富士急行の水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」体験記
湖上と陸上から富士の自然を満喫

水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」

2011年5月10日開催



  富士急行は5月10日、山梨県の富士五湖周辺で4月末より相次いでオープンしている観光スポットや、開催中のイベントなどを報道関係者向けに公開した。本記事は、「富士芝桜まつり」「下吉田駅ブルートレインテラス」「水陸両用バス」など、ゴールデンウィーク直前にオープンし人気を博した催しをあらためて紹介するものだ。


富士山と芝桜のコントラストが映える「富士芝桜まつり」

約80万株の芝桜を堪能「富士芝桜まつり」
 今年で4回目となる「富士芝桜まつり」は昨年43万人を集客し、最近では富士山の新名所としても知られている。今年は約2.4haの面積に約80万株の芝桜が植えられ、首都圏では最大級の株数を誇ると言う。

 ピンクのじゅうたんを織りなす芝桜は、モンブラン(白)、多摩の流れ(薄ピンク)、オータム ローズ(ピンク)、マックダニエル クッション(濃ピンク)、スカーレット フレーム(赤)の5色5種類。色の濃淡で、地元の伝説に由来する竜神の形を作っている。取材時は残念ながら三部咲きで天候も不安定だったが、多くの来場者でにぎわっていた。

 会場では、富士宮焼きそば、吉田うどんなどの地元グルメが食べられる「富士山うまいものフェスタ」も開催。芝桜を眺めながら本格スイーツが楽しめる展望カフェ「桜カフェ FUJIYAMA SWEETS」や、展望足湯なども人気だった。

 「富士芝桜まつり」の会期は5月29日まで。天候不順で今年は芝桜の開花が遅れているが、このまま暖かい天候が続けば見ごろは5月17日前後とのことだ。

わずかな晴れ間を縫って、富士山をバックに撮影する来場者3部咲きながらも、ピンクのグラデーションを見せる芝桜桜と形や開花時期が似ていることから芝桜と呼ばれる
地元グルメが堪能できる「富士山うまいものフェスタ」展望カフェ「桜カフェ FUJIYAMA SWEETS」は行列ができていた一番人気という「桜はちみつロール(400円)」は、ふんわり桜の香り
のんびり足湯に漬かって、ドライブの疲れを癒やすこともできる入り口の看板には3部咲きの文字が。サイトでも開花情報が得られる

室内灯なども再現された下吉田駅ブルートレインテラス」

懐かしい車両を展示「下吉田駅ブルートレインテラス」
 2009年にリニューアルされた富士急行線 下吉田駅に、4月29日「下吉田駅ブルートレインテラス」とコミュニティスペース「下吉田倶楽部」がオープンした。かつてブルートレイン「富士」号として活躍した車両と同型の寝台客車(スハネフ14形式)を展示。現役当時と同様に室内灯や発電用エンジンも再現されている。

 また、同時に富士急行線で活躍した貨車も展示。1930年に製造された鋼製2軸有蓋緩急車(ワフ1、2)のほか、富士急行の前身である「富士山麓電気鉄道」開業当時(1929年)に作られた木造2軸無蓋車(ト 104)の貴重な3両が、当時の貨物輸送を再現したディスプレイで展示されている。

 コミュニティスペース「下吉田倶楽部」は、カフェ兼待合室兼観光案内所という空間。富士吉田市から「下吉田まちめぐりコンシェルジュ事業」を受諾しており、カフェの店員がそのまま観光案内やガイドをしてくれるというユニークなスタイルが特徴だ。

終戦直後の名古屋駅をイメージしてデザインされた下吉田駅20系に代わる特急用寝台客車として作られたスハネフ14形式1965年当時、1500km以上を24時間以上かけて走る日本一の長距離旅客列車だった
スハネフ14 20は、1972年に旧国鉄の品川客車区に配置された1985年に、当時の大宮工場で3段から2段寝室に改造された発電用エンジンも再現され、イベント時には室内灯や冷房も動く
富士急行で活躍していた貨車も3両展示されている中央にある貨車は、1929年に製造された木造2軸無蓋車今も残る昭和4(1929)年当時の銘板
週末には解放されて、乗車することもできる落ち着いた雰囲気の「下吉田倶楽部」は地元住人の憩いの場としても活用されている

山中湖に入っていく水陸両用バス

山中湖の水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」
 4月30日からすでにプレ運行が始まっている水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA(山中湖のカバ)」。車輪とスクリューを装備し、陸上と水上の走行が可能。富士山麓の森林地帯を走行し、そのまま山中湖に入ってクルージングを楽しめるというコースになっている。乗車は事前予約制だが、ゴールデンウィーク中は1日200名を超す申し込みがあり、急きょ増発した日もあったと言う。

 7月1日からの本運行では乗車時間や距離が延長され、ミステリーツアー風の衣装のガイドと、カバのキャラクター(声)との掛け合いで富士山や富士五湖の豆知識を披露していくファミリー向けのアトラクション展開を予定している。

 取材当日は小雨が降るあいにくの天候だったが、陸上から湖へ入っていく過程は、日常では味わえない興奮があった。また、報道関係者向けの運行ということで時間も短縮されていたが、十分楽しむことができた。



 この水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」は、米CAMI製の車両。CAMIは水陸両用バスを多く手がけているメーカーだ。車両は、海外製の船体に日本製のシャシーとエンジンを組み込んだ構成になっている。エンジンはスクリューを回す航行用と、陸上を走るための走行用をそれぞれ搭載。2基のエンジンを搭載しているため車両重量は重く約12tもある。燃料タンク(軽油)は共用で、容量は約200L。ボディーサイズは、11.9×2.48×3.7m(全長×全幅×全高)。水上での速力は 6.5ノット(12km/h)。

車両のデザインは、工業デザイナー水戸岡鋭治氏によるもの。水と陸の両方で生活する動物の王者であり、古代エジプトの守り神でもあるカバをイメージしてデザインされた

ヘッドライトやウィンカーなどは、防水処理が施されているフロントタイヤとサスペンションリアタイヤまわり
6.5ノットの推進力を生むスクリュータラップは折り畳んで車内に収納するカバのプリントが目立つシート。座席数は34席
各座席の下に救命用具が備え付けられている2名の船員用シートもカバ柄で統一されている運転席はトラックに近いレイアウト
航海用エンジンと舵は、完全に別体になっている舵がどの向きになっているか確認できる蛇角指示計救命胴衣や浮輪など水難事故対策もされている
安全な水深で進入できるよう山中湖に設けられた軌道山中湖の水面を運行している様子。かなり車体は沈んでいるプレ運行期間中は、一般の観光バスのようなガイドを行っている

(政木 桂)
2011年 5月 11日