首都高、大橋JCT屋上の「おおはし里の杜」で田植えを実施
都心の地上30mで地元小学生が稲作体験

菅刈小学校の5年生37人が参加して初めての田植え体験

2012年5月31日実施



 首都高速道路は5月31日、東京都目黒区にある大橋JCT(ジャンクション)・大橋換気所で、地元の小学生を招いた稲作体験を実施した。

 首都高では大橋JCTの周辺に、代々木公園、駒場公園、目黒川といった今でも自然が残されたスポットが点在することに着目し、大橋JCTを緑化して周辺地域と連携させ「エコロジカル・ネットワーク」を形成するプロジェクトを進めており、この一環として、大橋JCTと一体になった大橋換気所の屋上スペースに周辺環境の再現を目的とした「おおはし里の杜」を整備している。

目黒区の自然を再現した「おおはし里の杜」

 屋上の約1100m2というスペースを使った「おおはし里の杜」には、もともと周辺に生えていた植物を移植し、小川と池を設置。さらに草土手に囲まれた2つの水田も用意されており、1年を通じて水をはる冬水田んぼとすることで、メダカなどの生息地としている。また、昨年から近隣にある菅刈小学校の自然学習の場としても利用されることになり、小学生による稲作体験は今年で2年目を迎えている。

 会場に訪れた37人の小学生たちは、まず会議室で東京農業大学の非常勤講師である梅室英夫先生から田植えの手順や注意事項などについてレクチャーを受け、その後、実際におおはし里の杜の水田に移動して田植え体験を行った。

レクチャーを受ける菅刈小学校の5年生たち東京農業大学の梅室英夫先生挨拶を行う首都高の橋本圭一郎社長。自身も田植えを行った
実物の稲を手に、田植えのやり方を再確認する梅室先生グリーンのキャプをかぶっているのは首都高のスタッフ。マイクを手に、注意事項などを生徒たちに説明
田んぼにはあらかじめ、等間隔にマークが入ったロープを十字型に設置。横一列に並んだ生徒たちには横ロープのマークの前に苗を植えるように指示。植え終わったら全員で一歩下がり、縦ロープのマークに合わせて横ロープを動かすという手順を繰り返していくと、慣れない小学生たちでも一定の間隔で田植えができるという仕組みが用意されていた
生徒たちと並んで田植えに参加する橋本圭一郎社長6月も間近とはいえ、まだまだ水に入るには早い季節だけに、田んぼに足を踏み入れた生徒たちの第一声はそろって「冷たい!」だった
最初は足もとがおぼつかなげで怖々という感だった生徒たちも、数セットの田植えを続けるうちに熱中して作業するようになっていた
田んぼに入ってからの生徒たちの反応はまちまち。わずかに鼻を刺激するどぶ川のような臭いに、半ばおどけて「うえー」と声を上げながら作業する生徒がいれば、泥の感触がすっかり気に入ったように、手で掴んだり歩きまわったりする生徒もいた
生徒たちがてきぱきと積極的に作業に参加したおかげで予定時間より早く進み、最後は見学に来ていた父兄も田植えに飛び入り参加
やはり小学5年生の体格だと、田んぼに入ってからの移動や田んぼから出ることはひと苦労
田植えの終了後は、手も足も泥だらけ
最後に、生徒の代表が「東京ではできない体験をさせてくれてありがとうございました」と元気よく挨拶して田植えは終了となった稲作体験終了後の水田。まだ残っている苗は、あとでスタッフが空いたスペースに植えるとのこと

 この地元小学生による稲作体験は、7月に生育状況の観察、秋に刈り入れが行われる予定となっている。

おおはし里の杜では、限られたスペースのなかで、斜面林や小川、草地や水田などの自然を再現している植えられている稲の品種は「ふさこがね」。地上30m以上という立地条件なので、なにより風に影響されにくいという点で選ばれているという
小川や水田で利用されている水は、大橋JCTの地下にある貯水施設に貯められた雨水。これも周辺環境を再現する一環とのこと。池からポンプを使って小川の上流に循環している
水田の中を泳ぐメダカを発見した生徒は、座り込んでしばらくのあいだじっと観察していた
草地にはホタルブクロやノアザミなどの野草が花をつけていた

(佐久間 秀)
2012年 6月 1日