東北地方の高速無料化についてNEXCO東日本に聞く
12月1日から始まる無料化の疑問点を解消!!


東北地方の高速道路無料開放対象路線

 2011年12月1日0時から2012年3月31日24時まで行われる東北地方の高速道路無料化。これは、2012年6月19日まで実施予定だった被災者支援を終了し、被災地の復旧・復興を支援するために成立した「平成23年度第3次補正予算」(東北地方の高速道路無料化としては250億円)に基づいて実施されるもの。

 無料化エリアの詳細については関連記事「東北地方の高速道路を12月1日より無料開放」を参照していただきたいが、被災地支援、観光振興、避難者支援と大きく3つに分かれている。

 被災地支援は、東日本大震災による被害の大きかった東北太平洋側の各県の高速道路を無料化するもので、全車種を対象に、全日実施され、ETC車載器の有無は問われない。観光振興は、普通車以下のETC装着車を対象に、土日祝日実施するもので、東北の日本海側、青森県北部の高速道路が無料化となる。

 避難者支援は、被災地支援の対象エリア内の市町村から対象エリア外の市町村への避難者、原発事故による避難者を対象とし、避難者が運転または同乗している車両であれば、被災地支援の対象路線内を入口または出口とする、対象路線外との間の走行の全区間が無料になる。

 これまで行っていた被災者支援は、被災証明書又は罹災証明書および本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)があれば無料となったが、避難者支援ではそれに加え、新たに被災時に被災地支援対象エリア内の市町村を生活の本拠としていたことの確認ができる書面および現在被災地支援対象エリア内の市町村以外の市町村を生活の本拠としていることが確認できる書面の2つが必要になる。ただし、原発事故による避難者は、従前と変わりなく被災時に警戒区域等を生活の本拠としていたことの確認ができる書面(運転免許証、パスポート)と本人確認があれば無料措置を受けられる。

 3つの観点から無料化が行われるため、どの程度無料となるのか分かりづらく、また、複数ルートで移動可能なIC(インターチェンジ)間では、最安価格ではなく最短距離で料金計算が行われるなど、注意すべき点がある。そこで、基本的なことから、やや細かなところまで、NEXCO東日本 管理事業本部 営業部 料金計画課長代理 柴田裕之氏と、営業部 営業課 課長代理 多田明彦氏の両名に疑問点を聞いてみた。

被災地支援の無料措置について
──被災地支援では、全車種全日無料措置が実施されるが、これは誰でも無料で無料措置対象の高速道路を利用できるということか?
NEXCO東日本:誰でも利用することができます。

──この無料措置は12月1日0時からとなっているが、それはIC(または本線料金所)に入った時刻が対象となるのか、それともICを出た時刻が対象となるのか?
NEXCO東日本:被災地支援・観光振興においては、出口主義のため12月1日0時以降に流出すれば対象となります。従来行っていた被災証明書等利用者(被災者支援)については、入口主義のため、11月30日23時59分までに流入すれば対象となります。

──同様に2012年3月31日24時に無料措置終了となるが、これはICに入った時刻なのか、それともICを出た時刻なのか?
NEXCO東日本:入口主義のため、3月31日23時59分までに流入すれば対象となります。

──無料措置路線外から乗り継ぎの際は、無料措置路線の料金のみ無料となっている。一旦ICを降りる必要などはあるのか?
NEXCO東日本:ICを降りる必要はありません。通しで走行していただいても、無料措置適用区間分を控除した通行料金を請求させていただきます。

──ETC車載器の料金表示はどうなるのか?
NEXCO東日本:通しで走行していただいても、無料措置適用区間分を控除した通行料金が表示されます。この通行料金表示は、無料措置開始時点から通行料金が正しく反映されます。

NEXCO東日本の料金検索サイト「ドラぷら」

──無料化されることで交通量の増加が予想される。これに対する対策などは、どのようなものを行うのか?
NEXCO東日本:横断幕や立て看板などで混雑が予想されることを周知することを考えています。お客様におかれては、当社の「ドラぷら」(http://www.driveplaza.com/)や道路交通情報センターのWebサイト(http://www.jartic.or.jp/)で、リアルタイムの交通状況を確認していただき、時間に余裕を持ってお出かけいただきたいと思います。

──ドラぷらでは、「渋滞予測カレンダー」(http://www.driveplaza.com/traffic/forecast/)を公開している。この渋滞予測に12月1日以降の無料措置が反映される日は?
NEXCO東日本:11月28日午後を予定しています。

──2012年の3月までは、この無料措置以外に各種の割引措置が行われているが、この割引措置と無料措置は併用できるのか?
NEXCO東日本:時間帯割引、障害者割引等併用でき、有料区間分の料金に割引が適用されます。

──たとえば、東北自動車道 川口JCT(ジャンクション)~仙台宮城ICまで走行した場合の普通車通常料金と無料措置料金はいくらになるのか?
NEXCO東日本:川口JCT~仙台宮城ICまでの普通車料金は、無料措置前は7,200円でしたが、12月1日以降の無料措置後料金は4,250円(川口JCT~白河ICが有料区間)になります。川口JCT~白河ICが深夜割引(0時~4時)の対象となれば、50%オフの2,150円となります。東北道であれば、白河IC~安代ICが被災地支援の無料区間となりますので、川口JCT~安代IC間も4,250円(深夜割引で2,150円)になります。

──そのほか、料金面で気をつけることはあるのか?
NEXCO東日本:今回の無料措置で気をつけていただきたいのは、入口から出口までの経路が複数ある場合は、最短経路で料金が計算されることです。NEXCO東日本管内では、北陸自動車道・関越自動車道、東北道、常磐自動車道と、それらを東西につなぐ磐越自動車道・北関東自動車道で大きな2つのループができており、この区間内を走行する場合は注意が必要になります。

東北地方無料措置見直しのお知らせ大きな2つのループ

 たとえば、東北道 白河IC~常磐道 水戸IC間では、入口・出口がともに無料区間内に位置しますが、最短経路は有料区間である北関東道経由の168.7km(無料区間の磐越道経由は211.1km)となり、全線有料の通常料金である4,050円と計算されます。

 また、北陸道の三条燕ICと巻潟東ICは隣り合うICとなりますが、水戸ICを出発した場合、水戸IC~三条燕IC間は最短経路が関越道経由となり、無料区間が含まれないため通常料金と同様の7,050円。一方、水戸IC~巻潟東IC間では最短経路が磐越道経由となり、無料区間が含まれるため、通常料金6,850円が被災地支援では2,400円になります。さらに、土日祝日であれば西会津IC~新潟中央ICが観光振興の無料区間となるため、新潟中央IC~巻潟東IC間の350円(休日特別割引も適用される)だけとなります。ただし、水戸IC~三条燕IC間も休日特別割引が適用されるため3,550円となります(いずれも普通車の料金例)。

白河IC~水戸IC間水戸IC~三条燕IC・巻潟東IC間

 そのため、出かける前に料金検索サイトの「ドラぷら」などで、料金を確認していただければと思います。

──最短距離を走行せず、実際に無料区間を走行しても、このような料金となるのか?
NEXCO東日本:複数経路がある場合の取扱いについては、国土交通大臣の告示に定められているため、現行の料金より値上げになる場合を除き、必ず最短距離で料金計算を行います。

──現時点(11月25日)において、ドラぷらでは東北地方の高速無料化に対応した料金が検索できない。これが可能になるのはいつ頃か?
NEXCO東日本:新料金に対応した料金検索は、12月1日10時からご利用になれます。また主要なIC間の料金については、料金表を公開(http://www.driveplaza.com/route/ryoukin_111201.html)しており、そちらをご覧いただければと思います。

──12月~3月の措置となり、冬の東北地方の高速道路を走行することになる。この時期の高速道路を走る際に気をつけるべきことは何か?
NEXCO東日本:出発前に「ドラぷら」にて交通情報、道路状況などをご確認の上、お出かけください。また、早めの冬用装備(冬用タイヤの装着、チェーンの携行)、あわせてスピードの出し過ぎ・十分な車間距離の確保をお願いします。この時期の高速道路では、安全を確保する上で雪氷作業(道路の雪かきなど)を行いますが、低速走行により渋滞等を引き起こす可能性があります。お急ぎのところ大変恐縮ですが、無理な追越しなどせずに、作業へのご理解とご協力をお願いします。

 NEXCO東日本では、こうした冬季の高速道路の安全走行をお客さまへ訴求するキャンペーンとして、「マンモシ博士の冬の『高速道路講座』」(http://manmoshi.driveplaza.com/)を開設しておりますので、おでかけ前にご覧いただければと思います。

 また、東日本大震災で東北道、常磐道などの高速道路は大きな被害を受けました。震災直後に応急復旧はすませたものの、路面の荒れている個所があり、本格復旧工事を行っていますが、工事による車線規制の実施箇所が変わるため、災害復旧工事に関する専用のWebサイト(http://www.driveplaza.com/info/fukkyu/)を開設しております。最低でも1週間先の規制箇所まで公表しておりますので、こちらもおでかけ前にご覧いただき、時間に余裕をもった走行にご協力をお願いします。

観光振興の無料措置について
──観光振興では、土日祝日で普通車以下のETC装着車が無料化対象となるが、普通車以下とはどのような車輌区分なのか?
NEXCO東日本:普通車以下とは、軽自動車等(二輪車を含みます)・普通車(3~7ナンバーすべて、8ナンバーは車両による)になります。8ナンバーは車輌により普通車と異なる場合もありますが、ETC車載器に登録された車輌区分になります。

──土日祝日とは、ICに入った日なのか、それともICから出た日なのか?
NEXCO東日本:流入または流出が、土日祝日にかかっていれば適用になります。また、金曜日に入って、月曜日に出るなど土日祝日をまたぐ場合も適用になります。

──土日祝日をまたぐ場合、複数回またぐことは対象となるのか?
NEXCO東日本:対象となります。ただし、複数回の土日祝日をまたぐということは長期間高速道路上を走行していることになり、出口のETCゲートが開かない場合があります。出口料金所では係員のいるレーンをご利用ください。

──年末年始の土日祝日は、暦どおりと考えてよいのか? 渋滞分散を図るための特別措置などがあるのか?
NEXCO東日本:休日特別割引適用日と同様になります。日付は、12月23日~25日、31日、2012年1月1日~3日、7日~9日。1月3日はカレンダーでは平日となっていますが、三が日と考え特例として適用されます。

──ETCカードの手渡しでの無料措置の適用は可能か?
NEXCO東日本:入口を無線(ETC)走行することが条件になります。通常の時間帯割引の適用条件と変わりありません。

──ETC付きの普通車で土日休日に東北道 川口JCT~ 東北中央自動車道 山形中央ICまで走行した場合の通常料金と観光振興無料措置料金はいくらになるのか?
NEXCO東日本:川口JCT~山形中央IC間は、無料措置前の通常料金は7,900円、休日特別割引(大都市近郊昼間30%オフ)は4,150円ですが、無料措置後の観光振興適用(大都市近郊昼間30%オフ)で、2,300円です。この2,300円は、川口JCT~白河ICまでの有料区間の料金で、山形中央ICで降りた場合でも、青森ICで降りた場合でも、観光振興の無料区間内となるため、料金は変わらず2,300円です。

 最短距離で計算されるため、料金計算の注意点は、被災地支援の無料措置と同様になります。

──ETC車載器の表示はどうなるのか?
NEXCO東日本:被災地支援と同様に即日反映され、観光振興の無料措置適用区間分を控除した通行料金が表示されます。

避難者支援の無料措置について
──無料での利用は、書類が必要となっている。これは、以前の被災者支援の無料措置と同じ書類なのか?
NEXCO東日本:以下の4つの書類が必要になります。
1.被災を証明する書面(罹災・被災証明書、罹災証明書の発行に時間を要している自治体があることから、当面罹災届出証明書も可能)。
2.避難元が確認できる書面(罹災・被災証明書、運転免許証、住民票の写しなど)。
3.避難先が確認できる書面(運転免許証、住民票の写し、自治体からの通知文書、公共料金の請求書、領収書など)。
4.本人確認ができる書面(運転免許証、保険証、パスポートなど)。

 従前の被災者支援に対して、2と3の書類が新たに必要になります。

 なお、原発事故による避難者においては、避難先の要件はありません。被災時、国が指定する警戒区域等に住所を有していた方が対象になりますので、従前と変わりなく、2と4の書類が必要になります。

──書類での提示が必要とのことだが、これは入口、出口とも有人のレーンを通る必要があるということか?
NEXCO東日本:従前と変わりなく、入口・出口ともに一般レーンをご利用いただく必要があります。そのため、スマートICはご利用いただけません。


 以上、東北地方の高速無料化に関する疑問点に関して答えていただいた。この無料化を利用する上で気をつけていただきたいのは、インタビュー中にもあるように、ルートが複数経路存在する場合は、料金計算が最短距離で行われる点。無料化区間を利用するつもりで走行したのに、通常料金を請求されてしまったという事態を避けるためにも、事前の料金確認はしっかりしておきたい。

 また、東日本大震災の被災により、高速道路の路面が荒れている個所があり、振動が大きくなるためか、最近は落下物が増えているとのこと。そうしたことに注意して、復興・復旧のための被災地支援や観光支援の無料措置、避難者支援のための無料措置を、上手に利用していただきたい。

(編集部:谷川 潔)
2011年 11月 25日