日産、「PIVO3」を先行お披露目 単なる移動手段から、街と一体になって社会を豊かにするクルマへ |
日産自動車は11月12日、神奈川県横浜市の同社グローバル本社ギャラリーで、東京モーターショーに参考出品するコンセプトEV(電気自動車)「PIVO3」の一般向けお披露目イベントを開催した。
「わくわく未来教室@日産ギャラリー」と名付けられたこのイベントは、「PIVO3」の走行シーンを見せるだけでなく、ごく近い未来の街づくりと、そこでのクルマのありかたを、TV番組でもおなじみのユニバーサルデザイン総合研究所の赤池学所長と、同社チーフクリエイティブオフィサー(CCO)の中村史郎 常務執行役員が解説した。
PIVO3は、2005年の「PIVO」、2007年の「PIVO2」に続く3シーターのコンパクトEVシリーズの3代目。
詳細は関連記事を参照されたいが、2800×1650×1520mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース1900mmのボディーにセンターステアリングレイアウト、つまり中央にドライバーが座り、両脇にパッセンジャーシートを配するコクピットを備える。
インホイールモーターと4輪操舵により、一般的な4m幅の道路であれば180度転回できる。またインフラと協調して、自動運転で駐車位置から乗員のもとに来たり、駐車位置に帰ったりするAVP(オートマチック・バレー・パーキング)や、非接触充電機構、搭載するバッテリーで住宅やビル、地域の電力をバッファリングする電源安定化の仕組みも備える。
PIVO3のAVPのデモ。スマートフォンで呼び出すとPIVO3が無人運転で駐車位置からステージに登場、呼び出した人のそばに停まり、ドアを開く |
リアピラーのスイッチを押すと、無人運転で駐車位置に帰る。PIVO3はどこでも自動運転ができるわけではなく、インフラとの協調で無人運転をする。駐車場側もAVPに対応したインフラを備える必要がある | |
中央に運転席があり、その両側にパッセンジャーシートがある3シーター |
インホイールモーターにより、すべての車輪に大きな舵角を確保しており、後輪操舵と合わせて幅4mの道路で転回できる |
中村CCO |
中村CCOが「“誰にも優しいEV”のシリーズをPIVOと呼んでいる」と紹介するとおり、PIVO3は都市内を比較的低速で移動する車両として企画されたもの。そうした車両を赤池氏は「歩行者や自転車と一緒に移動できるクルマ」と表現する。
再生可能エネルギーの活用によりクルマが電動化される一方、人口が集積する都市部では、高齢者や子育て世代の移動を支援する必要がある。また、従来の自動車を排除し、低速なEVや自転車、歩行者などが共存する街づくりにより、「低炭素で、健康で、賑わいのある」都市計画がトレンドとなっている。
PIVOシリーズはこうした環境の中での活用を想定して作られているが、PIVO3の大きな特徴は、「ネットワークとの繋がり」と中村CCOは言う。同社はすでにEV「リーフ」で携帯電話やスマートフォンからリーフの状態を把握したり、リモートでエアコンをかけるといった仕組みを実現しているが、PIVO3のAVPはこれを一歩進めたもの。また、家やビル、地域の電源安定化にもネットワーク機能が重要になる。
こうした機能の実現にはインフラの整備が欠かせないが、「これからの自動車メーカーは、EVを作って売っておしまいではなく、インフラづくりもする必要がある」と中村CCOは言う。「日産は“EVの製造メーカー”ではなく“エレクトリック・モビリティの提供者”と言ってきた」。
「これからクルマは単なる移動の道具でなく、街と一体になって豊かな社会を作っていく」という言葉で中村CCOはイベントを締めくくったが、その実現時期は「なるべく早く。10年以内」と言う。
助手と赤池所長が「未来のまちと未来のくるま」と題して、PIVO3が必要とされる社会や都市について解説した |
再生可能エネルギーの利用が進み(左)、スマートフォンなどでネットワークが高度に発達した社会(右) | |
人口が集積された都市には自然を取り入れ、歩行者、自転車、低速交通が同じ道を走り、低炭素で賑わいのあるまちづくりを目指す。右は、中心部を低速交通ゾーンとした仏ナントの例。信号機を廃したにもかかわらず、交通事故とOC2排出量が半減した |
そうしたまちで使われる多様なモビリティの1つにPIVOシリーズは位置づけられる。歩行者などと共存するため、PIVOシリーズは凶暴でなく、優しいかわいい“くるま”として作られている |
再生可能エネルギーは供給が不安定なため、EVのバッテリーに電力を貯めることで、住宅やビル、地域の電源を安定化する。そのため、EVはネットワークに繋がって、エネルギーの配分を最適化する必要がある |
(編集部:田中真一郎)
2011年 11月 14日