「最善のバッテリーを積んだクルマが、多くの顧客を得る」
BMWとトヨタが提携、環境技術分野で中長期的に協力

左からルロワ、伊原、内山田、ドレーガー、ロバートソン、フリューリッヒの各氏

2011年12月1日発表



 独BMWグループとトヨタ自動車は1日、都内で記者会見を開催、次世代環境車・環境技術における中長期的な協力を構築する覚書(MOU:(Memorandum of Understanding)に調印したと発表した。

 これによると、まず両社は次世代リチウムイオン・バッテリーの共同研究を進める。また、BMWはトヨタ モーター ヨーロッパに対し、ディーゼルエンジンを供給する。さらに、環境技術でほかに協業できるテーマがあるかどうか、検討を進める。

提携はディーゼルエンジン供給から
 会見にはBMWグループからクラウス・ドレーガー開発担当上級副社長、イアン・ロバートソン セールス&マーケティング担当上級副社長、クラウス・フリューリッヒ ブランド&プロダクト戦略担当執行役員が、トヨタ自動車からは内山田竹志 取締役副社長、伊原保守 取締役・専務役員、ディディエ・ルロワ 常務役員(トヨタ モーター ヨーロッパ社長兼CEO)の6人が出席した。

 会見出の発言によれば、両社は4月から、協業について検討を進めてきたと言う。その発端は、トヨタが欧州市場向けディーゼルエンジンの調達先を探していたこと。

 トヨタは欧州向けにディーゼルエンジンをラインアップしているが、2014年から施行される排出ガス規制「EURO6」をクリアするエンジンは持っていない。しかし、トヨタの生産台数を考えると、自前で開発するのは割りに合わない。

 トヨタは環境対応車としてハイブリッド車を推進しているが、欧州ではディーゼルエンジンの需要が大きいため、ラインアップせざるを得ない。その調達先としてBMWが浮かび上がった。

 BMWから調達するエンジンの排気量は1.6リッターと2リッターで、すでに技術的な作業は進んでいる。これを搭載したトヨタ車のリリースは2014年、つまりEURO6の施行に合わせたタイミングとなる。どの車種に搭載するかは未定だが、トヨタが欧州で現地生産するモデルで検討することになると言う。

内山田副社長(左)とドレーガー上級副社長

次世代車の鍵を握るのはバッテリー
 このディーゼルエンジン供給を契機に、他の分野での協業に話が広がった。もともと両社の技術者の間には交流があり、議論や情報交換をしてきたこと、トヨタ モーター ヨーロッパのルロワCEOが「基本的には両者ともものづくりの会社であり、様々な面で同じ言語を共有していることが分かった」と言うように、企業風土が似ていることなどから、協業が実現した。

 協業のテーマが次世代リチウムイオン・バッテリーになったことについては「電池技術はハイブリッド技術の未来にとって非常に重要なだけでなく、未来のインディビジュアル・モビリティにとっても大切。最善の機能、コスト、品質を誇る電池が搭載されたクルマを提供できるメーカーが、より多くのお客様を獲得できるということになるだろう」(ドレーガー上級副社長)と、バッテリーこそが次世代車両の鍵を握るという認識があったからだ。

 また、「トヨタは大量のバッテリーについて長い経験がある。BMWは欧州で大学や研究機関などとさまざまなネットワークを持っている。両社で分担して作業するうえで、それぞれが持ち寄る新しい付加価値として協業効果が出るのではないか」(内山田副社長)という見込みもあった。

 具体的な作業の進め方としては、リチウムイオン・バッテリーを構成する「正極」「負極」「電解質」の3つの要素を、トヨタとBMWで分担して研究開発する。

 一方でルロワCEOが言うとおり「これからも両社は競争関係にある」。内山田副社長が「共同研究の結果は共有するが、生産は別の問題」と言うように、両社の力を合わせて開発を加速化し、競合他社との競争でリードを築くが、実際の製品化はそれぞれが行い、市場で競うことになりそうだ。

(編集部:田中真一郎)
2011年 12月 1日