日産自動車、リーフの全世界販売台数は8200台に
株主総会でゴーン氏の報酬への質問が相次ぐ

日産自動車の定時株主総会が行われた神奈川県みなとみらいのパシフィコ横浜 国立横浜国際会議場

2011年6月29日開催
パシフィコ横浜



 日産自動車は、6月29日10時から、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜 国立横浜国際会議場で、第112回定時株主総会を開催した。

 冒頭、カルロス・ゴーンCEOは、日本語で株主総会の開会を宣言。続けて、日本語のまま、3月11日に起こった東日本大震災の被災者へのお悔やみを述べた。

2011年も引き続き成長、各種新技術を投入
 2010年度の事業報告においては「過去最高の販売台数と成長を実現した」(カルロス・ゴーンCEO)としたものの、東日本大震災の影響により、危機対応を余儀なくされたことを示しながら、震災の被害からの迅速な復旧を遂げるために必要な手段を講じていることや、2011年度には震災の影響により失われた業績を回復させる姿勢を強調。持続的かつ利益ある成長に向けた戦略を加速させる体制を整えていることを示した。

 志賀俊之COOは「2011年度は、震災からの迅速な復旧とグローバルでの販売増によって成長を遂げる。ラフェスタ ハイウェイスター、ティーダをはじめ、新たにグローバルで5車種を投入するとともに、3気筒直噴エンジンやアラウンドビューモニターの進化といった新技術を採用する。勢いを失うことなく、成長を遂げていく」と2011年度の方針について説明。

 一方で、ゴーンCEOは、2016年を最終年度とする中期経営計画「日産パワー88」について触れ、2016年に世界市場シェア8%、営業利益率8%という計画を株主に説明した。

 「1999年のルノーとの提携後、5番目となる中期経営計画。この期間中、平均で6週間ごとに1台の新型車を発表し、51車種の自動車を投入することで、日産ブランドとインフィニティブランドのラインアップを強化する。また、期間中には90の新たな技術も投入する。さらに累計150万台の電気自動車(EV)を販売する考えだ。日産パワー88は、ブランドとセールスに注ぐ、我々の努力を指すものであり、広範な内容のものとなっている」と位置づけた。

 さらにゴーンCEOは、日産パワー88において6つの柱としている「ブランドパワーの強化」、「セールスパワーの向上」、「クオリティの向上」、「ゼロ・エミッション リーダーシップの有効活用」、「事業の拡大を通じた成長の加速化」、「コスト リーダーシップ」についても、1つずつその狙いを説明し、株主の理解を求めた。

 ゴーンCEOは説明の最後には、日産社長賞を授与した社員5人を壇上にあげ、日産リーフの開発に携わった社員がその取り組みについて説明した。

EVはコストと航続距離が課題
 10時45分頃から質疑応答を受けた。

 まずは、インターネットなどを通じて事前に受けつけた質問や、追浜工場で開かれた技術体験会会場からの質問に回答した。

 約200件の事前質問のうち、約30%が役員報酬に関するものであり、ゴーンCEOは「まず答えるべきもの」としてそれに回答した。

 ゴーンCEOは、「日産はグローバルマネジメントを持つ日系企業である。エグゼクティブチームは日本人および日本人以外で構成されている。この体制が、日産の復活と成長に大きく寄与している。日産自動車の執行役員の26%は日本人以外、また取締役の9人のうち4人、さらに44部門のトップが日本人以外であり、経営チームは多種多様な人種で構成されている。同じような企業を対象に、徹底した分析を行った。その指標をもとに導き出したものであり、7人の役員は1億円以上の報酬となっている。トップ5人の合計は16.51億円。私の2010年度の報酬は9.82億円となっている」などとした。

 また、東日本大震災における調達に遅れが発生した問題については「2次、3次サプライヤーで、唯一の生産拠点で作られているものがあった。生産拠点の分散化を、電子部品などの主要な部品を中心にやっている」と回答。

 EVには逆風が吹きつつあるのではとの質問については「安心してほしい。EVの戦略には変更がない。例えばリーフには、電気を使用するだけでなく、電気を家庭内に供給する能力もある。リーフに蓄電したものが、家庭のバックアップ電源になる。また、ガソリンだけに頼る車でないため、災害地でもガソリン不足の中で利用された。電気は、水力、風力、原子力、石油、石炭からも発電できる。日産自動車は、2050年度までに新車のCO2排出量を90%削減する計画には変わらない。今後もゼロエミッションを目指していく」と答えた。

 「トップ10に入る車づくりができていないのではないか」との指摘については、片桐隆夫副社長が回答。「2010年度には、上位10車種の中にセレナ1車種しか入っていない。この結果は真摯に受け止めている。だが、セレナはミニバンのトップを維持し、2010年度下期は上位20車種に5車種が入っている。製品を売る力、作る力が著しく劣っているわけではない。中期経営計画では、13車種をやめ、15機種を増やす。結果として車種を2車種しか増やさずに販売台数を増やす計画である。これは1車種ごとの販売台数を増やすことにつながる」とした。

 EVの現状については、「12月に発売以来、これまでにグローバルで8200台を販売。内訳は日本が5100台、北米が2600台、欧州が500台。排気ガスを出さない、未来の技術であるリーフを手にしたことを喜ぶ声が多い。この取り組みに挑戦した日産を賞賛する声もある。リーフの特徴である胸のすくような加速、ハンドリングのよさ、圧倒的な静けさへの評価が高い。初めて運転した人は、みんなうれしそうな顔で車から降りてくる。我々はこれを『リーフスマイル』と呼んでいる。ガソリンスタンドに行かずに済み、プラグを差すだけでいいということが、なんてシンプルで、使い勝手がいいという声もある。中には、これまではガソリンスタンドの価格を毎日気にしていたが、それをまったく見なくなったという声も出ている。そして、タイマー機能を活用するなど夜間充電で利用している人が多いのも特徴である。公共の場所での充電スポットが欲しいという声も出ている。全国2200カ所のディーラーに普通充電器を、200カ所に急速充電器を配備している。これを応援してくれる声もある」とした。

 EVの今後については、山下光彦副社長が回答。「技術的には3点ある。1つはコスト。補助金がなくても購入できる価格にする必要がある。電気代を含めるとガソリン車と変わらないレベルだが、イメージとして高いという印象がある。価格も普通であると言われるようにしたい。これはバッテリーやモーターの改善などにより実現したい。2番目は航続距離の問題。いまはこの点を理解してもらって購入してもらっているが、仕様では200kmを走るとしているものが、条件によっては、これより落ちることがある。バッテリーの改善や使用する電気量をいかに少なくするかといった取り組みを行う。さらに、EVならではの新たな技術が必要である。プラグを使わずに非接触で充電できるものも開発しているが、こうしたEVに求められる技術を早く使ってもらえるようにしたい」とした。

報酬は“世界のスタンダード”
 会場からの質問では、2011年度の業績見通しや日産のアイデンティティに関する質問が飛び「2011年度の販売台数は、自動車メーカーとしては唯一伸びる計画を立てている。だが、東日本大震災からの復興費用、円高の問題、原材料の価格高騰といった問題もある」としたほか「1999年には200億円の赤字があり、販売台数も落ちていた。ただ、当時から社員は強いパッションを持っており、愛する会社が喘いでいたという状況だった。そこに効率化を取り入れた。日産は感情だけの会社ではなく、効率化にも取り組むことができる会社であることに誇りを持っている。『技術の日産』と言っていた時期は技術だけの会社だった。いまは幸いなことに一言では示せない。技術の日産であり、デザインの日産、お客様の日産、クオリティの日産、マーケティングの日産、ダイバーシティの日産である」と語った。

 震災への事前対応については「これまでにも震災に起こった場合を想定して、投資を行ってきた経緯がある。その結果、今回の震災でも建屋は一切被害を受けていない。どのような危機においても初動対策が大切である。災害対策本部が1時間後に召集され、まずは生産拠点の復興に集中的に力を注いだ。次の危機にもちゃんと対応していく」と回答した。

 EVのバッテリー性能については、山下副社長が回答。「5年間で10万kmを走行しても十分利用できる仕様となっている。世界的にバッテリー競争が激しくなっている。企業秘密になっている部分が多く、具体的な数値には言及できないが、我々のバッテリーは、十分な競争力を持つ高い水準にあると考えている」とした。

 また株主からは「リーフに乗っているが、航続距離が気になり、暑い中でもエアコンを切って走っている。300kmの航続距離が欲しい。その際には、現行リーフのバッテリーと交換できるようにしてほしい」との要望があり、これに対しては「日産リーフは運転性能、加速性、航続距離のバランスで現在の仕様としている。携帯電話も8時間充電して20分しか通話できなかったが、それが改善されている。自動車用バッテリーもそれと同じで、日産としては、バッテリー性能の強化に投資していく」とゴーン氏が回答。山下副社長も「航続可能な残存距離が明確に出るので、その中でエアコンを使って欲しい。今後数年以内に出てくるバッテリーには期待してほしい」とした。

 また、三菱自動車との提携については、アンディ・パーマー副社長が回答。「三菱自動車との関係は4つの観点がある。生産能力を活用すること、次世代のピックアップトラックでの協業、相互にOEMの関係を持つこと。そして、将来のエコカーと小型車を考えるものである。今は、これは国内向け軽自動車が中心となり、まずはガソリン車を対象に行っている。今後はEVについても検討していくが、まだ現時点では内容は発表できない」とした。

 会場からはゴーン氏の報酬と、大量の株式を取得している現状についても改めて質問があり、コンサルティング会社であるトーマスワトソンの調査をもとに役員報酬を算出しているものであることを説明。「トヨタやホンダと比較すると異なるが、これは日本のスタンダードではなく、世界のスタンダードである」とコメント。「私が多くの株式を持っていることは、株主と同じ利益を共有していることともいえる。安心できることだと考えて欲しい。来年は株主配当を2倍にする予定である。グローバルな業績、多様な人材、グローバルで戦っていることを考えると、この報酬は妥当であると理解している」と述べた。
 質問した株主の中には「ぜひ、ゴーンCEOに読んでいただきたい本を、この場で手渡したい」として、直接本を手渡すという株主総会では珍しいシーンも見られた。

 なお、第1号議案の剰余金処分の件、第2号議案の当社の従業員ならびに当社関係会社の取締役および従業員に対しストックオプションとして発行する新株予約権の募集事項の決定を取締役会に委任する件、第3号議案の取締役全員任期満了につき9名選任の件については、いずれも可決され、12時16分に閉会した。

(大河原克行)
2011年 6月 29日