トヨタ・トップガンのテクニックを体感 TMSF 2010 ショートサーキット編 |
富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で11月28日に開催された「トヨタ モータースポーツフェスティバル 2010」(以下、TMSF)。レーシングコースで行われたイベントについては、別掲記事のとおり。ここでは、ショートサーキットで開催されたイベントについてお届けする。
全長920mのショートサーキット。左側に見える黒いアスファルトが30度バンク |
富士スピードウェイのショートサーキットは、全長920mのコースで、旧レーシングコースの30度バンク近くにある。このショートサーキットでは、抽選で当選した来場者を対象に、「ドリフト同乗体験」が2回、「トップガン同乗体験」が4回開催された。各回ともおよそ20名ほどが参加でき、普段はなかなか体験できないプロの手による限界走行を体感していた。
ドリフト同乗体験では、織戸学選手や谷口信輝選手ら、レーシングドライバーの助手席に乗ってのドリフト走行体験ができる。使用するクルマは、D1 GPなどに使用するドリフト仕様車で、そのパワーとドリフト性能を存分に楽しむことができるものだった。
コース外から見ていても、そのドリフトテクニックは圧巻で、単独ドリフト、追走によるツインドリフト、そしてS字コーナーを連なりながらドリフトで駆け抜けるなど、同乗者だけでなく観客の目を楽しましていた。
同乗体験走行用のレーシングカーが並ぶ。奥に見えるテントでヘルメットを借りて乗り込む | 実際にD1 GPで使用しているマシンなので、乗り込むのは結構大変 |
谷口選手と同乗走行体験者 | グリーンフラッグが振られたら、1台ずつスタートしていく |
迫力のドリフト走行。マシンを自由自在に操っていた |
■トヨタ車のすべてを知るトヨタ・トップガン
トヨタ自動車のテストドライバーの頂点に立つのがトヨタ・トップガン。運動評価担当約200名、個別性能評価担当約100名のおよそ300名からなるトヨタテストドライバーの中で、とくに優れたドライバーと認められた人たちで、わずか9名の精鋭によって構成されている。
そのトップガンたちが、トヨタ車の運動性能などのテストにおいて、人間の感性による最終的な評価を行い、すべての車種に“トヨタらしさ”を反映していくと言う。トップガン同乗体験は、トヨタのクルマ作りの鍵とも言えるトップガンのテクニックを間近で見ることができる貴重なイベントだ。
トヨタ自動車 第1車両実験部 部付 グランドエキスパートの高木実氏。高木氏に限らず、トップガンたちの外見はフツーのおじさん。しかし、世界最大級の自動車会社が送り出す製品の味付けは、彼らにかかっている |
現在、そのトップガンを含め、トヨタのテストドライバーを率いているのが、第1車両実験部 部付 グランドエキスパートの高木実氏。高木氏によると、トップガンはすべて40代以上で、20年以上の豊富なテストドライバー経験を持つ人たちで構成されていると言う。F1レーサーなどは、激しいレースを行うため、体力のある若いレーサーが有利な面もあるが、開発や解析を行う必要のあるテストドライバーは、経験がものを言う世界なのだろう。
トップガン同乗体験で使われていた車は、レクサスのIS 250。IS 250には2WD(FR)と4WDがあるが、両駆動方式の車両が持ち込まれ、次々と同乗体験が実施されていた。さすがにIS 250は市販車であるため、レーシングマシンを使用したドリフト体験のようにパワーでのドリフト走行とならないものの、高速でのコーナリングや、高い速度域からのブレーキング、そしてスムーズなドリフト走行が行われていた。
記者もトップガンの1人である、矢吹久氏の助手席でその運転テクニックを体感。撮影を行いながらではあったものの、スムーズなステアリング操作が強く印象に残った。ストレートはもちろん、コーナリング時も両手は軽くステアリングに添えられており、ゆったりとした操作が行われている。それでいて、クルマは激しいドリフト状態に移行しているときがあるなど、完全にコントロール下に置かれていた。
IS 250自体が、彼らの手によって開発されたクルマであるということを差し引いても、常に安心して横に乗っていることができた。
高木氏によると、「常にスムーズな車両操作を心がけさせている」とのことで、その姿勢がさまざま操作に反映されているのだろう。同乗走行を体験した女性にその感想を聞いたところ、「やっぱりプロはすごい。クルマがあんな風に動くなんて。しかも、まったく怖くなく、とてもおもしろかった」と言い、楽しそうに会場を立ち去っていった。
来年のTMSFでこのトップガン同乗走行が行われるかどうか分からないが、市販車で行う身近なイベントだけに、彼らの高度なドライビングテクニックを、多くの人に味わってほしいと思えるものとなっていた。
(編集部:谷川 潔)
2010年 12月 2日