ルノー、全4色の特別カラーを施した「カングー クルール」発表 フランス本社も驚愕したピンクを設定 |
ルノー・ジャポンは、コンパクトトールワゴン「カングー」に4色の特別カラーを施した特別仕様車「カングー クルール」を7月9日に発売する。それに伴い、都内で発表会を開催した。カングー クルールの価格は4速AT車が229万8000円、5速MT車が219万8000円。
カングー クルールは昨年も導入された特別仕様車で、このときは「オランジュ プロヴァンス」(オレンジ)、「ベール パリ」(グリーン)、「ブルー フランス」(ブルー)の3色を設定した。
今回発売するカングー クルールも、オレンジ、グリーン、ブルーをラインアップするが、オレンジは「オランジュ アンダルー」、グリーンは「ベール ジャルダン」、ブルーは「ブルー クレールメタリック」となっており、昨年のモデルとは色味が若干異なる。この3色は、1970年代に発売された「ルノー 5(サンク)」の純正色で使われていたものとなる。バンパーは昨年同様に無塗装のブラックとなる。
注目はピンクの「ローズ」を設定したこと。ローズカラーのカングーは世界を見渡しても日本でしか販売されない限定カラーで、本国の工場でローズカラーのカングーが出来上がった際、社内でも写メを撮る人がいるなど多くの注目を浴びたと言う。
昨年導入された3色のカングー クルール | 今年販売されるカングー クルール(左からオランジュ アンダルー、ベール ジャルダン、ブルー クレールメタリック | 限定30台のみの販売となるローズカラーのカングー クルール |
実は本国フランスでは、乗用版カングーはシルバーやホワイトといったベーシックなカラーが人気色(カタログカラーはレッド、シルバー)なのだそうだが、昨年発売したカングー クルールがいずれのモデルも3週間以内に完売したことからも、日本ではカラフルなカングーの方が好まれるようだ。ちなみにフランスではカングー クルールの設定はない。
カングーはもともとは商用車であり、本国では大口顧客の要望に合わせたカラーを施して納車する。こうした大口顧客向けとして過去に使用したカラーはすべて蓄積されているそうで、現在では300色以上あると言う。昨年と今年のカングー クルールを比べてみても分かるように、例えば一口にブルーと言っても何種類かをラインアップしているそうだが、ピンクに限ってはこのローズのみの設定となっている。
オランジュ アンダルー、ベール ジャルダン、ブルー クレールメタリックは各限定90台(AT車65台/MT車25台)、ローズは30台限定(AT車/MT車の比率は非公開)となる。
インテリアカラーも新色で、シート生地はライトグレー、ドアトリム/ダッシュボード/ステアリングはダークグレーを採用。こうした特別なカラーリングを採用しながら、ベースモデルと変わらない価格設定となっている。
搭載するエンジンは従来モデルと同じく直列4気筒DOHC 1.6リッターで、最高出力は78kW(105PS)/5750rpm、最大トルクは148Nm(15.1kgm)/3750rpm。
ボディーサイズは4215×1830×1810mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2700mmで、背が高いことに加えてスクエア形状の室内は十分なスペースを確保。さらに2Lのペットボトルを入れられるセンターコンソールボックス、A4サイズのノートを置けるスペースがあるダッシュボードセンタートレー、24.4Lの容量をもつ3連式オーバーヘッドボックス、フロア下の収納スペース、フロントシートバックに用意されるカップホルダー付きテーブルなど、使う人が嬉しい機能を満載する。
リアシートは7:3分割可倒式。リアシートバックをすべて倒すと広大なスペースが出現する |
大極司COO |
発表会会場では、大極司COOがカングー クルールについて説明を行った。
カングーは2002年3月に日本へ導入され、その当時は知名度がないにも関わらず初年度で733台を販売。今年5月までの累計販売台数は1万1394台となっており、ルノー・ジャポンにおける販売台数の約半分を占める人気モデルと言う。
大極氏は日本市場でカングーが受け入れられる理由について「フランスらしさがギュッと詰まっているからではないか」と分析する。
具体的には、フランス人は合理的にモノを作ることに長けており、カングーで言うと「乗り降りのしやすさ」「見切りのよさ」「小回りがきく」「収納の豊富さ」が、その合理性に基づくものと説明する。
フランスらしさ=フレンチタッチの重要な要素はデザイン性と言い、「個人的な意見としては、フランスのデザインというのはきらびやかな美しさではなく、機能的な美しさ=機能美がコアではないかと考えている」とし、カングーで言うところの「デザインにインテグレートされたダッシュボード中央の小物入れ」などが代表例の1つと言う。
そして、カングーを語るうえで欠かせない要素はエクステリアデザインで、「外観の可愛らしさはいかにもフランスらしいところで、私自身の思いとして“可愛い”というのは1つの機能だと考えている。諸元表の1つに“可愛い”を入れたいくらいだ」「イベントなどでカングーオーナーに購入した理由を聞くと、かなり多くの人が“一目惚れ”としていることから、カングーの外観は機能美の1つなのではないか」と述べた。
また、「日本市場においてはボディーカラーもフランス車をイメージするうえで重要な要素であり、お客様個人の個性を表現する大事な要素」と述べるとともに、クルールを導入した理由について「日本の街には色が足りないのではないか、ということをコンセプトとして提案をしたいため」と説明する。
大極氏は「カングーのような1ボックス車は色が足りないのではないか」「日本車のフォルムはベーシックなカラーが似合う」という所見を持っており、そうした観点から「カングーはさまざまなカラーが似合うモデル」と、デザイン面での優位性を語る。
そして、昨年販売したカングー クルールについても触れ、オランジュ プロヴァンス(オレンジ)のATモデルは即日完売し、その他のMT車を含めた90台は3週間で販売したことを明かし、「この結果から、フランスを連想させる個性的な色に対するお客様の要望の強さが分かった」と大極氏は言う。
こうした背景をもとに今年もカングー クルールを導入するわけだが、とりわけピンクのローズは「300以上のカラーの中から厳選し、本社との折衝を重ねてようやく30台生産できた」とその苦労を語っていた。
なお、ピンクのカングー クルールの生産時にたまたまルノー・ジャポンのスタッフが工場に立ち寄った際、工場の塗装担当者から「このクルマはなんだ、お前ら正気か」と言われたそうだが、大極氏はそのことを聞いて「それだけインパクトのあるカラーなのだから、自信を持った」とのエピソードを紹介するとともに、日本のユーザーに受け入れられるのではないかとの見方を示した。
(編集部:小林 隆)
2011年 7月 1日