品質保証本部長の谷山義隆氏より説明が行われた。

 谷山氏は「新型キャンターは、今までにない、デュアルクラッチATを搭載したクルマということもあり、試乗車を多数用意する」と言い、11月末までに全国の三菱ふそう販売店に400台を配備。そのスムーズな走行性能をユーザーに体験してもらう。また、1年間の無料モニターをインターネットで募集し、長期的な体験機会も用意する。先着280台の年利1.9%(5年間)のリースキャンペーンなども実施することで、新型キャンターの環境、経済、安全+αを多くの人に伝えていきたいとした。

代表取締役副社長 国内販売本部長兼品質保証本部長 谷山義隆氏全国で400台の試乗車を用意インターネット応募による1年間の無料モニターキャンペーンも実施

(編集部:谷川 潔)
2010年 11月 11日