首都高、歩行者立ち入り対策と防災体制を強化
距離別料金の詳細発表は延期

橋本圭一郎代表取締役会長兼社長

2011年10月26日開催



 首都高速道路は10月26日、定例会見を開催し、橋本圭一郎代表取締役会長兼社長が同社の活動について報告した。

距離別料金制の詳細は延期
 7月に開かれた定例会見では、10月の会見で距離別料金制について発表するとしていた。しかしこの件は10月24日に国土交通大臣に許可申請をしたばかりで、詳細を発表できる段階にないとして、発表が見送られた。

 なお申請が通り、距離別料金制への移行が決まった段階で、「どういう料金体系になり、どういうケースで料金が減る、どういうケースで料金が増えるかを、できるだけわかりやすい形でお示しさせていただきたい」と述べた。

 また距離別料金制の同社収益への影響は「(距離別料金制は)お客様の負担のバランスをとるのが主眼。将来的に短距離のお客様が増えれば増収になるだろうが、新しい制度に移行した段階では、収入的にはほぼイーブンになるように制度設計をしているところ」とした。

歩行者立ち入り対策を強化
 定例会見では、通行台数状況など多岐に渡る内容が発表されたが、ここでは「歩行者立ち入り対策」と「防災体制強化」についてリポートする。

 首都高速への自動車以外の立ち入りは昨年度で年間383件、今年度上半期ですでに206件となっており、1日1件以上発生している。

 今年度は立ち入った歩行者が走行車両に轢過され死亡する事故が3件起きており、再発を防ぐべく、警視庁高速道路交通警察隊とともに「首都高速立ち入り者等事故防止対策検討会」を設置、10月24日に第1回を開催した。

 歩行者の立ち入り事故の理由には、「高速道路上での故意の下車」「認知症等」「不明」があり、このほか自転車、原動機付自転車の立ち入りもある。

 同社ではこれまでも、ポスターやWebサイトでの周知、タクシー業界への働きかけ、認知症事故発生場所近辺の自治会等への周知を行なってきたほか、出入口の誤進入防止として看板やシール、LEDの注意喚起板の設置、ポストコーンやガードレールの形状を誤進入しにくいようにする、といった対策をとってきた。

 しかし事故が減っていないため、検討会の開催に及んだ。「検討会では、情報を警察にも共有していただき、立ち入り防止対策を検討・実施するとともに、将来的には高速道路近辺で認知症等の方が行方不明になった場合、その情報を高速隊と共有し、事故を未然に防ぐ枠組みを構築したい」としている。

会見では、大橋JCTの「おおはし里の杜」で収穫された米で作ったおにぎりがふるまわれた。品種は「ふさこがね」で、田植えから脱穀までを体験した目黒区立菅刈小学校の児童も、給食などで食べる

震災を受け、防災体制の強化
 防災体制としては、同社は2009年に大地震の発生を想定した業務継続計画(BCP)第1版を策定している。

 しかし東日本大震災などで不十分だった点が明らかになったため、BCP第2版を10月末までに策定する。

 第2版では時間外の震災発生時の対応強化が図られた。具体的には、担当役員や社員が必ず本社近くに常駐するようにしたほか、同社拠点の半径10km以内に住む役員、社員を「初期参集要員」とし、震度5強以上で参集できるようにして、即応体制を整えた。橋本社長自身は「自宅から東神奈川の管理局まで徒歩30分ほどで行き、そこで仮の本部を立ち上げた後、緊急車両で本社に入る仕組みを構築している」としている。

 また、地震発生後に入口を閉鎖し、高速道路上に留まっている車両を輩出、さらに道路の点検までを、優先度の高い路線では3時間で済ませるよう、シミュレーションと訓練で確認した。料金所ごとに、具体的に車両を外に誘導する方法も改めて整理した。

 首都高速道路は「緊急交通路」として指定されており、その機能を果たす必要があるため、迅速な復旧を図る。

(編集部:田中真一郎)
2011年 10月 27日