クラッシュ多発の喧嘩レース「WTCC(世界ツーリングカー選手権)」リポート ロードスポーツチャレンジでは織戸学選手ら日本人選手が活躍 |
11月18日~21日に行われたマカオグランプリでは、先に紹介したF3レースのほかに、さまざまなサポートレースが行われた。そのサポートレースのなかで、もっともメジャーなレースがWTCC(世界ツーリングカー選手権)。サポートレースと呼ぶにはあまりにメジャーなレースで、何しろFIAの世界選手権はF1とWRC(世界ラリー選手権)、そしてこのWTCCの3シリーズしかないのだ。
出場選手も元F1ドライバーが名を連ねるなど、かなりのメジャーどころが集まっている。日本からWTCCに参戦するのは、谷口信輝、谷口行規、加納政樹の3名。
今年のWTCCマカオもまた、メインレースのF3と同様に例年になく荒れた。何よりも金曜日に行われた予選1回目は、今年のマカオグランプリを象徴するかのような展開となった。16時02分に始まった予選では、16時08分にフィッシャーマンズベントでトム・コロネルのマシンがウォールに激突し赤旗中断となる。この処理に約1時間を要した。さらにこのセッションでは、合計4回の赤旗中断が起きる。結局17時44分をもって走行は終了。残りの計測は土曜日の午前に行われることになった。
この土曜日の予選でトップタイムをクリアしたのがロバート・ハフ。2番手にはヨルグ・ミューラーがつけた。
日本勢は谷口行規が18位、谷口信輝が22位。加納政樹は予選通過基準タイムをクリアすることができなかった。
WTCCは1日に2回のレースを行う。第1レースは予選グリッド順でのローリングスタート。第1レースのゴール後、15分のメンテナンスタイムを挟んで第2レースを行う。第2レースのグリッドは、第1レースの8位までのマシンをリバースしたグリッド。つまり第1レース8番手のマシンがポールポジションとなる。さらにスタート方式はスタンディング(グリッド)スタート。駆動方式やエンジン特性の違いを、リバースグリッドやスタート方式の変更で吸収してしまおうという発想だ。
日曜日に行われた第1レース。予選通過基準タイムをクリアできなかった加納は最後尾からのスタートが許された。スタート直後、第1コーナーで2台のマシンがバリアに接触しリタイア。早々に荒れ模様のレース展開となり、セーフティカーが導入される。5周目にグリーンフラッグとなるが、その周回のリスボアベントで多重クラッシュが発生。さらにファイナルラップとなる9周目にもクラッシュが発生し、イエローフラッグのままレースが終わった。
このレースでシボレーのハフとミューラーが1-2フィニッシュを果たしたため、シボレーがマニュファクチャラーズ・チャンピオンを獲得した。なお、ドライバーズチャンピオンは、前戦の岡山ラウンドでミューラーに決まっている。日本勢は谷口行規が13位、谷口信輝が16位、加納政樹が20位。
2010年WTCC最終戦となる第2レースは、ローリングスタート。ポールポジションからスタートしたクリスチャン・ポールセンが順調に周回。しかし、後方集団はリスボアベントで12台が関係するクラッシュが発生。このクラッシュに谷口信輝、谷口行規両選手が巻き込まれリタイア、レースは赤旗中断となる。さらに加納政樹も7周目にリタイアし、第2レースから日本人選手は消えてしまった。優勝したのはルーキーのノベルト・ミケリス。
なお、日本でのWTCCは2010年まで岡山国際サーキットで開催されていたが、2011年からは鈴鹿サーキットでの開催が決まっている。
WTCC第2レースのスタート直後。FRマシンのBMWを駆るポールセンは、スタートで大きな差をつけることに成功するが…… | 第2レースで優勝したノベルト・ミケリス。2009年はセアト・レオン・ユーロカップでシリーズチャンピオンを獲得している | WTCC第2レースの表彰式。ディフェンディングチャンピオンのガブリエル・タルキーニ(中央)は、5番手スタートで2位を獲得。シリーズ2位を守った |
さて、マカオグランプリではこのWTCCとメインイベントのF3のほかに、いくつかのサポートレースが行われ、それらのサポートレースでは日本人ドライバーが大活躍した。
まずは多くのGT-R(R35)やランサーエボリューション、インプレッサなど多くのチューニングカーが参戦するロードスポーツチャレンジ。このロードスポーツチャレンジも非常に荒れたレースで、練習、予選、決勝のあらゆるセッションで赤旗中断が発生。当初の予定では土曜日の朝に行われるはずだった決勝レースも赤旗中断となり、日曜日の朝に延期。さらにそのレースが赤旗中断で、結局F3の終了後に決勝をやり直すことになった。
ロードスポーツチャレンジには織戸学、澤誠二郎、谷川達也の3名がエントリーしていたが、日曜日の決勝に残ったのは織戸のみだった。GT-R(R35)を駆る織戸は2番手グリッドからのスタートながら、すぐにトップのマシンを抜いてレースをリードする。ところが2周目に赤旗中断となり、レースはローリングスタートで再開された。
さらに5周目に起きたクラッシュによりセーフティカーが導入。マシンの回収とコース清掃に時間がかかり、そのままレースが終了するかと思われたが、なんと残り2周でセーフティカーがピットイン。超スプリントレースが始まった。織戸とバトルを繰り広げたのは、地元マカオのサン・ティット・ファンが乗るランサーエボリューション。ストレートの最高速では織戸が勝るが、山側のコーナリングやブレーキングではファンが勝る。それでも織戸は粘り、0.738秒差で優勝を飾った。
ロードスポーツチャレンジが日本車中心で行われるレースであるのに対し、ランボルギーニやポルシェ、アウディR8などヨーロッパ車中心で行われるのがGTカップ。GTカップの名のとおり、参加車両はGT3、GT4カテゴリーのマシン。このGTカップにはランボルギーニ・ガヤルドを駆る澤圭太とポルシェ997 GT3の水谷晃がエントリーした。澤は練習、予選と常にトップタイムを獲得。昨年GTカップに続いて今年も優勝し、F3のモルタラ同様に2連勝を果たした。
また、ミドルフォーミュラのフォーミュラBMWのパシフィックシリーズ第15戦には、野尻智紀、平片亮、中山雄一、桜井孝太郎の4名が出場。野尻は2位表彰台、桜井は総合5位だったがルーキーカップでは優勝となった
危なげない走りでみごとに優勝を決めた澤圭太。ここマカオで同じカテゴリーで2連勝するのはなかなかむずかしいこと | フォーミュラBMWのルーキーカップで優勝した桜井孝太郎。年齢はなんと16歳。期待の新人は注目の的 | フォーミュラBMWで2位入賞を果たした野尻智紀。野尻はARTAプロジェクトのメンバーで、今回のマカオにはスポット参戦という形での出場だった |
(諸星陽一)
2010年 11月 25日