トヨタ、EV/PHV向けソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」発表会
セールスフォースと共同構築。クルマがつぶやく時代に

ソーシャルネットワークサービス「トヨタフレンド」

2011年5月23日開催



戦略的提携について発表する、トヨタ自動車 豊田章男社長(左)と、米セールスフォース・ドットコム マーク・ペニオフCEO(右)

 トヨタ自動車は5月23日、ソーシャルネットワークサービス(SNS)「トヨタフレンド」を、米セールスフォース・ドットコムと共同で構築することを発表し、共同記者会見を都内で開催した。

 このトヨタフレンドは、セールスフォースの企業向けSNS「Chatter(チャター)」をベースとしたもので、2012年に市販する電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)でのサービス開始を予定している。記者会見には、トヨタ自動車の豊田章男社長、セールフォースのマーク・ペニオフCEOが出席し、将来トヨタフレンドで実現するカーライフのデモも実施された。


「これからのクルマは、つながるが新しい価値」と豊田社長
 豊田章男社長は、「デトロイト・モーターショーに出席するため米国に行った際にマークと会った。トヨタフレンド構想は、そのときに提案してもらったものだ」と、このSNS構想がセールフォースの提案から始まったことを明かす。豊田社長は、このトヨタフレンドという名称がとても気に入ったと言い、「お客様にトヨタを友達と思っていただければこんな素晴らしいことはない。次の100年もクルマが愛されるための一つのチャレンジ」だと言う。

 トヨタは、3月に企業のあり方を示す「グローバルビジョン」を発表しており、新規事業戦略については、グローバルIT企業との連携を柱に展開していくことを表明している。4月に発表したマイクロソフトとの戦略的提携、このセールフォースとの戦略的提携のいずれもそのビジョンにもとづいたものであり、「もっとよいクルマを作るチャレンジ」だとする。

 豊田社長は、「クルマは走る、曲がる、止まるに加えて“つながる”が大切」と言い、クルマとつながることで「お客様が笑顔になれば」と語った。

 来日したマーク・ペニオフCEOは、「世の中には多くのシフトが起こっている」と言い、iPhoneやiPad、ブラックベリーなどさまざまモバイル機器の普及を例に挙げ、会場に展示されたプリウスプラグインハイブリッドもその一つであると紹介。クルマはソーシャルネットワークでつながることで、今後iPhoneやiPadと同様の「エクスペリエンスデバイス(体験する機器)」になり、より開かれた世界が広がっていくとした。

豊田章男社長マーク・ペニオフCEO

クルマがつぶやいて、充電や点検をお知らせ
 トヨタフレンドの実際に関しては、トヨタ自動車 常務役員 友山茂樹氏が解説を行い、デモが行われた。トヨタフレンドでは、クルマが充電時期や点検時期をつぶやいてユーザーに知らせる機能を持ち、ユーザーはスマートフォンなどを利用して、クルマとの会話が行える。

2012年に次世代テレマティクスサービスを開始する予定。これがトヨタフレンドの基盤となるセールスフォースのSNSとの融合で、豊かなカーライフを実現していくユーザーとクルマと販売店(トヨタ)をソーシャルネットワークでつなぐ
トヨタフレンドのシステム概要。トヨタスマートセンターから情報を、トヨタフレンドがユーザーへ届けるオープンなSNSであるTwitterやfacebookとのサービス連携も予定する

 たとえば充電時期では、プリウスプラグインハイブリットを車庫に入れた際、「電池残量5%です。充電プラグは接続しましたか?」とクルマからスマートフォンにメッセージが送信される。ユーザーはこれにより、電池残量や充電の必要性を知ることができる。

 また、点検時期のお知らせは、「間もなく走行距離が1000kmになりますので、点検をお願いします」というメッセージがクルマから送信される。ユーザーが販売店やメカニック、メーカーとSNSでつながることを許可すれば、販売店からのお知らせなども届くし、逆に質問も行える。

 トヨタフレンドは、Twitterやfacebookとの連携も図られると言い、クルマのつぶやきなどをTwitter上に掲示することも可能なようだ。

車庫にクルマを入れるとクルマ(プリくん)から充電を則すメッセー時が届く充電プラグをセットする充電時間を通知するメッセージが届く。夜間電力での充電を通知していた
クルマから1000km点検のお知らせメッセージが届くディーラーでは入庫予約などの準備や、リモート診断が行えるユーザーはスマートフォンから入庫予約が行える
SNSならではの機能言える「フレンドサーチ」。他のユーザーがどこにいるか分かり、ドライブの待ち合わせなどが便利に行えるクルマの位置情報、ユーザーのつぶやきを処理して、地図上に描画する

クルマとの接続をマイクロソフト、ユーザーとの接続をセールスフォース
 このトヨタフレンドでは、SNSとしてセールフォースのChatterをベースとするが、実際のシステム開発を行うのはトヨタメディアサービス。トヨタは、クルマ情報の取得にはマイクロソフトのクラウドサービスであるWindows Azureプラットフォームを使い、ユーザーとのフロントエンドにはセールスフォースのクラウドプラットフォームを使う。これは、「クルマとの通信関連の開発がすでにWindowsプラットフォームで行われていること、また、ユーザーとのコミュニケーションでは、iPhoneやiPad、各種スマートフォンなど多種多様な機器につながることが望ましいこと」(友山氏)から決めたと言う。

 この戦略的提携に伴い、トヨタメディアサービスには、マイクロソフトとセールスフォースも出資を行う。出資は10億円を増資する形で行い、出資額は、セールスフォースが2億2300万円、マイクロソフトが3億3500万円、トヨタが4億4200万円となる。増資前は、資本金1億5050万円のトヨタの100%子会社であったため、増資後の資本割合においてもトヨタは50%を超えることになる。

マイクロソフト、セールスフォース、この2社と戦略的な提携を行うことで、世界中でのビジネスを行う。いずれもクラウドサービスのため、スピーディな事業展開が可能になる開発はトヨタメディアサービスが行う。マイクロソフト、セールスフォースがトヨタメディアサービスの増資に参加する2012年初頭には日本でのサービスを開始し、2012年中にグローバルに展開

(編集部:谷川 潔)
2011年 5月 23日