サトリアネオの痛車、四国・久万高原で全日本ラリー選手権デビュー
痛車戦争勃発!? 高崎くす子ちゃん vs. めろんちゃん

ラリー界も痛車の侵略が止まらない!? 写真はメロンブックスラリーチャレンジ(左)とCUSCOジュニアラリーチーム(右)

2011年4月30日~5月1日開催



 4月30日~5月1日に、JRC(JAF全日本ラリー選手権)第2戦が四国・松山に程近い久万高原(愛媛県上浮穴郡久万高原町)美川スキー場を拠点に開催された。

 今年のJRCはシリーズ全8戦。第2戦の「久万高原ラリー」はグラベルのSS14本・約74㎞で、総走行距離は約207㎞(DAY1・2の2日間開催)である。近年ターマック(舗装路)で行われていた同イベントだが、今年はグラベル(未舗装路・ダート)に戦いの場をスイッチ。各チームにとっても久々のコース設定となる。現在のペースノート走行がメインとなる全日本ラリーにおいて、これまでのデータが使用できないこのラリーは、過酷かつ先の読めない展開が予想されていた。

 事実ラリーが始まると、展開は“サバイバルラリー”の様相。雨によるウェットコンディションかつ霧が発生したグラベル林道では、全参加チーム43台中、16台がリタイアすることになった。

 そうした悪条件の中、総合優勝はチャンピオン奪還に燃えるJN-4クラスの奴田原文雄選手(ADVAN・PIAAランサー)が、昨年の王者・勝田範彦選手(ラック名スバルSTiDLインプレッサ)を下す結果となった。

 久々に全日本ラリーシリーズ参戦に復帰したCUSCOレーシングの柳澤宏至選手(CUSCO ADVAN EVO.X)は、SS7でリタイア。それまでは暫定総合3位ポジションにつけ、速さを見せつけており、次に期待がかかるところ。

今年初のグラベルラリーでみごと優勝を飾った奴田原文雄選手(ADVAN・PIAAランサー)
昨年の覇者・勝田範彦選手(ラック スバルSTiDLインプレッサ)も久しぶりの四国のダートに手を焼いたか
残念ながらDAY2でリタイアとなった柳澤宏至選手(CUSCO ADVAN EVO.X)だが、次戦でもAPRCで磨いたスピードを見せてほしい

 さらにこのラリーでは、Car Watchでもたびたび動向をお伝えしてきたキャロッセのサトリアネオ(プロトン)がJN-3クラスで3台も出走し、国内モータースポーツデビューを飾った。CUSCOレーシングからは牟田周平選手(CUSCO ADVAN プロトン)、CUSCOジュニアラリーチームからは明治慎太郎選手(高崎くす子・ADVAN・サトリアネオ)と石川昌平選手(高崎くす子・DUNLOP・サトリアネオ)の面々である。

 結果は牟田周平選手がJN-3クラスで5位、明治慎太郎選手がJN-3クラスで7位、石川昌平選手がリタイアという結果だった。正直リザルトだけを見ると、マシン、チームの熟成も含めてこれからといった印象だが、とは言え新型車投入が久しくなかったJRCにおいて、この3台のデビューはとても画期的なものであったことは間違いないだろう。

 キャロッセ(CUSCO)が年内の国内正規販売を目指すというサトリアネオは、新車予価150~160万円を目指しており、そういった点でモータースポーツ入門に最適なモデル。FIA(国際自動車連盟)のホモロゲーションも取得済みなので、国内の県戦ラリーから全日本ラリー、はてはWRC(世界ラリー選手権)までこの1台で参戦できるのも大きな魅力だ。今後キャロッセはAPRC(アジア・パシフィックラリー選手権)およびJRC参戦を通じて、マシンのセットアップやパーツ開発等を進めていく予定。この3台の動向は、今後の国内ラリー界にどのような影響をおよぼすのか注目したいところだ。

まずは手堅く走り抜いたキャロッセワークス若手の牟田周平/保井隆宏組その才能を開花させる日が楽しみな明治慎太郎/漆戸あゆみ組今回はDAY1で戦線離脱だった石川昌平/菅野総一郎組。期待のホープ・石川選手は若冠22歳

リザルト

JN-4クラスの1位奴田原文雄/佐藤忠宣組。2位勝田範彦/足立さやか組。3位は桑田幸典/澤田耕一組だった
JN-3クラスの1位香川秀樹/嶋田創組。2位は曽根崇仁/桝谷知彦組、3位は宇田圭佑/石川恭啓組
JN-2クラスの1位増川智/赤木弥生組。2位は中西昌人/北川紗衣組、3位は高橋悟志/箕作裕子組
JN-1クラスの1位村田康介/平山組。2位は山口貴利/山田真紀子組
新井敏弘選手も0カーで出走。イベントに花を添えてくれた

ところで全日本ラリーって?
 ラリーについては、WRCなどの映像で知っている読者も多いかと思うが、実はラリーは日本国内でも開催されている。その国内最高峰のラリーシリーズがJAF全日本ラリー選手権で、2011年は全8戦を予定している。

 一時的にクローズドされた峠道や林道などの一般道を使って競われるラリーは、まさに公道最速を決めるモータースポーツ。ラリーにおいて、速さを競うステージはSS(スペシャルステージ)と呼ばれ、全日本ラリーでは2日間で15ステージ前後のSSが設定される。選手たちは、これらSSを1台ずつ順番にタイムアタックし、その各SSの合計タイムが速かったものが勝者となる。

 ボクシングが体重によって階級が分けられているように、ラリーにおいても参戦する車両は、排気量などによってクラスが分けられている。詳細は次のとおり。

クラス排気量等車両区分
JN-43001cc~RN/RJ
JN-31501cc~3000ccRN/RJ
JN-21401cc~1500ccの2WD車RN/RJ/RF
JN-1~1400ccRN/RJ/RF

※RNはFIA公認、RJ車両はJAF公認車両、RF車両はFIAおよびJAFともに公認されていない車両
※JN-2クラス以外は4WD・2WDなどの駆動方式の区分はない
※ターボ・スーパーチャージャー装着車は排気量×1.7の過給器係数で換算

痛車戦争勃発!? 高崎くす子ちゃん vs. めろんちゃん
 今回3台のサトリアネオを擁したキャロッセだが、セカンドチームであるCUSCOジュニアラリーチーム(以下、CJRT)は「高崎くす子」なるオリジナルキャラクターをあしらったカラーリングで参戦。対して、2008年よりメロンブックスのキャラクター「めろんちゃん」の痛ラリー車で戦ってきたメロンブックスラリーチャレンジ(以下、MRC)は、今年もターマックマイスター眞貝知志選手(メロンブックスDLテインBRIGインテ)をドライバーに据え、JN-3クラス注目のライバル対決となった。

メロンブックスはサポートカーが駆け付け販売ブースも展開する。「ラリー会場でめろんと握手っ!」とはめろんちゃんの弁
CUSCOジュニアラリーチームのピットでは、CUSCOレーシングと並んで3台のサトリアネオが整備されていた。キャロッセ社長兼CUSCOレーシング代表である長瀬努監督も、チームの枠を超えて激を飛ばしていた

 一見、おふざけ企画にも受け取られかねない2チームではあるが(失礼)、その内容はとても大真面目なものであった。

 MRCの中村信博監督に話を聞いたところ、「ドライバー眞貝選手のグラベル完走率は0%。こうした状況を改善するために、昨年末よりドライバー、マシンともにグラベルテストを重ねてきた。今シーズンは、グラベルでもポイントを狙って有利にシリーズを進めていきたい。よってこの一戦はそれらを確認する戦いでもある」と語っており、ターマックでは上位クラスのランサーをも喰ってしまうスピードを誇る眞貝選手だけに、グラベルでもポイントを稼げば、今年のJN-3クラスチャンピオンの可能性はかなり高くなる。

 一方の、CJRT松井悠監督としても「国内ラリーにおけるサトリアネオの実戦投入は、今回が初。チームもマシンも初めてづくしの暫定仕様で臨むラリーだし、実戦テスト的な意味合いが大きい。このラリーではクルーやチームスタッフが、この環境、このマシンに慣れてくれればそれで充分だと思っている。だからクルーには今回は猛プッシュさせず、データ収集および完走を重視した走りを指示した」と慎重だ。

 そんな中、DAY1は眞貝選手が昨年末からのグラベル練習の成果を発揮し、入賞圏内に着ける。一方、CJRTの両選手はクルマの動きを確かめながらのスロースタート。後半、明治選手はファーストチームの牟田選手を凌ぐSSタイムを出し、好感触のDAY1を終えるも、石川選手はようやく調子が上がってきたという印象を受けた矢先のSS5で痛恨のコースアウト。リタイアを余議なくされた。

 DAY2は、昨晩からの雨が残り、霧がかかる悪天候の中からのスタートとなった。そんな状況でも、眞貝選手の健闘は目を見張るものがあった。上位の脱落と、自身の堅実な走りで、クラス3位という高順位でSSをこなしている。僚友石川選手を前日のリタイアで失い、1人残った明治選手はさらに完走重視の淡々とした走り見せ、DAY2のステージをこなしていった。

 後半になると脱落する車両が続出し、順位も頻繁に入れ替わる中、ステージをあと1つ残すだけとなるSS13で眞貝選手が側溝にハマり痛恨のリタイア。ここまで調子がよかっただけに、残念な結果となった。対する明治選手はフラストレーションの溜まる中、我慢の走りを続け完走。リザルトはJN-3クラス7位(総合27位)。望外のシリーズポイント獲得は、我慢の走りを続けた明治選手に対する高崎くす子ちゃんからのご褒美だろうか。

 ダートでも才能を見せ始めたメロンブックスラリーチャレンジ眞貝選手に、今後CUSCOジュニアラリーチームの2人がどう絡んで行くのか? このガチンコ痛車対決も、JRCの大きな見どころの1つなのである。

メロンブックスラリーチャレンジのインテグラタイプR。ターマックでは文句なしのポテンシャルだが、グラベルは苦手。オフシーズンの走り込みで、それをどれだけ克服できたかが勝負の鍵となる
若手セカンドドライバーの石川昌平選手。今回は残念な結果に終わったが、これも経験のうちだろう。今後の成長に注目したい

 今後行われるJAF全日本ラリー選手権の開催日は次のとおり。開催場所のお近くに住む方は、ぜひナマでラリーの迫力を楽しんでみてはいかがだろうか。

開催日競技会名開催場所
5月20日~22日2011年JAF全日本ラリー選手権第3戦 HIMUKA RALLY'11 in 美郷宮崎県
6月10日~12日2011年JAF全日本ラリー選手権第4戦 がんばろう! 福島MSCCラリー2011福島県
7月8日~10日2011年JAF全日本ラリー選手権第5戦 第39回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2011岐阜県
9月2日~4日2011年JAF全日本ラリー選手権第6戦 2011 ARK Rally in 後志北海道
9月30日~10月2日2011年JAF全日本ラリー選手権第7戦 Rally Hokkaido北海道
10月21日~23日2011年JAF全日本ラリー選手権第8戦 新城ラリー2011愛知県

(重城晃 MOTV.JAPAN)
2011年 5月 16日